あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第1話


 第1話

 あたたかい、やみのなかを、わたしはただよっていた。
 あたたかな、やみわだのなかを、わしたちはただよっていた。
 そう、私たちだったーーー
 だけど、繋いだてのひらの感触はいつしか消えて、私は1人でここにいた。



「あんた誰?」
 抜けるような青い空の下、草原の中出会い頭に、私より少し年下だろう桃色がかったブロンドの髪の少女が尋ねてきた。というかどこかしら、ここは。
 そう思いつつも、とりあえず私は名乗ることにする。
「青城女学院剣道部部長、小山内梢子だけど……」
「セイジョウ? 何よソレ。平民が通う学院なんて聞いたことないわよ」
 そんな事を言われても困る。というか平民?
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
 今度は、そんな言葉と笑い声が聞こえてきた。
 よく見ると、目の前にいる少女以外にも同じくらいの年恰好の少年少女が何人もいるようだ。
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
 ルイズと言うらしい、目の前の少女がムキになって言い返している。
「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」
「さすがはゼロのルイズだ!」
 今度は爆笑。
 どうも、このルイズという少女が笑いものにされているようだが、何故なのかは分からない。というか何がどうなっているのか誰か説明して欲しい。
「ミスタ・コルベール!」
 ルイズの怒鳴るような声に、少年少女達の中から御伽噺の魔法使いのような格好の年輩の男性が現れた。そういえば周りの子たちは皆どこかの制服らしき服の上にマントを見につけて杖を持っているわね。
「なんだね。ミス・ヴァリエール」
「あの! もう一回召喚させてください!」
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やっているとおりだ」
 いや、だから何の話をしているか説明して欲しいんだけど。と、思ったが二人は私を無視して言い争っており周りに説明をしてくれる人はいないものかと見回したが、周囲のみんなも私を無視して言い争う二人を面白そうに見物している。
 どうしたものかと思っていると、しばらくして話が一段落ついたらしくルイズが呼びかけてきたのでそちらを向く。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 朗々と唱えた言葉と共に私の額に杖を置きルイズはゆっくりと唇を近づけてくる。
 正直なところ私は混乱していたのだろう。何をするでもなく見ている私とルイズの唇は重なり、離れた。そして……。
「つうっ!」
 全身に走る燃えるような熱。
「何よこれっ」
「すぐに終わるわよ。待ってなさいよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」
 だから何なのよ『使い魔のルーン』って。そう言おうと思ったときにはもう熱は引いていて。コルベールと呼ばれている男性が私の左手を取り、いつのまにか左手の甲に浮かんだ不思議な文字を確認する。
「ふむ……、珍しいルーンだな」
 それだけを言うとコルベールさんはきびすを返し。
「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」
 そう言って宙に浮いた。信じ難い話だが本当に魔法使いだったらしい。
 コルベールさんに続き周りの子たちも宙に浮き、少し離れた所にある石造りの建物へ向かって飛んでいき、私とルイズはその後を歩いて追うことになった。
 ここはトリステイン魔法学院。その名の通り入学した生徒に魔法を教える全寮制の学校だという。
 正直、ちょっと前に聞いていれば確実に言った人間の正気を疑っていたところだが、
あいにくとここ数日の間に鬼などという非現実なモノと関わり、海神の住まう宮にて混沌の中に飛び込んだあげく気がついたら見知らぬ地にいて、今は二つの月が浮かぶ夜空を見上げているときては信じざるをえない。
