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ゼロと人形遣い-10



ゼロと人形遣い 10



マルトーの絶叫に反応して、厨房に居た使用人達が慌しく動き出した。
マルトーとリタに話を聞きに行く者。
食堂と繋がる扉から様子をうかがう者。
その誰の表情にも、不安と恐怖が浮かんでいる。

阿柴花と一緒に皿洗いをしていたソリスは、マルトーとリタの声を聞くと一目散に二人の所に走っていった。
すでに二人の周りには人だかりができている。
阿柴花は少し迷ってから、扉の方に歩いていく事にした。
こちらも、結構な人数が集まっている。
やや後ろから覗いてみるが、食堂が広いせいで状況がよくわからない。
金髪のガキが一人立って騒いでいる様だが、その内容までは聞き取ることが出来ない。
近くに、先程紹介されたばかりのコックがいたので話しかけてみた。

「あ~、えっとウォーケンさん?」
「んっ、なんだアシハナかよ」

名前は間違っていなかったようだ。

「こりゃあ、何の騒ぎなんですかい?」
「なんのって・・・、シエスタが危ないんだよ!マルトーさんの話を聞いてなかったのか!」
「いや。それは聞いてたんですがね。こんなに慌てるような事なんですか?たかだかガキの一人を怒らしたくらいで」
「たかだかって・・、貴族を怒らしたんだぞ。殺されたって文句も言えないじゃないか」
「はぁ、そういうことですか・・・。まぁ、斬り捨て御免ってやつですかねぇ」

ウォーケンは胡散臭そうに阿柴花を見たが、すぐに食堂の方に視線を戻した。
阿柴花は、煙草に伸びかけた手を抑える。
無性に煙草を吸いたくてしょうがないが、なんとか我慢する事ができた。
行き場を無くした手を誤魔化す様に頭を掻いた。
少しの間、食堂のほうを見ていたがため息をひとつする。
いつまでも見ていてもしょうがないので、皿洗いに戻ることにした。

『シエスタには悪いですが、仕事の一環でしょうしね。最悪殺される可能性もあるんでしょうが、運が悪かっただけでしょうよ』

どんな結果になったとしても運しだいだろう。
我ながら外道だなと思いながら振り返った。

その時、計ったようなタイミングでソリスが寄って来た。
その顔には、明確な怒りが刻まれている。

「ソリス、どうでしたか?」
「聞いてくださいよアシハナさん!貴族ったら酷いんですよ!」
「はいはい、聞いてあげますから、もっと落ち着いてくださいよ。せっかくのベッピンさんが台無しじゃないですか」
「へっ!―――いや、ふざけてる場合じゃないんですよ!」

先程とは別の理由で顔を赤くしながらソリスは叫んだ。

「ははっ、その方が似合ってますよ。それで、どうしたんですかね?」
「もうっ、からかわないでください」

別にからかっている訳でもない。
ソリスの年齢は16,7だろうか。
肩を少し超えるくらいに伸ばされた栗色の髪は、青色のリボンでひとつにまとめてあり、髪が動くたびに見え隠れするうなじはなかなか色っぽい。
顔は美少女と言うほどではないが、髪と同じ栗色のたれ目で愛嬌がある。
胸も平均並でBくらいだろう。
背は高くないが、全体的にバランスの取れた体型をしている。
まあ、阿柴花としてはある程度成熟した女が好みなので、可愛がりはしても手を出すことはない。

迫力のない表情で怒りながら、シエスタの責められている理由を話してくれた。

「へぇ、そんな理由で」
「そうなんですよ。信じられません!」

始めは、シエスタが些細なミスをして、それを責められているのだと思っていた。
だがソリスから聞いた所、シエスタは何のミスもしていないらしい。
それどころか、たんなる貴族の八つ当たりだった。

「くだらない理由ですねぇ」

率直な感想だった。
ただでさえ学校という限られた環境しかも全寮制、そんな状況で二股をしようなどとは呆れるほかない。
本来ならどうでもいい事だが、昨日から溜まっている鬱憤とシエスタへの恩義、この二つと今後展開を天秤に掛けてみようとした。
だが、そんなものは比べるまでも無い。
退屈は大嫌いだし、結局はなるようになれが自分の信条だ。
危なくなったら逃げればいいし、ルイズを盾にしてもかまわないだろう。

それになによりも、いい女は泣くべきではない。
いい女が泣いていいのは、別れの時とベッドの中でと決まっている。

「ありがとさん。まあ、シエスタが戻ってきたらしっかりと慰めてあげなせぇ」
「はい。そうしますね」
「そんじゃあ、アタシは用事ができたんでちょっと行ってきますよ」
「えっ?用事ですか」

不思議そうにしているソリスの頭を軽く撫でてから、

「なに、似合いもしない正義の味方ってやつですよ」

食堂へ扉に歩いていった。




シエスタはアルヴィーズの食堂の、二年生の集まる長テーブルで土下座をしていた。
きっかけは些細な間違いだった。
いや、間違えともいえない事が原因だった。

確かに、今日のシエスタは浮かれていた。
その理由は、一人の男性にあった。
見た目は少し怖いが、飄々としていて、自らの主人にも立ち向かえる。
そんな強さを持ちながら、話をしてみると優しげな感じのする、不思議な相手だった。
貴族であり公爵家ヴァリエールの令嬢ルイズの使い魔として召喚された阿柴花という男性。
一目惚れと言うほどではないが、一目見たときから気になっていた。

