あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第2話


 第2話

「ねえルイズ、ちょっと聞きたいんだけど」
 ルイズの魔法でめちゃくちゃになった教室を片付けながらの問いにルイズはビクリと肩を震わせる。おそらく、さっきの失敗魔法の事で何か言われると思ったのだろうが、その辺りは興味がない。
 このタイミングで話しかけては誤解させてしまうのも無理はないが、ちょうどいい機会なのだから許して欲しい。
「さっきの授業で言ってた『スクウェア』とか『トライアングル』ってなんなの?」
「そんな事が聞きたいの?」
 気が抜けたように問い返してきた。私としてもちょっと好奇心に駆られただけで特別知りたいわけでもないのだけれど、本命の質問はおそらく彼女を不機嫌にさせる種類のものであり今聞くのは不味い気がしたのだ。
 拍子抜けしたらしいルイズが「いいけどね」と説明したところによると魔法使いというかメイジのレベルの高さのことらしい。
「例えばね? 『土』系統の魔法はそれ単体でも使えるけど、『火』の系統を足せば、さらに強力な呪文になるの」
「へー」
「『火』『土』のように、二系統を足せるのが、『ライン』メイジ。シュヴルーズ先生みたいに、『土』『土』『火』、三つ足せるのが『トライアングル』メイジ」
「同じのを足して意味があるわけ?」
「その系統がより強力になるわ」
 なるほど、ということはシュヴルーズ先生は簡単に言ってレベル3というわけだ。
 あれ? ずいぶんと低くないかしら。もしかしたら足せる系統が一つ違うだけで使える魔法に大きな差が出て、最高レベルが『スクウェア』だったりするのかもしれないけど。
 そう思って聞いてみたところ、実際失われた虚無などの例外を除けば『スクウェア』が最高とされているらしい。ということは、ここの生徒は大抵が一つの系統だけが使えて、たまに二系統を足せる者がいるというところだろう。
 とりあえず好奇心は満たせたし、ルイズの気もまぎれたようなので本命の質問をしよう。
「話は変わるけど、学院長って簡単に会えるものなのかしら?」
「え? なんで学院長に会わなきゃいけないの?」
 何故も何も、もちろん私が元の世界に帰る方法を知っているか聞くためである。
 そう言うと嫌な顔をされた。
「まだ、そんなことを言ってるの!?」
 いつまでだって言うわよ。そもそも使い魔の召喚は進級に必要なだけだという話なんだし、進級してしまえばいなくなっても困らないはずだ。
 それに人間の使い魔に不満があるのだから私が帰ったら新しい使い魔を召喚するという手もあるだろう。
 だけど私の考えは甘かったようだ。なんでも先に呼び出した使い魔が死なない限り新しく召喚はできない。そして、使い魔に逃げられたメイジだなんて恥ずかしい呼び名を受けたくはないとのこと。
 納得のいく意見である。同意する気はにはなれないけれど。
 教室の片付けが終わると昼休み前になっていたので、私は食堂に向かうルイズとすぐに別れて食堂裏の厨房に向かった。
 同じ方向なのだから途中まで一緒に行ってもよかったのだが、教室での平行線の会話のおかげで、それができる精神状態ではなくなっていたのだ。主にルイズが。
 厨房では何人ものコックさんやメイドさんが忙しげに働いており、悪いなと思いつつも朝に知り合ったシエスタというメイドさんに声をかけて賄い食を分けてもらい。給仕の手伝いをすることにした。

「シエスタ」
「はい? どうしました?」
 どうしたも、こうしたもない。食事のお礼に給仕の手伝いをするというのは朝の食事のときに約束をしていた。だから文句はない。しかし……。
「なんでメイド服?」
 そう、今私はシエスタの用意したメイド服に着替えさせられているのだ。
「だって、食堂にあんな汚れた服で入っていくのはよくないでしょう?」
 正論だ。言いたくないし言う気もないが私は三日ほどお風呂に入ってないし着替えてもいない。そんな格好で貴族の子弟のいる食堂にで給仕をするのは問題があるだろう。
 しかし、シエスタの私を見る楽しげな表情には別の意図がある気がしてならないのは何故だろう。着ていた服も「洗濯して後で返します」などと言われて没収されたし。
 まあいいか。さっさと終わらせてから服を返してもらおう。
 大きな銀のトレイに乗った食事をテーブルに並べていき、それが終わるとやはり銀のトレイに乗ったデザートの配膳をしていく。その途中誰かがガラスの小瓶が落とすのが視界に入った。
 誰が落としたのかと目を向けるが何人かの少年が談笑していて落とし主の特定は難しい。しかたないなと思いつつ声をかけることにする。
「あなたたち、落し物よ」
 呼びかけると何人かがこちらを見て、その中の1人が小瓶を拾い上げた。
「おお? この香水は、もしや、モンモラシーの香水じゃないのか?」
「そうだ! その鮮やかな紫色は、モンモラシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」
「でも、なんでこんな所に落ちてるんだ?」
「あなたたちが落としたんでしょ。あなたたちの誰が落としたかまでは見てないけど」
 そう言って私は配膳に戻る。これ以上は私には関わりのないないことだ。
 その後、少年達の1人がモンモラシーという少女ともう1人別の少女を二股かけていたことがばれて両方にふられる等の小さな事件があったらしいが、私には関係のない話だった。


