あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-10


 『土くれ』のフーケがおこした破壊の杖盗難事件と、その奪還任務が終わってから1週間ほど。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、つつがなく学院生活を送っていた。

 以前と変わったことと言えば、使い魔召喚の儀から己の従者となった規格外の吸血鬼の存在。
アーカード。殆ど彼女のおかげで、先のフーケ関連の事件も解決したようなものであった。
件の少女は棺に腰掛けながら、手に持った小瓶をゆったりと眺めていた。

「なにそれ?」
アーカードは光が当たって、キラキラと輝く小瓶の中身を見つめながら答える。
「モンモランシーから貰ったポーションだ、試作品らしいがの。ちなみに中身は・・・・・・秘密だ」
秘密と言われ、妙な疎外感にルイズは眉を顰めた。

「そう・・・・・・主人である私にも秘密なの?」
アーカードはルイズへと、その紅い瞳を向ける。
「無論、それは約束だからな」
(使い魔なのに主人に隠しごと・・・・・・っ!?)
そう感情的に思うも、口には出さない。
いらぬ嫉妬をしていると勘繰られるのは、ルイズのプライドが許さなかった。


 そう、意外とアーカードは社交的なのである。
モンモランシーとは一体どこで知り合ったのか。
いつの間にやら秘密を共有し、ポーションまで貰う仲のようである。

 さらに数日前に学院から姿を消したことがあった。
その理由を聞いたところ、タバサと共にサビなんとか村だかに行っていたそうだ。
何をしていたのかはこれまた秘密。タバサに口止めされたらしかった。
こちらの言語体系を覚えてからは、図書館にもよく足を運びタバサから色々お勧めを聞いているようだ。

 コルベールの研究室にも通い、様々な物に触れているようでもある。
学院でも変わり者なコルベールは、奇異な実験をしていると専らの噂である。
しかしアーカードから聞くところによると、その内容の一部は馴染み深いものだとか。

 またフーケの事件以後キュルケとの親交も深まり、夜中に時折部屋に行って話をしているようだった。
酒を酌み交わしながら話す内容とは、500年以上を生きるアーカードの恋愛遍歴だったり・・・・・・。
その豊富な人生経験から、キュルケの悩みや愚痴を聞いてやったりといったものらしい。

 ギーシュに至っては、この前わざわざ部屋にきてアーカードを連れて行った。
アーカードがモンモランシーと繋がりがあることから、色々と相談を受けて助言をしているらしい。
決闘の時の遺恨も特にないようで、長年を生きたアーカードはキュルケ同様、ギーシュにとっても丁度良い相談相手のようである。

 シエスタとか言うメイドのところにも、相変わらずちょこちょこ足を運んでいる。
貴族や平民を問わず人気がある使い魔。とてつもなく強い使い魔。裁縫や料理など大抵のことができる使い魔。
大いなる始祖ブリミルの伝説の使い魔のルーン、ガンダールヴをその左手に宿す使い魔。

 優秀な使い魔を使役することは、そのメイジの実力と言われる。
しかしなまじ人型であるがゆえに、多様な劣等感が芽生えルイズを苛む。
比して駄目メイジな自分が召喚したことに、言葉に出来ないジレンマがルイズを苦悩させた。

 アーカードの主人として、恥ずかしくないメイジとなりたい。
だがその目標はとてつもなく高い。頂上がまるで見えぬ山の麓で足踏みをしているような・・・・・・。
未だにコモンマジックすらまともに唱えられない自分が・・・・・・。
果たして登頂出来るのだろうか、立派なメイジになれるのかどうか・・・・・・。


 ループし続ける頭を止めたのは、コンコンッと扉をノックする音であった。
「・・・・・・?どうぞ」
「失礼するぞい」
部屋に入ってきた客人は、学院長ことオスマンであった。
「オールド・オスマン・・・・・・わざわざどうしたんですか?」
「んむ、ミス・ヴァリエール。ちょっと学院長室に行ってくれんかの」
「はぁ・・・・・・わかりました」

 ルイズは疑問符を浮かべる。
わざわざ本人が自分の部屋にきて、さらに学院長室まで来いとはどういうことなのか。
「二人一緒にの」
ルイズは部屋の扉の前で突っ立っているオスマンをよけて外に出て、アーカードもそれに続いた。
「・・・・・・オールド・オスマン?」
部屋の前から動く気配を見せないオスマンにルイズは声を掛ける。
何を言いたいのかすぐに察したオスマンはすぐに口を開いた。

