あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ZERO A EVIL-07


次の日の朝、魔法学院は蜂の巣を叩いたような大騒ぎになっていた。
宝物庫の外壁には大穴が空いており、その近くには破壊の杖によって無数の穴が空いたゴーレムの残骸が散らばっていたのだから無理もない。
ルイズ達はその場にいた当事者ということもあり、学院長室に呼び出されていた。

「では、突然巨大な土のゴーレムが現れて宝物庫を襲撃したというのですな」
「はい」
「そして、ミス・ヴァリエールが破壊の杖を使ってゴーレムを倒したと……」
「……はい」

学院長室に気まずい空気が流れる。
盗賊に破壊の杖を盗まれなかったのはよかったが、ゴーレムを倒すために破壊の杖を使ったというのは大いに問題があった。
破壊の杖は王宮から厳重に保管するようにと託されたものだ。いくらゴーレムを倒すためとはいえ、破壊の杖を使ったことが王宮に知られれば唯では済まない。

「これは由々しき事態です。このままでは魔法学院の管理責任にまで問題が発展いたします!」
「気軽に破壊の杖を使うなど、一体どういうつもりかねミス・ヴァリエール!」
「君のした行為は、この魔法学院の名誉を大いに傷付けることになるんだぞ!」

教師達は一斉にルイズを非難し始める。ルイズは唇を噛み締めながら俯くことしかできなかった。

「みなさん待ってください。ミス・ヴァリエールのお陰で破壊の杖を盗賊に盗まれずに済んだんですよ」
「そうですぞ。話を聞く限り、盗賊の正体はあの土くれのフーケに違いありません。フーケの手に破壊の杖が渡れば、それこそ一大事ですぞ」

多くの教師がルイズを非難する中、シュヴルーズとコルベールがルイズに助け舟を出す。
当直だったシュヴルーズは破壊の杖を守ってくれたルイズに感謝していたし、コルベールは生徒に責任を負わせるのを由としなかった。

様々な議論が交わされる中、今まで黙っていたオスマンが重い口を開いた。

「破壊の杖の使用は確かに問題がある。じゃが、ミス・ヴァリエールのお陰で破壊の杖をフーケに奪われずに済んだのも事実じゃ」

オスマンはその場にいる全員を見渡しながら言葉を続ける。

「よって、破壊の杖を使用したことは不問とする。王宮にはミス・ヴァリエールがフーケの襲撃を退けたことだけ伝えればよい」
「し、しかし!」
「問題が起こった場合は、学院長であるわしが全ての責任を取る。それならば文句はあるまい」

学院長であるオスマンにここまで言い切られてしまえば、反論できる教師がいるわけもなかった。
「ところで、ミス・ロングビルの姿が見当たらんようじゃが」
「あ! オールド・オスマン、実は……」

ルイズがオスマンにフーケの正体を話そうとした時、学院長室の扉が開いた。

「遅れて申し訳ありません。朝から盗賊の足取りを調査していたんですが、時間がかかってしまいました」

学院長室に現れたのは、ルイズが話そうとしたフーケの正体であるロングビルだった。
驚いたルイズは何も言えなくなってしまう。まさか、ロングビルが魔法学院に戻ってくるとは思ってもいなかったのである。

「さすがミス・ロングビル。仕事が速いの」
「ありがとうございます。調査の結果ですが、黒いローブ姿の人影が魔法学院の方角から逃げ去って行くのを多くの農民が目撃しています」
「ふむ。宝物庫の襲撃に失敗したので慌てて逃走したようじゃな」
「ええ、そのようです」

ルイズは淡々と嘘の報告をするロングビルに唖然としていたが、すぐに気を取り直し、オスマンに真実を話そうとする。
その時、ロングビルがルイズの方に顔を向けた。不敵な笑みを浮かべてルイズを見ている姿は余裕すら感じさせる。
その顔を見た時、ルイズは悟った。今、自分がフーケの正体をばらしても信じてもらえないということに。
フーケの顔を見たのはルイズだけであり、破壊の杖の使用でルイズの立場は悪くなっている。
ここでフーケの正体を言い出せば、教師達から反論が来るのは目に見えている。それでは、オスマンが鎮めてくれた場を再び乱すことになる。
そう考えたルイズは黙っていることにした。あとでオスマンにだけ報告しようと思ったのである。

