あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのTrickster-04


chapter4 ゼロ


「そろそろ起こしてもいいかな」

 結局、昨晩ルイズが寝てからこれまで、ドラコは寝ないで朝が来るのを待っていた。
 とはいっても僅かな時間で、大よそ二時間ほどだったのだ。ドラコにとってそれくらいなら、起きていようが寝ていようが変わらないものである。
 ふと床に乱雑に放置されている、彼女の脱いだ衣服に目がいった。

(……使い魔の仕事ねえ)

 洗濯でもしたほうがいいのだろうか。いや、するべきものなのだろう。
 仕方ないのでワイシャツやショーツを拾い上げる。見た目の割には、凝ったものを穿いているんだな、とドラコは思った。
 そういえば仲間の一人や二人ほども、こういう下着を穿いていた覚えがあるな、と懐かしむように思い出す。まあ洗濯をしたことはさすがに無かったが。
 今頃、どうしているだろうか? 最後に会ったのは蜃気楼の島に行く前である。

「んー、洗濯ってどこでするんだろう?」

 けれども、今更思い出しても仕方がないだろう。部屋を出て廊下を歩き、洗濯場を探す。
 と、廊下の先を歩いているメイドがいた。彼女に尋ねたほうが早いだろうと、ドラコは声を掛ける。

「すみません、洗濯場の場所を教えてほしいのですけれども……」

 声に気付いて振り返ったメイドは、首を傾げてこちらを見た。短めの黒髪がどこか素朴な印象を与えている。
 メイドは一瞬、目を見開いたように見えたが、改めて見たときは表情の変化などはどこにもなかった。

「はい? あ、もしかして、ミス・ヴァリエールの――」
「ええ、ドラコといいます。それで、洗濯場はどこに?」

 こちらです、と言うメイドの後を付いていく。中庭を出て敷地の隅に簡素な水場があった。
 と、ついて行ったのはいいのだが。

(……なんか、見てくるんだけど)

 前を歩くメイドが、先ほどから幾度かこちらを伺ってくる。
 しかし伺うだけで何かを訊ねてくることもしない。ならばと、ドラコもあえて気にしないように勤めて、やがて洗い場へと辿り着いた。

「ここですか? ありがとうございます」

 軽く会釈して、ドラコは水場の前でしゃがみ込んだ。
 この学園の規模にしては小さいほうではないのだろうか、と思わせるほど水場は簡素なものだった。
 隣に案内してくれたメイドが立ち膝で座り、同じく洗い場に洗濯物を投げ込む。

「――――はぁ」

 と、メイドの口からため息が漏れた。
 ショーツを手で洗いながら、首を傾げてドラコはその様子を見るが、対してメイドはそんなドラコをついには凝視し始めた。
 今度は困惑の表情を浮かべながら、ドラコは首を傾げる。

「ど、どうしました?」
「ステキ……ですね」

 ふとドラコの視線が、改めて手に持っているルイズのショーツに向いた。やはり女の子は、こういうものに少なからず興味があるのだろうか。
 とはいっても、ドラコにはいまいち理解できないのだが。

「この下着がですか?」

 ということなので、ルイズの下着のどこがいいのか訊ねてみた。別段どうこうしようなどという興味はドラコにはないのだが。
 カバリア島にいる仲間でも、好き好んでレース付きやら、無駄に生地が薄いショーツを穿いている仲間もいた。


「いえ……あなたが――」
「あ、ボクですか。 って、え?」

 ドラコは、ぼうっとしたメイドの表情を怪訝そうに見た。
 とは言うものの、仕方が無いことだった。
 濃い青色の髪が腰まで流れるように伸びているドラコの髪は、綺麗、と言い表すには少しばかり足りなく、美しいものだ。
 それに相まって、顔立ちは冷静さを漂わせながらも可愛げのある、可憐な表情が映えている。