「ワシには構わんでいいから、学院長室に行ってくれればいいのじゃ」
「お前は来んのか」
と、これはアーカード。
「既に待ち人がいるでの、ワシは話の邪魔になる」

 女子寮にオスマンを残していくのは何となく不安であった。
が、流石にそこまで暴挙には出まいと・・・・・・ルイズとアーカードは学院長室へと向かった。




「ごきげんようルイズ、アーカードさん」
「姫さま!」
「これは姫殿下、ご機嫌麗しゅう」

 学院長室にいた予想外の待ち人にルイズは声を上げる。
アーカードはその突然の来訪者にもさしたる驚きも見せず、優雅に挨拶した。
ルイズはすぐに我に返ると謝罪の言葉を口にした。

「申し訳ありません!お待たせしてしまって・・・・・・」
「そんなことないわルイズ、それよりもありがとう」
アンリエッタは温和な笑みを浮かべると、ルイズの手を取る。
「えっと・・・・・・?」
「フーケを捕らえてくれた件よ。わざわざ志願して引き受けて、立派に解決してくれたと聞いたわ。
 ただその『土くれ』のフーケは、早々に脱走してしまったのだけれど・・・・・・」

「フーケが!?」
「ええ、それも内部の者が手引きした可能性が考えられるの。それで学院にまたやって来る可能性が有ります・・・・・・」
宝物庫にまた侵入するか、或いはお礼参りをしに来るか・・・・・・。
「ふっ、懲りずにまた来訪して来たなら丁重に檻の中へとお帰り頂こう」
アーカードの頼もしい言葉。
確かにこの無敵の吸血鬼がいれば、フーケなど恐るるに足らずとルイズは思う。

「くれぐれも気をつけて下さいね。それはそれとして、本来であればシュヴァリエの称号を授与したいところなんですが・・・・・・。
 色々な事情から規定が変わってしまったので、あなた達の功績に対して報いることが出来ないのです、本当にごめんなさい」

「そんな・・・・・・お気になさらないで下さい」
ルイズはアンリエッタの力になれたことだけで満足であった。
今のルイズに出来ることと言えば、アンリエッタの心労を少しでも減らすことくらいなのだから。
そもシュヴァリエの称号など・・・・・・はっきり言って自分は何もしていないに等しい。


「・・・・・・それで、そんな事を言う為だけにわざわざ来たわけではないのだろう?」
「はい、本当の用件はここからなのです」
脱走話と、お礼と、騎士の称号を授与出来ないことを言う為だけに来るわけもなし。
仮にそれだけ用件であれば、わざわざ人払いをしてまでオスマンを遠ざける必要性もない。

 アンリエッタは少し儚げな表情を浮かべると一呼吸置いて話し出した。
「心から信頼するルイズ、貴方にお願いしたことがあるのです」
「私に出来ることならなんでも仰ってください姫さま、必ずお力になります」
ルイズの言葉の後に、アンリエッタの儚げな表情が・・・・・・物憂げな表情へと変わる。

「近々・・・・・・私は同盟の為にゲルマニアに嫁ぎます。アルビオンと戦う為にはどうしても必要なことなのです」
ルイズは敢えて黙っていた、アンリエッタの瞳に決意が見えたからである。
当然本意ではないことは表情からもありありとわかる。しかし友人としてただ一言確認だけはしたかった。

「それで・・・・・・姫さまはよろしいのですか?」
アンリエッタは口をつぐんだままゆっくりと頷いた。
親愛なる友人の決意を見たルイズに、それ以上言うことはなかった。

「しかし、その婚姻を妨げる・・・・・・とある要因があるのです」
「それを我々に何とかして欲しい、ということか」
腕を組んだアーカードが口を開く。
つまりは内密極秘な厄介事、と言うわけであろう。

「その通りです。アルビオン王家のウェールズ皇太子が持っている手紙を・・・・・・受け取ってきてもらいたいのです」
「ウェールズ様・・・・・・でも確かいま王党派は――――――」

「えぇ、『レコン・キスタ』と名乗っているアルビオン貴族派に王党派はかなり追い詰められています。
 倒れるのは恐らく時間の問題でしょう。とても・・・・・・とても、危険な任務です。
 しかし他に頼める者がいないのです。私が信頼を置ける者達は極一部だけなの、ルイズ・フランソワーズ」


熱狂的再征服(レコン・キスタ)ね・・・・・・ご大層なことだ」
アーカードは嘲笑を含んだように呟く。

 アルビオンにて崩壊を迎えつつある王党派のウェールズ皇太子に謁し、婚姻の妨げ要因たる手紙を受け取る。
然る後、戦線が激化する前にアルビオンから脱出。トリステインまで無事に件の手紙を運ぶ。
手紙の内容は国政を左右しかねないほどのものであり、最悪でも手紙そのものを破棄する必要性がある。
サポートが一人つくらしいが、僅か三人のみで遂行せねばならない任務。