阿柴花の事を考えながら、いつも通り給仕の仕事をこなしていた。
すると、すぐそこに座っていた貴族ギーシュ・ド・グラモンのポケットから小瓶が落ちた。
それを失礼の無いように拾ってギーシュに返した。
しかし、ギーシュは自分の物ではないと言ってくる。
確かに落としたのを見たと言い返すと、そのやりとりに気付いた周りの貴族が騒ぎ出した。
その後の展開はよくわからない。
ギーシュの二股がばれ、その相手の貴族に振られ、気が付いたら自分が悪い事にされていた。
理不尽であるが、文句を言うとさらに酷い事をされるかもしれないし、最悪殺されてしまうかもしれない。
周りの貴族が助けてくれるはずが無いし、仲間の使用人たちは無力だ。
シエスタは、ただ嵐が過ぎ去るのを待つように土下座しながら身に覚えの無い謝罪を続けるしかなかった。

ギーシュの叱責の声が止んだ。
やっと終わったのか思った瞬間、急に体が持ち上げられた。

「ひぃ!」

まさか気が済まずに暴力を振るってくるかと思い目を硬く閉じた。
だが痛みはこない。
恐る恐る目を開けると、すぐ近くに阿紫花の顔があった。

「アッ、アシハナさん!」
「やあシエスタ。いつまでもつまんねえ奴の相手をする必要はありませんよ。このガキどもと違ってアンタにはまだ仕事があるでしょうに」

ウィンクをしながら言ってくる。
シエスタが混乱で何も言えないでいると、

「さっさっと仕事に戻りまやしょう。あ~あっ、こんなに服を汚しちまって」

そう言いながら、軽くスカートはたいてくれた。
そのままその場を去ろうとするが、鋭い声がかかった。

「待ちたまえ!僕に許しも無く勝手に帰ろうとは、平民の癖にいい度胸だね」

阿柴花に無視されるような形になっていたギーシュが、二人を睨みつける。

「そりゃあ、すみませんでしたねぇ。まあ、貴族さまもあんだけ言えば満足したでしょう」
「ふんっ、まあいい。そっちのメイドは反省しただろうから、ここら辺で許してやるとしよう。次からは、気をつけたまえ」

大げさな身振りをしながら言ってきた。

「そりゃあ、ありがたいこって。シエスタ行きやしょう」
「はい・・・」

シエスタは、まだ混乱していたがなんとか返事だけはできた。
そのまま二人が厨房に戻ろうとしたが、

「だが!君は行かせないぞ。」

また大げさに身振りして阿柴花を指差した。

「へぇ、アタシになんか御用ですか」
「さっき聞き流しかけたが、僕たち貴族の事をつまらない奴とはどういうことだね?平民の分際で随分な口を利くじゃないか」
「そりゃあ、すみませんでしたねぇ。生憎と学の無い平民なもんで」
「ふんっ、自分の事をよくわかっているようだね」
「ええ、そうですよ。どうにも貴族様たちと違って嘘で取り繕うのが苦手でねぇ」

その言葉にギーシュの眉が動いた。

「ほう・・・、では君は貴族を侮辱したという事になるが、それでいいんだね?」
「侮辱?よしてくださいよ。アタシは侮辱なんてしませんよ」
「では、さっきの言葉はどういう事だい?」

額に青筋を浮かべながら質問してくる。

「いやねぇ。満足に女も笑わせてやれねぇガキが、あんまりにも惨めだったもんで。別に貴族を馬鹿にしてる訳じゃありませんよ」

いままで阿柴花を睨んでいた周りの貴族達は、その言葉を聞いて爆笑しだした。
自分が笑われる立場になったギーシュは、

「つまり君はこのギーシュ・ド・グラモンを侮辱しているということか!」

叫びながら、自分の杖であるバラの造花を突きつけた。
普通の平民だったならば、それだけで怯えていただろう。
だが阿柴花は気にした様子も無く、

「ギーシュ?アンタの名前はギーシュっていうんですか?」

見当違いなことに驚いているようだ。
その反応に、この平民はやっと自分がグラモン家の者だと気が付いたのだと、ギーシュは勘違いした。

「やっと自分の失態に気が付いたようだね。まあいい、今なら誠心誠意謝れば許してやらなくもない。平民らしく土下座でもして許しを乞うんだね」

この平民はむかつくが、さっさとこの場をお終いにしてモンモランシーとケティを追いかけたい。
内心は焦っていたので、妥協案を出してやる。
だが阿柴花は、

「ギ-シュ・・・ギーシュですか。クックックッ・・・聞けば聞くほど似てますねぇ」
「なに、僕の名前のなにが可笑しいんだ?」

あろう事か笑い始めた。
ギーシュは、自らの家名を笑われたと思い声を荒げた。

「いやなに、大した事じゃありませんよ」
「質問に答えろ!名誉あるグラモン家を笑うとはいい度胸だ!」
「ああっ、違いますよ。苗字のグラモンとかいうんじゃなくて、アンタの名前が知り合いに似てたもんで可笑しくてね」
「僕の名前が?・・・まあいい、気分は悪いがそういうこともあるだろう。だが、そいつも見下げた奴のようだね。君のような男に笑われているなんて」

なんとか矛先は収めた。
しかし、阿紫花ののらりくらりとした態度に我慢できず嫌味を言う。

「確かに尊敬できるような人ではありませんでしたがね。でも、少なくともアンタより勝っていた事がありましたよ」
「なんだと、この僕が平民風情に劣っていることがあることか!」

いまにも切れそうなのを抑えながら、怒りを押し殺して叫ぶ。

「とりあえず女の扱いだけは天と地の差ですよ」

もう限界だった。
食堂全体にギーシュの声が響き渡る。

「決闘だ!!!」


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