 食堂の昼食とデザートの配膳が終わり、ルイズの所に行って授業に付き合う気にもなれなかった私は、昨夜言いつけられた洗濯をすることにした。
 多分そうだろうとは思ったが洗濯板という初めて使う道具をシエスタに借りることになり、ついでに取り返した自分の物とルイズの服を洗濯しながら考える。
 私は、元の世界に帰ることをあきらめるつもりなどなく、そのための方法を探さなくてはいけない。
 ルイズは、知らないと言っていたが教師や学院長ならどうだろう。聞いてみる価値はあるだろうが、貴族の子弟を教育する学院の教師たちがどこの馬の骨とも知れない平民の、しかも使い魔という身分の私の言うことをまともに聞いてくれるのだろうか。
 一番いいのは、ルイズの伝手で学院長の協力を取り付けて教師たちの話を聞く事だったのだけど、お昼前の様子から考えてルイズの協力は期待できそうにない。
 私が帰る方法を探す手伝いをしてくれる約束で使い魔になることを引き受けたはずなのだが、そんな約束は忘れてしまったのか最初から守る気はなかったのか、できれば前者であることを願いたいが、どちらにせよ彼女の協力は期待できない。
 では、どうすればいいのか。この学院を出て行って、1人で探すのも選択肢としてはあるが、右も左も分からない異世界で闇雲に行動する方が、この学院でどうにかして教師に聞いて回るより効率がいいかというと首を傾げるしかない。

「まったく、どうしたらいいのかしらね」
 ぼやきながらも洗濯を終わらせ、次はルイズの部屋の掃除でもしようかと考えていたところで、見覚えのある頭。もとい顔の男性を見かけた。
「確かコルベール先生だったかしら」
 呟いたその声が聞こえたのか、男性はこちらに気づいたらしく私に話しかけてきた。
「やあ使い魔くん。何をしているのかね?」
「雑用です。あと、できれば名前で呼んでください」
「わかった。それで君の名前は、えーと……」
「小山内梢子。梢子でいいです」
「わかった。ショウコくんだね。私はジャン・コルベールだ」
 知ってます。とは言わず、少し話をした。
 昨日の印象としては、教師という職業をただの仕事だと割り切ったあまり褒められない人格の持ち主だったけど、面と向かって話してみると気さくないい人だったらしい。人とは分からないものだ。
 最初はやたらと、私の左手のルーンを気にしていたようだけど、つい私が異世界の人間だと口を滑らしてしまい、元の世界の事を話すと非常に興味をもったらしく色々と突っ込んで聞かれてしまった。
 もちろん、一言も嘘は吐かなかったのだけど、こんな荒唐無稽な話を簡単に信じられると少し心配になる。
 一通り質問が終わった後、満足したらしいコルベール先生に帰る方法がないか尋ねてみたところ、自分は知らないし他の教師も知らないだろう。知っているとしたら学院長のオールド・オスマンくらいのものだろう。とのこと。
 ご機嫌なコルベール先生は、今度このことを学院長に尋ねておくと約束して、去っていった。本当にいい人だ。
 さて、ルイズの部屋の掃除に行くか。



