「貴様…『レコン・キスタ』か…。」
ウェールズがゆっくりと地に伏せる。
口からは血を噴き出し、おそらくは助からないであろう状態だ。
ルイズは口を押さえて、その光景を見つめていた。
口からは血を噴き出し、おそらくは助からないであろう状態だ。
ルイズは口を押さえて、その光景を見つめていた。
「三つ目はそう。ウェールズ、お前の命だ。」
冷酷な笑みを浮かべるワルド。
その後、ルイズに向き直り、杖を構えた。
その後、ルイズに向き直り、杖を構えた。
「ワルド…貴方…!」
怒りに身体を震わせるルイズ。
「変わったわね!ワルド!」
「そうかもしれん。だが、ここでそこにいたる経緯を話すつもりは無い。」
「そうかもしれん。だが、ここでそこにいたる経緯を話すつもりは無い。」
杖を掲げ、呪文を詠唱し始めるワルド。
その様子をキッと睨み返すルイズ。
見上げた精神力だ、と内心感心するワルド。
だが、情けはかけない。
その様子をキッと睨み返すルイズ。
見上げた精神力だ、と内心感心するワルド。
だが、情けはかけない。
「これはゲームだ。拷問ではない。苦しくなったら服従しろ。」
「…死んでも、嫌よ。」
「ククク……。ではいくぞぅ。」
「…死んでも、嫌よ。」
「ククク……。ではいくぞぅ。」
風の上級魔法『ライトニング・クラウド』がルイズを襲う。
「ああああああ!!!!!!!!」
身体を雷が貫き、ルイズが絶叫する。
全身の神経が燃えている!目の前がちかちかする!
失いそうになる意識を必死で保ち続けた。
全身の神経が燃えている!目の前がちかちかする!
失いそうになる意識を必死で保ち続けた。
そして、一時の解放。
「どうだ?キクだろう?」
「…。」
「…。」
肩で息をするルイズ。
伏せていた顔を上げ、ワルドを睨む。
伏せていた顔を上げ、ワルドを睨む。
「変態。」
ワルドのこめかみがピクリと動く。
「なかなか強情な奴だな。
…もう一度行こうか?」
…もう一度行こうか?」
悪魔の一言。あれをもう一度なんて気が狂っていると思った。
ワルドがもう一度詠唱する。
ルイズはそれを見ている事しか出来ない。
もう死が見えているというのに恐怖は無く、頭に浮かぶのはあの使い魔の事ばかりであった。
ワルドがもう一度詠唱する。
ルイズはそれを見ている事しか出来ない。
もう死が見えているというのに恐怖は無く、頭に浮かぶのはあの使い魔の事ばかりであった。
もうトリステインについたかな?
元の世界に帰る方法を探してやれなかった。
元の世界に帰る方法を探してやれなかった。
もう一度会いたい。
会えたら昨日の事を謝りたい。
一言言いたい。
ごめん、と。
「死ね!」
ワルドが杖を振り下ろす。身体を先ほどの電撃が貫く。
いや、先ほどの電撃よりも熱い。
意識が遠のいていく。
いや、先ほどの電撃よりも熱い。
意識が遠のいていく。
すると黒い影がワルドを吹き飛ばす。
「すまない、遅くなった。大丈夫か?」
薄れ行く意識の中、その人が誰なのか分かった。
青いバンダナ。無精ひげ。
ソリッドスネーク、その人だった。
青いバンダナ。無精ひげ。
ソリッドスネーク、その人だった。
ワルドがゆっくり起き上がる。
「待っていたよ、ソリッドスネーク!」
嬉しそうに言うが顔は笑っていない。
「来ると思っていた。君はそういう男だ!
