あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

割れぬなら……-07


レコン・キスタの乱から一ヶ月。

トリステイン魔法学園に、ドスドスと漫画のような擬音と共に廊下を歩く一人の少女が居た。
少女……ルイズは不機嫌だった。
曹操がこの一ヶ月の間一度も姿を見せないからだ。
やれ遠乗りだ、鷹狩りだ、喧嘩だ、泥棒だといって、曹操はあまりルイズと一緒に居る事は少なかった。
少なかったが……流石に一ヶ月も帰らないなんていう事は初めての事だった。

「あらルイズ、ちょうど良かったわ」

角を曲がると、正面にキュルケの姿があった。
ちょうど良かった、こっちも聞きたい事がある。
時々、曹操はルイズを放っておいてキュルケとイチャついていた。
他にもメイドと遠乗りに出かけたり、厨房で鍋を振るっていたり、タバサと本を読んでいたり……
なんだか、さっきよりも眉間に力が入ったような気がした。
ルイズはイラついた感情をそのままに曹操の居場所を尋ねる。

「ソウソウが」「ダーリンが」

ルイズはさらに不機嫌に、キュルケは急にニヤニヤし始めた。

「あらぁ? とうとうルイズもダーリン争奪戦に参戦するつもりだったのかしら?」

「違うわよ!! ご主人さまに連絡も寄越さない駄犬にお灸をすえたいだけ。キュルケみたいな万年発情期とは違うの!」

ガーーーッ、とルイズは野獣のように吠えてみせる。
正直、あまり怖くない。

「連絡も寄越さない? あらあら……ダーリンも罪な人ねぇ。こんなにも恋慕している女を焦らさせるなんて」

「してないったら!」



心底癪に障るキュルケのニヤケ顔を見て、ルイズは自分が敵の術中に堕ちている事を悟る。
深呼吸……少しはマシになった。
とっとと用件だけを聞いてどこかへ行ってしまおう。

「ソウソウはどこ? 知ってるんでしょ?」

「今のダーリン、結構な有名人なのよ。王都じゃ知らない人なんて居ないんだから」

「……で、ソウソウはどこ?」

もうからかえないかと、キュルケは少しふて腐れるも、観念して自分の知っている事を話した。

「何日も前から王都北門警備隊長に任命されて、今だって職務に励んでいる筈よ」

「王都北門警備隊長?」

「それでね、一昨日にデュラン・ド・ラーケン伯爵とかいう人を殴り殺したとかいう噂よ」

「ラーケン伯爵を殴り殺したですってぇ!?」

……その日ルイズは、人間が驚愕で気を失える事を知った。



例の任務の報告を聞いたアンリエッタは、涙を浮かべて歓喜した。
……報酬は無いも同然だったが、密命なので仕方がない。(それはルイズも気にしていない)
それよりも彼女にとっては、ゲルマニア皇帝との婚約が解消された事の方が嬉しかった。
なにしろ、婚約の元凶だった反乱軍が空中分解してしまったのだ。
ゲルマニアの機嫌がほんの少~~~し悪くなるだろうが、たぶん大丈夫だろう。

前回曹操と主従の間柄となったワルドは、そのまま何事も無かったかのようにアンリエッタの元へ戻った。
内通の件がトリステイン本国に伝わる可能性は依然として高かったが、
その時は「戦争に流言はつきものです」とでも言い張るつもりだった。
後日、妙に具体的な内容のワルド内通説がトリステインに流れるのだが、アンリエッタ女王はその噂を真っ向から否定する。

……まあ、そんな事はどうでもいい。

曹操の話をしよう。
レコン・キスタの乱が終結してみると、曹操の名はハルゲニア全土に広まった。
あの日曹操が全軍に与えた衝撃はそう簡単に忘れ去れるものではなく、
またアルビオン軍が反攻作戦に際して、大々的に曹操の名を宣伝した事もその原因の一つである。
(なお、曹操がルイズの使い魔である事を知る者はごく僅かである。
 おそらくはアルビオン軍が意図的にその事実を隠して宣伝したのが理由であろう)
さらにマスメディアの無いこの時代の噂には、必ず尾ひれがつくものである。
その尾ひれの内訳は……あまりにもバカバカしいので割愛するが、
とにかくハルゲニア全土、特にアルビオン国内に多数の曹操信望者が生まれたのだ。
……ただし、逆に曹操を危険視する者も数多く現われ、それが原因で後で苦労する事になる。
その意味では、曹操の風評こそがルイズにとって生涯の敵であったと言えるのだが……それは後々の話である。

曹操はその風評とワルドからの推薦を使い、王都北門警備隊長の職を得た。
爵位を持つ者達から見れば、ハッキリ言って下っ端役人である。
ワルドは「もっと上の位にも就けたのだがね」と、不思議がっていたが、
曹操は何故かこの官職を望んだ。



いろいろな紆余曲折の後、王都北門警備隊長に就任した曹操はすぐに行動を開始した。

『北部城内 夜中禁足 門中沈々 下馬禁刀 騒者打擲』

訳……王都北門は夜中は通行禁止です。
   門を通る際は騒がしくしてはならず、また武器を抜いてはいけません。
   場内で騒ぎを起こした者は棒打ちの刑に処されます。

王都の北部にある全ての城門に、上のような内容の立札が立てられた。
そして数日もしない内に宮中で少なからず発言権を持っていたラーケン伯爵が殴り殺されたのだ。
犯人はわかっている。曹操だ。
原因もわかっている。ラーケンが真夜中に城門を押し通ろうとした事だ。
宮中は大騒ぎになった。
罷免どころか処刑されかねない状況だったが、ワルドやアンリエッタが彼を庇った。
王都の民も大騒ぎをした。
多くの者が王国の権威を笠に威張り散らしていたラーケンを疎ましく感じており、
そういう者達は曹操に喝采を送った。
貴族さえも簡単に殴り殺すのでは、魔法の使えない平民はもっと簡単に殺すだろうと恐れた者もいた。
情けなく命乞いをするラーケンの姿を芝居仕立てにして上演する者まで現れた。
(もちろん、名前や時代などは適当に変えてある)
曹操はアルビオンを救った英雄の風評に加えて、北門の鬼隊長の風評も得たのだ。

そんな大騒ぎの中でも曹操は、顔色一つ変える事無く黙々と職務を遂行していた。
彼の元に桃髪の少女が怒鳴り込んできたのは、ある晴れた日の早朝の事だ。



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