あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Zero ed una bambola   ゼロと人形-35


 道中、何事も起こることなくラ・ロシェールへ着いたルイズとワルド。
 二人はアルビオンへ向かう船が出港するまでの日がまだあることを利用し、付近の観光に出かけた。
 ルイズは二人っきりの観光、つまりデートに心躍らしていた。
 一時の休息にアルビオンへ行くことやアンジェリカの事を忘れて楽しんだルイズであったが、宿へ戻ると楽しい気分が吹き飛んだ。

「何であんたがここにいるわけ?」
「ずいぶんなご挨拶ね、ヴァリエール」

 宿へ戻るや否や、見知った顔に出くわせて口を尖らせながら不平を洩らすルイズ。対してキュルケはそんなこと知ったことかとそ知らぬ顔をしていた。
 そこにいたのはキュルケだけではない。タバサも椅子に腰掛け、ここがどこだか関係ないと言わんばかりに本を読んでいた。

「あら…後ろの方はどなたかしら? まさか男でも引っ掛けたの? 侮れないわねぇ」

 学院とまったく変わらない、いつもと同じ調子でルイズをからかい始めたキュルケ。 ルイズの浮かれた気分はどこかへと吹き飛んでしまうもそれは当然といえよう。

「あんたと一緒にすんるんじゃないわよ」
「そう目くじら立てるもんじゃないわ。ほらアンジェちゃん連れてきたんだから感謝なさいよ」

 キュルケの言葉に促されおずおずとルイズの前に出てきたアンジェリカ。手に布に包まれた大きな棒状のもの、そして、少し頬を膨らませていた。

「もうルイズさん、置いて行くなんて酷いですよ」

 少し頬を膨らませながらそう話しかけるアンジェリカに、ルイズは驚きを隠せない。
 何故この子がここにいるのか。 驚きのあまり目を丸くしてすぐに言葉を返すことができないでいたが、咳払いをひとつ、気持ちを切り替えアンジェリカを問い質そうとしたが、それよりも先にキュルケが口を開いた。

「ルイズ、あなた考えが足りないわねぇ」

 ルイズを挑発するかのようなキュルケの口調に思わず怒鳴りそうになったルイズであったが、ワルドの手前といこともあり、寸前のところで思いとどまった。
 それでも視線だけはキュルケをじっと睨み、その言葉の真意を問う。
 睨まれたキュルケといえば何処か気だるそうにしながらも説明を始める。 ただ一言、読めないと……。

「はぁ?」

 読めないとはどういうことか。 思わず気の抜けた声を上げてしまったルイズの姿にキュルケは小さく笑った。だが、ルイズは読めないという言葉の意味を考えるのにに忙しく、キュルケが笑ったことになど気付けなかった。
 読めない。それは空気が読めないということではない。そう単純に文字が読めないということだ。
 そのことに考えがいたったルイズは思わず口に手を当てる。

「ふふ、わかったかしら? まぁそういうことだからね」

 キュルケのニヤニヤした顔を恨めしげに睨むルイズ。 
 文字が読めないアンジェリカの代わりに置手紙を読んだからといって、ここにアンジェリカを連れて来るんじゃないと。
 怒鳴れるものなら怒鳴っていた。ここにワルドがいなければきっと大きな声で怒鳴っていただろう。彼に恥ずかしい姿を見せまいと必死に怒りを堪えるのであった。

「ルイズ、彼女たちは学院のお友達かい? よかったら紹介してくれないか」

 ワルドの言葉に慌てたのはルイズであった。ワルドを放って学院でのやり取りに近い言い争いをしてしまったのだ。恥かしさのあまり赤面してしまう。

「そうだった。僕のほうから自己紹介しないといけないね。魔法衛士隊、グリフォン隊隊長のワルド。そこにいるルイズの婚約者だよ」

 ワルドの婚約者という言葉に今度は照れから顔を赤くしたルイズ。
 キュルケはルイズの方に目をやりながら己の名をワルドに告げた。視線はルイズを見たままで。
 何やら居心地が悪くなったのか、キョロキョロと辺りを見始めるルイズ。そして、その原因を見つけたのだ。