…だが、私はワルド。またの名を…」
…だが、私はワルド。またの名を…」
くるりと一回ターン。
「『閃光』のワルドだ。」
何も言わずにソーコムピストルを構えるスネーク。
先手必勝。3発弾丸を頭に撃ち込む。
先手必勝。3発弾丸を頭に撃ち込む。
「!?」
だが、弾はワルドの身体を避ける様に飛んだ。
そう、あの『幸運の女神』ヘレナ・ドルフ・ジャクソンのように。
そう、あの『幸運の女神』ヘレナ・ドルフ・ジャクソンのように。
「それについては研究済みだ。君の攻撃は私に届かん。」
続けて杖を構えたのを見て慌ててルイズを抱え上げ逃げるスネーク。
置き土産としてスタングレネードを置いていく。
後ろを突風が駆け抜け、スタングレネードが炸裂。間一髪だ。
柱の影へ滑り込んだ。
置き土産としてスタングレネードを置いていく。
後ろを突風が駆け抜け、スタングレネードが炸裂。間一髪だ。
柱の影へ滑り込んだ。
「逃げても無駄だ。観念したまえ!」
ワルドを無視し、ルイズを静かに寝そべらせる。
呼吸、心拍の確認―異常なし。生きている。
ほっと一息をつく。
火傷を負っているが、すぐに処置できれば跡が残らずに済むかもしれない。
呼吸、心拍の確認―異常なし。生きている。
ほっと一息をつく。
火傷を負っているが、すぐに処置できれば跡が残らずに済むかもしれない。
柱の影からワルドの様子を伺う。
なにやら呪文を詠唱しているようだ。
周りの埃が舞い上がっているところから、まだ風の障壁は存在するようだ。
この隙に作戦を立て直すスネーク。
なにやら呪文を詠唱しているようだ。
周りの埃が舞い上がっているところから、まだ風の障壁は存在するようだ。
この隙に作戦を立て直すスネーク。
こちらの攻撃は効かない。
手負いのルイズ。
どうにも状況はよくない。
手負いのルイズ。
どうにも状況はよくない。
肩を叩いてルイズを起こす。
「くっ…。」
「大丈夫か?」
「大丈夫か?」
意識を取り戻した。
火傷は痛むようだが、もう大丈夫だ。
火傷は痛むようだが、もう大丈夫だ。
「立てるな?」
ルイズが首肯した。
だが、この状態で戦闘など無理だろう。
ましてや勝利などありえない。
だが、この状態で戦闘など無理だろう。
ましてや勝利などありえない。
「…作戦が決まったぞ。」
これしか手はない。問題はルイズが納得するかだった。
「さあ、かくれんぼは終わりだ!」
ワルドが声高に言う。
ただし、その人数は3人に増えていたが。
ただし、その人数は3人に増えていたが。
「クソッ、奴はニンジャか?」
柱の影で毒づく。
警戒しながら2人がこちらに向かってくる。
三人に増えたのは予想外だが、近寄ってくる事は予想通りだ。
警戒しながら2人がこちらに向かってくる。
三人に増えたのは予想外だが、近寄ってくる事は予想通りだ。
ワルドは魔法を外したくないのだ。
ルイズからの情報で、ワルドは直前に『ライトニング・クラウド』を撃っていると聞いた。
確かかなり強力な呪文のはずだった。
ということは、それだけ魔力の消費が大きい。連発は出来る限り避けたいはずだ。
その結果、一撃を外さないために近寄ってくるのは容易に予想できた。
確かかなり強力な呪文のはずだった。
ということは、それだけ魔力の消費が大きい。連発は出来る限り避けたいはずだ。
その結果、一撃を外さないために近寄ってくるのは容易に予想できた。
だが問題はここからだ。
魔法をどうやって避けるか…。
だが、考える暇はなかった。
ワルドが既にそこまで来ていたのだ。
急いで逆側に走り出す。
魔法をどうやって避けるか…。
だが、考える暇はなかった。
ワルドが既にそこまで来ていたのだ。
急いで逆側に走り出す。
「逃がさん!」
二人のワルドがスネークを追う。
ワルドの注意をひきつけた!これでいい。ルイズから注意をそらすんだ。
ワルドの注意をひきつけた!これでいい。ルイズから注意をそらすんだ。
注意はそらせた。だが、己の身に降りかかる危険については考えがなかった。
ワルドが呪文を詠唱する。
ワルドが呪文を詠唱する。
「まずい…。」
杖が輝く。必殺の『ライトニング・クラウド』だ!
一撃なら耐えてみせると覚悟を決めたその時、背中のおしゃべり魔剣が叫んだ。
一撃なら耐えてみせると覚悟を決めたその時、背中のおしゃべり魔剣が叫んだ。
「相棒、俺を抜け!全部思い出した!」
「何を!?」
「いいから!」
「何を!?」
「いいから!」
時間が無い。
どうせ死ぬなら、デルフに賭けよう。
デルフを構え、雷を迎え撃つ。
流石のスネークも死を覚悟した。だが、その死の瞬間は訪れなかった。
どうせ死ぬなら、デルフに賭けよう。
デルフを構え、雷を迎え撃つ。
流石のスネークも死を覚悟した。だが、その死の瞬間は訪れなかった。
「なんだと!?」
ワルドが驚くのも無理は無い。なんと雷が収束し、デルフに吸い込まれてゆくではないか!