 使い魔の朝は早い。のかどうかは知らないけど、私の朝は学院の使用人と同じくらいには早いようだ。
 着替えて部屋を出ると隣室のシエスタも同じタイミングで部屋を出てきたので朝の挨拶をすると、やっぱりメイド服がよく似合うと褒められた。喜ぶべきなのだろうか?
 そして、私はルイズの部屋に向かう。
 何故ルイズの部屋で寝泊りしていないのかというと、一昨日ルイズを怒らせ夜は床で寝るように言われた私は、一日や二日ならともかく毎日床で寝ていては体調を崩すと考え、翌日である昨日、食堂での配膳の手伝いの時にシエスタに相談した結果こうなったのだ。
 ちなみに許可はコルベール先生が取ってくれた。本当にいい人だ。
 寝起きのよろしくないらしいルイズを起こし、着替えさせたら食堂の配膳の手伝いに行く。その際、「私の使い魔のクセに勝手な事ばかりしないでよ」と文句を言われたりもするが気にしない。
 配膳が終わると賄い食を貰い朝食を摂る。食事が終わったら食器の片づけなのだが食べ残しが多く配膳よりも疲れる。毎朝これだというのだから、貴族というものはよほど裕福なのだろう。
 食器洗い、清掃、テーブルの布巾がけが終わるとルイズの部屋に行き彼女の脱ぎ散らかした服を集め、他の学院生徒の服を洗濯しているメイドたちに合流。自分が昨日着ていた服の洗濯も終わったらメイドたちの手伝い。
それが終わると部屋の掃除。終わったらまた食堂に行き昼食の準備。完全に使用人である。使い魔は主と行動を共にするものらしいが、私の知ったことではない。
 お昼過ぎになると時間ができるので壊れた掃除用具で作った棒で素振り打ち込みを始める。本当はランニングもしておきたいのだが、授業の邪魔になりそうだしルイズが五月蝿いのでやめておく。
 学院生徒たちの午後の授業が終わる時間に間に合うように、汗をかいた服を着替え図書館に行くと青みがかかった髪の眼鏡をかけた少女が黙々と本を読んでいる。
 私は、このタバサという名のルイズのクラスメイトにこの世界の文字を教わっている。
 出会ったきっかけは、食堂ではしばみ草という野菜をもきゅもきゅ食べているのが面白くて多めに配膳したところ私の顔を覚えてくれたらしく、
その後元の世界に帰る手がかりはないかと図書館に行ったものの文字が読めなくて困っていたところに本を借りに来た彼女がやってきて教えてくれる約束をしたわけなのだ。
 話は通じるのに文字は読めないなんておかしな話だ。
 ちなみに学院長にはまだまだ会えそうにない。コルベール先生に頼んで二日しか経ってないのだから当然なのだけど。

 時間を忘れて読み書きに没頭していると誰かが図書館に入ってくる気配を感じた。
「あら。タバサったらヴァリエールの使い魔なんかと何してるの?」
 覚えのある声に振り向くと覚えのある顔がある。ルイズの喧嘩友達(?)のキュルケだ。ルイズとは違った意味で、キュルケと正反対のタバサとは仲がいいらしい。
 タバサに事情を聞くとキュルケは呆れた顔で「そんなのルイズに教えてもらえばいいじゃない」と言ってきた。
 もっともな話ね。ルイズが平民で勝手な事ばかりする使い魔を面白く思っていないという事実がなければ私もそうしている。
 そのことを伝えたら、キュルケは「大変ね」と苦笑交じりに言ってきた。はて、大変なのは私なのかルイズなのか。
「なんなら、ルイズの使い魔なんて辞めてあたしの所で働かない?」
「気持ちだけ頂いておくわ」
 本気かどうか分からない申し出に断りを入れる。別にルイズの使い魔でいたいわけではないが、帰れる方法が分かったらすぐにでも元の世界に帰ろうと思っている私としては、正式に雇ってもらうというのは躊躇われる。
「残念」
 残念そうでもなく笑う。キュルケには人をからかって楽しむ悪癖があるようだが悪い人間ではないようだ。
 タバサともキュルケとも友好的な関係を築けそうだと思ったのだが。
「キュルケなんかと何やってるのよ!」
 非友好的なルイズの怒声が本人とともに図書館に飛び込んできた。
「何をやってようと、あたしたちの自由でしょう」
 たち、を強調するキュルケに沸点の低いルイズは即座に顔を真っ赤にする。
「そんなわけないでしょ! ショウコは、わたしの使い魔なのよ」
 どうしてそうなるんだろう。と思うより先に、ルイズが私の名前を覚えていたことに驚いてしまった。出会って四日目だけど、ルイズが私の名を呼ぶのはこれが始めてだ。
「わたしの使い魔ねぇ」
 バカにするように笑うキュルケ。
「あなたは食事も寝床も与えていないそうじゃない。それでショウコは、自分で働いてるとか。それでよくわたしの使い魔なんて言えるわね」
 なんで、そんなこと知ってるのかしら。私が話したんじゃないんだからルイズもコッチを睨まないで欲しい。
「う、うるさいわね。これは、しつけなんだから口出ししないでちょうだい」
「しつけとか以前の問題でしょ。大体そんな事をしないということを聞かせられないなんて、きちんと契約できてないってことじゃないの? ゼロのルイズ」
 痛いところでも突かれたのだろうか、ルイズは一度黙り込み俯いて、顔を上げると私の腕を掴んで強引に私を図書館から引っ張り出した。
 何がしたいのだろう。そう思っていると。
「あんた、よく棒っきれ振り回してるけど剣が欲しいの!?」
 素振りをしてることを知られていたらしい。別に隠してなかったけど。
「買ってあげるから感謝しなさい。明日は虚無の曜日だから、町に連れて行ってあげる」
 それだけを言うと、1人でさっさと行ってしまった。
 つまり、キュルケに言われたことが気になって主人の義務を果たそうと考えたというところだろうか。首を傾げながら、私は図書館に戻ることにした。何も言わずに部屋に戻ったらタバサに悪いしね。

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