あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

割れぬなら……-02


『非情であろうと、邪であろうと、どんな不逞の輩であろうと、どれほどの不仁不孝であろうとかまわない。
 ただ才のみを挙げよ。ただ才があれば用いる』

まだ、一般公開されてはいない。
だがこの文言をそのまま布告すれば、おそらくトリステインを根底から覆しかねない大激震が起こるであろう。
ルイズにはその光景が鮮明に想像できた。
「医はとことん行くぞ」
心労の元凶は実に子供っぽく笑いながら喋り続けていた。
学生の時の自分だったらどう思っていただろうか……そう彼女は考えた。
貴族を馬鹿にするなと言って怒っただろうか? 理想の世界を夢見て賛同しただろうか?
あるいはソウソウの言葉を戯言だと断じて耳を貸さないかもしれない。
どれも今の自分には不可能な事だ。
貴族のために怒れるほど、今の自分は貴族が好きではない。
理想の世界を語るには、今の自分は国の実情を知りすぎた。
戯言だと断じるには、今の自分はソウソウを知りすぎてしまった。
では、今の自分はどうすれば良いのだろうか?


「メイジ頼み秘薬頼みでは莫大な金がかかる上に治療できる数が限られるからな。
 それよりもこれからは後方部隊にひとりこういう薬効に通じている医師を配置するぞ。
 戦場でこの知識を用いれば負傷者や疫病患者の治療は言うに及ばす、兵の疲れを取り除いたり、
 気血を調わせ戦意を促す事もできるようになるだろ。
 それでな、今まで雑用係とみなされてきたものを医局として独立させ、重大な役割と相応の報酬を与えるのだ。
 そうすれば医の地位はおのずと上がって、医の徒は増え、全土の城に医局を整備できるようになる。
 どうだ! 才ひとつで戦が変わり、政が変わるのだぞ!」
どんなに長い時間を費やしたところで、ルイズには答えが見えなかった。
あるいは自分がどんな言葉をかけようとも、ソウソウは『求賢令』を公布するに違いない。
それでも眼をそらすには、この布告が巻き起こすであろう混乱は大きすぎる。
「おい! なぜこの着想に顔を輝かせん?」
「……えっ!? もちろん聞いてたわよ。もちろん。うん」
実にわかりやすい反応であった。
「ルイズ、どこか痛むのか?」
呆けて話を聞いていなかったルイズを、曹操は怒るでもなく叱るでもなく、むしろ彼女の体調の心配を始める。
「別にどこも痛まないわ」
実際どこかが痛むわけではないが、そんな気配りを無視するような返事しかできない自分を、ルイズは呪い殺したくなっていた。
ああ、学生の頃の自分なら、と思う。
学生の頃のソウソウの凄さ、ソウソウの怖さを知らない自分なら……


「敵は舌だ」
空に浮かぶ大陸、アルビオン王国ニューカッスル城の会議室にて、一人の少年がそう断言した。
「……彼は?」
「私の使い魔です。ウェールズ電化……間違えた、殿下」
会議室の動揺をよそに、少年は言葉を続ける。
「クロムウェルの舌が女や金や欲望の全てを引き出すから部下は命を投げ出して戦う。
 だからクロムウェルの能弁を崩せばそれで終わりだ」
「ソウソウ、バカな事を言うのはやめなさい! 相手の総大将がノコノコと最前線に現れる訳がないでしょうが!」
重臣の誰もがあっけにとられる中で、ルイズが大きな声で反論した。
「舌さえひっこ抜けばいい。明日の決戦はまずクロムウェルが正面に出て来るような決戦に持っていくことだ。」
「アンタまさか……この城から打って出ろだなんて言うつもり?」
「できれば、馬があった方がいい」
ざわ、ざわ、と思い出したかのように会議室に動揺が走る。
「ダメよ! いきなり襲いかかってこられたらどうするつもりなの!?」
「少人数を相手に奇襲はない。それに弁舌で人を集めた人間は自分に向けられた弁舌を無視できん」
サーーー……と、ルイズは自分の頭から血が引いていくのを感じていた。
亡命よりも王族らしく死ぬ事を選ぶウェールズに狂気を感じたが、
今この場で会議室中の注目を集める男はさらに危うい事を言っている。
そしてその男は事もあろうに自分の使い魔だ。
「ん? 曹操孟徳を信じないのか?」
さらに会議室の喧騒が広がる。
しかし多数の重臣の中で面と向かって曹操に反論したのはルイズのみであり、
他の者達はむしろ曹操の意見に賛同的ですらあった。
「ただ籠城するよりも、その方が脱出の時間が稼げるかもしれないな」
「敵の注意を正面に引ければ、裏手から船が出ても気づかれぬかもしれませぬ」
「元々勝ち目の無い戦いなんだ、少しでも勝機があるのなら賭けてみようじゃないか」
「この城を落とす事は奴らにとって示威的な要素が強い。クロムウェルを引っ張り出すのも不可能ではない」
重臣達の中から次々と曹操に賛同する者が出てきた。
「決まりだな」
そして今まで沈黙を守っていたウェールズの発言によって、曹操の策を使う事が決まった。



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