あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ベルセルク・ゼロ-15


 時間はおよそ午前の10時。
 昨夜体が鈍らぬよう剣を振った後、ルイズの部屋の壁に背を預け、朝日が顔を出す頃にようやく眠りについたガッツだったが、がさごそと部屋を漁る音に目を覚ました。
 音のするほうに目を向けると、この時間には授業に出ているはずのルイズがタンスを漁っている。
「……何してんだ?」
 ルイズの顔がぐりんとガッツのほうを向く。ルイズは一瞬、起こしてしまったかとバツの悪そうな顔をしたが、すぐに興奮した面持ちになった。
「姫殿下がこの魔法学院にいらっしゃるのよ!!」
 ルイズはタンスの奥からパリッと折り畳まれた制服一式を取り出した。
 どうやらいつも着ているものより質のいい、こういった機会用の余所行きらしい。
「姫殿下ってお姫様のこと?」
 興味をそそられたらしいパックが口をはさんできた。
「そう、トリステインが誇る美貌の王女、アンリエッタ様がいらっしゃるの!!」
「アンリエッタってあのいかにも箱入りって感じのお嬢ちゃんか? へん、そんな騒ぐほどのもんかねえ?」
 今度はガッツのすぐ横に立てかけられたデルフがカタカタと鞘を鳴らす。
「姫様の悪口は許さないわよさびさび! まあ、錆びた鉄くずには姫様の気品はわからなくてもしょうがないけどね!!」
「ああわからんね。なんたっておりゃ鉄くずだからね。目の前にいる娘さんも偉い貴族のご息女らしけど、ケツの青い小娘にしか見えないね」
「なんですってこのナマクラ!」
「加えてヒス持ち、もう目もあてれんね」
「こらこらケンカしないの」
 パックが火花を散らすルイズとデルフの間に入り二人を、正確には一人と一本をなだめにかかった。
 ふん、と鼻をならしてルイズは開きっぱなしだった引き出しに手をかける。
「あ……」
 その時、リボンで飾り付けされた包みが目に入った。トリステインの城下町で購入したガッツへのプレゼントだ。
 結局なんだか機会に恵まれず、今まで渡すことが出来ずにここに仕舞われたままになっていた。
 ルイズは唇をぎゅっと結んだ。
 何も特別なことはない。これは主人に貢献した使い魔への労いで、それ以上の意味なんて決して無い。無いったら無い。無いんだってば。
 だから、何もこんな緊張することはない。いい機会、それは今。さっと渡してしまって、それで終わり。
 何故かこみ上げてくる恥ずかしさをぐっと噛み殺して、ルイズは包みに手を伸ばした。
「ルイズ」
「ッ!! な、なな、な、何ッ!?」
 反射的にバンッ!と音を立てて引き出しを閉める。
 振り返るとガッツがドアノブに手を伸ばしていた。
「ど、どこいくの?」
「コルベールの所だ。前から一度話をしたいと言われててな。今日は授業ってのはねぇんだろ? いい機会だ。ちょっと行ってくる」
「へ、部屋わかるの?」
「一応道順は聞いた。何とかなるだろ」
「あ、ちょっと!」
 バタン、とドアが音を立てて閉まる。ルイズは頬を膨らませた。
「もう!! 主人の許可も無しに勝手に動いて!! 使い魔としてなっちゃいないわ!!」
 ルイズは顔を赤くして怒りながらブラウスに手をかけ、ボタンを外していく。
「ルイズぅ~。あれ一体いつになったら渡すのさ」
「うるさいッ!!」
 パックの言葉に噛み付かんばかりに反応して、ルイズは乱暴にブラウスを脱ぎ捨てた。
「包みを渡すだけのことが何で出来ないのかねぇ。今までも渡そうとするたんびに顔を赤くして、もじもじして、結局渡せてないんだもんな。まったく、人間の娘っ子が考えることは俺にゃわからんね。摩訶不思議だね」
「うるさい、うるさい、うるさ~いッ!!!! 黙んなさいよこのオンボロ剣!!」
 ルイズは壁に立てかけられたデルフを思い切り蹴り上げた。
「~~~~ッ!!」
「そりゃあ痛ぇだろ。オンボロったっておりゃ鉄の塊だからね」
「やれやれ……」
 パックは涙目になって足を押さえてうずくまるルイズに飛びよって、その羽から光り輝くりん粉を振り撒くのであった。

