あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの独立愚連隊-10


 学院を騒がせた「土くれ」の騒ぎから三日目、ルイズの謹慎も昨日で終わり今日からは授業に
戻ることになった。

「……」
「あっ……」
 朝食に食堂へと向かう間、昨日サモンジがルイズに言っていた通り周囲の生徒からの今までの
ような嘲笑は無く、代わりにルイズに視線を向けることすらせず、あるいは視界に存在しないか
のようにして通り過ぎて行く、嫌なものを見たという表情で顔を逸らす、そんな反応があった。
 そんなギスギスした空気の中を、ルイズは周囲の様子を気にした様子も無くまっすぐに食堂に
入るといつもの席に着く。と言ってもそれは周囲の様子が気にならないのではなく、気にする余
裕が無いからなのだが。
「おいおい、ルイズちゃん本当に大丈夫かい? 食べられそうに無いなら適当な物をもらって帰
るけど」
「……大丈夫よ。今日から授業に戻るんだから、変なところを見せて前みたいになめられる訳に
はいかないんだから」
 食堂の椅子に沈み込むよう背中を預けたルイズが、搾り出しているような声で心配そうなサモ
ンジの言葉に返す。べっとりと隈が浮かんだ目にやつれた様子……ルイズの母親に対する恐怖は
相当な物らしく、母親に自分の爆発する魔法を認めさせることを想像する、それだけのことで朝
までうなされ続けてこの様である。もっとも、周囲の生徒からはやつれているというよりも「す
さんでいる」と見られているのか、ルイズに怯えた様子さえ見えているが。
 そのこともあるのだろう、おかげでルイズの周囲の席は誰も座っていないガランとしたものに
なっている。だが、誰も座ろうとしないルイズの近くの席に座る生徒がいた。
「あら、いい具合に空いている場所があるじゃない。ここにしましょうか、タバサ」
 のったりと顔を上げたルイズの前にあったのは、赤い髪と青い髪の顔。キュルケとタバサだっ
た。何でわざわざ、そう言いたげに二人を――主にキュルケを――睨みつけるルイズだが、それ
を気にしていないかのようにキュルケは髪を手で払うと、椅子に体を預けながら悠然とルイズを
見つめ返しながら鼻を鳴らす。さらにその横のタバサもルイズの視線を気にすることなく、一度
ルイズとサモンジに目を向けると手早く祈りを済ませて料理に手を付け始める。
「ははは……おはようキュルケちゃん、タバサちゃん。……そう言えばタバサちゃんとキュルケ
ちゃんって一緒にいることが多いよね。やっぱり仲がいいのかな」
「…………」
 このギスギスとしたルイズとキュルケの間に割って入っって行くのはさすがに無理と判断した
サモンジは、取り合えず声が掛けやすそうなタバサの方に声をかけてみた。しかし、タバサもタ
バサで、は少し顔を上げて肯定とも否定とも取れない無表情をサモンジ向けただけで食事を平ら
げる作業に戻る。話が広がるどころか、ほぼスルーされたサモンジはため息を吐いて目をその横
でジャブの応酬を続ける二人に戻す。
「ふふ、ずいぶんとくたびれてるわね。たった一日の謹慎がそんなに堪えちゃったなんて、案外
ヤワなのねぇ」
「なぁに? 私が処分を受けたのは少々やりすぎたってだけよ。非があるのはギトー先生達の方。
私が落ち込む理由なんて無いわ、変な勘ぐりはやめてもらえないかしら」
 いつも通りとも言えるやり取りにサモンジは呆れながらも、同時に変わらないキュルケの態度
に安堵していた。ルイズが存在していないかのように振舞う周囲の生徒の中で、ルイズに感情を
ぶつけ、ルイズが返す感情を受け止めさらにまた返してくれる。
(二人とも認めようとしないだろうけど、本当に得難い友達だよ。ルイズちゃん)
 とげの見える二人の会話とは裏腹に穏やかな気分でそのやり取りを眺めるサモンジ。と、満足
に箸が進んでいない――箸ではないが――二人をよそにタバサが食事を終える。食器を置く音に
なんとなくサモンジが目を向けると、タバサとちょうど目が合ってしまう。
「……」
「……」