 ちなみに同じように混沌に飛び込んだ少女、ナミも来ていないかと尋ねたのだが、あの草原に現れた人間は私だけとのことで、一度戻ってしばらく探索してみたが確かにナミはいなかった。あと、勝手に動き回るなとルイズに怒られた。
 ルイズの部屋にてテーブルを挟んだ椅子に2人して腰掛け話し合い、ここはいわゆる異世界というものらしいとあたりをつけ、そう言ってみたところ「別の世界なんかあるわけないじゃない」と言われた。
 普通そう考えるでしょうね。とは思ったが、魔法使いなんて普通じゃない人に言われるとは思わなかった。いや、彼女にとっては普通なのかもしれないのだけれど。
 まあ、この際信じてもらえるかどうかはどうでもいい。重要なのは帰れるかどうかである。だから、そのことを尋ねてみたのだが。
「……無理よ。『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけ。使い魔を元に戻す呪文なんて存在しないのよ」
 実に無責任な話である。よく今まで問題が起こらなかったものだ。まあ人間を召喚するような例はなかったとのことだから問題の起こりようがなかったのかもしれないが迷惑な話であることは確かだ。
 もちろん私は帰ることをあきらめるつもりなどない。だから
「ここの学院長にはどこに行けば会えるの?」
 と聞いた。
「会ってどうするのよ?」
 もちろん帰る方法を尋ねるのだ。学院長なり教師の誰かが知っていればよし、知らなければ協力を願うなりここを出て自分で捜すだけである。そう言うと
「馬鹿なこと言わないでよ! あんたは、わたしの使い魔なのよ。勝手に出て行くなんて許さないんだからね!」
 ものすごい剣幕で怒られた。
 しかし、こちらとしては使い魔になるのを同意した覚えなどないのである。私の帰りを待っている人たちもいるし、私と一緒に混沌の渦に飛び込んだナミの事も心配だ。
あるいはこの世界の別の場所で別の人間に召喚されたという事態もありえるのだけれど。
 そう説明したのだが聞き入れるつもりは無いようで、いい加減付き合いきれないと出て行こうとしたところ最初ものすごい剣幕で怒り、そして……泣かせてしまった。
 こうなると私は弱い。そもそも、私を召喚したのはルイズだが責任の所在という意味では、
人間の召喚などという前例のない事態にこれから起こりうる面倒ごとに何一つ対策を採ろうとせず、進級をちらつかせて無理やり契約させて放置したコルベールという教師にこそあるだろう。
 まったく、我ながら甘いなぁと思いつつも私は譲歩することにした。
「……わかったわ。しばらくはあなたの使い魔になってあげる。ただし、私が帰る方法が見つかるまでの間だけね」
「なによそれ」
「別にいいでしょ、それにもし自由に行き帰りができるんなら、またこっちに来て使い魔をしてあげるわよ」
 私としては最大限の譲歩だったのだが、お気に召さなかったらしい。とはいえ、これ以上は譲れない。これが飲めないというのであればやはり勝手に出て行くしかない。
 その想いが通じたのだろうか、ついにルイズが折れた。
「いいわそれで。でも帰る方法が分かってもすぐに帰ったり、何も言わずにいなくなったりしないでよね」
「いいわよ。ところで使い魔って何をするものなの?」
 質問してみたとろ、主人の目となり耳となる。主人の望むもの、例えば秘薬を見つけてくる。そしてもっとも重要な役目として主人を守る。の三つがあるとのこと。
 なんでも、普通、使い魔が見聞きしたものは主人に伝わるものだそうだが、私たちにはそれは適用されないようだ。そして、私には秘薬の知識などなく、守ろうにも魔法使いに害をなす相手というのがどのくらいの実力を持つものなのか分からない現状ではなんとも言い難い。
「……強い幻獣だったら、並大抵の敵には負けないけど、あんたはカラスにも負けそうじゃない」
「いや、カラスに負けるほど弱くはないわよ。それに不満だって言うんなら出て行ってもいいんだけど」
 そう言って出て行くポーズをとるとルイズは焦って私を引きとめ、結局私は洗濯、掃除の雑用をするということに落ち着いた。使い魔というより使用人ね。