「・・・・・・お願い出来ますか?」
ルイズが一点の曇りも陰りも迷いもなく、アンリエッタの瞳を真摯に見つめ頷く。
アンリエッタは、個人的かつ命の危険もある任務を頼むことに罪悪感を覚えた。
当然この件を伝えると決めた時から思っていたことだが、いざお願いする段に至るとまた重みが違った。
自分の頼みをルイズは断らないだろうと。その想いを半ば確信しながら打算を以て利用したようなもの。
己は卑しい人間だと心底感じる。元は自己の責任であり、国の為とはいえ大切な友人を危険に晒すなど。
しかしそれでも、ルイズしかいないのだ。王宮は信用出来ないものばかり。
そして何よりもフーケの事件を解決したルイズ達であれば・・・・・・。

 そんなアンリエッタの心情とは裏腹に、アーカードの口元は綻んでいた。
『白の国』浮遊大陸アルビオン。大地が浮き漂うなど、元の世界では決してお目にかかれない産物である。
得た知識だけでは決して満たされぬ好奇心に、アーカードの心が素直に躍った。
しかもトラブル満載が予想される任務、素晴らしい闘争にも巡り合えるかも知れない。


 ルイズはアンリエッタから、密書と水のルビーを受け取る。
「それではすぐに出立いたします」
ルイズは深く頭を垂れる。
アンリエッタ姫さまは、自分を信頼し重要な任務を託してくれたのだ。
期待に答えられるよう・・・・・・全身全霊を以て成功させる。そう心に決める。

「ルイズ、くれぐれも気をつけて。母君の指輪が・・・・・・アルビオンに吹く猛き風から、貴方がたを守りますように」




 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは考える。
姫さまが供をつけてくれた人物。それは懐かしい顔であった。
魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ワルド。幼き頃の許婚の相手である。
年は離れているが、それ自体はそんなに珍しいことではない。
――――――憧れの人であった。そんなワルドは10年の歳月でさらに立派になっていた。

 しかも未だ自分を婚約者として見てくれている。実感はないが嬉しくないと言えば嘘になる。
自分は『ゼロ』で、未だに何をやっても上手くいかない女。努力しても一向に魔法も唱えられない。
ちっちゃいし・・・・・・胸もないし・・・・・・そんな女としての魅力が欠けていて、一人じゃ何も出来ない・・・・・・自分。
慕ってくれるのは嬉しいけれど、若くして優秀な子爵のワルドには・・・・・・到底釣り合わない。
複雑な気持ちがルイズの心中を締め付けていた。


 ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは考える。
小さなルイズ、昔の印象からあまり変わってない。でも芯が強くなったと感じる。
今はまだ実力の片鱗すら見えないが、しかし必ず偉大なメイジになる。
なにせ伝説の『ガンダールヴ』を使い魔にしているのだから。
いずれ自分に必要となる・・・・・・その能力を、その力を、是非ともそばに置いておきたい。

 視線を移す。ルイズの使い魔、『ガンダールヴ』を左手に宿すアーカード。
ルイズよりも幼く見える少女。しかし彼女の持つ雰囲気は少女のそれではなかった。
そしてフーケはこの少女にやられたらしい。
脱獄の手引きの為に牢獄へ行くと、膝を抱えてブツブツと「あれは幻なのよ、そうに決まってるわ・・・・・・」などと呟いていた。

 何かあった時のサポートの為に隠れての同行を頼んだが、あんなバケモノと会うなんて二度とごめんと半狂乱気味に叫ばれ断られた。
わけがわからなかった。だがフーケをそれほどまでに恐れさせるほどの人物ということは確かだ。近い内にその実力を確かめておきたい。
計画を実行する上で、障害となる可能性の有る存在を知っておけばイレギュラーも限りなく少なく出来る。
三つある目的を・・・・・・全て滞りなく達成する為、ワルドは頭の中で計画を反芻していた。


 アーカードは考える。
突如現れた男は、主人であるルイズが幼き日に約束を交わした婚約者だそうだ。
婚約者・・・・・・結婚・・・・・・妻・・・・・・思い返す、500年ほど前の自分を。
まだ神という存在を信じていた頃の自分。
愛する妻を失い、闘い、戦い、そして人間を捨て、悪魔となった。

 泣きたくないから鬼になり、化物に成り果て、成って果てる。
人間に倒されなければならない、人間でいる事にいられなかった弱い化け物。
二度と・・・・・・人を愛することなどないと思っていた。
しかし100年ほど前、一人の女性を手に入れる為に英国へと行き・・・・・・人の強さの前に敗れた。

 そしてさらに今は・・・・・・――――――。

 数百年に及ぶ膨大な過去。
今となってはただの思い出の残滓にアーカードは目を閉じる。

 さしあたっては、守るべき者を守ってやらねばならない。
主人であるルイズ・ド・ラ・ヴァリエールを。


 三者三様それぞれの思惑を秘め、一路ルイズ達は港町ラ・ロシェールへと向かう――――――。



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