あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロな提督-20


 村の広場では、ルイズの前に金髪の若い騎士が立っていた。
「えー?戻って来なさいって、そんなぁ~」
「申し訳ありません。ですが、公爵は相当にご立腹とのことです。枢機卿も口頭での報告
が欲しいと」
「そんな、急に言われても…ねぇ?」

 ルイズが後ろを振り向くと、ヤンとロングビルとシエスタも困った顔を見合わせてる。

「ねぇ、セブランて言ったっけ?確かアルビオンへ送ってくれたわよね」
 セブランと呼ばれた少年騎士はビシッと直立不動をとった。
「はい!名前を覚えて頂き光栄であります!確かに先日、自分がミス・ヴァリエール一行
をアルビオンへ送らせて頂きました」
「そう、その節はご苦労様でした。でも、私達は村に用事があるので、もうしばらく滞在
したいのです」
「いえ、そう言われましても…」

 彼等の周囲では村長はじめ村人達も突然の事に困惑していた。



    第二十話    SPIRIT



 ルイズ一行がタルブの村に来てから数日が経った頃の昼下がり。村の広場に、突然若い
風竜が舞い降りた。
 突然何事かと飛び出してきた村人達の前に、柔らかな金髪をなびかせた少女の様な顔立
ちの若い竜騎士、セブランが降りてきた。城からの使いとしてルイズ達を迎えに来たので
すぐに呼んできて欲しい、とのことだ。
 というわけで、村長の家でのんびり読書していたルイズ一行は、すぐに広場へ飛んでき
たのだった。


「少しお待ち下さい、共の者と相談しますので。あの、村長」
 ルイズがワイズを見ると村長は頷いた。
「ええ。それでは皆様、とりあえず私の家へどうぞ。騎士様は話が終わるまで、当家にて
おもてなし致します」
 一行とセブランは村長の家で話をする事になった。
 ちなみに風竜は村の広場にいると皆が怖がる。竜騎士の風竜でも、竜が恐怖の象徴なの
は変わらない。なので一緒に村長の家へ連れてこられた。




 村長の家の横では、風竜がゴハンを食べている。と言っても竜の食べ物なんて村には無
いので村人用の食べ物を手当たり次第に引っ張り出してきた。
「ああ…ウチのブタを、丸飲みだなんて…せっかく育ててきたのに」
「しょうがないだろ。空腹で暴れられたらえらいこった。にしても、よく喰うなぁ」
 竜を繋ぐような鎖も檻もないのでは危なくてしょうがない。なら満腹にさせて機嫌を取
ろうかということで、村で育ててたブタやら野菜やらをおっかなびっくり風竜の前に置い
ていく村人達。若い風竜の食欲は凄まじく、目の前に出された物を片っ端から平らげてい
く。
 それを遠目から溜息混じりに眺めてる村の男達の姿は、執務室の窓からも見えていた。




 執務室にはルイズとヤンとロングビルとシエスタ。
 ルイズは窓際に立ち、上機嫌の風竜と不機嫌な村人達を眺めつつ指折り数えていた。
「ええっと、学院を出たのが…スカボローで2日で…ロンディニウムで一泊して…あらや
だ、まだ十日ちょっとじゃない。これだけ色々あったのに、驚きだわ」
 椅子に座るロングビルも目を閉じて思い出にふける。
「ホント、あっという間だね。色々あったよねぇ…。
 ま~、あれだわね、ホラ。将軍に貸してもらった風竜でタルブ来た時、手紙だけ持たせ
て返しちゃったじゃないか。枢機卿はともかく、公爵は『タルブで何を遊んどるかー!』
というとこじゃない?」
 ルイズもヤンも思い返してみれば、確かにそうだったと頷いた。
 扉の前に立ってるシエスタはちょっと苦笑いだ。
「エヘヘ…でも、それってミス・ヴァリエールを大事に思ってるんでしょうね。危険なア
ルビオンを出たんだから、早く無事な姿を見せて欲しいんですよ、きっと」


 実際、ルイズ達はアルビオンの調査を名目として派遣された。そして『ウェールズ皇太
子生存』情報という一定の成果を出し、大使であるド・ポワチエ将軍から風竜を借りてア
ルビオンを飛び去った。タルブへ寄ったのはシエスタと合流するためなので、手紙なんか
出さずに風竜に乗って一緒に帰れば良かったはずだった。
 それが、何故に調査報告書としての手紙だけ手渡して竜騎士を帰らせたかと言えば…