 目覚めて最初に目にしたのは、見覚えのない天井と同じベッドで眠る見慣れない少女だった。そういえば、使い魔という名の使用人を務めることになったんだっけ。
 ベッドから降りて深呼吸。さて、本当なら今から洗濯でも始めるところなのかもしれないのだけれど、どこですればいいのか聞いていない。となると。
「ちょっと、起きなさいルイズ。朝よ」
「はえ? って誰よあんた!」
「何言ってるの。昨日あなたが召喚したんでしょうが」
「ああ、使い魔ね。そうね、そうだったわ」
 朝が弱いのか寝ぼけていたらしい。まあ、いいけどね。
 ルイズは、起き上がりあくびをすると、ネグリジェを脱ぎ服を着せるように言ってきた。なんでも、貴族は下僕がいる時は自分で服を着ないのだそうだ。
 そういうものかと了承し、下着から制服まで着せた後、洗濯はどこでやるのか、掃除洗濯の道具はどこにあるのか食事に関してはどうするのかを尋ねたのだが、
どうも前二つに関しては知らないらしい。学院で働いているメイドに聞いて欲しいと言われ食事は食堂を使用するとのことだ。
 食堂は貴族だけが使うための場所ではないのだろうか? そう聞いてみると食堂の裏に厨房があるから、そこでコックかメイドに行って適当に済ませるように言われた。

 部屋を出ると同じようなタイミングで同じような扉を開けて同じような制服を着た赤毛の少女が出てきた。
 背が高く、胸がきついのか別の意図があるのかブラウスのボタンを二つ外し胸元を覗かせたその少女はルイズをみると、にやっと笑った。なんだろう、この既視感。
「おはよう。ルイズ」
「おはよう。キュルケ」
 ルイズが嫌そうな顔で挨拶を返すのは、嫌いな相手だからなのか苦手な相手だからなのか。
「あなたの使い魔って、それ?」
 私を指差して笑った。どうもバカにするのが目的らしい。別にいいんだけど人を指差すなと言いたい。
「『サモン・サーヴァント』で、平民よんじゃうなんて、あなたらしいわ。さすがはゼロのルイズ」
「うるさいわね」
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」
 勝ち誇り「フレイム」と呼ぶとキュルケの部屋から赤くて大きなトカゲが出てきた。というか大きすぎないかしら、虎くらいはあるわよ。尻尾が燃えてるし、この世界はこういう動物が一般的なのかしら?
「おっほっほ! もしかして、あなた、火トカゲを見るのは初めて?」
 物珍しげに見ていたらキュルケが言ってきた。
 もちろん初めてだ。ついでに言えば異世界に来るのも魔法使いを見るのも初めてだけれども、そんな事は口に出さない。
「これって、サラマンダー?」
 悔しそうに尋ねるルイズ。こういうのを召喚したかったのだろう。もっとも私に文句を言われても筋違いなのだけれど。
「そうよー。火トカゲよー。見て? この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? ブランドものよー。好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
 よっぽど嬉しいのか、自慢げにまくし立てているが、なんだか高級品を見せびらかして喜ぶ成金のようでいただけない。
「素敵でしょ。あたしの属性ぴったり」
「あんた『火』属性だもんね」
「ええ。微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」
 得意げに胸を張るキュルケ。そして対抗してささやかな胸を張って見せるルイズ。
 ああ、そうか、このキュルケという少女のルイズへの接し方は、私がこの世界にくる少し前に出会った知人、汀に似ているのだ。となると、汀と話している時の私は、傍から見ると今のルイズのように見えていたのだろうか。
 そんな事を考えていると、キュルケがにっこりと笑って私の名前を尋ねてきたので答えることにする。
「小山内梢子よ」
「オサナイショウコ? ヘンな名前」
「そうかもね」
 なじみのない名前はおかしく聞こえるものだ。日本人の名前が彼女達の聞きなれないものである以上当然のことである。はて? そういえば何故彼女達は日本語で話しているのだろう?
じゃあ、お先に失礼」
 そう言うと、颯爽とキュルケは去っていき。その後を、ちょこちょこと、大きな体に似合わない動きでサラマンダーがついていった。
 そして後には、怒り狂うルイズとそれをなだめる私が残されたのだった。