「……ありがとうございます。ところで、お名前は? ボクはドラコといいます」

 話が変な方向に流れる前に、とドラコは話題を切り替える。
 ハッと表情を戻したメイドは、手を休めないまま軽く会釈した。

「すみません、挨拶がまだでしたね。私はシエスタと申します」

 よろしくお願いします。そのドラコの一言で、辺りは静寂を取り戻した。
 元々洗い物はルイズが昨日身につけていたものだけだったので、ドラコは手早く終わらせると、シエスタに会釈をして部屋へと戻る。
 静かにドアを開けて、部屋の様子を窺う。
 部屋の中に日の光が差し込んでいるが、静まり返ったその空間は薄暗さを感じさせる。

「ルイズさん、起きてください」

 ベッドで静かに寝息を立てているルイズの肩を揺さぶる。
 程なくして彼女の瞼がぴくりと動くと、気だるそうにゆっくりと持ち上がった。
 そして、ドラコと目が合うなり、ルイズは声を上げた。

「あ、アンタ誰!?」
「ドラコですよ? どうかしましたか?」

 聞いたことのある名前に、ルイズはああ、と呻く。
 すっかり忘れていたのだ。自分が使い魔を呼び出したということを。実際には使い魔にはなっていないのだが。

「そっか、私……昨日使い魔を呼び出して――」

 笑顔でドラコはその後に続いた。

「はい、臨時の使い魔です」

 その言葉に、ルイズの口から耳を劈くような声が上げられた。
 突然のことだったので、驚きながらドラコは耳を塞ぐが、直後にルイズに詰め寄られる。

「あんた、まだ私と契約してないじゃない! さっさとコントラクト・サーヴァントを済まさないとダメじゃない!」
「だ、だからそれはお断りしたじゃないですか。ルイズさんだって納得しましたよね?」

 ドラコに言われて、ルイズはぽかんとしたような表情を浮かべた。
 そして思い出したかのように何度か頷き、不満気な表情を見せる。

「……そうだったわね。まあいいわ、とりあえず着替えるから手伝いなさい」

 ルイズはドラコの目の前でネグリジェを脱ぎ捨てる。
 見てはいけないだろう、とドラコは思いながら背中を向けるが、ルイズの手が伸びて遮られる。

「手伝いなさい」

 低い声で言われ、渋々ドラコはルイズの指示通りに下着とワイシャツ、制服を彼女に渡す。
 袖を通せ、と言われて目を丸くしたが、この世界ではそんなものなのだろう、とドラコは割り切って黙ることにした。
 着替えが済むと、ルイズは唐突に部屋のドアを開けた。

「朝食の時間よ。ついてきなさい」


 なんとも愛想の悪い。ドラコの頭の中にはその言葉しか浮かばなかった。
 勝手に他人を使い魔にしようとし、手伝って貰って着替えを済ませる。ハルゲニアの常識に疎いのは仕方が無いとしても、それは人間としてどうなのか、とドラコは思う。
 しかし、そんな彼女にも慣れるしかないのだろう。少なくとも学院にいる間は世話になるしかないのだ。

「食事はどこで済ませるんですか?」
「食堂があるわ。生徒はみんなそこに行くのよ」

 軽く言葉を交わしながら廊下を歩く。
 その最中で、一人の女生徒がルイズに声を掛けてきた。

「あらルイズ、おはよう」
「おはようキュルケ」

 仏頂面でルイズは挨拶を返すが、当のキュルケの視線は彼女ではなくドラコに向けられていた。

「へえ、これがあなたの使い魔ねえ……」

 “これ”という言葉に苦笑するドラコだったが、対してキュルケは難しそうな表情を浮かべている。
 首を傾げながらドラコは訊ねた。

「あの、どうかしましたか?」

 聞いてる身の気持ちを落ち着かせるような声。首を傾げたときに揺れる長髪。幼さが残っているが、人を惹きつける容姿。
 ドラコの姿をまじまじと見て、キュルケは視線を逸らした。