「いやぁよく来てくださいました」
 アポ無しで訪ねてきたガッツを、コルベールは快く部屋の中に招き入れた。
 ガッツはルイズやキュルケの部屋とは随分趣が異なるその部屋に軽く目を走らせる。部屋中に何だかよくわからないガラクタが散らばっていて、机の上も書物や羊皮紙が乱雑に積み上げられている。
 どうやらコルベールはあまり整理整頓に頓着しないタイプらしい。
 机の上に開きっぱなしになった本のページに、ガッツの首筋に刻まれた『生贄の烙印』が描かれているのが目に入った。
「どうぞその椅子にお座りください」
 勧められた椅子にガッツが腰掛けると、目の前のテーブルにティーカップが置かれた。
 コルベールが所持していたというにはいささか意外な、薔薇の柄が刻まれた淑やかな雰囲気のカップだ。
「粗茶ですが」
 ティーカップに紅茶が注がれる。十分に熱を持った琥珀色の液体から、芳しい香りと白い湯気が立ち昇る。
 コルベールの一連の所作は、この部屋の住人には似つかわしくなく、優雅であった。ガッツはそんなコルベールに実に怪訝な目を向けると、ティーカップを手に取った。
 一口口をつけ、
(趣味じゃねぇな)
 と、あっさりカップを戻す。
「何か新しいことはわかったか?」
 本題を切り出す。コルベールはオスマンの命により『烙印』が記載された古文書の解読に当たっているはずだった。
 今のところ、帰るための手がかりを掴むには、このコルベールに頑張ってもらうしかない。
 コルベールはぽりぽりと額を掻いた。
「お恥ずかしい話ですが、どうにも行き詰っておりまして。それで、私も少しは参考になればと、あなた自身からその刻印の話を伺いたいのです」
 なるほど、確かに烙印の意味を知っているのといないのでは、解読の効率は天と地ほどの差があるだろう。烙印の意味さえ知っておけば、未知の言語とはいえ、単語の意味をある程度推測することが可能になるからだ。
 ガッツはなるべく事細かに自分が烙印について知っていることをコルベールに伝えた。
 烙印のことを語る上で、あまり触れたくない過去についても多少は語らなければならなかったが、背に腹はかえられない。
 ガッツの話を聞き終えたコルベールは顎を押さえてうむむ、と呻った。
「ゴッドハンド…そして、使徒……? いやはや、俄かには信じられぬ話ですな。極めつけに……」
 コルベールの目が鋭くガッツを捉える。
「君が異世界からの来訪者……とはね」
「嘘は言っちゃいねえぜ」
「いえ、疑ってはいませんよ。あなたの話が本当なら、この書物もおそらく異世界の書物。見たこともない文字で書かれていたのも納得いきますからね……ただ……」 
 コルベールはふるふると首を振るとため息をつき、苦笑いを浮かべた。
「異世界のものとなると、これは解読がさらに困難に思えてきましたね」
「すまねえな」
「いえいえ、お気になさらず。私自身、楽しんでおりますから」
 そんなコルベールの言葉に、ガッツも笑みを浮かべた。
 すっかり冷めてしまった紅茶を一息で飲み干して、立ち上がる。
「それじゃあまた何かわかったら教えてくれ」
「ええ。あ、ガッツ君」
 コルベールはドアノブに手をかけたガッツを呼び止める。
「なんだ?」
「ディテクト・マジックという魔法がありましてね。対象としたものの魔力を感知する魔法なのですが……実は前に一度、その烙印にその魔法をかけています。その時はまったくの無反応だったのですが……死霊を呼び寄せるというその力…今は、どうなっています?」
「この世界に来てからは一度も出てきちゃいねえ」
 再びコルベールは顎を押さえ、考え込んだ。
「既にその烙印は効力を失っているのか、ただこの世界では影響力を持たないだけなのか……願わくば前者であれと思います」
 窓から差し込む光を背中に受けて、コルベールはガッツを真っ直ぐ見据え、優しげに目を細めた。
 そんなコルベールに、ガッツはふっ、と笑みを浮かべた。
「ありがとよ」
 短く言って、ドアノブに手をかけて、最後にもう一度振り返る。
「俺からもひとつ聞いていいか?」
「なんでしょう?」
 ガッツの視線がコルベールの頭部に向けられる。
 ガッツは呆れ気味に口を開いた。
「何なんだその頭は?」
 ガッツの問いに首をかしげるコルベール。その頭で、馬鹿でかいカツラが揺れていた。