 ルイズは食堂で、私は厨房で賄い食を貰い、朝食をすませた後、私たちは教室に向かった。
 大学の講義室のような教室に入ると、こちらに気づいた生徒達がくすくす笑い始めた。嫌な空気だが私がどうこう言うことでもない。
 ルイズが席に着くまでに周りを見回したのだが、生徒達は皆使い魔らしき動物をつれており、キュルケのサラマンダーのように見たこともない生き物もいれば、猫やカラスのような私から見て珍しくもない動物もいる。
もしかしたら珍しくない動物の中には、私のように異世界から召喚された生き物もいるのではないのだろうかと思ったが、そうだとしたらどうなるのかというとどうにもならないわけだけれど。
 使い魔用の余分な席など用意されているわけもなくルイズの後ろに立っていると、しばらくして教師なのだろう女性が教室に入ってきた。
 彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑んで言う。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
 そして私に目を留めると「変わった使い魔を召喚したものですね」とルイズを呼んだ。
 特に悪意を感じさせる口調でもなかったが無神経な教師ではある。昨日のコルベールという教師といい、この学院の教師には過度の期待を持ってはいけないようだ。これでは、学院長に帰る方法を聞く以前に会えるかどうかも怪しい。
 なんにしろルイズをバカにして笑う生徒達と、顔を真っ赤にして怒るルイズの口げんかが始まり授業が潰れるのかとも思ったが、両者共にシュヴルーズ先生の魔法で強制的に黙らされて授業が始まった。ところで、魔法で出したらしい机の上の石ころは何かしら。

 曰く、魔法には『火』『水』『土』『風』の四大系統と今は失われた『虚無』の五つの系統があり、その一つ『土』系統は金属の精製、加工から建築まで生活においてもっとも重要な役割を果たしているらしい。
「今から皆さんには『土』系統の魔法を覚えてもらいます。一年生のときにできるようになった人もいるでしょうが、基本は大事です。もう一度、おさらいすることに致します」
 シュヴルーズ先生が石ころに向かって、手に持った小ぶりな杖を振り上げ短い呪文らしき言葉を呟くと石ころが光りだし、光が収まると、そこには輝く金属が転がっていた。
「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・ショヴルーズ!」
 キュルケが身を乗り出している。黄金を作れるのなら無理もないのかな。いや、でも異世界でも金の価値は普遍なのかしら。
「違います。ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの『トライアングル』ですから……」
 はて、『スクウェア』とか『トライアングル』って何のことかしら。そう思ったが生徒でもない私が教師に質問することはできないし、授業中にルイズに話しかけるのもよくない。授業が終わったら聞いてみようかしら。
 シュヴルーズ先生は何人かの生徒を指名して『錬金』をさせていき、何人目かにルイズが指名された。
 指名されたルイズが、何故だか困ったようにもじもじして席を立たないでいると。キュルケがシュヴルーズ先生に言った。
「先生。やめといた方がいいと思いますけど……」
 何故かと問う先生にキュルケは危険だからと答えたが、何が危険なのか私には分からない。それは先生も同じらしくルイズを教えるのは初めてだという彼女はルイズに『錬金』をするように促し。
 やります。と、緊張した顔のルイズはキュルケの制止を無視して先生の所まで行くと、杖を振り上げ呪文を唱え最後に机の上の石ころに杖を振り下ろし。そして石ころは爆発した。
 爆風にルイズと先生は黒板に叩きつけられ、悲鳴があがり驚いた使い魔は暴れだし、キュルケを初めとした何人かの生徒がルイズに文句を言い、煤で顔を真っ黒にし制服をボロボロにしたルイズはしかし何事もなかったようにむくりと立ち上がり言った。
「ちょっと失敗したみたいね」
「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ」
「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないかよ!」
 総ツッコミだ。そして私は魔法とは失敗すると爆発することを知った。

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