あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

光の射さない場所へ

周囲の闇に溶け込む様に、二つの影が眼下に灯った明かり――現・サウスゴーダ太守の屋敷を見つめていた。
一人はローブを目深に被り…口元だけを妖しく持ち上げている。
そしてもう一人は…異様な姿。
黒装束に身を包み、頭巾からは目だけが鋭く光っていた。

「…さて…それじゃあ…そろそろ仕事と行こうじゃないのさ…」
ローブを被った人物はそう言うと、懐から杖を取り出し、静かに詠唱を始める。
地面が低い音と共に隆起し…それはやがて、30メイルはあろう程の巨大なゴーレムの形を形成していく。
ゴーレムの使い手。土のトライアングルメイジ。土くれのフーケ。
彼女の詠唱が終わり、ゴーレムが静かに傍らに佇む頃には…黒装束の男の姿は、すでにどこかに消えていた。

フーケは口の端を持ち上げ、男の事を思い出す。
場末の酒場で見つけた、剣呑な雰囲気に包まれた男。
素性の全く知れない『メイジ殺し』の男。
興味本位で接触し、使い捨てのつもりで雇い、いつしか相棒とも思えるようになってきた存在。

「…さて…あんまりのんびりしてちゃ、シャドウに全部持ってかれてしまうしねぇ」
ゴーレムの肩に飛び乗り、低く地面を震わせながらサウスゴーダ邸へとゴーレムを進ませた。


・・・・・・・


「ふぁぁぁあああ~~」
現サウスゴーダ太守邸の門を警備していた男は、いつもと同じ平穏な光景にアクビを漏らした。
「なあ相棒、夜勤明けたら一杯どうだ?」
眠気を堪える為、仲間にそう声をかける。
だが…いつもなら軽口でも返してきそうな相棒は、眠っているのか、何も答えずに門にもたれ掛かっている。
「…おい!俺だって起きてるんだ!何グースカ寝てやがる!」
そう声をかけ、死んだように眠る相棒へと一歩足を踏み出し―――
男は目の端に一瞬、黒く光る何かを見た気がした。
だが…それを確認する時は最後まで来なかった。

男の目が最後に見たのは…
首から上を失った、自分自身の体。そこから流れ出る大量の血。
そして、それを気にする様子も無く、門を飛び越えた黒装束の男……


・・・・・・・


最初に異変に気付いたのは、屋敷の上階に詰めていた警備兵だった。
地震のような…巨大な岩が断続的に地面に落ちるような…異様な地響きがコップの中に波紋を広げている。
「……何だ…?」
そう思い、窓辺に近づく…そこには……
何故、こんな近くに接近されるまで誰も気が付かなかったのか?他の警備は何をしている?
目の前に立つ、巨大なゴーレムの姿に、パニックの前兆が頭に広がる。
「て…敵襲!誰か―――」
男が叫ぶのと同時に、ゴーレムの拳は男の居た部屋をなぎ払った。

ガラガラと屋敷の一部が崩れ――その音で仮眠を取っていた衛兵達は思い思いの武器を手に廊下に飛び出した。
そして、眼前の光景に言葉を失う。

一面に広がる、血の海。
呻き声一つ上げる間も無く命を絶たれた亡骸。
その中心に立つ、黒ずくめの男。

「貴様ッ!!」
鎧を着込んだ歩兵が槍を構え、杖を手にした傭兵が詠唱を開始する。


男までの距離は、数メイル。
詠唱は間に合う。

誰もがそう考えていた。

男の手が素早く動き――自分の喉と額に、十字型の金属が突き刺さる瞬間まで。


・・・・・・・


シャドウは再び動くものの無くなった屋敷の広間で、手裏剣を手の中に隠す。

『取り分は、公平に半々』
フーケのその言葉を思い出すと…少し、働きすぎな気もした。

別に、殺す事に今更頓着はしない。
ただ、仕事の分は…分け前相応は、十分働いた。その実感は有る。

だが…

自分の事を『相棒』として扱う、土くれのフーケ。

見殺しにした所で別に心は痛まないが…それでも、その選択は嫌な過去を思い出させる。


シャドウは血に濡れた広間を奥へと、音も無く進んでいった。


・・・・・・・


「き…貴様ら如きに私の何一つとして奪われてなるものか!!」
現サウスゴーダ公は、震える手で杖を向けてくる。
「おやおや。護衛はちょっと撫でてやっただけで逃げ出したのに…まだ虚勢を張るのかい?」
フーケはローブの下から覗く口元に笑みを浮かべる。

