あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

割れぬなら……-03


「ルイズ、話がある」
未だ熱気冷めやまぬ会議室からルイズが出ると、待ち構えていたかのようにワルドが現れた。
前回描写し忘れたが、居たんだよ。一応。
「どうしたの?」
「姫殿下の手紙は万に一つでもレコン・キスタに奪われるような事になってはならない。だから我々は他の者達とは別のルートで脱出を図るべきだ」
「え? でも他に脱出する方法なんて……」
存在する筈がない。
ルイズはそう言葉を続けようとしたし、実際にニューカッスル城の秘密港を使う以外には脱出経路は存在しなかった。
「あるんだ。実は僕は秘密の抜け道を知っている。少人数しか使えないが、より安全に脱出する事が可能だ」
しかしワルドはそう言い切った。
少し目端が利く者ならばこの嘘を見抜く事もできたかもしれないが、いかんせん当時のルイズには嘘を吐かれた経験が足りなかった。
ワルドを信用しきっていたことも要因としてあった。
「なら、その抜け道を使えばウェールズ殿下やソウソウも脱出できるのでは?」
ルイズはすぐに抜け道を存在するものと考え、2人を助ける方に関心を寄せた。
あるいはその事もワルドの嘘を見抜けなくした要因なのかもしれない。
「いや、彼等はそれを望むまい。それに彼等は明朝、時間を稼ぐためにレコン・キスタと対峙しなければならない。いくらなんでも脱出は不可能だ」
その言葉で、きっとルイズは深い落胆を覚えただろう。
いずれにせよ確かな事は、ルイズはワルドを信じた。
そしてワルドは、手紙を持ったルイズと2人きりになる口実を得たのだ。

その日、ニューカッスル城に残っている人員は大きく分けて3つに別れた。
一つは城から出て、クロムウェルに舌戦を仕掛けるグループ。
一つは場外に出た者達が全滅した場合、籠城して少しでも脱出の時間を稼ぐグループ。
そして残りはアルビオン王国に残っている船『イーグル号』と『マリー・ガーランド』を使い、脱出するグループである。

曹操はウェールズ皇太子と最も忠誠心の厚いメイジ達と共に城を出た。
ルイズとワルド子爵は第1・第2隊が注意を惹きつけている間に脱出を図っている筈である。
ルイズは自らの使い魔を残して脱出するのに不満を感じていたようだが、
手紙を万に一つでもレコン・キスタに渡してはならない事、使い魔は替えがきくが主に替えはきかない事、
そして何より曹操に死ぬ気が全く無い事もあり、しぶしぶと脱出を選んだ。

さて、城外に打って出たアルビオン軍は僅か10騎。
これは全員に馬を行き渡らせるため、失敗しても籠城戦に影響を出さないため、
そして絶対安全とわかっていないとクロムウェルが出てこない可能性があったためである。
対するレコン・キスタ軍は先陣だけで1万。本隊、後詰を合わせると5万を上回る大軍勢であった。
しかしながらその内訳は利を求めてくっついてきた者や、優勢だからと味方になった者、金で雇われた傭兵によって水増しされた数であり、
もしも敵の目の前で総大将を打ち取る事が出来れば、十分に逆転も可能だというのがウェールズの見解である。

先陣を任された者達は、困惑していた。
100倍以上の人数差で城から打って出るというのは、珍しい事だが例が無い訳ではない。
しかしながら、打って出ておいて突撃するでもなく敵を待ち構えるのは流石に想定外であったに違いない。
そんな中、一人の血気盛んな男が飛び出してきた。
それを見るや手柄を奪われまいと雪崩の如く兵達が走り出す。
今度はアルビオン軍が動揺する番である。
クロムウェルが出てくる前に打ち取られては時間稼ぎにすらならない。
「うろたえるな! 必ず止まる! 堂々と胸を張り、眼を逸らすな!」
そんな曹操の一声を聞き、全員の顔色が変わった。
死んで元々だという事もあるが、それ以上に貴族の誇り、最後の精鋭に選ばれた誇りが恐怖心を打ち払った。
ここで頑張る事で救える命があるのだと。
ウェールズ皇太子も我らと同じ恐怖と闘っているのだと。
反乱軍に一泡吹かせるまでは、死んでも死にきれないぞと。
それぞれが自らを叱咤激励じ、大軍に相対した。


レコン・キスタ軍の勢いは、弓矢や魔法の射程距離になる寸前で完全に止まった。
誰だって命は惜しいものだ。
この状況下で一歩も引かずにこちらを睨み続ける者達を見れば、どうしても罠の存在を勘ぐってしまう。
それと同時に先陣の兵達に恐怖心が芽生え始めていた。
「クロムウェル司教に問う! クロムウェル司教はいかなる理由で聖地の奪還を目指しておられるのか?」
その声は先陣の兵全員に響き渡った。
お互いが顔を見合わせ、どうする? と聞きあう。
「クロムウェル司教に問う! クロムウェル司教はいかなる理由で聖地の奪還を目指しておられるのか?」
もう一度同じ声が聞こえた。
こうなってしまうと名も無い一般兵にはどうする事もできない。
先陣を束ねる将もまた、どうするべきか迷い始めた。
その迷いはあっという間に先陣全体を包み込み、それが本隊にまで伝わるのもそう時間はかからなかった。

隊列の崩れた兵達はたちまち元の統制を取り戻し、その中を堂々と歩いてくる男がいた。
その男は煌びやかな衣を纏い、屈強な男達により護られ、大軍を背に立ち止まる。
「私がクロムウェルである!」
そう宣言するや否や、レコン・キスタの軍勢から歓声が沸きあがる。
まるでそれは戦勝祝賀会のようであった。
「クロムウェル司教に問う! クロムウェル司教はいかなる理由で聖地の奪還を目指しておられるのか?」
その歓声が収まった頃を見計らい、曹操が尋ねる。
「汚らわしきエルフ共から聖地を奪い返す事は、このハルゲニアに住む全ての人々にとっての願いである」
「聖地奪還が天下万民の願いだとは初耳だ。司教の深遠なる考えを伺いたい」
ざわ……と、一瞬ではあるがレコン・キスタの軍勢が怯んだ。


戦場から遥か上空、地上から見ればゴマ粒程度にしか見えない位置、雲と雲の切れ目に一匹の竜と一人の少女が居た。
少女の名をタバサ、シルフィードといった。
彼女は地上で余分な荷物を捨てて(『微熱』のあの人と『青銅』のあの人)、レコン・キスタの警戒網を見事にすり抜けてここまでやって来た。
それは多少なりとも危険を伴うやり方であった。
では何故彼女達はそんな危険を冒したのであろうか?
これはルイズもワルドも知らない事だが、曹操はラ・ロシェールの酒場でタバサ達と別れる寸前に、
「2日後の明朝、俺の居場所を捜して来い。そしてためらうことなく俺に対している敵の首をはねよ」
と、ずいぶんと偉そうな口調で指示していた。
しかし3人とも曹操が馬鹿ではない事を知っているため無視する事もできず、合流を急ぐ事となったのである。
さて合流こそ果たせなかったものの、曹操の姿を見つけ、相対している敵が誰かもわかったのだが、タバサはその場から動く事ができなかった。
クロムウェルには多数の護衛が周りを固めている。
何の策も無く突撃するだけでは相討ちすら危うい。
「おねーさま! 南の方角に砂塵が見えるのね。きっともうすぐここの真下を通るわ」
タバサの中で奇襲作戦が現実味を帯びた。


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