「な、何見てんのよ」

 キュルケは咎められようが気にすることなく未だルイズに視線を向ける。

「別に……ふーん、婚約者ねぇ」

 ルイズとキュルケのやり取りを尻目にワルドはタバサへと話しかけていた。
 ワルドの問いかけに視線をわずかに本からそらし、ワルドの顔を見ると一言「タバサ」と告げるとすぐに視線を戻したのだった。
 取り付く暇もない。ワルドはそう思いながら笑顔を作りアンジェリカへと話しかけた。
 話しかけられたアンジェリカも笑顔を作り、初めましてと口を開く。
 一言二言言葉を交わし、ワルドはルイズへと向き直った。

「ルイズ、君を心配して追いかけて来るなんていい友人を持ったね。でもいけないな。これは一応極秘事項なんだからね」

 微笑ましい事だと言いながらもルイズの至らぬ点を指摘するワルド。ルイズはワルドへと向き直り畏まりながら謝罪の言葉を口にする。

「まぁ過ぎたことは仕方がないさ」

 そういってワルドはルイズの頭を撫で始めた。幼いころを思い出し、しばし身を任そうかと考えたルイズであったが周囲から視線を感じ、ワルドの手を強引に振り払おうとするのだ。

「や、止めてください! も、もう子供じゃないんだから……」
「ははは、すまないね、ルイズ。お友達の手前だし、子ども扱いして悪かったよ」

 ワルドは悪びれる様子もなく、両手を挙げ、微笑みながらルイズに謝罪する。
 ルイズとワルドの二人はアンジェリカたちを放って二人だけの空間を形成し、キュルケはその空間の外から何ともいえない視線で二人を見つめることしかできなかった。

「折角お友達も来たんだ。宿の部屋を大部屋にしてもらうよう頼んでくるよ。ああ、勿論僕は一人部屋だからね」

 ワルドは生暖かく見つめているキュルケたちへと目をやりそう告げた。その様子からは彼女たちの視線を全く意に介していないようだ。
 その場から立ち去り宿の主人の下へ行こうとするワルドの後を、ルイズも一緒に行くといいその場に三人が取り残される形となった。

「何というか…婚約者と言うよりも兄妹って感じよねぇ」

 二人の後姿を見送りながらキュルケは思ったことを口にする。タバサも同じように感じたのか、その意見に同意すると言わんばかりに首肯した。
 一方のアンジェリカと言えば、二人の後ろ姿をじっと見つめ、一言、『フラテッロ』と呟いた。小さく、誰にも聞こえないような呟き。
 キュルケもタバサも、このどこか悲しく、そして懐かしむような呟きを聞き逃していた。
 それを聞いたのは布に包まれたデルフリンガーのみ……所詮剣に過ぎない彼にはどうすることもできない。



Zero ed una bambola   ゼロと人形



 太陽は沈み始め、夕日が町を茜色に染めていた。
 ワルドとルイズはアンジェリカたちから離れ、再び二人っきりになった。ワルドは宿の主に部屋の変更を頼むとルイズに夕日を見に行かないかと誘い、ルイズもそれに同意すると、宿にいるアンジェリカに外へ出ると告げた。
 いってらっしゃいと笑顔で見送るアンジェリカを背に、ルイズはワルドと共に宿を出ると高台へと歩いていった。
 他愛もない会話の中、ワルドはある質問をルイズにぶつけた。ルイズの友人の中、アンジェリカと名乗った少女についてだ。
 その質問にルイズは気恥ずかしそうに彼女が自身の使い魔であると告げる。その言葉にワルドは驚くもののすぐに気を取り直し、ルイズが可愛いので可愛らしい使い魔が呼び出されたのだとおだてる様な言葉を口にする。
 それに気をよくしたルイズはますます饒舌になっていく。そしてある質問に彼女が答えたとき、ワルドの顔つきが変わる。しかし、浮かれ気味なルイズはそれに気づけないでいた。
 ワルドの顔つきを変えたルイズの返答とはいかなるものだったのか。それはワルドの何気ない疑問だった。ルイズの使い魔であるアンジェリカが持っていた布に巻かれた長い何か。
 最初は彼女がルイズの学院の友人と勘違いしており、杖であろうと推測していた。しかし、アンジェリカがルイズの使い魔と判明したならば話は違ってくる。杖でなければ一体なんであるのか。ワルドはルイズに尋ねたのだ。
 それに対し、ルイズは包み隠さずに答えたのだ。あの布に巻かれているのは喋る剣と鉄砲であろうと……。
 喋る剣、インテリジェンスソードであるデルフリンガーはただのアンジェリカの話し相手みたいなものとルイズは言う。インテリジェンスソードそれ自体は珍しい物ではあるがワルドの興味を引くことはなかった。
 ただ、アンジェリカの持つ鉄砲の説明を聞いたとき、ルイズは気付かなかったが、確かにワルドの顔つきが変わったのだ。
 口元に緩やかな笑みを浮かべながらもその眼は獲物を探究する鷹の眼つき。ルイズから発せられる言葉を一言も聞き逃さんとその耳を傾ける。
 対照的にルイズは自然な笑顔。ワルドに焦がれるままアンジェリカの持つ鉄砲の説明を彼女が知る限りの全てを曝け出していた。そして、学院に置いてきたモット伯の屋敷で使われたあの鉄砲のことも……。
 やがて日が沈み始め、ワルドが『夜風が体に障るから戻ろう』とルイズに言葉をかけ、二人は宿へ戻るのだった。


