あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの赤ずきん-02


ゼロの赤ずきん二話

日が暮れ、二人は学院寮のルイズの部屋にいた。
ルイズは椅子に腰掛けながら、バレッタが言ったことを考えていた。
「それほんと?いくら何でも信じられないわよ、別の世界から来たなんて」
バレッタが窓から見える二つの月から目を離さずに答える。

「うん、別に信じなくていいよルイズおねぇちゃん、でもね、
 私がこの世界について何も知らないってことをね、わかっておいて欲しかったのっ」

なるほど、とルイズは思った。だから通貨について質問したのかと。
「でも、やっぱり信じられないわね、メイジがいないんでしょ」
窓から視線を外し、バレッタがルイズの方へ歩いていった。そしてそのままルイズの横を通り過ぎる。

「いるほうがわたしは信じられないかなぁ、代わりっぽいのはいたにはいたんだけどねぇ」

後半の物言いがある種の暗さを帯びていた。改めてルイズは考えさせられる、この使い魔はホントに子供なのだろうかと。
確かにルイズよりも背が低い、普段の顔はあどけない、外見は10代前半に見える、仕草にも少女らしさが伺える。
だが時折少女がかもし出す雰囲気は、どす黒さを感じさせる。まるで、あらゆることに手を染めてきた歴戦のつわもの。
ルイズが自分の部屋に帰る前にコルベールに言われたことを思い出す。

いいですか、ミス・ヴァリエール。あなたの喚び出した使い魔についてですが、一言で言えば危険すぎるということです。
あの少女は……これは私の推測なのですが、おそらく、対人戦闘技術を持ち合わせています。
あれは、殺めること前提で修めているようでした。本来ならば、放っておく由はないのですが、
そうするとあなたが使い魔をなくすことになってしまう、それはなるべく避けたいのです。
一応は契約を完了させましたから、大丈夫であろうと私は判断します。使い魔は主人に友好的になるはずですから。
ですが、くれぐれも気をつけてください。私の感ですが、あの手の輩は己が求めているものが誰かに断たれたとき、
手に入らないとわかったとき、たとえ従順にしてみせている相手であっても、手のひらを返して排除することを躊躇わない。
その予兆があったときは、すぐに私か、他の教師に言うように。何かあってからでは遅いですからね……。

その言葉を聞いて、通常なら不安を覚えるはずだが、普通の平民を呼び出したと思っていたルイズは内心喜んでいた。
戦う技術を持っているなら、主人を守れるのに使えるではないか、と。使い魔としてのもっとも重要な本分を果たしてくれるとあれば、
願ってもないことであった。これは楽観的ともいえる考えで、のちにルイズは自身の考えの甘さを痛感することになる。
だが、今のルイズはさらに楽観的考えた、言葉が通じるのだから意思伝達が楽である、
しかも、平民で人間なのだから掃除、洗濯、その他雑用だってさせることだってできる。、
他の者の使い魔より見た目が立派ではないのが口惜しいが、これはこれで使いようによっては役に立つのではと思った。
無論使い魔としてのしつけをちゃんとすることが前提だが。
ふとルイズは疑問に思っていたことをバレッタに聞いた。
「あんた別の世界から来たとかなんとか言ってるけど、呼ばれた時みたいに帰りたいとかなんとか駄々をこねないわね、なんで?」
部屋の入り口の扉まできたバレッタは、くるっと一回転してからルイズに顔を向けた。
「だって、別に帰らなくてもいいだもんっ。でも、住み心地が悪ければ考えるかもって感じかな♪」
つまりは、あの時のは完璧に演技だったというワケになる。

まあ、帰りたいといわれても困るだけだから、助かるんだけど。

ルイズはとりあえず、これでいいものとした。しつけはまた明日にでもすればいい。今日は必要以上に疲れた。
だがひとつ、ルイズの頭からすっかり抜け落ちていたことがあった。


「ねえ……約束のお金はいつくれるのかしら?」

ルイズはバレッタの言葉で思い出した。自分が使い魔と金銭の約束をしていたことを。
相手は平民、しかも使い魔、だから別に反故してしまってもいい、むしろ金を与えることは甘やかすことになる。
だから、金を与えるべきではないと、一瞬そう考えたがバレッタの姿を見てそれは消え去った。
扉の前に立つバレッタの顔には影が出ている。部屋は明かりがついているが、薄暗い。
その中でバレッタの周辺だけ、さらに暗くよどんでいる様な気がした。
ルイズは純粋に恐怖を感じた。しかも、バレッタが部屋の入り口に立っているのは間違いなく退路を断つために違いなかった。
薄く笑っている様子はまるで、これから獲物を食らう狼が舌なめずりをしているようであった。

なんで…!!使い魔に…!!こんな感情持たないといけないのよ!!