「時に、ミス・ロングビル。その顔はどうしたのかね? 少し腫れているようじゃが」
「これは少しぶつけただけですわ。たいしたことはありません」

これも、もちろん嘘である。本当はルイズに蹴られたせいで顔が赤く腫れていたのだ。

「それはよかった、お大事にの。さて、話はこれでおしまいじゃ。これからフリッグの舞踏会の準備もせにゃならんからの」
「では、王宮に提出する書類はわたくしの方で用意いたしますわ」
「うむ。よろしく頼むぞ、ミス・ロングビル」

話が終わったのを見計らい、教師達が学院長室を退出していく。ルイズ達も出て行こうとすると、ロングビルが話しかけてきた。

「ミス・ヴァリエール。詳しい話を聞きたいので、私の部屋まで来てくれませんか?」
「ここで話をすればいいんじゃないですか」
「オールド・オスマンはフリッグの舞踏会の打ち合わせで忙しいようですし、邪魔になっては悪いですから」

どうやら、どうしてもルイズと二人きりで話がしたいらしい。

「ルイズ様……」
「心配しなくても大丈夫よ。すぐに終わるから」

そう言うとルイズはシエスタ達と別れて、ロングビルの後に続いて歩き始める。
部屋に着き、ルイズが部屋に入ったのを確認したロングビルはすぐに鍵を閉めルイズと向かい合った。
ルイズに緊張が走る。ここで自分の口を封じに来るとは思えないが、いざという時のために杖を手に取っておく。

「そう警戒しなくてもいいよ。今すぐあんたをどうこうしようとは思ってないから」
「一体何しに戻ってきたのよ」
「そうだね。この顔の借りを返しにきたと言ったら信じるかい」

そう言われてルイズは身構える。痛々しく腫れている顔を見れば、冗談とも思えなかった。

「本気にしたかい? そんなことで戻ってくるほど私は暇人じゃないよ」
「じゃあどうしてなの?」
「正直に言うとしばらく雲隠れするためだね。最近派手にやりすぎたせいで仕事もやりにくくなってきたし、今回の失敗はちょうどいい機会だよ」
「私がそれを信じると思う」

確かにこのまま学院長の秘書を続けていれば、フーケだと疑われることはないだろう。
しかし、土くれのフーケと呼ばれトリステインを荒らし回った盗賊が、一度の失敗で諦めるとはルイズには思えなかった。
だが、ロングビルは余裕の笑みを浮かべている。まるでルイズが絶対に信じると思っているかのように。

「信じるさ。あんたの大事なメイドが痛い目を見るのは嫌だろう」
「なっ!」
「私の使い魔があのメイドを監視しているのさ。何かあった時はすぐに行動に移れるようにね」

これは嘘である。だが、これでルイズが自分の正体をばらすことはほぼ無いと考えていた。
あのメイドはこの少女にとって大切な存在のはずである。ここで脅しをかけておけば、素直に従うと思っていた。
その考えは当たっていたが、ルイズの反応は予想を上回るものだった。

「シエスタに手を出してみなさい!! 絶対にあなたを許さないわ!!」

そう言ってルイズはロングビルを睨みつける。その時、左手のルーンが光を放つと同時に青白いオーラがルイズの左手を包み込んだ。
手に青白いオーラを溜めて、相手に拳を繰り出す技である「狂狼拳」。
夢の中で武道家だったルイズが接近戦の際に使っていた技だった。

そのルイズの様子を見たロングビルは少し慌てるが、すぐに冷静さを取り戻す。
シエスタに危害を加えなければ、攻撃を受ける心配はないのだから。

「あんたが余計なことをしなければ、あの子が傷付くこともないんだから安心しな」
「くっ!……わかったわ」

どうやらルイズも落ち着いてきたようで、左手も元に戻っていく。

「その内この魔法学院からは消えるつもりだし、それまで仲良くしようじゃないさ」

もはやルイズは何も言うことができなかった。


夜になり、魔法学院ではフリッグの舞踏会が行われていた。
会場では生徒や教師達が華やかな服装に着替え、それぞれ思い思いの舞踏会を楽しんでいる。
キュルケは多くの男子生徒に囲まれ楽しそうに談笑していたし、タバサは用意された豪華な料理を堪能していた。
ギーシュはモンモランシーと優雅なダンスを踊っている。幸せそうにしている二人は、この舞踏会の主役のようだった。