「でも~、だって、せっかく旅行に来たんだしぃ~。ゆっくりしていきたいわよねぇ?あ
たしの系統については、祈祷書がトリスタニアにないなら急ぐ必要ないし」
 と、ヤンに同意を求めるルイズ。
「そうだよ。そもそもこれはルイズと僕が見聞を深めるための旅なんだよ。焦って帰る理
由は無いじゃないか」
 と、自己正当化をするヤン。
「あたしだってさぁ、学院長のセクハラからよーやく逃げれたんだしねぇ~。ちょっと羽
を伸ばすくらい、いいんじゃない?」
 と、責任をオスマンに押しつけるロングビル。
「つーわけでタルブに残ったわけだ!でもおかげでサヴァリッシュの書とか、色々見つけ
れたから良かったじゃねーか!」
 と、結論をまとめたデルフリンガー。
「はぁ…ともかく、そろそろ学院に戻りましょう。私は学院じゃなくてヴァリエール家の
メイドになったからいいですけど、ルイズさんとロングビルさんは帰らないと怒られるで
しょ?」
 と、シエスタの冷静かつ当然な予想。二人とも「ふぁ~いぃ…」と気のない返事を返す
のだった。

 ヤンはよっこらせっと机から降り立った。
「まぁとにかく、トリスタニアに戻らなきゃだめか。公爵も怒ってるみたいだし。枢機卿
には手紙で報告書を出したけど…足りなかったかなぁ?」
 外を見てたルイズがクルッと振り向いた。
「そんな事はないと思うわよ、アルビオンで見聞きした事で虚無とテファに関わらない範
囲で全部書いたもの。多分、興味があるから直接話を聞きたい、ということじゃないかし
らね」
 壁に立てかけられたデルフリンガーも鞘からピョコッと飛び出す。
「んじゃ、早速帰るっきゃねーな!秘書のネーチャンも、ずっとお暇をもらってるわけに
もいかねーんだろ?」
「うぅ、そうだねぇ…正直、あのセクハラジーサンの所に戻るのは気が重いけどね、しょ
うがないわねぇ」
 諦めの溜息混じりにぼやくロングビル。フーケを辞める以上、給料に縛られる生活もや
むを得ないと観念した。


 執務室の本を見渡しながら、ヤンが呟く。
「ま、帰るのは良いんだけど…この本がね」
 その言葉にルイズとロングビルも執務室の書棚に並ぶ本を見る。
「確かに、ただ帰るのは…ねぇ」
「ホント、もったいないわ。村長と相談でもしようかね?」

 それらの本は、全てハルケギニア語で記されている。サヴァリッシュの書庫にある冊子
とは異なり、何かの動物の皮で装丁され、各隅は鉄で補強された立派な本が並んでいる。
学院の図書館にあっても不思議はない。そのほとんどはハルケギニアの地理と歴史、教会
の教義、トリステインの法律、紳士録、魔法関連など。村長の家にあっても不思議はない
本ばかりだ。
 ただ、その中に、背表紙に何も書かれていない本がいくらか混じっていた。装丁も他の
本と比べるといい加減、というより素人が手作業でやったかのようだ。

 その内一冊をシエスタが取り出して広げる。もちろんハルケギニア語の文章と様々な絵
が描き込まれている。
「お祖父ちゃんに相談してみましょう。村のみんなの意見も聞いてみないと出来ない事で
すし」
 そんなわけで、食堂でタルブ名産ワインと手料理にて接待を受けているセブランを残し
て、一行は村長の所へ向かった。




「…というわけで、ブドウを原料とする蒸留酒です。作ってみませんか?」
 村の広場で、ヤンは村人達に蒸留酒造りを勧めていた。

 広場には沢山の村人達が集まってきている。来ていないのは村長宅でセブランと風竜の
対応をしている人など、ごく少数だろう。無論、広場にいるのは村人とルイズ一行だけ。
よそ者がいても顔見知りの村人同士だからすぐ分かる。

 提案を受けた人々は互いに顔を見合わせ、どうしたものかとそこかしこで囁き合っている。
 一人の老人が声を上げた。
「それで、蒸留酒の作り方は分かるんかの?」
「ええ、もちろん。サヴァリッシュ氏がハルケギニア語で記していました。今も村長の執
務室においてありますよ」

 ハルケギニア語で記されたサヴァリッシュの書。この言葉を聞いた時、村人からは驚嘆
の声が上がる。
 当然、地下書庫の存在はサヴァリッシュ家の秘密。内容は帝国公用語で記されてはいる
が、書籍の存在自体も口にするのはタブー。そもそも異国の言語で記された書を大量に隠
している時点で、異教徒だの間者だのと疑いをかけられる原因たり得る。その知識は口伝
を装っている。
 それだけにハルケギニア語で記された書の存在はインパクトを持った。口々に「なんと
まぁ!そんなものがあったのか…」「すると、オイゲンさんはわしらに作れと言ってる、と
いうことなのか」「まさかぁ、あの方の力なしに出来るもんか」等の意見がザワザワと聞こ
えてくる。
 広場を埋め尽くす村人達の前に、今度は村長が進み出た。
「まずは、話を聞いてくれるかな?」
 ガヤガヤと騒がしかった村人達が静かになってから、ワイズは朗々と語り出した。もち
ろんサヴァリッシュ家の秘密に触れない範囲で。



