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使い魔はじめました-09


使い魔はじめました―第九話―

虚無の曜日の朝
ルイズはサララを連れて厩舎へとやってきていた
「サララ、トリスタニアまでは馬で三時間くらいだってのは、
 昨日説明したわよね? あなた、馬、乗れる?」
「乗れないと思うよ。僕も一緒だし」
サララの返事を待たず、チョコがそれに答える
実際、乗れないのでサララもうんうんと首を縦に振った
「そうよね。じゃあ、私の後ろに一緒に乗りましょうか」
ルイズがそう言って厩舎に入ろうとした
その時、バサバサと大きな羽ばたきが聞こえてきた
何事か、とサララは音の出所を探し、空を見上げる
「あ、ドラゴンだ。確かあの子は……シルフィードだったっけ」
「何で名前を知ってるのよ」
「授業の合間に、結構おしゃべりしてるんだ
 って、あれ? こっちにくるよ?」
シルフィードと呼ばれたドラゴンが、
その青い羽を羽ばたかせながらサララの前に下りてきた
きゅいきゅいと鳴きながらサララの眼前で鼻をひくひくとさせる
「きゃあ! ど、ドラゴン! サララを食べちゃだめえ!」
サララを食べようとしているように見えたためか、、
ルイズがうろたえながら杖を構えた

「おっほっほ! ルイズったら、そんなに慌てちゃって!
 心配しなくても、シルフィードはサララを食べないわよ」
シルフィードの上から、さもおかしそうな声が聞こえた
それから、見覚えのある赤い髪と褐色の肌が見えた
「キ、キュルケ! な、何であんたがドラゴンに乗ってるのよ!」
ゆでた蛸のように顔を真赤にして、ルイズが問いかける
「この子が買い物に行くっていうから、
 ついでにトリスタニアまで乗せてってもらおうと思ってね」
「この子?」
見れば、背びれのところに一人の少女が座っていた
青い髪に青い瞳をし、眼鏡をかけた小柄な少女である
小柄、と言ってもサララよりは少し背が高い
「けど、そしたら急にシルフィードが下りるじゃない。
 ねえタバサ、この子どうしたのよ?」
タバサ、と呼ばれた少女は淡々と答える
「わからない。けれど、シルフィードは貴女に興味を持っている」
「きゅいきゅい!」
シルフィードがサララに顔をこすり付けてくる
どうやら、友愛の意を示しているようだ
サララもそれに応え、その頬を撫でる
いい鱗、これなら高く売れそう、と考えた瞬間、
きゅいきゅい鳴きながら、シルフィードはサララから離れた
「……サララ、今、この鱗が高く売れそうだ、とか考えたでしょ?
 そんなこと考えるから、シルフィードがおびえてるじゃないか」
チョコに咎められて、照れたように微笑んだ
「買い物って、トリスタニアまで?
 ああもう、行き先が被るなんて今日は運がないわ!」
ルイズが口をヘの形にしたまま呟く
「あら、あなた達もトリスタニア? ……よかったら、一緒に乗っていかない?」
キュルケがちらり、と厩舎を見た後でルイズに提案する
「な、何でにっくきツェルプストーの提案に乗らなきゃいけないのよ!」
「だって、……この子が来たせいで、馬が……」
冷や汗を垂らしながら、キュルケが呟いた
見れば、目の前に突如としてドラゴンが現れたせいで、
馬たちはみんな立ったまま気絶していた
器用な馬たちである
「……し、仕方ないわね! 乗ってあげてもいいわ!」
「はいはい。……いいわよね、タバサ」
「構わない」
こうして、女四人と猫一匹はドラゴンの背に乗って
一路トリスタニアを目指すこととなった