雷を吸収したデルフが光り輝く。
なるほど、これが『魔剣 デルフリンガー』本来の姿か。
雷を吸収したデルフが光り輝く。
なるほど、これが『魔剣 デルフリンガー』本来の姿か。
「ようやく思い出したぜ、相棒!これが俺の本当の姿だ!」
「こういうことは早く言え!」
「しょうがねえだろ!忘れてたんだ!
でも安心しな相棒!ちゃちな魔法は全部、この俺が吸い込んでやるよ!」
「こういうことは早く言え!」
「しょうがねえだろ!忘れてたんだ!
でも安心しな相棒!ちゃちな魔法は全部、この俺が吸い込んでやるよ!」
形勢逆転か…、いや、大して変わっていない。
ただ魔法が効きにくくなったというだけだ。依然としてワルドが優勢だ。
だが、すでに布石は整えてある。
いつの間にかルイズは隣に来ていた。
これで準備は整った。
ただ魔法が効きにくくなったというだけだ。依然としてワルドが優勢だ。
だが、すでに布石は整えてある。
いつの間にかルイズは隣に来ていた。
これで準備は整った。
後は心理戦だ―
しかけるならデルフの変貌に驚いている今しかない。
「おい、ワルド。おかしいと思わないか?」
「なんだと?」
「なんだと?」
―食いついた。
「俺が何の作戦も無く戻ってくると思ったか?
お前との実力差は分かっている。直前に決闘もしてるからな。」
お前との実力差は分かっている。直前に決闘もしてるからな。」
ワルドの表情が見る見る変わっていく。
そうだ、これでいい。
そうだ、これでいい。
「果たしてそんな俺が味方も引き連れずにもどってくると思うか?」
「だが、そんな味方は見えないが―」
「だが、そんな味方は見えないが―」
そこまで言って急に三人で背中を合わせて周囲を警戒するワルド。
そう、気がついたのだ。姿が見えない敵の可能性に。
そう、気がついたのだ。姿が見えない敵の可能性に。
「そうだ。決闘で見ただろう?『ステルス迷彩』を。」
ルイズならワルドに確実にフーケ戦について話している。
その時ステルス迷彩が話しにかかわってこないはずが無い。
その話を聞いたのなら『ステルス迷彩は能力ではなく貸すことの出来る技術』というのが分かるはずだ。
そうすれば警戒するのは当然。
そこに一発入れてやれば、もう疑いは無くなる。
その時ステルス迷彩が話しにかかわってこないはずが無い。
その話を聞いたのなら『ステルス迷彩は能力ではなく貸すことの出来る技術』というのが分かるはずだ。
そうすれば警戒するのは当然。
そこに一発入れてやれば、もう疑いは無くなる。
「そぉーら!」
背中に回した右手でC4の起爆スイッチを押した。
壁が吹き飛び、石が崩れだす。
三人が同時にそっちを向いた。
すかさずスタングレネード。
はめられた事に気がついた三人が振り向いたときにはスネークとルイズは出口に走り出していた。
三人が同時にそっちを向いた。
すかさずスタングレネード。
はめられた事に気がついた三人が振り向いたときにはスネークとルイズは出口に走り出していた。
スネークの背後で炸裂する閃光音響手榴弾。
目と耳をやられたワルドは只自分の周りに風の障壁を展開する事しか出来なかった。
目と耳をやられたワルドは只自分の周りに風の障壁を展開する事しか出来なかった。
出口をくぐり、廊下を走る二人。
曲がり角を曲がってすぐ、
曲がり角を曲がってすぐ、
「伏せろ!」
もう一度C4の起爆スイッチを押した。
あらかじめ入り口に仕掛けておいたC4が爆発し、入り口を瓦礫がふさいだ。
あらかじめ入り口に仕掛けておいたC4が爆発し、入り口を瓦礫がふさいだ。
崩れ落ちた通路を見て、大きなため息をつくふたり。
「「助かった。」」
そんな言葉が自然と二人の口をついて出た。