 正午を過ぎた頃、魔法学院の正門にトリステイン魔法学院の全生徒、全職員が集結していた。予定ではあと三十分もしないうちに王女一行が到着することになっている。
 コルベールを筆頭とする職員たちが熱心に生徒の列を整え、生徒たちも自分の服に乱れがないか、杖にゴミが付着していないかと入念にチェックをしていた。
 だが、そんな周囲の状況を冷めた目で見ている者たちもいくらかいた。
 他国の出身でアンリエッタにさほど興味を持たないキュルケ、タバサなどがその類である。
 二人にとってはこんな式典などつまらないだけだ。こんな時でも本を手放さないタバサなど、時間の無駄だとすら思っていることだろう。
 キュルケは自分の少し前で馬鹿みたいにはしゃぐギーシュを冷めた目で見つめた後、ため息をついた。
「ねえルイズ。ダーリンはどこに行っちゃったのよう」
 あまりにも退屈なので、後ろにいるルイズに声をかける。
「うるさいわね! こっちが聞きたいわよ!!」
 ルイズはそんなキュルケに向かって目を剥いて怒鳴った。
 そう、今この場にガッツの姿は無い。もちろんルイズはガッツを連れてこようとしたのだが、ガッツは「興味がない」の一言でルイズの制止も聞かず、どこかへ行ってしまったのである。
 湿布を貼った右足の向こう脛がずきずき痛むのもあって、ルイズは随分ご機嫌ナナメだった。
「やあねぇ、ちょっと尋ねただけで怒鳴るなんて。本当にトリステインの女って器量も胸もちっちゃいのね」
「なぁんですってぇ!! 淫乱不徳のゲルマニア女には言われたくないわよ!!」
「ほんとやだやだ。声と態度ばっかり大きくて。ヴァリエールの娘からしてこれじゃあ王女様ってのも底が知れるわね!」
「もう一度言ってみなさいタレ乳!!」
「言ったわねゼロ乳!!」
「ほらほらしゅーりょーしゅーりょー。ものっすごい見られてるよ二人とも」
 ヒートアップする二人の間にひらひらとパックが舞い降りる。
 パックの言葉の通り、周囲の視線がルイズとキュルケに集中していた。
 遠くでは『風』属性の教師を務めているミスタ・ギトーが物凄い形相でこちらを睨みつけている。
 キュルケもギトーを不機嫌そうに睨みつけて、ふん、と鼻を鳴らした。
「あのおっちゃんと何かあったの?」
「別に何も無いわよ」
 パックの問いに、キュルケは何でもない様に手をひらつかせる。
 ルイズが目を細めてキュルケを嘲るように肩をすくめた。
「何言ってんのよ。無様に吹っ飛ばされたくせに」
「何か言ったかしらルイズ?」
「いいえ別に?」
 ガラガラピシャーン!!
 再びキュルケとルイズの間に雷鳴が響き渡った。
「あーもーやめときなって! ほらもうめっちゃ見られてんじゃんかあ!!」
 刺すような教師たちの視線にさらされて、パックはこれはたまらないと二人を止める。
 普段ならおもしろがって煽るところだが、これが姫様来訪効果なのか、周囲の雰囲気の尖り様は凄まじく、とてもそんな気にならなかった。

