あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

割れぬなら……-10



トリステイン魔法学園が用意したコルベールの私室。
曹操とワルド、そしてコルベールの3人がそこにいた。

「……以上が、ダングルテールにおける虐殺について私が知りうる全ての事だ」

コルベールがペンを置いた。
先ほどまで曹操に話していた事の全てが、数枚の羊皮紙に書き記されている。

「その証言に偽りはないな?」

コルベールが無言で傾く。

「……いつかはこんな日がくるような気がしていたよ。
 まさか、君が一番早く辿り着くとは思わなかった」

男の瞳はどこか虚ろで、どこか悲しげに見えた。
曹操が立ち上がる、もうここには用は無いのだろう。

「ダングルテール殲滅の報酬であった高禄を辞し、軍を抜けたとしても、それは償いにはならぬ」

曹操の鋭い眼光がコルベールに向かう。
コルベールはそれを直視する事ができなかった。

「ワルド、その書類をあずかるがよい」

「はっ」

2人が部屋から出た。
この時になって、コルベールは恐ろしい量の汗が出ていた事に気がついた。

「……もう、教師は続けられないか」

答える者はいない。
その発言の向かった先、自分自身さえも何も答えなかった。



「未練だな」

もう一度自分に向けて言葉を出し、荷物をまとめようと席を立った。
あの事件が公にされれば、自分の周囲にいる人達に迷惑がかかるだろう。
もしかしたら、魔法学園そのものに悪影響を与えるかもしれない。
どこに逃げようか?
いや、いっそのこと命を……

「ジャン・コルベール!!」

声がした、外からだ。
その声は曹操のものだ。

「宮廷貴族の腐敗に加担した君の過ちを五分と見よ!
 そしてこの先、コルベールという武人がハルゲニの大地に打ち立てる生きた証を五分と見よ!
 君に自らの命を断つ気概があるならば、ダングルテールを一夜にして焼き払ったその腕を買い上げる。



 生きた屍を出で、私のもとへ来い!



 私は王都北門警備隊隊長、曹操孟徳である」

人の気配が遠ざかっていくのを感じた。
今度こそ本当に全ての用事を終わらせたのだろう。
コルベールはその言葉を聞き、何を思ったのだろうか?
彼は20分後、自室から出て学院長室へと向かった。

汗はもう……出ていない。



……翌日。

王都にある曹操の執務室。
いつものように曹操は兵法書の執筆、タバサは覗き見、
ルイズはいない、メイドからの証言によると、昨日の朝早くに曹操を追って学園に向かったらしい。
馬で駆けた場合、王都から学園まで往復で4日。
おそらくあと2日は静かになるだろう。
……副官は心の底からホッとしていた。

「駄目だご主君、握り潰された」

……と、そこにワルドが現れた。
握り潰されたというのは、昨晩申請した上奏の件であろう。

「リッシュモンか?」

「ああ、そのようだ。
 ゴドーの報告、コルベール氏の証言、そして今回の妨害行動。
 もはや疑いようがないね」

そう言ってワルドは両手を挙げてみせる。

「どうするご主君?
 幸いにしてアンリエッタ姫とは顔見知りだ。
 非公式で良ければ面会も可能だよ」

「いや、それでは足りん」

ワルドは肩をすくめ、副官は頭を抱えた。
正攻法で上奏しようにも、リッシュモンが妨害する。
非公式の会談上では足りない。
ならばどうすれば良いのか?



「ご主君、まさかこのまま泣き寝入りするつもりじゃなかろうね?」

本気で言っている訳ではない。
しかし、ワルドには他に方法が思いつかないのだ。

「噂ではもうじき降臨祭が行われるらしいな」

「ああ、今年も盛大に行われるらしいね」

「降臨祭を見た事はないが、余興の一つもやるのだろう?」

「ああ、やるとも。パレードやら花火やら」

この時点でワルドは曹操の言わんとする事に気づいたらしい。
タバサは元々あまり興味が無いらしい。

「王族達も出席するのだろう?」

「ああ、するとも。アンリエッタ姫やマリアンヌ王妃、マザリーニ枢機卿にリッシュモン。
 今年はアルビオンからウェールズ皇太子、
 それとガリア大使が軍事条約の批准書を交換するためにやって来るらしい」

ワルドがずいぶんと小悪党っぽく笑って見せた。
副官がようやく2人の意図に気づき、唖然とした顔を見せた。



所変わって、トリステイン魔法学院学院長室。

「……理由は、答えられないのじゃな」

「申し訳ありません、オールド・オスマン」

オールド・オスマンの手には、コルベールからの辞表が握られていた。

「教師が嫌になった訳ではありません。
 しかし、教師たる者は生徒の模範とならなければなりません。
 自らが招いた災厄を打ち払わねば、この先どのような顔で生徒に接すれば良いのでしょうか?」

今も、コルベールの肌に汗は無い。
視線は決して揺るがない。
……ふぅ、とオスマンは大きなため息をついた。

「よろしい。ジャン・コルベールの退職を認めよう」

「申し訳ありません、オールド・オスマン」

コルベールは大げさなまでに頭を下げた。

「謝る必要は無いぞ、ミスタ・コルベール。
 魔法学院は教え導く場所じゃが、同時に巣立ちを祝う場所でもある。」

「学院長……」

「辞めるのではない、巣立つのじゃよ。
 せめてジャン・コルベールという男の巣立ちを、皆で祝わせてもらえぬかのう?」

「はい、ありがとうございます!」

その夜、アルヴィーズの食堂でささやかな宴が開かれた。
それは別れを惜しむ宴ではない。

それは巣立ちを祝う宴である。



新着情報

取得中です。