「け、結構綺麗な使い魔ね。ゼロのルイズとは大違いだこと」
「誰がゼロよ!」
「しかも、耳と尻尾……って尻尾!? こ、この子ホントに人間?」

 次に冷や汗を垂れ流していた。ルイズも昨晩、自身が同じような反応をしたのを思い出して、キュルケの驚いている姿がバカらしく見えていた。

「あ、これ飾りなんですよ。ボクの住んでた島では、こうやって動物の耳と尻尾をつけないと島の滞在を認められないんです」

 一つからかおうかと思った矢先に、ドラコはキュルケに話してしまった。
 それを聞いて、キュルケはルイズを見る。
 少しの間を置いたあと、キュルケの鼻が笑った。

「ルイズ、いくら平民を使い魔にしたからって、そんな物珍しいファッションなんてさせなくてもいいんだから」
「誰もそんなことさせないわよ!!」

 割れんばかりのルイズの声が近くで響く。キュルケは軽く手を振りながらそれを流すと、自身の足元を目を向けた。

「まあ、別にあなたに用事があるわけじゃないのよ。ただ私の使い魔を紹介しようと思って」

 のそっ、と思い足取りでキュルケの背後から現れた生物に、ルイズは目を見開く。
 その隣でドラコとは、もの珍しそうな表情を浮かべた。

「サラマンダーのフレイムよ。ブランド物だし、結構高価なのよ?」
「うぐぐ~……」

 使い魔の差を見せ付けられて、ルイズは歯軋りをする。それに合わせて羨ましそうにフレイムを見ていた。
 と、突然ドラコがフレイムを抱きかかえた。

「ちょ、ちょっとあんた、何やってんのよ!!」
「こんなちっちゃいサラマンダーって、いるんですねー。結構可愛いです」

 カバリア島最大の難所、タバスコ火山に生息するサラマンダー種との違い、随分と可愛らしい外見をしたキュルケのサラマンダーに、ドラコはきゃあきゃあと騒ぎながら抱きかかえた。

「火傷したらどうするのよ!」
「全然平気ですよ。この子なら可愛いくらいです」

 何気なくカバリア島のことを思い出させるような生き物で、ドラコはついフレイムの頭を撫でてしまう。
 フレイムも大人しくドラコに何度か撫でられたが、解放された途端にキュルケの足元に戻っていく。

「あ、あなた……平民なのにサラマンダーに驚かないの?」

 意外そうにキュルケはドラコを見るが、対してドラコも「何を言っているの?」と言ったような目で彼女を見た。





 食堂に着いたときには、ほとんどの生徒が席に座っていた。
 食卓には朝から色鮮やかな食事が並んでおり、ドラコは感心するどころか胸焼けがしそうになるほどだった。
 ルイズは空いていた手近な席の前に立つ。思い出したかのようにドラコはルイズの前に出て、椅子を引いてやる。

「ふうん、一応そういうことは知ってるのね」

 言いながら着席したルイズの斜め後ろにドラコは立つ。
 ふと、周りの空気の変化に気付いた。
 食堂にいる半数ほどの生徒が、ルイズに視線を集中させていたのだ。

(ルイズさん、学院じゃ結構人気あるのかな?)

 意外だと思いながら、自身にも数人の視線が向けられていることに気付く。
 そして挨拶代わりに無言で会釈をすると、見事に全員の視線がテーブルに戻っていった。

「あんたにも食事を用意したわ。そこにあるから食べなさい」

 ルイズの言葉と、指された指を見てふと視線を落とす。
 見るとテーブルに乗せられてある豪華な食器とは違い、欠けた部分が数箇所もある皿が。
 そしてその上にパンが一つだけ乗せられてあった。

「ボクの食事ですか?」

 そうよ、とルイズは勝ち誇ったかのような表情を見せる。
 なんとも分かりやすい、とドラコは思った。つまりこれが使い魔と主人の差、ということなのだろう。
 彼女はそれを自分に最も簡単に、尚且つ身を持って知る方法を取ったということだ。