 我関せずと本を読み続けていたタバサが、その手に持った本をぱたりと閉じる。
 まるでそれを合図にしたかのように、そこにいる全ての者達は直立不動の姿勢をとった。
 トリステイン魔法学院から城下町まで敷き詰められた石畳の上を通り、煌びやかに飾り付けられた馬車が正門に近づいてくる。馬車にはトリステイン王家の紋章が掛けられている。その馬車を曳く馬の額からは一本の角が生えている。伝説の幻獣ユニコーンだ。
 馬車の周囲を勇壮な騎士団が取り囲み、馬車の上空を鷲の頭と獅子の体を持つ幻獣グリフォンに跨ったグリフォン隊が飛び回る。
 トリステイン王女、アンリエッタのご到着であった。
 馬車から姿を現したアンリエッタに生徒たちの歓声が飛ぶ。
 当年とって御年17歳、すらりとした気品ある顔立ちに薄いブルーの瞳を輝かせる彼女は、成程、美貌の王女と称えられるにふさわしい少女であった。
 そんな彼女が手を振ると、少年たちは熱狂し、壮年の教師たちですら頬を赤らめた。生徒の中には感激しすぎて腰砕けになる者もいる。
 タバサがそちらに冷ややかな目を向けるとその生徒はギーシュだった。
 そんなギーシュをさらに冷ややかな、絶対零度の瞳で見つめるモンモランシーの姿も見える。
「修羅場」
 タバサはぽつりと呟いた。
「おぉ~、確かに綺麗なお姫様だね」
 パタパタと羽を振り、パックは感心したように声を漏らした。
「そお? あたしのほうが魅力的だわ」
 キュルケは自信満々に己の赤髪をかきあげる。
「まあ確かに、色気はキュルケのほうがあるかもね」
「でしょう? 見る目あるわねパック」
(一歩間違えれば痴女だけど)
 パックはそんなキュルケに苦笑いを返すとルイズの方に目を向けた。
 あれだけ姫様姫様言っていたルイズが静かすぎるのが気になったのだ。
 ルイズはぼんやりと何かを見つめている。その口はぽかんとだらしなく開けられていた。
「ルイズ? どしたの? 乙女にあるまじき顔になってるけど?」
 パックの言葉にもルイズは反応しない。何事かとパックはルイズの視線を追った。
 ルイズの目はアンリエッタを見てはおらず、その視線はもっと上を向いていた。
 そこにいたのは一頭の勇壮なグリフォンと、それを駆る羽根帽子を被った精悍な顔つきの騎士だった。長い髪が風に流れて揺れていて、その姿はとても優美なものだった。
 キュルケもその男の存在に気づく。男を見てキュルケはすぐにその頬を赤く染めた。
「あら……いい男」
 男の名はワルド子爵。若くしてグリフォン隊の隊長を務める、ルイズの婚約者である。

 日もとっぷりと暮れて、夜。
 夕食を終えたルイズはぼんやりとベッドに座り込んでいた。
「何だか嬢ちゃんの様子がおかしいね。何かあったんかい?」
 デルフがカタカタと鞘を鳴らす。そんなデルフの柄に座り込んだパックは肩をすくめた。
「よくわかんない。昼間のお姫様歓迎式典の途中からもうずっとこんななんだ。おーい、ルイズ~~」
 ルイズの顔の前に飛びよってパックが手を振ってもルイズは何の反応も示さない。
「死んでんじゃないだろね?」
「息はしてるよ。ただ、ホントに心だけどっか行っちゃったみたい」
「今なら何されたって気づかないんじゃないか?」
「今なら何したって気づかないかもね」
 パックは何の反応もないのをいいことにルイズの唇をひっぱったり鼻の下で髪の毛を結んだりとやりたい放題しだした。
 パックがルイズ自身の髪を使ってルイズの鼻をくすぐりまくっていると部屋のドアが開いた。
「……何やってんだ?」
 パックとルイズの様子を見てガッツは呆れたように言った。
 パックはルイズの鼻をくすぐるのを止めずにガッツの方を向き直る。
「随分汗かいてるね。また剣振りにいってたの?」
「まぁな」
「そんな殺生な話はねえや相棒!! 俺も連れてってくれよう!!」
「おいルイズ。タオル貸してくれ」
「無視だもの!! ひでえや相棒!!!!」
 ガッツが声をかけてもルイズはやっぱりぼんやりしたまま何の反応も返さなかった。
 パックがふんっ、と気合いを入れてルイズの髪をその鼻に突っ込む。そこでさすがにルイズは反応した。
「ふあ…? んん…? …ふぁッ! な、何よこれぇ!!」
 ようやく自分の顔の惨状に気づいたルイズは涙目で鼻から髪の毛を引っこ抜き、鼻の下で結ばれた髪を解きにかかった。
「あんたがやったの!? パック!!!!」
「違うよ、デルデルがやったんだよ」
「うおぉ!? なんてナチュラルに嘘つきやがるんだこの野郎!!」
 自分の名前を出されてびっくりしたデルフは半ばまで鞘から飛び出した。
「剣が髪の毛を結んだり出来るわけないでしょ!! 乙女の髪を弄んで、覚悟は出来てるんでしょうね!!!!」
「だって、あんまりにもルイズが無反応だったからさ。ちょっと心配になってさ」
「それでなんでこんなことになんのよ!! あ、こら、逃げるな!!」
 パックを捕まえようと手を伸ばすルイズだが、パックはひらりひらりと見事なまでにその手をかいくぐる。
「エルフ次元流・木の葉の舞。まだまだ未熟じゃのうルイズ」
「キィーーーッ!! ちょこまか動くなこの栗頭!!!!」
 目の前で突如始まったいつ終わるとも知れない騒動に、ガッツはやれやれとため息をついた。
 この分だと先程の自分の声はルイズには届いていないだろう。もう一度声をかける必要がありそうだ。
「おい、ルイズ」
「ぎゃぁぁあぁあああああ!!!!!!」
 突然上げられた金切り声にガッツは思わず耳を押さえ、パックはちっさな脳みそを揺さぶられてぽとりと落ちた。
 ガッツの姿に気づいたルイズは思いっ切り自分の顔を両手で押さえていた。
(い、いつから!? いつからいたの!?)
 もしかしてさっきの自分の姿を見られたのだろうか。鼻の下で髪を結ばれ、その上鼻の穴に髪の毛を突っ込まれていた先程の自分の姿を!!
 最悪、最悪、もう最悪!!
 乱暴に枕を掴み、ぼふっと顔を埋める。
 ルイズは恥ずかしくてガッツの顔を見ることが出来なかった。
「タオル借りてくぞ」
 ガッツはルイズの返事を待たずタンスからタオルを数枚引っ張り出すと再びドアに手をかけた。
「どこ行くのガッツ?」
「水浴びだ」
 その言葉を聞いてパックはルイズの方に顔を向ける。ルイズは枕に顔を埋めて突っ伏したままだ。