 目を逸らすタイミングが取れずそのまま見詰め合ってしまうサモンジに、タバサはまっすぐに
サモンジと目を合わせたままじっとしている。タバサがどういうつもりなのか分からないサモン
ジは戸惑いながらも、その視線を受けたまま何もできず目を合わせ続けることしかできない。
「……」
「……」
 さらにしばらくの時間が流れ、サモンジとタバサの様子に気づかないままルイズとキュルケも
食事に手を付ける。そうしてようやく食事が終わろうという時、やっとタバサが口を開いた。
「…………」
 上手く聞き取れなかった小さな言葉にサモンジが首を傾げながら聞きなおそうとするが、その
前にテーブルの下からするりと紙の切れ端がテーブルの下からサモンジのコートの中に滑り込ん
で来る。突然の感触に軽く驚きながらサモンジはタバサに――

 ジャリン、と大きな音が周囲に響いた。

 タバサが自分のナイフとフォークを床に投げつけるようにして落としたのだ。
「あら、タバサ大丈夫?」
 軽く驚きながら様子を尋ねるキュルケに、タバサはゆっくりと首を振った後にサモンジと
目を合わせたままはっきりと返す。
「何も問題ない。何もなかった。先に行く」
「そう? ならいいけど……じゃあ授業で」
 頷きを返して席を立つタバサ。少しの間それを見送っていたキュルケだが、すぐに料理とルイ
ズへのちょっかいに戻り、ルイズも多少の余裕を交えながらいつものようにやり返す。
 結局気を利かせたメイドが二人の目の前にある食器を横から手を伸ばして片付けるまで、その
仲の良い喧嘩は続けられた。


「あなたの故郷のことについて、改めて聞きたいことがある」
 食堂の入り口近く、廊下から陰になる場所にサモンジを呼び出したタバサは開口一番にそう言
った。
 なぜ授業の時間を抜け出す様な時間で、と思って戸惑っていたサモンジもこの言葉に少々真面
目な顔になった。昨日の夜に半ば言い捨てるような形で口止めを頼んだ中心領域のことについて
の質問……わざわざサモンジを呼び出して二人だけの状況を作ったのは、口止めに対する配慮と
おそらくは、他人に聞かれたくない話だからか。
 そこまでを考えてからサモンジはじっとタバサの目を見る。……相変わらず今ひとつ、という
かほとんど感情が読めないものの、さして悪いことを考えての相談ではないだろうと判断する。
どうもタバサは年の割には色々と社会に出ているようで、諸々の判断ができる上に頭も切れる。
そんなタバサがわざわざサモンジが口止めを頼んだことに質問をしてくるのだから、答えられそ
うに無いことを敢えて聞いてくることも無いだろう。
「あなたの国は怪我の治療には魔法に劣るが、病気の治療については進んでいると聞いた」
 と思っていたところで予想外の言葉が来た。……病気?
「えっと……ああその話ね。気絶してた私に何の魔法をかけたのか聞いた時のか。まあ医者絡み
の話はウチの副長の専門なんだけどね……まあ病気についてはそうだね。
で、なんだい? 借りもあるし知らない仲じゃないんだ。できるだけ答えるけど」
 専門外の事柄に専門的な質問が来そうな雰囲気に少し困った顔で答えるサモンジ。だが、タバ
サはそれに落胆の様子を見せることも無く、淡々と口を開いた。
「心を患った人がいる。治療方法が見つからない。あなたの国のやり方で心当たりを教えて欲し
い」

