あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ZERO A EVIL-05


あの決闘の後、ルイズの日常は大きく変化していった。

ルイズと決闘したギーシュは、一時は命の危険もあったが、水の秘薬と治癒の魔法のお陰で一命を取り留めた。
ギーシュを振ったはずのモンモランシーは、ギーシュが運ばれた医務室にすぐさま駆けつけ、付きっきりで看病していた。
ギーシュが目覚めた時など嬉しさのあまり泣き出してしまい、ギーシュを困惑させるほどだった。
回復したギーシュは、以前とは違い他の女の子に手を出すことはなくなり、今はモンモランシー一筋になっている。
自分を看病してくれたモンモランシーに惚れ直したようだ。二人の仲睦まじい姿は、多くの生徒に羨ましがられていた。
ギーシュにとっては正に怪我の功名といったところだった。

幸せいっぱいのギーシュは決闘の事などすっかり忘れていたが、他の生徒達はそうはいかない。
あの決闘を見たり、聞いたりした生徒達のほとんどが同じ事を考えていた。

“次は自分の番かもしれない”

ルイズはギーシュのワルキューレを破壊できるほどの力を持っているし、何より恐ろしいのはあのスピードだ。
メイジが魔法を使うには詠唱をする必要があり、それには少し時間がかかる。
あのスピードで突撃されたら、詠唱中に攻撃を食らってしまい、ギーシュと同じように医務室行きだろう。
奇襲をかければ勝てるかもしれないが、失敗した時は自分の命が危ない。
そんな命懸けの戦いに挑む生徒がいるわけもなく、多くの生徒が導き出した結論はルイズを避ける事だった。
それは陰でルイズの悪口を言っていた平民達も同じだった。

教師達もルイズに対して避けるような対応をする者が多かった。
決闘の後にルイズは学院長室に呼ばれたが、注意を受けただけで何の処罰もなかった。
オスマンは、ギーシュがルイズを侮辱していた事、決闘はギーシュから申し込んでいる事、ギーシュの命に別状が無い事等を罰しない理由に挙げていた。
だが、以前からオスマンはルイズを贔屓目で見ていると思っている教師も多かったので、納得のいかない者も少なくなかった。
結果として、ルイズを避ける教師が増えてしまったのである。

こうしてルイズは、馬鹿にされる事はなくなったが、みんなに恐れられ避けられる存在になってしまった。

そんなルイズに対して、今までどおりに接する者もいた。
ルイズの隣の部屋に住んでおり、ルイズの事をよくからかっていたキュルケだ。
生徒達の間では、ギーシュの次に医務室送りにされるのはキュルケだろうと噂されていた。だからきっと、キュルケもルイズを避けるだろうと誰もが思っていた。
だが、そんな予想とは裏腹にキュルケのルイズに接する態度はいつもと変わらなかった。
むしろ、魔法は使えなくてもそれを補えるような力を隠し持っていたルイズに対し、『微熱』の二つ名を持つキュルケは対抗心を燃やしていた。
最近は親友である青い髪で無口な少女、タバサに付き合ってもらい魔法の特訓をしているようだ。

そして一番の変化といってもいいのは、メイドのシエスタがルイズの側によくいるようになった事だ。
ルイズの事を放っておけないシエスタが、よく世話を焼くようになったからである。
他のメイド達がルイズを怖がって近づかないため、まるでルイズ専属のメイドのように見える。
最初は戸惑っていたルイズだったが、自分の事を信じると言ってくれただけでなく、優しく抱きしめてくれたシエスタと仲良くなるのに時間はかからなかった。
今では、シエスタはルイズの事を親しみを込めて「ルイズ様」と呼んでいる。
ルイズはシエスタにそう呼ばれて嬉しいはずなのだが。

「貴族を名前で呼べるのは光栄な事なのよ。あ、あなたの忠誠心に答えて許可してあげるんだからね」

と、またしてもプライドが邪魔をして素直な気持ちを言葉にすることはできなかった。
だがシエスタは、素直になれない不器用なルイズの性格を知っていたので、特に気にもしなかった。
そんな感じで二人の関係は良好だった。特にルイズは、この学院に来てからほとんどしていなかった親しい人との会話を楽しんでいた。

あの決闘以来、左手のルーンが光を放つ事も、不思議な力を発揮する事もなかった。
使い魔の石像も変化は無く、今では多くの生徒達に待ち合わせ場所の目印に使われていた。
そして、あの不思議な夢も見ることはなかった。

だが、ある日の夜。
ルイズは寝る前にシエスタに髪を梳かしてもらっていた。
桃色がかったブロンドの長い髪はルイズの自慢であり、毎日の手入れは欠かせないのだ。最近はシエスタに髪を梳かしてもらうのが日課のようになっていた。
髪を梳かし終わったシエスタを見送るために部屋の外に出ると、そこをキュルケに目撃されてしまった。

「あら、ルイズじゃない。今日もお気に入りのメイドをはべらせてご満悦みたいね」
「こ、この子はそんなんじゃないわよ!」
「ふーん。男が寄り付かないから、てっきりメイドの女の子に手を出してるのかと思ったわ」
「どうしてそうやっていやらしい事しか考えられないのかしら。これだからゲルマニアの女は嫌なのよ!」