サウスゴーダ公の私室は、ゴーレムに『撫で』られ、壁と呼べそうな物はすでに存在してなかった。

「何をォォォォ!!私とてトライアングルメイジ!盗賊如きに引けを取る訳が無い!!」
追い詰められ、完全に理性を失ったサウスゴーダ公はそう叫ぶと勢いよく杖を振り下ろす。
そして、風が吹き――だがそれは、そよ風程度の代物。
巨大なゴーレムを前にの比喩ではなく…実際にそよ風。

「…ふ……ふふ……あはははは!!こんな事で私のゴーレムが何とかなると思ったのかい!!」
フーケの目に映るサウスゴーダ公は、杖を構え、顔を真っ赤にしながらそよ風を吹かせるばかり。
「滑稽だねえ!!何がトライアングル―――」
高笑いしながら勝ち誇っていたフーケは…そこで異変を感じた。

視界が揺れる。ゴーレムが維持できない―――

「まさか……これは……!」
口元を押さえ、ゴーレムの肩に壁を作り攻撃を防ごうとするが……もし『そう』なら、防げる訳が無い。

ボロボロと、砂の城のように徐々に崩れだすゴーレム。
サウスゴーダ公は、口の端にニヤリと笑みを浮かべた。
「そうだ!これが私がここまで上り詰めた由縁!!スリーピング・クラウドを風に乗せて相手を眠らせる!
即効性は薄いが、それでも風下は全て私の術中!!回避不可能とはこの事だ!!!」


「ッ…この……!」
フーケはゴーレムの拳をサウスゴーダ公に向けるが…
だが、その拳は指先から土くれに戻り地面に落ちていく……

「ハハハ!やったぞ!私があの『土くれのフーケ』を捕らえ――ガァ!!?」
屋敷中に狂喜の声を響かせていたサウスゴーダ公は…突然、気味の悪い叫びを上げる。
その声を最後に、屋敷に静寂が広がり、同時に風が止まった。

フーケは、朦朧とする意識で、それでも原因を知ろうと屋敷に視線を向けた。
そこには…後ろから胸を貫かれ…体を痙攣させながら、まさに息絶えようとしているサウスゴーダ公の姿…。

その背後から、まるで影そのもののように、男が姿を現す。

フーケはゴーレムと共に崩れ落ちる意識の中…シャドウの目が何かを語っているように見えた――


プロは、ナイフを突きつけて金を出せ、なんて事はしない。
ナイフで刺した後、金を出させるものだ。


・・・・・・・


復讐に、と始めた稼業のはずだった。
それなのに、シャドウと仕事をしてると…それがただの危険なおままごとに過ぎなかったと思い知らされた。
『土くれのフーケ』の名前を世に知らしめ、いい気になっていた。
それが、大嫌いな高慢な貴族が勲章を誇るのと何も変わらないとも気付かないで。


フーケの心の中からは……子供じみた復讐心は消えていった。
その代わりに、芽生えたものが有る。
プロの盗賊として、貴族を相手に仕事をする。その明確な決意。


・・・・・・・


「…この前は、助かったよ……で、次の仕事だけど……」
場末の酒場で、フーケはシャドウとテーブルを挟む。

クールで、とことんドライで、無口で無愛想で、自分の事は何も話そうとしないが…
それでも…何だかんだ言って…いや言わずか。
とにかく、自分の事を助けてくれる相棒。
思わぬ反撃にピンチの時や、崩れる30メイルのゴーレムの肩で眠りこけた時や……
気が付けば現れ、颯爽と、時には血なまぐさく……助けてくれる男。


次第にフーケは、シャドウに対して不思議な信頼を覚えるようになっていた。

だから…
本当なら、一人でやるつもりだった仕事。
今までと比べ、相手の守りも格段に違う相手。
その仕事に…シャドウも誘ってみる事にした。


テーブルの上に、大枚を叩いて買った情報の書かれた紙を置く。

「……ここには、『破壊の杖』って代物が――――」


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