 サヴァリッシュの書。それはハルケギニアとは比較にならない超技術の塊であり、存在
自体を秘匿せねばならない。書を記したオイゲン自身も秘密を守り、平凡な平民として生
涯をまっとうした。


 ただ、その中には公表しても危険性のない技術・知識もある。

 例えば、現在タルブの村で使用されているワイナリーの知識。
 もともとタルブではワインを作っていた。また、ワイナリーとしては秘伝の知識ではあ
るが、既に数十年前からタルブ村はワインの名産として知れ渡っている。つまり、ワイナ
リーとしての優れた知識がタルブに存在する事自体は周知の事実。これが外部に漏れたか
らといって地下書庫の存在がばれるわけではない。

 他に、ヤンが既に持っている知識もある。一例としては軍事・兵法関連だ。
 突然『出所不明の知識』が小国トリステインの片田舎から湧き出すのが不自然だという
のなら、出所がハッキリしていればいい。それに、オイゲンは後ろ盾が無い異邦人だった
ことと、ワルキューレの存在を万一にも知られないため、一介の平民として生きた。しか
しヤンはヴァリエール家の後ろ盾があるし、世界を滅ぼすような兵器も持っていない。な
によりヤンが高度な技術を持つ異国から来ているのは召喚された時点で明白。

 そして、最初からほとんど危険性の無い知識として料理もある。料理の本はハルケギニ
ア語で記された書の一つだ。
 その書にはチャーハン・ラーメン・餃子やクレープ・ワッフル等の作り方が記されてい
た。材料さえあれば創作料理を装えば済む。ただ、オイゲンがそれをしなかったのは、タ
ルブに来るまで自炊したことが無かったから。料理書に書かれたメモによると、故郷の料
理を懐かしみたかったものの、料理の才能は無かったので諦めたらしい。というより、成
功するまで延々と失敗作を自分で味見した上で始末せねばならず、懲りた。

 オイゲンがハルケギニア語で記した書の一つで、ヤンが提案した蒸留酒作りがこれらに
あたる。



「・・・というわけで、簡単に言うと『蒸留酒の作り方はヤンさんから聞いた』と言えば
いいんだ。事実、ヤンさんは蒸留酒の作り方をある程度知ってるから、別に問題は起きな
いと思うのだ。念のため、執務室にあった蒸留酒と蒸留器製造に関する書は読んでもらっ
たし」
 以上、ワイズは地下書庫に触れない範囲で、村人へ説明した。後ろのヤンも嬉しそうに
頷く。

 村人達は様々な表情で意見をぶつけ合う。
 面白そうだからやってみよう、という野心的意見。ワインだけで十分だわよ、という欲
のない意見。アストン伯や近隣の町や村にも話を通してみるべきだ、という周囲との軋轢
を不安に思う意見。蒸留酒ってことは蒸留のための設備がいるから金がかかるなぁ、とい
う資金面を考える意見。本だけ見たって簡単に作れるもんじゃないよ、という技術面を考
える意見。サヴァリッシュが公にする事を禁じた知識だから秘密にし続けるべき、という
意見も聞こえてくる。

 そんな彼等の前に、今度はルイズが進み出る。小さな身体に精一杯空気を溜め込み、大
きな声でしゃべり出した。
「いきなり蒸留酒なんて、と思うのも当然でしょう!でも、ハルケギニア語で記した書と
いうことは、サヴァリッシュ家だけじゃなく、村の人々全員に末永く読んで欲しかった、
という意味だと思います!」
 その意見に、騒がしかった人々も注意を向ける。
「当然、資金や技術など難しい事は多いと思います!何しろ、作り方は図解入りで記して
はありますが、一から作り始めるとなると本の通りにはいかないと思います。最初は失敗
が続くでしょう。蒸留酒も樽で寝かせる場合は、売れるほどの品が出来るまで長い時間が
かかるのも事実です!」
 そこかしこから、そりゃそーだ、オイゲンさんだって村に来た時は散々苦労したそうだ
しなぁ、という声が聞こえてくる。不安げな表情が村人達の間に広がっていく。
 そんな否定的空気が広がる広場に向けて、ルイズはさらに元気よく声を張り上げた。
「でも!挑戦する価値はあると思うの!成功すれば村はさらに発展することは間違いなし
よ!
 もちろん、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、協力致
します!出資は惜しみません。父さまにも話を通しておきますわ!」

 ヴァリエール家の名を知らない村人もいない。ヴァリエール家の後ろ盾があれば心強い
なぁ、いやアストン伯が領内に干渉された事を怒るだろ、秘密を守るには貴族とは縁を持
たない方が、ヤンさん自身がヴァリエール家の執事やってるから今さら…等々、様々な意
見が広場を飛び交っている。

