あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

鋼の使い魔-01


目を覚ました時、彼は清潔に整えられた一室のベッドに横たわっていた。彼は傷づいていた。深い火傷と、切り傷と、煙を吸って肺を焦がしていたのだ。
しかし、今目を覚ました彼は、自分の体にそのような瑕疵がないことに気付いた。飛び起きる彼はさらに、自分が鎧を脱いでいる事に気付く。
「……此処は……どこだ…」
仕切りの向こうから人が入ってきた。少女一人と、頭髪の薄くなった男性が一人。
「目を覚ましたようですね」
男は彼に話しかけてくる。
「ここはトリステイン魔法学院。貴方はこのミス・ヴァリエールにサモン・サーヴァントでよび出されたのです」

時間は遡る。
トリステイン魔法学院、春の使い魔召喚の儀式。それは二年次に進級する学生達が使い魔を召喚、契約し、自身の魔法属性と専門課程を決める大事な儀式である。
しかし彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、既に使い魔召喚の口上を数十回繰り返していたが、辺りには爆発によって地面に穿たれたクレーターが散見されるばかりで、使い魔に相応しいような生き物は影も見当たらなかった。
「ゼロのルイズは使い魔も召喚できないのか!」
「しょうがないよなぁ、だってゼロのルイズだしさー」
ギャラリーの心無い声にルイズの心は張り裂けそうだった。
杖を握る指が震える。忸怩とした気持ちと絶望が顔を覆う。
生徒たちを見守る役目を受けた教師コルベールは、ルイズを囲む生徒たちを下がらせ、ルイズの傍に立った。
「ミス・ヴァリエール。気負ってはいけませんよ」
「ミスタ・コルベール……」
己の無能に落胆するルイズに、あくまでも優しく、しかし強い心を込めてコルベールは説く。
「使い魔は、主人の半身ともなる大事な友です。そんなにしょげていては、やってきてくれませんよ」
「でも…私は…」
「無心に願いなさい。さすればきっと、始祖ブリミルの導きで、貴方にふさわしい使い魔を呼び寄せることができるはずです」
コルベールの説得にルイズは呼吸を整え、再び杖を掲げた。
「宇宙の果てのどこかにいる……わたしの僕よ。神聖で美しく、そして、強
力な使い魔よ。わたしは心より求め……訴えるわ。我が導きに……答えなさいッ!!」
ルイズは願った。自分にも使い魔を、誰にも侮られない使い魔をください。魔法が使えない私にせめて胸を張れるような使い魔を……。
振り込んだ杖の先の地面が、光を放って爆発する。巻き上がる土煙は、これまでの失敗よりもずっと激しく立ち昇り、広場を包んだ。
「ケホ、ケホ……つ、使い魔は……?」
土煙が収まらないまま、ルイズとコルベールは爆発の中心を覗く。カチャリ、と金属が擦れるような音がする。
徐々に収まっていく土煙の中に倒れていた、一人の男。煤に汚れた金髪と肌、精巧さと合理性を合わせたような見事な鎧をつけた意丈夫の男が、そこに倒れていたのだ。

「私達はひとまず、貴方の体の怪我や火傷を治すために、学院の医療室に運ばせていただきました」
「……」
男は言葉もない。目を芝立たせ、コルベールの説明を聞いていた。
「貴方の意思を聞かずに、コンクラクト・サーヴァントを行わせたことについては、ミス・ヴァリエールに責任はありません。ひとえに教師として私が指示した事です」
コルベールは男の左手に記されたルーンを指す。
「これは使い魔として契約したものに記される使い魔のルーンです。使い魔に関する詳しい話は、そこのミス・ヴァリエール本人に聞くのが良いでしょう」
話を振られたルイズは、コルベールと男の顔を交互に見るが、何を口出していいのかわからず、顔を背けてしまった。
「ひとまず此処は引き払いましょう。身に着けていたものはミス・ヴァリエールの部屋に送らせて頂きました。ではミス・ヴァリエール。私はこれで」