渋い顔をしたルイズは椅子から立ち上がり、部屋に閉まってあった中身がぎっしりとつまっている財布を取り出す。
そこでふと、ルイズの顔色が変わる、何か名案を思いついた様子だった。
そして財布の中から一枚の金貨をバレッタにぞんざいに手渡した。
バレッタは自分の手のひらにのった金貨をまじまじと見つめている。
ルイズはバレッタが貨幣価値を知らないのをいいことに、金貨一枚で済ませるつもりで渡したのだった。無論大金ではない。
得意げに笑みを浮かべ、使い魔から今まで受けた屈辱を全て返してやったと、これ以上ないぐらいに満足していた。
ザマーミロと、心の中でガッツポーズをする。
「これって大金なの?」
偉ぶった態度でルイズは答えた。
「ええ、もちろん大金よ、特に平民にとってはね、それにあんたは本来無償でわたしに仕える使い魔なんだから」

せいぜいありがたく思いなさい、そして私を敬いなさい。それでこそ使い魔なのだから。

バレッタは黙ったまま金貨を見続けていた。その様を見ていたルイズが眉をへの字に曲げて言った。
「わかったの?わかったのなら何かいいなさいよ」
そのことばで、やっとバレッタは頭を上げる。そして両の口の端を上げ、微笑みの表情をつくった。
「うんっ、よーくっわかったの」
金貨をのせた手のひらを、体の前に突き出してバレッタは言い放った。


「これがルイズおねぇちゃんの値段ってことだよねっ?」

「なっ……!!」

その発言を耳にした瞬間ルイズは全身に電流が走るような衝撃をうけた。血が引いていくのが分かり、
頭の中がぐるぐるとかき混ぜられているような感覚に襲われ、よろめき倒れそうになる。
本当はすぐにでも、怒鳴りつけたいはずなのに、口を何度も開け閉めさせるだけで、肝心の言葉が出てこない。
ルイズは己が浅はかであったことを呪った。突然動悸が起こり、呼吸が荒くなる。
自分が相手と何と何とで取引をしたのか、それを全くもって頭の隅から消し去っていたからだ。

あの時かかっていたのは紛れもなく自分の命であった。

そして、ルイズが後になってその代価として差し出したのはわずかに金貨一枚。
それは自分の価値がその程度しかないこと己自身で認めることに相違ない。
とある理由で他の者に対して劣等感を抱いているルイズが、
他の誰でもない自分自身を貶めるなどいうことは、自傷行為に他ならない。
プライドが高いルイズには容認できるような代物ではなかった。

「あのねぇ、取引するのにも、ここの物価の相場とか貨幣価値がわからないいとぉ、ホントーに困るの、わかるよねぇ?」
バレッタは、この段になっても笑みを消さずに、ルイズに柔らかい口調で呼びかけた。
「ねえ」
思考停止状態で棒立ちしたままのルイズに、顔を覗き込むようにバレッタが近づき囁く。

「このお金で、街角に立っている娼婦なんかを一晩でも買えたりできるのかしら?ねぇ」

ルイズは悔しさで唇を強く噛み、爪が食い込んで後が残るほど両手の拳を強く握った。微かに肩が震えている。
バレッタはさらに追い討ちをかけるように続けた。

「ねえ。もし、ルイズおねぇちゃんをこ――――――、」

「もうやめてッ!!!もうやめてよッッ!!わかったわよ、あんたの望みどおりにするから!やめてッッッ!!」

バレッタの言葉を途中で遮って、ルイズは涙声で叫んだ。
その後、手に持っていた財布を叩きつけるようにテーブルの上に置いた。金貨が音を立てる。
「これ全部あげるわよ、……これで満足でしょ……これで」
まるで魂が抜けたかのように意気消沈したルイズは力なく言った。
一方、目的の金を貰えることになったバレッタは対照的であった。
「わーい♪ホントに貰っていいのっ?ルイズおねぇちゃんアリガトウっ。バレッタね、ルイズおねぇちゃんだーい好き♪」
嫌味のように元気で和やかな調子で応対した。そして一言愚痴るように付け加える。
「最初から素直に渡せっつーの、ったくよぉ……」
言い終わると、財布がのったテーブルに備え付けられている椅子に飛び乗るように座り、
テーブルの上にある中身が金貨で満たされている戦利品の財布を両手で引き寄せた。
そして、片足をテーブルの上に乗せ、金貨を一枚一枚手に取り数え始めた。
いつのまにか、口には煙草と思われる白い棒をくわえている。すでに火がつき煙を立ちのぼらせていた。
その姿は少女の外見にもかかわらず、以外にも様になっているから余計に珍妙にみえる。
今更ルイズには女子供が吸うなんて……とか、ツッコむ気力は残っていなかった。
ルイズはテーブルをはさんでバレッタの座っているところから対面にある椅子に崩れるように腰をかけた。