「ありがとうございます。せっかくですので、遠慮なく頂きますね」

 だが相手が悪い、としか言えなかった。実際には言えないのだが。
 カバリア島にいた頃は冒険の毎日だったため、食事を取らないことが何日も続けてあったことはたくさんある。
 加えて自分は美食家でもなんでもないし、空腹が満たされるのならば別段なんでもよかった。それに基本は食べるほうではなく作るほうに回っていたことが多い。
 ルイズの傍に座り、パンを千切って食べる。正直な感想は硬くて味気ない。それだけだった。
 そして程なくして朝食は終わりを告げた。





 朝食後間もなく、授業が始まるとのことで教室へと向かう。
 ルイズとともに教室に入ると、ドラコは目の前に広がる異様な光景に目を瞬いた。
 目に映る生徒のほとんどが、自分の脇に何かしらの生物を傍においているのだ。形も大小も様々、手のひらサイズから人より大きいものまでいる。

「ゼロのルイズ、召喚に失敗したからって平民を連れてくるなよ!」

 ルイズに対しての暴言が聞こえてきた。失敗したわけではなく、本当に自分は呼ばれたのだから。ドラコは不快に思いながらも、彼女のためにそれを遮るように発言した生徒に声をかけた。

「こんにちは」


 なるべく悟られないように、笑顔で会釈をする。
 その生徒はすんなりと黙り込んだので、よしと心の中で満足した。

「……あんたの声、結構破壊力あるのね」
「はい?」

 そんなドラコに、ルイズは呟くように言う。
 実際、生徒はドラコの声を聞いて黙るしかなかったのだ。平民、と罵った相手がなかなかの美声を持っている。貴族という立場を忘れて、失言したと思ったのである。
 朝食の席でも、生徒はルイズを見ていたのではなくドラコに視線を向けていたのだ。

(魔法の授業かあ。どんなことをするのかな?)

 形態は違えど、自分も魔法を使う。ドラコにとって初めての魔法に関しての授業、というものに非常に興味がある。
 が、それはあっけなく終わりを告げるのだが。
 まず教師――ミス・シュヴルーズが錬金を見せてくれた。
 石から金属、彼女が見せてくれたのは真鍮だったが、カバリア島にはそんな魔法は存在しない。もし存在していたら瞬く間に合成アイテムや装備品の成長合成に浸透していくだろう。

「それでは……ミス・ヴァリエール、こちらに来てやってみてください」

 そこでルイズが指名されたとき、初めてドラコは彼女に期待感を持った。
 この世界の魔法使いの万能さを目の当たりにして、気分が高揚しないほうがおかしいと思う。魔法を使う身だったら誰だって覚えたいだろう。

「先生、ルイズにやらせるのは危ないですわ!」

 と、キュルケが突然の横槍を入れる。シュヴルーズは不思議そうに首を傾げていた。

「錬金に危険も何もありませんよ。ミス・ツェルプストー、座りなさい」

 そのシュヴルーズの台詞を皮切りに、生徒たちがその場から退避しようと教室の後ろにひしめき合った。
 ドラコはルイズの錬金が待ち遠しくて、周囲の状況に気付かないままだが。

「やります!」

 意を決したような声でルイズは立ち上がる。その姿を見て生徒たちはなおも身を震わせたが、彼女はそれを無視して教壇の前に立つ。

「いいですか? 意識を集中させて……」
「ちょっとそこのゼロの使い魔さん! あなたも逃げたほうがいいわ」

 シュヴルーズがルイズに指導をしている中、キュルケはドラコに声を掛ける。
 が、ドラコの耳に届いてなく、偽物の龍の耳がぴょこぴょこと、ルイズの魔法が待ち遠しいと言わんばかりに動いている。

「あの人……死ぬ」

 キュルケの足元に座っていた少女――タバサが縁起でもないことをぼそりと呟く。
 それを聞いてさらに冷や汗を流したキュルケだが、ルイズが杖を振り上げた動作を見て諦めてしまった。