いつものように口げんかが始まり、側にいるシエスタはおろおろするばかりだった。

「まあ、あなたのような貧相な体じゃ色恋沙汰とは無縁でしょうけど」
「ななな、なんですって!」
「本当の事を言っただけじゃない。精々これからの成長に期待でもしなさいな、それじゃあね」

そういってキュルケは自分の部屋に入っていった。後には悔しがるルイズとシエスタだけが残される。

「な、何よ、あの女! ちょっと人より胸が大きいからって!」
「ルイズ様、女は外見より中身で勝負ですよ!」

シエスタは励ましてくれるが、自分より胸が大きいシエスタに励まされても嬉しくなかった。

シエスタと別れた後、着替えて眠ろうとするが、苛々しているせいでなかなか眠ることが出来ない。
今日は嫌な夢を見そうな予感がした。


ルイズは夢を見ている。
前と同じ不思議な夢を……

夢の中のルイズは葉巻を咥えた大男だった。
ルイズには多くの子分達がおり、無法者の荒くれ集団クレイジー・バンチと呼ばれ恐れられていた。
ある時、サクセズ・タウンという街に金があるという噂を聞きつける。
ルイズは金を手に入れるために子分達と街に訪れ、街の住民達の生活を脅かしていく。
だがある日、街に行っていた子分のパイクがある男に敗れて逃げ帰ってきた。
別行動していた他の子分二人も、その男と後から現れたもう一人の男に敗れたと聞き、ルイズの怒りが燃え上がる。
ルイズは復讐の為に、子分達全員を引き連れてサクセズ・タウンに向かった。
たった二人に自分達が負けるはずがない。それに自分には最強の武器であるガトリング銃がある。
ルイズは自分達の勝利を確信していたが、街に入った瞬間予想外の事態が起こる。
街には罠が仕掛けてあったのだ。ルイズは罠のせいで多くの子分を失ってしまう。
数少ない残った子分達と二人の男に戦いを挑むがルイズは敗れてしまう。
敗れたルイズは本当の姿へと戻っていく。
ルイズの正体は、スー・シャイアンの連合軍によって全滅させられた第7騎兵隊の生き残りの馬だった。
馬に死んだ騎兵達の恨みと憎しみが宿り、ルイズが生まれたのだ。

場面が切り替わり、ルイズの姿も変わる。
次のルイズは拳法家であり、義破門団という拳法家集団の頭領を務めていた。
義破門団に仲間意識は無く、ただ同門なだけであり信頼関係などとは無縁であった。
同門であっても隙があれば命を取られる。真の強さとは、そこまでしなければ求められないとルイズは思っていた。
義破門団の他にも、大志山という山に拳法使いの老人が居り、心山拳という拳法を弟子達に教えていた。
肉体より精神に重きを置き、人としての強さを追及する心山拳は、ルイズの考える強さとは正反対であった。
自分とは違う強さの考え方を持つ心山拳の老師とは、いつか戦う事になるだろうとルイズは思っていた。
そして、その機会は意外と早く訪れる。心山拳の老師がいない隙をついて門下生達が、老師の弟子達を襲ったのだ。
弟子の仇を取る為に、老師と生き残った一人の弟子がルイズ達に戦いを挑んできた。
老師と弟子の力はかなりの物で、義破門団の精鋭達が次々と敗れ去っていく。
そして遂に、老師と弟子はルイズの前までやってくる。ルイズも暗殺拳の使い手の二人を呼び出し、最後の戦いが始まろうとしていた。
だが、老師は暗殺拳の二人と戦い始め、ルイズの相手を弟子に任せたのだ。
ルイズはこの若い弟子が自分に勝てる訳がないと思っていた。
しかし、老師は弟子に心山拳の奥義「旋牙連山拳」を託していたのだ。弟子が放つ奥義を喰らいルイズは敗れてしまう。
ルイズを倒した弟子は、力を使い果たした老師の最後を看取り、老師の死に涙を流していた。

そしてまた場面が切り替わる。
だが今度のルイズは今までと違い、山の頂上のような高い場所で下にいる二人の人物を見ているだけだった。
一人は金髪の剣士風の男、もう一人は長い黒髪のメイジ風の男だった。
どうやら黒髪の男が金髪の男に一方的に話しかけているようだ。黒髪の男の話は、金髪の男に対しての恨み、妬み、憎しみに溢れていた。
そして、黒髪の男は最後の言葉を言い放つ。それは、金髪の男への憎しみが込められた魂の叫びだった。

「あの世で俺にわび続けろ、オルステッドーーーーッ!!!!」


その言葉を聞いた瞬間、ルイズは跳ねるようにベッドから飛び起きた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