 宿へ戻った二人はそれぞれの部屋へ分かれた。ルイズが扉を開けるとそこには三人が思い思いに寛いでいた。タバサはベッドの上に座り、アンジェリカに何かの本を読み聞かせており、キュルケは爪の手入れをしていた。
 ルイズが部屋に入り、扉を閉める音が部屋に響いた。アンジェリカは顔を上げお帰りなさいと声をかける。タバサも小さくお帰りと呟いた。
 キュルケはと言うとするするとルイズに近寄り興味深そうに何をしていたのかと尋ねてくる。

「ルイズぅ~、婚約者さんとはどこまで行ったの?」

 妙な猫なで声で話しかけてくるキュルケにルイズは少し口を引きつらせながらも口を開いた。

「あ、あんたには関係ないでしょ」
「二人っきりのデートよ? キスぐらいしたんでしょ? まさか最後まで行っちゃったとか…」

 否定するルイズに構わずキュルケは一人まくし立てる。

「あんたには関係ないって言ってるでしょう!」
「あら? 否定するってことはキスしちゃったの?」

 語尾を強くして再度否定するルイズに、キュルケは顔を緩めざるを得ない。からかう格好のネタを見つけたと言わんばかりに根掘り葉掘り聞いてくるのだ。
 もはや相手をしていられないと、ルイズはアンジェリカへと向き直った。キュルケのちゃんと質問に答えろと言う声は勿論無視して。

「タバサ、アンジェに何読んで上げているの?」

 文字が読めないと言うアンジェリカのために本を読み聞かせていたタバサに声をかける。
 それにしてもタバサも存外面倒見が良いものだ。学院にいたときにはそんな素振りを見せていないにもかかわらず、彼女の好きな読書を一時中断してアンジェリカの世話を焼くなど一体どのような心変わりか。
 それなりに親しいキュルケは暖かい目でそれを見守り、つい最近親しくなり始めたルイズはそれについては特に気に留めていなかった。

「それって前に買った本じゃない?」
「そう、パスタの国の王子様」

 タバサの口から告げられた本のタイトル……絵本であるが、ルイズは聞いたことがないと呟いた。

「ルイズさん、知らないんですか?」
「アンジェは知っているの?」
「はい! とっても大好きなお話です」
「ふーん、それってどんな内容なの?」
「えっとですね、わたしが内容をお話しするよりも実際に読んだほうが楽しいですよ」

 アンジェリカが大好きだと言う話に興味が引かれ、少し読んでみたいと思い始めたルイズ。その感情に答えるようにタバサが読んであげると呟いた。

「あんたが朗読するっていうの?」

 タバサは首を縦に振る。

「朗読会って訳ね。面白そうじゃない? タバサお願いするわよ」

 キュルケの言葉を皮切りにタバサの口から物語が紡がれる。


――むかしむかし、あるところにパスタの大好きな王子様がいました――

 旅先での朗読会。異世界で語られる物語が、目前に迫った嵐にかき消されてしまう。少女たちはそれを知らない。



Episodio 35

Il racconto della citta` di porto
港町の朗読会



Intermissione



 深夜、ラ・ロシェールが静まり返り始めた時刻。町外れに十数人の男たちが集っていた。それも一般人ではない。
 その出で立ちは鎧を纏い、剣を差し、ある者は槍を、ある者は弓を持っていた。曰く、彼らは傭兵と呼ばれる連中だ。
 そして彼らの前に佇む仮面をかぶった小奇麗な男。杖を持ったその姿は貴族であることが窺い知れる。