ルイズはバレッタが金貨が数えるのを、テーブルに腕を枕にして眺めていた。
今さっきまで自分のものであった金貨がテーブルの上に丁寧に積み上げられていく。
しばらくのあいだ金貨の積む音だけが部屋に響く。

……それにしても、いい顔で金を数えるわね。こいつは金の亡者よ、間違いない。
きっと金で満たされた浴場で存分に泳ぐのが夢に違いないわ。
だって、今の顔をみたらこれまでの笑顔が作り物って分かるぐらいだもの。
生き生きし過ぎてる。今にもよだれをたらしそうなぐらい、表情が崩れてる。
……そうよこいつは金のことしか頭にないヤツ。平民らしいといえば平民らしいけど。
だけど、目の前にいるこいつは金の亡者で悪魔だ。そう、悪魔。それが一番似合ってる。
そしてその悪魔は、人の心をえぐる術を持ち合わせている。今回はそれにしてやられた。
でも、でもまだわたしは……!!

崩れかけたプライドを奮い立たせ、意を決して金貨を数え終わって財布の中に戻しているバレッタに言った。

「ねえ、お金上げたんだから使い魔としてちゃんと私の言うこと聞いて働きなさいよ。いい?」

バレッタがその言葉に怪訝そうな顔を向ける。だがすぐに金貨を財布に入れる作業に戻った。
「わかってる?衣食住をだれがあんたに手配するか、それに使い魔は一生、主人に仕えるものなのよ、我侭言っても……」
言い終える前にテーブルの上にナイフが突き刺さる。ルイズの目の前であった。
ルイズには突然ナイフが現れたようにしか見えなかった。ずっと見ていたはずのバレッタは少しも体勢を変えていない。

ふんぞり返ったように座っていたバレッタはおもむろに立ち上がり、
テーブルに刺さったナイフに手を添えながらルイズに顔を近づけて言った。

「なにフザけたこと言ってのんかわかんねーけど、わたしはわたしの思うようにしか動かないわよ。それとこの金はねぇ、
 あんたの命と『しばらく』私があんたに危害を加えないっていう約定との交換の代金だっつの」

『しばらく』、これはつまりバレッタの気が変われば今すぐにでも失効することを言っていた。

「なんなら今すぐ出てってもいいの、もう十分自活はできるだろーし、
 でも、もう少しここについて知っておいてからと思ってたんだけどぉ?」

ルイズは愕然とした、ここまで我の強い使い魔がいるのが信じられなかった。全く従おうとしない。しかも腹黒すぎる。

これは一体誰が悪いの?私?それともこいつ?そうよこいつが悪いのよ、全部、全部こいつが原因なのよ!!

不平不満をぶちまけようと、杖を抜いて立ち上がろうとした瞬間、テーブルに刺さったナイフをバレッタが勢い良く抜いた。
ルイズの眼前をナイフの刃が通り過ぎた。桃色がかったブロンドの髪が一筋、はらりと宙を舞う。
バレッタはテーブルから抜いたナイフを大事そうに体の前に持ってくると、猫かぶりとわかる笑顔を取り繕ってルイズに言う。

「あたしってのんびり屋さんだけどォ キレるとヤバいから大注意ねっ」


ルイズは体の力が抜けた。

もういい、わたしは十分に頑張った。今日はもう寝よう、うんそうしよう。寝ればこの悪夢から覚めるはず。

無言のままルイズはネグリジェに着替え、ふらふらしながらベッドに入ろうとした。
バレッタがそれを呼び止める。
「私の寝るところはどーこ?ルイズおねぇちゃん」
じと目でバレッタを見るルイズ。毛布を一枚バレッタに向けて投げた。毛布が床に落ちる。
「ベッドはひとつしかないんだから、その、あんたは床で……」
これで、相手が納得するわけがないとわかってはいたが、わずかながらでもの抵抗を示した。案の定従うわけもなかった。
「他に空き部屋とかないのかなぁー、床で寝るなんてできないよー」
ため息をついたルイズが答えた。
「あるわけないでしょ、満室よ。あってもあてがってくれることはないでしょうけど」
その言葉を聞き終わると、バレッタは扉のほうへ歩いていった。

「ち、ちょっとっ!!あんた出て行くつもり!!?待ちなさいよ!!!」

使い魔に逃げられるメイジなんて、聞いたことがない。無論その第一号になるのは御免であった。
バレッタは腕にさげたバスケットからサブマシンガンを取り出し、頭だけルイズに向けニッコリと言った。