「ちょっといいかしら!?」

 若い女性の元気な声が上がった。村長が声の主を見ると、長いストレートの黒髪を持つ
可愛くて活発そうな女性が手を挙げていた。
「おや、ジェシカじゃないか。いつトリスタニアから戻ってきてたんだ?」
「ついさっきよ。姫さまの婚儀で、お店のワインも足らなくなったので帰ってきたの。シ
エスタから『迷い人』のヤンという人が村に来るって聞いてたし」
 ジェシカはヤンの半開きな目を真っ直ぐ見つめながら、腰に手を当てて大きな声で意見
を述べた。
「ワインを蒸留するって言うけど、タルブのワインは高級品よ!そんなの勿体なくて蒸留
出来ないわ!第一、そんな事しなくてもタルブは十分ワインだけで潤ってるのよ。この上
もっと儲けようなんて考えたら、周りの村から無茶苦茶な嫉妬を向けられ、とんでもない
嫌がらせをされることは間違いないわ!」

 ジェシカの意見に周囲の人々も頷く。様々な意見が再び広場中から湧き起こる。
 確かにタルブはワイン商を通さず直接販売もやってるせいで街の問屋から嫌われてるよ
なぁ、いやそれはハルケギニア中から直接買い付けが来ちまうせいだよ、俺達のせいじゃ
ないよな、とか。実際私達のワインって高級品だから、わざわざ蒸留する必要はないよ、
とか。
 これらの意見を背にして、ジェシカはヤンの反論を待つかのように彼を見つめ続けてい
た。

 ヤンは再び前に出る。村人達もシン…とすぐに静まりかえる。『2秒スピーチのヤン』と
呼ばれた彼だが、今回のスピーチはさすがに長かった。
「皆さんの意見は当然です!確かにタルブワインを蒸留するのは勿体ないです。そのまま
で十分美味しいんですから!」
 ヤンの率直な高評価に、村の人々も満足げに頷く。そして同時に、じゃあ蒸留の話はど
うなるんだ?と首を傾げる。
「だから、タルブのワインを蒸留するんじゃないんです!ワインを作った後の、ブドウの
搾りかすを発酵させるんです!私の国ではマールとか、グラッパとか呼ばれている蒸留酒
です!
 また、タルブ以外のワインを蒸留する事も、別の村でやってもらう事も出来ます!」
 ヤンは大きな声で静まりかえる広場に説明を続けた。オイゲンの遺した知識とヤンのア
イデアを。


 西暦時代のフランス産マールとイタリア産グラッパ。これらは共ににブドウ原料の蒸留
酒だが、使用するのはブランデーと違いブドウの搾りかす。マールはオーク樽で熟成させ
るがグラッパは熟成を経ないものが多い。
 ブランデーという蒸留酒は、16世紀のオランダ商人がフランスとのワイン貿易を行う
際に考えられたという説がある。ワインを少しでも船舶で大量輸送させるため、いったん
蒸留し濃縮させ、フランスに持ち込んでから水を足して売ろうとしたらしい。もう一つの
説は、ワインの過剰生産により余った在庫を処理しようと加工した結果、というもの。良
質なボルドー産ワインの前に、コニャック産ワインは1/3くらいの値段しか付かなかった
ため、これをどうにか売れるようにしようと蒸留したところ、見事な蒸留酒が出来上がっ
た。
 オイゲンは若い頃、実家でワイン醸造を勉強していた。その課程でブドウの搾りかすを
有効利用する方法として、マールとグラッパについても調べていた。ただ、蒸留器の製造
には多額の資金と高い技術が必要になる。タルブのワインで手一杯だし、十分に儲かって
いたので手を出す事はなかった。



「・・・でも、今なら出来ると思います!グラッパなら樽で寝かせないので、完成までの
期間はマールより短いでしょう!
 なにより、これは周辺の村々の為になると思うのです!」
 ジェシカはじめ村の人々も、食い入るようにヤンの言葉を聞き入っている。特に周辺の
村々のためになる、という点に。
「恐らく、タルブのワインが高級品として出回っているため、他地域のブドウ農家やブド
ウ商人から反発を受けていると思います!彼等のワインやブドウが値崩れして生活に困っ
ている事でしょう!」

 ヤンの予想は正解だったらしい。広場の人々は頷いたり困った顔を向け合ったり。そう
だけど、でもそう言われてもなぁ…という不服げな言葉も多い。そんな中、「あー!なるほ
ど!」「ふーん、でもそう上手く行くかなぁ?」「売れるほど美味しいモノは、なぁ」とい
う声もちらほらと聞こえる。
 ヤンは慣れない大声を出し続けて喉が痛くなり、ジュリアンから水を一杯受け取り一気
に飲み干す。そして大きく息を吸い、結論を述べた。