まるで全速力で走った時の様に息が乱れている。
男の最後の叫びは、忘れる事ができないほどの衝撃をルイズの心に与えていた。ベッドの上で息を整えようとするが思うようにいかない。
男の一方的な会話を思い出そうとしたが、その部分だけがまるで霞がかかったようにぼやけており、思い出す事ができない。
だが、オルステッドと呼ばれた金髪の男に憎悪の感情をぶつける男の姿は鮮明に思い出す事ができた。
あそこまで誰かを憎んだ人間を見るのは初めてだった。
ふと、自分も我を忘れてギーシュを殺しかけた事を思い出す。シエスタのお陰で今まで忘れていたが、一歩間違えれば自分は人殺しになっていたのだ。
そう考えると急に体が震えだす。
ベッドの上で息を整えながら、両手で自分の震える体を抱きしめていると、無性にシエスタに会いたくなった。
シエスタに抱きしめてもらいたいと考えている自分に情けなさを感じるが、自分一人では体の震えは止まりそうもなかった。
幸い今日は虚無の曜日なので、授業は休みである。
ルイズは着替えを済ますと、シエスタに会うために部屋を後にした。

しばらく探し歩いていると、食堂でシエスタを見つけることができた。
思わず走りだしそうになるが、何とか踏み止まり、小走りでシエスタに近づいていく。

「おはよう。シエスタ」
「あ、ルイズ様。おはようございます」

笑顔であいさつしてくれるシエスタを見た瞬間、体の震えも止まり、夢のせいで陰鬱だった気分も晴れやかなものになっていく。
顔には無意識に笑みが浮かんでいた。

「何かいいことでもありましたか?」
「どどど、どうして!」
「いえ、朝から嬉しそうな表情をしていらしたので」
「べ、別になんでもないわよ。シ、シエスタに会えたから嬉しかった訳じゃないんだからね!」

恥ずかしくなったルイズは慌てて否定するが、誰が聞いても本音を喋っているようにしか思えなかった。

「そうですか。それより、朝食がまだでしたらすぐご用意できますよ」
「あ、うん。お願いね」

ルイズは、シエスタが厨房に向かって歩いていくのを眺めながらある事を考えていた。
シエスタに会って少し話をしただけで、あの夢も自分の身に起こっている不思議な事も忘れることが出来る。
ルイズはシエスタに心から感謝すると共に、シエスタが自分にとって大切な存在になりつつあるのを感じていた。

ちょうどそのころ、学院長室ではオスマンとコルベールが難しい顔で話し込んでいた。

「どうじゃね、ミス・ヴァリエールの様子は?」
「あの決闘騒ぎ以来、特に問題は起こしておりません」
「そうか。彼女のルーンがガンダールヴの印だと君から報告を受けた時はどうなるかと思ったが、どうやら心配のしすぎだったようじゃの」

ルイズとギーシュの決闘が行われていた時、オスマンはコルベールからルイズのルーンについての報告を受けていた。
コルベールの調べでは、ルイズのルーンは伝説の使い魔『ガンダールヴ』の印と同じであるらしい。
だが、始祖ブリミルと共に闘った伝説の使い魔のルーンが、使い魔の主人であるルイズに刻まれているのは不可解であった。
二人がそのことについて議論をしていると、オスマンの秘書であるミス・ロングビルが何やら慌てた様子で学院長室に入ってくる。
ルイズが決闘でギーシュに重傷を負わせ、その場から逃走したというのだ。
その後、ルイズやその場にいた多くの生徒達から事情を聞いたオスマンはルイズを処分しない事を決める。
教師達の反発も予想されたが、『ガンダールヴ』のルーンの事を公にするわけにはいかなかった。
この事が王宮に知られてしまえば、ルイズが戦争の道具に使われてしまう可能性もある。オスマンはそれだけは避けたかった。
結果として、ルイズは生徒だけでなく教師にまで避けられるようになってしまったが。

「最近はメイドの一人と仲良くしているようで、笑顔で話している姿も見かけますな」
「それは良かった。あのままではミス・ヴァリエールが不憫すぎるからのう」

ルイズが一人で孤独に過ごしているのを不憫に思っていたオスマンは、ルイズを理解してくれる者がいることを我が事のように喜んでいた。

「ところでオールド・オスマン。例の王宮からの知らせについてですが」
「うむ。土くれのフーケという盗賊がトリステインを荒らしておるという話じゃったな」
「ええ。魔法学院の宝物庫も狙われる可能性があるので注意するようにと」
「宝物庫には強力な固定化の魔法がかけられておるし、外壁自体も頑丈に作られておる。あまり心配はいらないと思うがの」
「あの壁を破るとなると、相当な物理衝撃が必要ですからな」

トリステイン魔法学院の宝物庫は強固な守りを誇っている。フーケがいかに優れた盗賊であろうとも、簡単に突破できるものではなかった。

「連中が心配しているのは“破壊の杖”じゃろうな」
「危険すぎるので厳重に保管するようにと王宮から託された物ですな」
「あの杖の破壊力は人が使っていいものではないからのう。盗賊なんぞに奪われたら一大事じゃわい」

そんなオスマンとコルベールの会話を学院長室の前で盗み聞きしている者がいた。
オスマンの秘書ミス・ロングビルだ。だが、その正体はオスマン達が話していた土くれのフーケその人であった。


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