 じっとサモンジを見つめるタバサ。それを見ながらサモンジは唸りながらぼりぼりと頭を掻い
ていた。これはまた専門外も良い所の質問な上に、質問自体も漠然としている。そもそも、精神
に関する病気など医者ですら判断が難しいものを、素人のサモンジに聞かれても正直困ってしま
う。ぬか喜びさせるだけになるだろうな、そう思いながらもとりあえずサモンジはできる限りは
状況だけ聞いてく事にする。
「心ねぇ。脳に関しては私達の方でも研究が遅れてるし、専門の医者じゃないと厳しいんだけど
ね。とりあえずは何が原因でどんな症状が出てるかを話してもらえないかな? あと一応、私は
医者じゃないんだから治療法とかは期待しないでくれよ」
 改めて当てにするなと念を押すサモンジの言葉に、やはり表には出さないものの落胆を感じな
がらもタバサは説明をする。
「脳……? とりあえず説明する。はは……その人物が発病した原因はエルフの毒の秘薬を飲ん
だため。症状は記憶の混濁と錯乱、癇癪。特に記憶の混濁が酷い。むす……親しい一部の人物以
外の興味を失い、またその対象等を誤認している。その状態がずっと継続している。
……知り合いなどの呼びかけを行っ、行われたようだが、癇癪を起こされ暴れるので効果はない」
 そう言って黙るタバサ。その説明する様子を観察していたサモンジは、その病人がタバサと親
しい人物ということは察した。というか、タバサもこんな質問を持ちかけた時点でそれは理解し
ていただろう。もっとも親しい友人であるキュルケがいない状況でサモンジにこんな質問をした
ということは、このトリステインでやれることは探しつくし、かつキュルケにも相談していない
事柄だったということまで容易く察することができる。
 その上でそう親しくない、単に一緒に探し物をした程度の知り合いであるサモンジにこんな事
の相談を持ちかけて来たのだ。もはや完全に手詰まりになっていた所に未知の国の話をするサモ
ンジに出会い、空しい結果になると思っていながらも一縷の望みを持ってしまったのだろう。
 また面倒な頼みが転がり込んできたな、そう思いながらもサモンジは本やテレビで聞きかじっ
た知識を掘り起こしながら細かい質問を投げ返す。その毒の秘薬を飲んだのは一度きりか、ある
いは継続的に摂取させられているのか。錯乱や癇癪といった行動に規則性はないのか、あるいは
それが起き易い状況はどんなものか。などなど。そして
「う~ん、まあ聞きたいのはそんなところかな。……どうしよう、一応私の意見を聞いておくか
い? 専門外の人間の推論だけど」
「構わない。そこまで期待はしていないし、聞いてから判断する」
 所詮は門外漢の想像でしかない考えのため、タバサに断ってから話をすることにする。まずサ
モンジは認識に相違がありそうな心、脳の機能から話を始めた。脳の構造、記憶のシステム、脳
神経のネットワーク、脳の各部位が担当する役割、その他諸々……
 脳細胞の採取観察や脳波測定といった技術レベルを超えた知識、そしておぞましいとすら言え
る人体実験を通じてしか知りえない体の構造についての情報に、タバサは軽い眩暈すら感じなが
らサモンジの言葉を頭に詰め込んでいった。
 母を救うため。ハルケギニアの人間の知識では母を救えない。エルフの力は借りれようはずも
ない。しかし、この未知の国の知識の中に何かヒントでもあれば……

「で、考えられるのは最初の毒で脳にダメージを受けて物理的に記憶と判断力を壊されていると
いう可能性、それか毒で精神が混乱して間違った記憶や精神状態を正常なものと認識してしまっ
ているという可能性。とりあえず私に思いつくのはこの二つかな」
 サモンジの説明が終わり、タバサは大きく息を吸って呼吸を整える。
「それで治療法の心当たりは」
「うん……まあそれこそ専門外だからねぇ。脳は手術で弄くるのも難しいし、私達なら諦めずに
呼びかけるとかそれくらいかな」
 がくり、とその言葉に、今度こそ態度に感情を示しながらタバサは肩を落としながら大きく息
を吐いた。そんなタバサの様子にサモンジは慌てて手を振り、タバサの肩に手をかけて顔を上げ
させて弁明する。
「ちょっと待った! そうすぐにがっかりしないでよ。そりゃウチの副長なら色々ともっと詳し
い診断ができただろうけど……この国には魔法があるじゃないか。さっきまでのタバサちゃんの
話だと、脳が壊れると心も壊れるなんて思ってなかったんでしょ? ほら、えっと……脳に怪我
を治す魔法を使うとかあるじゃないか」
「……!」