「もう――」

 キュルケの言葉は、直後に発生した轟音と爆発でかき消されてしまった。
 教室中の机の大半が粉々に吹き飛び、衝撃で窓が割れる。
 驚いたドラコだったが、ルイズの周囲に起こった魔力の変化で危険を察知して、咄嗟に防御盾のライトエレメントを展開していた。
 粉塵で周囲の様子は窺うことが出来なかったが、煙が晴れたときには埃まみれのルイズは立ち尽くしていたので、ドラコはホッとする。

「……ちょっと、失敗したわね」

 短く言う彼女に、大量の罵声が飛ぶ。

「ちょっとどころじゃないだろ!」
「ゼロのルイズが成功した試しってるのか!?」


 かつて教壇であった残骸の近くには、シュヴルーズが大の字に倒れている。気絶しているのだろう。
 こうして授業は終了。ルイズとドラコは罰として教室の後片付けを命じられてしまったのだ。
 初めて見る魔法の授業がこんな形で終わるとは思ってもいなかったドラコは、箒を片手にルイズの様子を窺う。
 平然と彼女は教室の掃除に取り組んでいた。見ていて不自然なくらいに、だ。
 あれだけ失敗したのに、彼女はなんともなく済ませることの出来る人間なのだろうか?
 ドラコが考えていると不意に、ルイズは口を開いた。

「これが、私がゼロって呼ばれてる理由よ」
「ゼロ?」

 そういえば、今朝もキュルケがそんなことを言っていただろうか。教室の生徒も同じことを言っていた覚えがある。

「今までね、一度も魔法が成功したことがないのよ」
「あの魔法も失敗だったんですか?」
「当たり前じゃない。錬金もなにも、魔法を使おうとしたら必ずああやって爆発するのよ」

 仏頂面で言うルイズだが、深く聞いても怒鳴られる気配がない。
 やはり彼女も気にしているのだろう。

「ボクは、凄いと思いましたよ?」

 それでも、深く入り込んでいいかといえば、そんなことは絶対にない。
 ドラコはルイズの視線まで腰を落とし、彼女の目を見る。
 彼女を見るドラコの瞳には、一点の曇りも無い。そこにあるのはただ、穏やかに微笑んでいる表情。
 ルイズの言いたいことは、何となくだが察していた。
 どうして自分をバカにしないのか、貴族の失態を面白く思わないのか、その程度だろう。
 だがドラコにとって、どれも所詮は些細なことだった。

「ルイズさん、上手く出来ないかもって分かってて、それでも頑張ったんですよね? いいじゃないですか、失敗しても」

 その言葉を聞いて、ルイズの表情がみるみるうちに赤くなり、ドラコを怒鳴りつける。

「どれだけ失敗したと思ってるの! 魔法を使えない貴族なんて最低で……そんなに簡単に言わないでよ!」
「何もしないで失敗した人を笑う貴族より、何度も失敗しても頑張り続ける人のほうが、よっぽど貴族らしいと思いますよ」

 ルイズの怒声を受け止めて、ドラコは言う。
 望んでも上手くいかないことを失敗だけで済ませれる人間は少ないだろう。ましてや目の前にいる少女は、この世界で見てきた人の誰よりも感情を表に出す人だ。
 それに、初めは彼女に良い印象を持ってはいなかった。貴族という名を振り回すだけの傲慢な少女だと思っていたが、それは彼女の元の性格ではないのだろう。
 魔法を使えない貴族、そのレッテルが彼女を歪ませたのだろう。そう思うドラコの中で生まれたのはルイズに対しての同情ではなく、親しみだった。

「ボクは、平民も貴族もない世界から来ましたけど、頑張る人は好きですよ」

 ふわりと彼女の頭を抱きかかえる。桃色の髪の毛が乱れないように、ゆっくりとその頭を撫でる。
 最初は肩を強張らせていたルイズだったが、あまりにも突然で反応できなくなったのか、やがてゆっくりと力が抜けていく。
 ――何ら彼女のためになることではないだろう。自分は彼女が望んでいる人間でもない。
 それでもドラコは、ルイズの心が、この一時だけ落ち着いて欲しいと、切に願った。





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