「だから、他のブドウ農家やワイン商人に蒸留酒の作り方を教えるなり、他地域の余って
値崩れしてしまったブドウやワインを、適正な値段で買い取って質の良い蒸留酒にしても
いいんです!この村でも、たまにブドウの出来が悪い時はあるでしょうから、その時は自
前でやってもいいでしょう!
 タルブ村は蒸留酒で更に潤います!他のブドウ農家も人気が無くて買い叩かれるワイン
を確実に適正な値段で買い取ってもらえたり、蒸留酒にできれば、タルブへの怒りも収ま
るでしょう!技術供与の対価を受け取るなり、醸造の手数料をもらうなりで、村も儲かり
ます!
 ワインと蒸留酒で客の取り合いになる事もあるだろうけど、味もアルコール度数も全然
違うので、深刻に考えるほどのライバルにならないと思います!」

 広場の熱はどんどん上昇していく。もはや怒鳴りあいという程の大声で意見がぶつかり
合う。
 是非やってみようという若者。これ以上タルブは目立つべきでないという老婆。オイゲ
ン無き今、私達だけで出来るのかしらという妊婦。他の村々に話を通してみようという少
年。なんで他の村の事まで考えなきゃいけないのじゃ、という老人。やり方だけ教えてあ
げればいいんだから、私たちが作る必要ないんじゃない?という少女。あたし達自身がや
らないと他の連中も付いてこないさ、という奥方。これを機にタルブ村の知識を広めよう
じゃないか!と気勢を上げるグループもいる。

 そんな光景を広場の隅で眺めているのはロングビルとシエスタ。二人は熱い討議が行わ
れる村人達を楽しそうに、嬉しそうに見つめていた。
「ははっ!なんだかあいつら、熱くなってるねぇ!」
 ロングビルの口からも熱を帯びた言葉が漏れる。答えるシエスタは満面の笑みだ。
「そりゃそうですよ!ひいおじいさんの凄い知識の数々、自慢したいのをみんな我慢して
たんですもの。
 正直、ヤンさんが来てくれなかったら、村は知識を隠す者達と公にしようとする者達で
分裂していたでしょう」
「うん?どういうこったい…と、まぁ予想は付くけどね」
 シエスタが語る話は、大方がロングビルの予想と一致するものだった。当然の成り行き
と言うべきものだから。


 昔から、オイゲンの知識を持ち出し金を得ようとか、酒の席でつい口を滑らすとかいう
不届き者が何度も現れた。何しろ、サヴァリッシュ最後の書にある航空写真から地図をお
こすだけで、現行のいかなる地図より正確かつ広範囲な地図が描ける。どんな貴族も商会
も先を争い金貨を投げつけて買い求めるだろう。
 特に医学に関しては、もっと世間に広めるべきだっていう意見が多かった。高価な水魔
法を使えず死に至る貧しき者達を黙って見過ごすなど、人として出来る事ではなかったか
ら。
 また、サヴァリッシュ家の持つ医学やワイナリーとしての知識を授けて欲しいと弟子入
りを志願する若者達も後を絶たなかった。特に貴族達相手だと、断るだけでも一苦労だ。



 シエスタの言葉を聞いて、ロングビルが顎に手をあて空を見上げて考えこむ。
「ヤンが来ないうちに知識を公にしちまったら、『タルブはどういう村?』と不審がられる
ね…教会にも目を付けられて、地下書庫を見つけられちまうかも知れない。でも『ヤンか
ら聞いた』ということにすればタルブは安全ってワケかい?
 ヤンの知ってる範囲の知識を公にするということで妥協も出来る、と。まずは蒸留酒で
試してみるわけだね」

 ロングビルの歯に衣を着せない推理に、シエスタはバツが悪そうに俯いた。

「はあ、その…そういう事なんです。ヤンさんには悪いと思ってますけど、二つ返事で承
知してくれましたし。ヤンさんにも悪い話じゃないと思いますから」
「あんたらも意外と性悪だねぇ」
「あなたに言われたくないです!」
 ニヤニヤと笑いながら言う女を、少女はキッと睨み付けた。
 だが睨まれてる女は怒りもせず笑ったままだ。
「まぁまぁ、そう怒りなさんな。ヤンを利用しようってのはお互い様なんだからさぁ。ヤ
ンもその事は百も承知なんだし、もちつもたれつ。後ろめたいと思う事はないさね」
 今度はニッコリと微笑みかけられ、シエスタはフンッとそっぽを向くついでに広場を見
つめる。ロングビルも広場を見る。

 広場では、相変わらず激論が続いている。

 ロングビルは独り言のように呟いた。
「新しい技に挑戦、か…ワクワクするわね」
 シエスタも顔を紅潮させる。
「何年かして、蒸留酒作りが成功したら、どんな村になるのかしら…」
「もう、街になっちまうんじゃないかい?平民が作った、全く新しい街。いや、トリステ
イン自体が変わっちまうかもよ」
「こうやって、ひいおじいさんの知識を少しづつ広めていったら、世界はどうなるのかし
ら。蒸留器製造とかで、地下書庫の知識も少し使うかもしれないし…。
 なんだか想像がつかないなぁ~。ちょっと怖いかも」