「旦那、要件は何ですか?」

 傭兵のリーダー格の男が仮面の男にそう切り出した。仮面の男は黙って袋を傭兵に投げ渡す。
 受け取った傭兵の男は、袋の重みと金貨が擦れる金属音に髭面を歪ませる。

「で、何がお望みで?」

 ニヤニヤと笑う傭兵に対して、仮面の男はある一軒の宿屋を指差す。

「殺せ」

 短く、そして明確な要望に傭兵たちの顔つきが変わる。そう、彼らはプロフェッショナルだ。瞬時に気持ちを仕事へと切り替えた。
 そして仮面の男の言葉を静かに待つ。誰を殺すのか…その言葉を。

「貴族だ。貴族を殺せ」

 殺す対象が貴族と告げられた時、彼らの中に動揺が走った。仮面の男は尚も言葉を続ける。
 彼らもその噂は知っていた。傭兵として各地を渡り歩いたものなら何度も聞く話しだ。
 貴族同士の争いや後取り問題といった厄介なものを、を金に物を言わせ、傭兵を使い、無理やり解決する貴族がいるという話を。
 だが、噂は噂でしかない。実際にそのような仕事を受けた傭兵など見たことがないのだ。
 これも噂だが、その仕事に失敗しても成功しても口封じとして殺されるという。また、ある噂では仕事に成功できれば大金と要職が得られるとも言われる。


「殺すのは五人いる貴族のうち三人だけだ。安心しろ、メイジと言っても学院に通っているような連中だ」

 話を聞いたリーダー格の男は唸る。命は惜しい、だが金も惜しい……悩み考える。例えこの仕事を断った所で目の前の男がはいそうですかとこの場を立ち去るとは思えなかった。
 ならば腹を括ろうと、リーダー格の男は未だ落ち着かない他の傭兵を一括し、動揺を鎮めると仮面の男に更なる報酬を要求した。
 それは報酬が増えれば怖気付く者がいなくなると考えたのか、それともただよくの皮が突っ張っているだけなのか……。

「いいだろう。一人殺せばこれだけやろう」

 仮面の男は指を5本立て、その要求を呑んだ。

「500エキューかよ」

 貰えないよりマシだが期待はずれな額に傭兵たちは口々に不満を洩らし始める。その顔からは、貴族を襲うことへの抵抗が消えていた。
 それは喜ばしいことなのだが、ただ目先の金のことばかり考える欲深いギラギラとした目が仮面の男を不快にさせるのだ。

「いや、5000エキューだ」

 不快感を露とも見せず、即座に正しい額を提示する。それを聞いた傭兵たちは喜び一気に湧き上がった。

「いいか、男のメイジと桃色髪の女は殺すな。多少手は出してもいいが怪我はさせるなよ」
「了解了解、キヒヒ」

 薄汚れた顔を綻ばせて取らぬ狸の皮算用。仮面の男は声を荒げて釘を刺さざるを得なかった。

「失敗を許すほど甘くはない。覚えておけ」

 浮かれ気分で答える傭兵に仮面の男は釘を刺す。
「わかってますよ。おら! 行くぞ」

 浮かれ気分で答える傭兵たちに仮面の男の声はあまり意味を解さなかった。しかし、リーダー格の男が鶴の一声、彼らの顔から笑みが消えた。
 寡黙に、迅速に隊列を組み、標的の泊まる宿へ向けて動きだした。

「それじゃぁ旦那、お財布握り締めて朗報を待ってな」

 ならず者集団から戦闘集団へと変容した彼らを仮面の男は見送ることもなく、その場から掻き消えていた。
 リーダー格の男はつまらない男だと吐き捨て、その場から走り去るのだった。

 殺意の渦が一筋の矢となり、少女たちへ突き進む。


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