 バタン、と音を立ててドアが閉まる。
 シーンとした静寂が部屋を包む。が、すぐにデルフがその鞘を激しく鳴らし始めた。
「なにやってんだ娘っ子!! 今のはプレゼントを渡す最高のタイミングだったろ!!」
「そうだよルイズ!! 今じゃん! 今のタイミングじゃん!!」
 がばっと体を起こしたルイズはそのままの勢いで手に握った枕で思いっ切りパックを叩き落とした。
「誰のせいだと思ってんだこらぁ!!」
「あ、あいむそ~り~」
 床にのびてピクピク痙攣するパックの上をまたいでルイズはタンスに歩み寄るとその引き出しを開けた。
 リボンで飾り付けられた、使い魔への単なる御褒美。なのに何故、渡すのにこんなに苦労しなくてはならないのだろう。
 ルイズはその包みを手にとってじっと見つめた。
「ルイズ」
 ガチャリと突然ドアが開いてガッツが顔を出した。
「うわぅ!!」
 一瞬で包みを戻し、引き出しを叩きつけるように戻す。
(だから何で隠しちゃうのよわたしぃ~~!! 今渡しちゃえばよかったじゃないのぉ~~!!)
 色々混乱しながらガッツの方に向き直る。そこでルイズはふと、おかしいなと思った。
 水浴びに行くといった割には、帰ってくるのが早すぎるんじゃない?
 そんな風に思いながら部屋に入ってくるガッツに目をやっていたルイズだったが、ガッツの後ろに人影があるのに気づいて目を丸くした。
 その人物は真っ黒なフードを目深に被っており、真っ当な人間にはとても見えない。
 しかし、フードの陰から覗く青色の瞳と目が合い、ルイズは目を見開いた。
「ま、まさか……」
 フードの人物は人差し指をその瑞々しい唇に当てた。しゃべるな、ということらしい。
 漆黒のマントの隙間から魔法の杖が姿を現した。フードの人物が短くルーンを唱える。
「ディテクト・マジック?」
 フードの人物が頷く。どうやら部屋に盗聴や透視の類の魔術がかかっていないことを確認すると、その人物はフードをとった。
「あっ!」
 パックは思わず声を上げていた。
 ルイズは驚きの余り声も出ない。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」
 トリステインが誇る美貌の王女、アンリエッタがそこにいた。
「姫殿下!!」
 ルイズは慌てて膝をつき、頭を垂れた。
 ただ一人、事態を掴めていないガッツは突然部屋を訪ねてきた少女を見て首を傾げる。




 そんなガッツの首筋で―――――ほんのわずかに烙印が輝きを放っていたことには誰も気づけなかった。



新着情報

取得中です。