 二人は空を見上げながら、まだ見ぬ世界に想いを馳せた。


 さすがに村の将来を左右する話なので、簡単には結論が出せない。枢機卿への報告や姫
の婚儀もある。なのでルイズ一行は村の結論を待たず学院へ戻る事になった。
 ただし、村を発つのは明日の朝。
 村長の家で接待を受けていたセブランは、普段口にしない高級ワインを浴びるほど飲ん
で酔いつぶれ、風竜も満腹でひっくり返り大イビキで熟睡していたから。




「いやぁ~、楽しい旅だったなぁ。んふふ、マールにグラッパ、ブランデ~。やっぱり紅
茶にはブランデーだよね~」
 既に日も暮れた頃、村長の家ではヤンが旅の思い出を振り返り、まだ見ぬブランデーを
想い描きながら鼻歌混じりにデルフリンガーを磨いていた。
「嫁さんも手に入れたしな!」
 いきなりなデルフリンガーの言葉に動揺したヤンは長剣を落としそうになった。
「ば、バカな事を言わないでくれよ!マチルダとは、まだ、そんな…僕は…」
「なんでい、やっぱり故郷に未練が残ってるのか?」

 長剣に言われ、ヤンの腕からは力が抜けていく。


「いや、そんな事は、まぁ…ね。でも、ハルケギニアでやる事も増えたし、もう吹っ切る
つもりだよ」
 力なく膝の上に置かれた長剣。だがそのツバはヤンを元気付けるようにガチガチと打ち
鳴らされる。
「なら、なおさらだぜ!オイゲンみたく、ここで結婚して子供作っちまいな!」
「いや、だから、その…」
 ヤンは赤くなりながらしどろもどろ。そしてデルフリンガーは更に彼を慌てふためかす
言葉を畳みかける。
「なんだ?もしかして、オメーはシエスタの方が好みってワケかぁ?それとも意外にルイ
ズみたいなちみっこが!」
「ば!そ、そんなわけないだろ!?」
 その後も扉がノックされるまで、ヤンは長剣にからかわれ続けた。




 ルイズとロングビルの部屋では二人が荷物をまとめている。
 ルイズは四角いトランクにヒョイヒョイと、柄付き行火・ティーカップ・小鉢・ブラシ
に香水瓶などをキッチリ綺麗に並べて収めていく。ロングビルは畳んだ衣服と少々の小物
をズタ袋に詰め込んでいく。
「あ~あ、これで旅もおしまいかぁ…なんだかもったいないなぁ」
 溜め息混じりのルイズに、ロングビルもボンヤリという感じで答える。
「ホントだねぇ、『虚無』とか、サヴァリッシュの書庫とか、盛りだくさんだったよ。
 でもあたいは何と言っても!ヤンと、ね…フフフ」

 長い緑髪の女性は頬を染めながら身をよじらせ、手を頬に当てたり自分の身体を抱きし
めたり。まるで恋する少女のように…というにはあまりに艶めかしく妖しい姿だ。

 ウエストウッド村での夜を思い出しているロングビルを見るルイズも、テファと一緒に
ドアに張り付いていた時の事を思い出し、真っ赤になってしまう。顔を見られまいと暗い
窓の外へ向く。
「全くもう!いやらしいんだから!」
 照れ隠しに叫ぶルイズを見るロングビルには、ピンクの髪から覗く真っ赤な耳が見えて
いた。意地悪にニンマリと笑ってしまう。
「へぇ~、それをずっと覗き見してた、どこかのお嬢様は、どうなんだい?」
「うわわ!私は!その!あの…」

 慌てて向き直り誤魔化すルイズだが、どんどん語尾がしどろもどろになっていく。
 対するロングビルも、どんどん口の端が釣り上がっていく。

「その?あの?…ん~、なんだろーねえ?」
「うぅ…しっしゃべったら、許さないんだから!!」
 虚勢を張るルイズの姿に、ロングビルは爆笑してしまった。
「キャハハハッ!アハハ…ふぅ。もちろん分かってますわよ。ま、これからもヤン共々、
よろしくお願いしますわ」

 ヤン共々、という言葉を聞いたルイズは更にロングビルを睨み付けた。
 睨まれた方は爆笑をやめ、服も髪も整えてから、今度はニッコリと微笑む。

「ご安心下さい。前にも言いましたが、決してヤンをミス・ヴァリエールから取るわけで
はありません」
 以前にも聞いた言葉ではあったが、今度はプイッとそっぽを向いた。
「当然よ!忘れないでね、ヤンはあなたの恋人である前に、私の使い魔であり執事なんだ
から!」
「ええ、分かってます。私は王侯貴族が大嫌いですが、あなた個人の事は嫌いじゃありま
せんから」