男はルイズにつれられてルイズの部屋に移った。部屋の隅に男が身に着けていた鎧や装飾品、そして「剣の抜かれた鞘」が積まれていた。
男は鞘を手に取りルイズに聞いた。
「これに収まる剣があったはずなんだが、知らないか」
「知らないわよ。あんたが召喚された時、最初から剣なんで入ってなかったわ。あんたが身に着けていたものは、そこにおいてあるので全部よ」
ベッドに腰掛け、男をまじまじと見るルイズ。
「使い魔の契約もしちゃったし、今日からあんたは私の使い魔よまず……」
「月が二つある……」
話を切るように男が呟く。男は窓から見える大小の月を見ていた。
「どうして月が二つあるんだ?変じゃないか」
「何言ってるのよ。月は二つに決まってるじゃない」
そう答えると、男の顔色が変わったのがルイズにも判った。どこか険しい色を含んでいる。
「グラン・タイユという地名を知っているか」
「グラン・タイユ?知らないわね。……何、月も見えないような田舎から来たって言うの?」
「ナ国は?ヤーデ伯というのに聞き覚えは?」
「なにそれ?知らないわ」
ルイズが質問に答える度に、男の顔に何か濃いものが挿していく。
「……アニマと術がわかるか?」
「アニマって何?術って魔法の事でしょ。あんた一体どれだけ田舎者よ」
質問が途切れた。男は座り込んでうつむいてしまったのだ。
「……ちょっと、あんたさっきから質問ばっかりして。なんなのよ……」
ルイズにしてもたまったものでなかった。やっと呼び出した使い魔は、傷だらけの平民で、傷を治してやったら、今度はよく分からないことを色々と聞いてくるのだから。
「……ルイズ、と言ったな、お前」
「お前とは主人に対して失礼ね。ルイズ様、とかご主人様、とかいえないの」
「俺はお前がどんな人間か判らないからな。敬語をつかうべきかどうか知らないね」
とりあえず、と、男は言葉を一旦切る。
「俺は随分と遠くにやってきてしまったらしい。術もない、アニマも知らない。そんな場所があるなんてな……」
「……はぁ、どうしてこんな田舎者を使い魔にさせたのでしょうか。始祖とコルベール先生を恨みます」
ルイズと男はお互いに別々の理由で、どこか悲嘆にくれていたが、ルイズは改めて向き直して、男に話しかけた。


「まぁお互い色々と思うところはあるけど、あんたは、私の、使い魔になったんだから。やるべき事はやってもらわなくちゃいけないのよ」
男もルイズに顔を向けて話を聞く。
「じゃあ、何をすればいいんだ。言っておくけど俺は何もできないぞ」
「使い魔はまず、主人と感覚の共有ができるはずなんだけど……無理みたいね」
みたいだな、と男は相槌。
「次に、使い魔は主人に望むものを見つけてくるのよ。秘薬とかね」
「薬草の類なら知らなくもないが、あんまり当てになりそうにないな」
そう、とルイズが相槌。
「最後に使い魔は主人の身を守るんだけど……鎧と鞘着けてたんだから、腕の覚えはあるんでしょ」
「まぁな。……そうでなければ今まで生きていなかっただろうしな」
「……まぁいいわ。とりあえず私の護衛兼、小間使いとして置いてあげる。ありがたく思いなさい」
ひとまず話すことは話したのでルイズは気持ちの整理がつき始めていた。もう使い魔として契約してしまったのだから、こいつを使いこなさなければならないと、そう腹に決め始めていた。
「……元の場所に帰る方法はないのか?」
「ないわ。サモン・サーヴァントは呼び出すだけ。そもそも人間が召喚されるなんて、今まで聞いたことも無いし」
「でも俺は此処に呼び出された。しかも俺が気を失っている間に、こんなものまでつけて」
左手の甲をルイズに見えるように男は掲げた。
「ぐ……仕方なかったのよ!使い魔召喚を失敗したら、私はここを追い出されてしまうわ。領地に戻されても、お母様やお父様に合わす顔もないし……」
顔を背けてぽつぽつと声にならない呟きが漏れていくルイズ。
「……本当に帰れないのか」
「ええ……やっぱり帰りたいわよね」
「そうだな。向こうにはたくさん、遣り残した事があるんだ」
男の眼は静かに前を見ている。ルイズは少しだけ、そんな男がまぶしい。
「しかし帰れないんじゃ仕方が無いな…。使い魔、やればいいんだろ」
「……そうよ。やってもらわなくちゃ、困るわ」
あくまで男に対し主人として命令する立場に立ちたいルイズはしかし、男が身の処遇に納得してくれたことに安堵したのだった。
「……とりあえず、今日はもう遅いから寝るわ」
ベッドの上で服を脱いで下着姿になったルイズは、男に服を投げつける。
「洗濯物。明日洗っておいて頂戴。後、朝になったら起こしてくれる?」
男は目の前に投げつけられたルイズの服に唖然としていた。
「男に自分の服を洗わせて恥ずかしくないのか?」
「だってあんたは使い魔だもの」
おやすみ、とベッドにもぐりこんだルイズは、気付いたように男を見て、
「そういえば、名前を聞いてなかったわね」
「俺も教えた覚えが無いな」
床に毛布を敷いて寝床を作っていた男も答えた。
「名前は?田舎者でも名前はあるんでしょう?」
ごろりと横になったまま、
「名前か……」
男は自らを名乗った。
「俺の名前は、ギュスターヴ」



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