だが、多くの人が楽しんでいるこの場にルイズの姿は無い。

そのころルイズは、いつもの制服姿で使い魔の石像の前に座っていた。隣には部屋から持ってきたデルフリンガーが置かれている。

「ねえ、デルフ。私の選択は正しかったのかしら」
「相棒にとってメイドの娘っ子は大切な存在なんだろう。なら、その選択は間違っちゃいないと俺は思うぜ」

ルイズはデルフリンガーに今日の出来事を全て話していた。自分一人でこの問題を抱えるのは耐えられそうになかったのだ。
ロングビルもインテリジェンスソードに相談するとは思わないだろうとルイズは考えていた。

「ありがと。……もし、私が他人に認められたいとずっと思い続けてたら、シエスタを犠牲にしてでもフーケを捕まえようとしたのかしらね」
「もしもの話だろ。そんなことは考えない方がいいぜ」

幼いころから魔法が使えなかったルイズは、他人と比べられ馬鹿にされ続けてきた。
だが、今は不思議な力のお陰で馬鹿にされることはなくなった。今度は人に避けられるようになったが、今はシエスタが側にいてくれる。
もしこの力が無ければ、みんなに認められようとして無茶な行動を起こしていたかもしれない。

思えば、この使い魔を召喚してから自分はいい方向に向かっているような気がする。
我を忘れてギーシュを殺しかけたこともあったが、この力を自由に使えるようになれば立派な貴族になるのも夢ではないかもしれない。
そうなれば家族も安心するし、幼い頃の唯一の遊び相手だった姫様の力にもなれるかもしれない。
そして何より、ワルド子爵の婚約者に相応しい存在になれる。もし、彼に結婚を申し込まれても胸を張って答えられるだろう。
しかし、正直不安もある。この力が何なのかもよくわかっていない自分に、はたして使いこなせるのだろうか。
それにこの力を使っていた夢の中の自分は、全て惨めな最後を迎えている。あれが自分の未来の姿になるかもしれないと思うと背筋に冷たいものが走った。

そんなことを考えながら、ルイズは使い魔の石像を眺めていた。
自分に力をくれたであろう石像は、今日もいつもと変わらぬ姿で立っているだけであった。
「ルイズ様。こんな所にいらしたんですね」

呼びかけられたルイズが振り向くと、そこにはシエスタが立っていた。

「舞踏会には参加しないんですか?」
「今日はそんな気分じゃないの」
「そうですか……」

ロングビルの部屋から戻ってきたルイズの様子がおかしいのにシエスタは気付いていた。
だが、舞踏会の準備をしなければならなかったので、その時に詳しい話を聞くことはできなかった。
舞踏会の時にでも話を聞こうと思っていたが、いつまで経っても姿を見せないルイズが心配になり、今まで探し回っていたのである。

「ルイズ様。ミス・ロングビルと何かあったんですか?」
「べ、別に何もないわよ!」
「でも。ミス・ロングビルの部屋から戻ってきてから、少し元気がないように見えますし」

シエスタにロングビルとの関係を知られるわけにはいかない。なんとかこの場を誤魔化す必要があった。

「わ、私は元気よ。そうだ、ダンスの相手をしてくれない。ここまで舞踏会の音楽が聞こえてくるから、ちょうど誰かと踊りたい気分だったのよ」

慌てているルイズは、さっき言ったことと正反対のことを口にしてしまう。だが、突然のダンスの誘いに驚いたシエスタはそのことに気が付かなかった。

「私なんかがルイズ様のお相手をするわけには……」
「私がシエスタと踊りたいんだからいいの。適当に合わせてくれればいいから」

そう言うとルイズは、シエスタの手を取って踊り始めた。最初は戸惑っていたシエスタも徐々にタイミングを合わせていく。
二人の服装はいつもと同じ学生服とメイド服。観客は一本の長剣と一体の石像のみ。
だが、二人はそんなことはまったく気にしないかのようにダンスを楽しんでいた。

「相棒は悩んでるより、そうやって笑ってる方が似合ってるぜ」

そんなデルフリンガーの呟きをよそに、二人だけの舞踏会はいつまでも続いていた。


新着情報

取得中です。