 王侯貴族は嫌い、と言われたルイズは一瞬眉間にシワがよりそうになる。だがロングビ
ルがサウスゴータを追われた事情を思い返し、尖らせそうになった口を元に戻した。


「そう…なら、それでいいわ。ところで、急に丁寧な口調になると、気味が悪いわね」
「そういわないで下さいな。学院では有能で上品な秘書のつもりなのですから。今から演
じておかないと学院でボロが出ますわ」

 コンコン、とノックの音が室内に響いた。
 扉の向こうからシエスタの声が届く。
「失礼します。準備が出来てますので、食堂へお越し下さい」
 ルイズの「すぐ行くわよー」という返答を受け、シエスタの足音が遠ざかっていった。

 そして少女はニンマリと笑い、反撃という感じで女に毒の籠もったセリフを投げかけて
くる。
「…でも、気をつけないとねぇ~。ヤンってモテるから、油断してると若くて器量良しな
女の子に捕られちゃうカモよぉ~」
 投げかけられた女の満面の笑みは、一瞬引きつった。
「もちろん、取られたりしませんよ。私も十分若いですし、容姿にだって自信あります。
何より、既に夜を共にしてるのですから!ヤンは女を傷つける人ではありませんよ」
「んふふふふ~。でも、ヤンだって男だもんねぇ~男は狼って言うモンねぇ~」

 ますます楽しそうに意地悪な笑みを浮かべるルイズの言葉に、ロングビルも内心穏やか
ではいられなくなってきた。

「もう!そんな話は後にしなよ!ほら、食堂でみんな待ってるから、さっさと行くとする
よ!」
「あ、ちょっと待ってよー」
 ルイズの言葉に耳を貸さず、ロングビルはスタスタと部屋を出て行った。




 村長宅の食堂では宴会が開かれていた。
 ルイズ一行を上座にして、サヴァリッシュ家の人々や村の有力者達等がしきりに乾杯を
繰り返し、肩を抱き合って歌を歌う。もちろん飲むのはタルブのワイン。目の前には野菜
やキノコの鍋、チーズとパン、フルーツなど、素朴ながら心のこもった家庭料理がズラリ
と並んでいる。
 一番上座にルイズ、その左にロングビル、そして更に左にヤンという並びで座ってる。
タルブ村の主賓は明らかにヤンなのだが、雇い主の貴族を差し置いて平民のヤンを中心に
するわけにはいかない。デルフリンガーはいつものように背後の壁に立てかけられてた。

「ほーら、ヤン。もっと飲みなよ」
「あはは、いやー嬉しいなぁ。こんなに飲めるのは久しぶりだよ」
 ヤンはグラスが空になるたびに隣のロングビルからワインを注がれてご満悦。宴会が始
まって以来、かなりの勢いで酒量を胃袋に流し込んでいる。

 それを緑の髪ごしに眺めるルイズは二人にほっとかれて、ちょっとご機嫌斜め。

 つまらなそうにチビチビとグラスに口を付けるルイズの姿に見習い執事も気が付いた。
「ルイズ、どうしたんだい?何を怒ってるのかな?」
 といってヤンは小さな主のご機嫌を伺う。でも、ルイズはツンとそっぽを向いたまま。
 そんな子供っぽい姿をロングビルは柔和な微笑みと共に眺めている。

 ご機嫌斜めな少女と、少女の機嫌を直そうとあれこれ話しかける男。
 二人に挟まれていたロングビルは、ふと二人を見る視線に暖かさが増した。
「ちょっと、いいかしら?」
 二人にそう言うと彼女は自分の椅子をずらす。
「ヤン、ちょっとこっち来て…そう、ルイズの横」
 自分のいた場所にヤンを座らせると、ロングビルはルイズを挟んだ反対側に自分の席を
移した。
「これでよし、と」
 上座から、緑髪の女性とピンク髪の少女と黒髪の男が並んだ。


 ロングビルがボトルをルイズのグラスに注ぎ直す。
「ほら、機嫌直しなよ」
「な、なによ。あたしは別に怒ってなんか…」
 そう言いつつチラリと左を見ると、すぐ隣でヤンが彼女の顔を心配げに覗き込んでた。
 右を見れば、ワインを注ぐロングビルが微笑んでいる。
「…ま、今夜でタルブも最後だし。楽しまなきゃ損ね」
 と言うやルイズはグラスのワインを一気に飲み干した。

 大人二人に挟まれたルイズをみて、デルフリンガーはボソッと一言。
「まるで親子だなぁ」
 その言葉は、ワイワイガヤガヤと騒がしい食堂では誰の耳にも入らなかった。



 宴もたけなわになった頃、キッチンからシエスタとジェシカが大盆に皿を乗せてルイズ
達の所へやって来た。
 シエスタが手慣れた様子で彼等の前に皿を並べていく。
「はーい!それでは皆さん、本日のメインディッシュですよー」
 ジェシカはヤンの前に皿とマスタードの入った小瓶を置いた。
「ヤンさん、ぜひ感想を聞かせて下さいね!」