「大丈夫よぉールイズおねぇちゃん。ちょっと隣を空き部屋にしてくるだけだから、……ね?」

「ね?じゃないわよ!!!いや、待って!!!止まりなさい!!ちょっ……本当に待ちなさい!!!」

ルイズは、足がもつれそうになりながら慌ててバレッタに走り寄り腕を掴んだ。手に力がこもる。息絶え絶えのルイズは焦った。

この使い魔を野放しにしたら、必ずやとんでもないことになる、そして起こったことは全て主人の責任になる。
そんなことあってたまるもんですか!!ヴァリエール家三女として、この使い魔を好きにさせるわけにはいかない……。

「あんた、貴族にそんなことして無事に済むわけないでしょ!?ちょっとこっち来なさい!!」
ルイズは掴んだ腕を力の限り引っ張った。バレッタがいかにもといった具合に辛そうな顔をした。

「イヤ、痛いよッ……、ルイズおねぇちゃん、離してッ、イタッ、マジでイテっ……はな…離せってつってんだろうがオラァ!!!」

バレッタは怒声を上げ、ルイズを弾き飛ばした。悪鬼を思わせる形相を顔に浮かべたバレッタがさらに叫ぶ。

「隣のヤツの眉間にちょろっと穴あけてくるだけじゃねえかっ!!!うっせーんだよいちいちよぉお!!!」

突然の感情の爆発に奥歯が噛み合わなくなるほどバレッタに対し臆した。


怖い、でも止めなきゃ、何もかもが終わる。

ルイズは始祖ブリミルに祈るように、手を体の前で合わせ、バレッタに懇願した。
「お願いだから、やめて!!わかったから、私のベッド半分貸してあげるから!!ね?そうしましょ?いい子だから!」
バレッタは先ほどの激情とは正反対のものを即座に用意し、切り替えた。
「ホントに?ルイズおねぇちゃんってやさしいのねっ」
じゃあ、あたしはベットの奥側がいいな。バレッタがそう言った。ルイズにはもう何かを反論する気力はない。
バレッタのころころと変わる態度に、ルイズは振り回されてばかりであったからだ。この極端すぎるほどの二面性、
もしや、多重人格なのではと疑ってしまうほどである。だがむしろそうであった方がルイズにとっては、いっそ気が楽だった。
しかしバレッタは自分の都合の良いように使い分けている、だからなおさらたちが悪い。
相手をおちょくるため、心を揺さぶるため、油断させるため、
緩急をつけて毒を吐き、脅し、そして時には甘えるような態度で接してくる。
手のつけようがなかった。

バレッタはすでにベッドの中に入っていた。一応ルイズが入れるようにスペースを空けてあるが、不安は拭えない。
ベットは二人で寝ても十分の大きさであった。だから、意図的にでなければ相手とそんなに近づき過ぎることはない。
ルイズは意を決し、ベットに潜り込んだ。早く寝たかった。現実から早く逃げたかった。
そこでバレッタが申し訳なさそうにルイズに言う。
「あのね、わたし、寝相が凄く悪いんだけど、それでもいいかなぁ?」
バレッタに背を向けたままルイズは答えた。
「いいわよ……それくらい、いまさら寝相のことなんて気にするほうが気分悪いわ」
もぞもぞとバレッタがベットの中で動く。そして先ほどの質問と同じような口調で喋った。

「あのね、わたし、ナイフを持ったまま寝返りを打つんだけど、それでもいいかなぁ?」

「いいわよ……それくらい、いまさらだってさっきも言ったじゃ……」
言葉を途中で切り、ルイズは転げ落ちるようにベッドから出た。
「あ、あんた私をいじめて楽しんでるんじゃないでしょうね!?いつか仕返してやるんだから!それがイヤだったら……」
精神的な疲労がピークに達していたルイズは、搾り出すように声を出した。
だが、肝心のバレッタはすでに寝息をたてて夢の世界に入っていた。ルイズは気に入らなかった、その安らかな寝顔が。
ルイズには、もうベットに入る勇気は残っていなかった。
ルイズは今日一日で使い魔に奪われたものが多すぎることを実感していた。
誇り、お金、ベッド、夢に見た従順ですばらしい使い魔。代わりに得たものは精神的な疲労と屈辱と危険すぎる使い魔。

ベッドが使えなくなったルイズであったが、さすがに床で寝ることは許容できる事柄ではなかった。
先ほどほうってやって床に落ちていた毛布を拾い上げ、テーブルのあるところに向かう。
肩から毛布をかけ椅子に腰をかけた。
そして明日以降起こる出来事を想像してみる。ルイズは身震いがした。

明日は本当にいいことがありますように。本当に、頼むから。お願いだから。いや、せめてなかったことに……。

ルイズは切実な願いを胸に、腕を枕にしてそこに顔をうずめた。



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