「うわー! いい景色だねぇ、サララ!」
大空を飛ぶドラゴンの背中で、チョコがはしゃぐ
サララも広い空を飛ぶ感覚にすっかり夢中になってるようだ
「あああ、アンタたち、恐くないの?」
ルイズが振るえながら、シルフィードの背びれに抱きついている
普段、レビテーションもフライも使えないルイズは
空を飛ぶ感覚に慣れていないようか恐いらしい
「うん。ダンジョンでも、ドラゴンは移動用に使われてたからね」
しかし、暗い洞窟の中、ぶつかりそうな所を飛ぶのより、
こうやって広い大空を飛んでいる方が楽しい、とサララも言葉を続ける
その言葉に、きゅいきゅい、とシルフィードが何か言いたげに声を上げる
「『シルフィは嫌なのね。洞窟の中なんて、暗いしジメジメしてて、
  お断りなのね! きゅいきゅい!』だってさ。
 シルフィードもそう思うよねえ」
チョコがシルフィードの言葉を訳し、そのままルイズとサララに伝える
「あら? 随分と人の言葉を使い慣れてるのね、このドラゴン」
「ドラゴンってそういうもんじゃないの?
 ボクたちの居たところじゃ、ドラゴンもモグラも
 ユニコーンも結構喋ってたけどなぁ」
でも、クオンとかの騎乗用のドラゴンが喋ってるのを
見たことはないから、多分人間の声では喋れない種類なんだろうなぁ、と
サララは一人で納得していた
「はぁ……あんたたちの居た世界、どうなってんのよ……」
頭痛がするような感覚がして、ルイズが思わず額に手を当てる
「ルイズ、あんたさっきから誰と話してるの?」
キュルケがそんな彼女を不思議そうに見やる
「え、誰ってチョコだけど。……あによ、その可哀想なものを見る目は」
「ゼロのルイズ、あんたとうとう頭が……」
哀れむように呟くキュルケに向け、タバサが独り言のように言う
「……サララは、彼女の使い魔。チョコはサララの使い魔。違う?」
言い当てられて、サララは思わず目を丸くした
サララが魔法の使えないメイジであることを知る人物は、
この学院にはそう多くはないからだ
「……ああ、サララもメイジなのね。ふーん、つまりチョコは
 使い魔の使い魔ってわけか。ふふ、面白いじゃない」
さも楽しげに、キュルケが口の端を歪める
「何よ! その微笑は!」
むきーっとなりながらルイズが思わず杖を向けた
「……ここは空の上。ケンカするなら……落とす」
「わ、分かってるわよ。い、威嚇よ、威嚇」
ぼそり、とタバサが呟いたので、若干青ざめながら、すぐに納めた
タバサは本をめくりながら、自身の使い魔と意思疎通を図る
「(彼女になついた理由は?)」
「(ドラゴンの匂いがしたので気になりました)」
「(あの猫に韻竜であることの口止めは?)」
「(忘れてたのね、ごめんなさい、おねえさま)」
ぽかり、とシルフィードの頭を杖で軽く叩く
「(痛い痛い! ひどいのね!)」
「(きちんと口止めしなかった、罰)」
タバサは念話でそう告げると、視線を本に戻す
が、思うところがあって、顔を上げサララを見つめた

彼女が、珍しい道具を売っているのは何度か見たことがある
ひょっとしたら、『あの人』を救える道具も持っていないだろうか
タバサは、思い切って問いかけてみることにした
「サララ。貴女は……異国の商人だと聞いた。
 ……毒に侵された人を治す薬はない?」
タバサの突然の問いに、サララは困ったように呟く
一応、前に居た場所で取り扱っていた薬草はあるけれど、
どうもこの辺りとは毒の概念が違うらしく、効きそうにない
ギーシュを通じて親しくなったモンモランシーと話す内に、
その事実が分かったのだ、と告げる
「そう……」
顔にわずかに落胆を浮かばせて、タバサは息を吐く
「ちなみに、どんな薬草?」
わずかな可能性にすがるように、さらに続けて問う
サララは、袋を漁ると黄色い植物の葉を取り出した
これを齧ると毒が消えるんです、と説明する
それを一枚手に取ると、タバサは試しに齧ってみる
真顔のまま、もぐもぐと口の中で咀嚼する
それから、ごくり、と嚥下してサララを見つめた
「あるだけ売って」
その目は煌々と輝いており、思わずサララがヒく
「ふーん、おいしいのかしら?」
「私も一枚もらうわね」
「……よした方がいいよ」
チョコの呟きは、キュルケにはニャアとしか聞こえず、ルイズには届かなかった
勢いよく齧った二人は、思わず言葉を失った
「……苦ぁい、何よ、コレぇ……」
ルイズがうぇーっという顔をしたが、ドラゴンの背中なので
吐き出すわけにもいかず、渋々とそれを飲み込む
「……タバサ。そういえばあなた、ムラサキヨモギと
 ハシバミ草が好物だったわね……」
キュルケが、失敗した、という顔でタバサを睨んだ
「……食べないならちょうだい」
二人の食べ残しを受け取ると、口の中へ放り込んだ
勇者のタマゴや歴戦の騎士ですら、口に含んだ瞬間は
あまりの苦味に顔をしかめる『毒消し草』
それを真顔で食べるタバサを、サララは恐ろしいと感じるのだった
ついで、自分の迂闊さが心苦しくなる
ルイズからも、似たような質問をされたことがある
『原因の分からない病を治せる道具は無いか?』
彼女はその道具を知っていた
自身の魔力を消費することで、身体に発生したあらゆる異常を
治癒することが出来る結晶『賢者の石』
入手は困難であり、唯一持っていたものも、普段からダンジョンへ携帯していた
そのため、こちらの世界へ来る際に置いてきてしまったのである
望まれた商品を用意できないなんて、町一番の商売人の名が廃るなぁ、と
サララは空を見上げてため息をこぼすのだった


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