その日少女が召喚した物は一冊の本だった。得体の知れない革の表紙に得体の知れない金属で箔が押され幾重にも錠が施されたそれなりに体裁の整った本。
ついでに一本巻物が付いており、こちらは読めない文字と意味を成さない魔方陣が書かれていた。
ついでに一本巻物が付いており、こちらは読めない文字と意味を成さない魔方陣が書かれていた。
―――久遠に臥したる閑雅の鵬程―――
浴びせ掛けられる嘲笑と圧し掛かる疲労に再度の召喚をする気力もなく、契約の接吻を少女は本に施す。
一瞬本が光った様見えたが頭を振り、再度本を検分する。しかし外側には契約が成立した証が刻まれた様子はなく、かと言って中は錠が邪魔をし、検められない。
一瞬本が光った様見えたが頭を振り、再度本を検分する。しかし外側には契約が成立した証が刻まれた様子はなく、かと言って中は錠が邪魔をし、検められない。
―――爛れた餓えに身悶える彼の朋輩に―――
音を立て錠が崩れ落ちる。慌て足元を見やると今地面に落ちたはずの其れは既に原型を留めておらず、風に吹かれ消えた。
とまれ中が確認できるとなれば、薄気味悪さを感じつつも少女らしい好奇心と実はそれなりに名のある魔具ではないかと言う期待を顔に浮かべ、表紙を捲る。
とまれ中が確認できるとなれば、薄気味悪さを感じつつも少女らしい好奇心と実はそれなりに名のある魔具ではないかと言う期待を顔に浮かべ、表紙を捲る。
―――それ相応の 代価を―――
見返しを捲り、扉。そこには題名なのだろう、表紙に箔押しで書かれていた文字と同じ物が書かれている。そしてその下、魔方陣の更に下、見覚えのある文字が書かれていた。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、ハルケギニアの文字で確かにそう書かれていた。少女自身の筆跡で。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、ハルケギニアの文字で確かにそう書かれていた。少女自身の筆跡で。
―――代価を―――
そして少女は手に入れた。個々の力は熟練のメイジには及ばないがそれを補い余りある数の使い魔を。
―――濡れそぼう甘露の如き代価を―――
そして少女は失った。いつかは誰かに破られるものだったろうが少なくとも異形によってではないただひとつの純潔を。
宵闇眩燈草紙より『本』を召喚