 その言葉にタバサは一瞬で体に力を取り戻す。今までハルケギニアの魔法では、怪我をしたら
怪我を治す魔法、毒を受けたら毒そのものを消す魔法を使用していた。今まで魔法で試したのは
エルフの秘薬の毒を魔法で消す、あるいは効果を軽減できないかということ、それだけだ。そも
そも、脳が壊れれば心も壊れるという知識が無かったのだ。無論、サモンジの語る知識が完全に
正しいという保障はない。そもそも、魔法が存在しないという国に生きるサモンジと神に作られ
たハルケギニアの人間が同じ生き物という保障も無い。
 だが、試してみる価値はある。
 タバサはサモンジに向き直ると、軽く頭を下げた。
「おかしなところを見せた。……あなたの話はある程度解った。今度試してみるように言ってみ
る」
「ああ、まあ素人考えでこちらこそ申し訳ないんだけどね。あと、一応私は平民ってことだから
君が頭下げちゃ色々とアレだよ」
 はははと笑った後、ふと気づいたようにサモンジは腕時計を見る。話を始めてから結構な時間
が経ってしまっている。もう1時限目の授業は終了し、2時限目の授業が行われている時間にな
ってしまった。サモンジはタバサの肩に乗せた手でくるりとタバサを反転させると、廊下の方に
押しながら話しかける。
「あらら。もうこんな時間か……話が長くなっちゃったか、ごめんねタバサちゃん。ついでで悪
いんだけど、授業ついでに頼みがあるんだ。次の授業のときにギーシュ君に伝言頼めないかな」
 申し訳なさそうにそう言うサモンジに、しかしタバサはふるふると首をふった。
「グラモンは授業に出ていない。食堂でも見た覚えが無い。休みかサボり」
 タバサの返事にあちゃー、という顔をするサモンジ。一応昨日の別れ際にギーシュへ頼みがあ
るとは言っておいたが、やはり恋人に振られたというショックは大きかったのかもしれない。そ
して、それが原因で授業をサボるほどなら、おそらくサモンジやルイズの相手をするほどの余裕
はまず期待できないだろう。
「困ったなぁ。ボウガン作ってもらうとかしての私との付き合いの延長で、ルイズちゃんとも仲
良くして欲しい~とか思ってたんだけど……この剣は飾りみたいな物だし、私の銃の弾はこの国
じゃ買えないから。それにボウガンならライフルと同じ技能で使えるからね」
「ぼーがん?」
 聞きなれない単語に首を後ろに向け、肩を押すサモンジに尋ねるタバサ。首を傾げながら振り
向くという器用な仕草に軽く笑みをこぼしならがサモンジが答える。
「ああクロスボウって言えば分かるかな、分からない? ハルケギニアじゃ発明されてないのか
なぁ。簡単に言えば簡易型の弓だよ。扱いが簡単で、体を鍛えてない私やそれこそタバサちゃん
みたいに小さな子でも弦が引けて狙いも付けやすい、って弓。まあ銃が主な私達の国じゃ時代遅
れの武器だけど」
 軽くしか説明していないつもりのサモンジだったが、タバサでも使える弓、という言葉にタバ
サの目が興味の色を表す。
「ではその話も聞きたい。今ならちょうどいい」
「? 今ならちょうどいいって……ただでさえ1時限目サボってるようなものなのに、2時限目
もサボる気かい? それはちょっと大人として注意しないといけないかな」
 少々おどけた調子で怒ったポーズを取るサモンジに、タバサはまたふるふると可愛らしいとも
見える仕草で首を振ると廊下の先を指差した。タバサが指差す先を追うと、
「あれ、ギーシュ君かい? 授業中にどうしたのさ」
 噂をすれば、というようなタイミングで現れたギーシュは、声をかけてきたサモンジを見つけ
るとにばつの悪そうな顔で挨拶代わりに手を振った。


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