 目の前の皿に乗せられた食べ物を見て、ルイズとロングビルは目が点になった。
 それは、メインディッシュと言うにはかなり奇妙なものだったから。

 ルイズは皿の上に置かれた細長いパンを手に取った。
「なに、これ?サンドウィッチ?」
 ロングビルは縦に切れ目を入れられたパンを開いてみる。
「えーっと…パンの中に焼いた腸詰めと、タマネギのみじん切り、それにキャベツの酢漬
け?いや、漬け物だね」

 二人がふとヤンを見ると、手に取ったそれをしげしげと見つめていた。
「…ホットドッグだ…」
 ヤンはマスタードを塗り、恐る恐る、ゆっくりとかぶりつく。
 その姿をジェシカとシエスタは期待と不安が入り交じった目で見つめている。
 彼はじっくり味わい、ゴックンと飲み込んだ。

「ホットドッグだ…間違いなく、美味しいホットドッグだ」

 その言葉に、持ってきた二人は手を取り合って黄色い歓声を上げた。シエスタはヤンの
横に軽やかな足取りで駆け寄る。
「ホントに、ホントに美味しいですか!?故郷のものと比べてどうですか!?」
「うん、間違いない。これはホットドッグだよ!これって執務室にあった料理の本にのっ
てたんだね!?」
 ジェシカが満面の笑みで自慢げに答えた。
「その通りよ!嬉しいわねぇ、これでお店にも出せるわ!
 実は昔から料理の本を読んでたのよ。ずっと作りたいなって思ってたけど、本物の味が
分からなくて。『迷い人』のお墨付きも手に入れたし、これで『魅惑の妖精』亭に新しい名
物料理が出来たわ!」

 そんなジェシカの言葉は、ヤンの耳には届いていない。彼は取り憑かれたようにホット
ドッグを頬張っている。
 少々見苦しい姿に、ルイズは顔をしかめてヤンの服をツンツン引っ張る。だがヤンは全
然気付く様子がなかった。軽く頭をひっぱたこうとしたルイズの右手は、微笑むロングビ
ルの手にそっと包まれた。

 シエスタも夢中で懐かしい料理を頬張るヤンを暖かく見つめている。 
「それじゃ、デザートの『スイギョーザ』や『シューマイ』も持ってきますから。是非感
想を聞かせて下さいね!」
 ソバカス少女の言葉に、彼は上の空のままで頷いた。だから『何故餃子や焼売がデザー
トなのか?』という質問をするのも忘れていた。

 この後しばらく、オリジナルの味を知らず本だけ見て作った、しかもハルケギニアで手
に入る材料のみを使った様々な料理が並べられた。期待のこもる視線に囲まれたヤンは、
どう言えばいいのかと酔いが覚めるほど困り果てるのだった。
 幸い、自炊した事がなかったオイゲンではなく、料理を作れる可愛いひ孫達の作品。さ
すがに不味いという程のものはなかったが。



 あらかたの料理が人々の胃袋に収まった頃、奥方の一人がクラシックギターに似た弦楽
器を持って来た。洋梨を半分に切ったような形状で、背面が丸く湾曲している。
 それを見たへべれけ寸前の村長が、グラスを高々と掲げた。
「お~、久々にマリーのリュートが聞けるかぁ」
 とたんに拍手喝采が湧き、マリーは酔いの回った聴衆へ深く礼をする。
 そして椅子に腰掛けて、リュートの旋律と共に歌い始めた。


 ヘイ、ジャン・ピエール、地獄がお前に媚を売っている

 ヘイ、ジャン・ピエール、お前に似合うのは偽りの微笑み

 ヘイ、ジャン・ピエール、魔王を閉じこめた地獄の氷を砕いて

 ヘイ、ジャン・ピエール、お前のグラスに浮かべよう…


 聞き慣れない歌に不審を感じたのは壁に立てかけられた長剣だった。
「なぁ、ヤンよ。もしかしてこれもオイゲンの故郷の歌か?」
 彼は何も答えず、頷きもしなかった。だが肯定の回答としては、それ以上明確なものは
なかった。
 さほど飛び抜けて上手というわけでもない歌。歌詞も目出度い宴会の席に相応しいもの
とも思えない。だが、ヤンの心を掴むには十分だった。

 それはまだ宇宙歴が始まらない、西暦の時代。開拓途上にあった星々を放浪する伊達男
を歌ったものだったから。

 彼は黙って歌を聴き続けた。
 ルイズもロングビルもシエスタも、デルフリンガーすらも黙って彼の傍で歌を聴いてい
た。

                   第二十話    SPIRIT   END


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