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つぶれあんまんな使い魔


アンリエッタからの密命を受けてようやくウェールズ皇太子と出会えたルイズ一行だが、
王党派の命運は既に風前の灯であった。
ルイズは問う。
「王党派に勝ち目はないのですか?」と。
ウェールズは返す。
「無いね。 我らに出来る事は逆賊達に勇敢な死に様を見せつけることだけさ。」と。

部屋の中には悲壮な空気が漂うが、そこに全く空気を読んでない笑い声が響いた。
「ホッホッホッホッ、ホ~~~ホケキョ!」
ルイズはすかさずその笑い声の主の、肉に埋もれた首根っこを両手で思いっきり引っ掴んだ。
「あんたって奴は~、よくもこんな状況で笑っていられるわね!
しかもウェールズ様の前で!!
死ね!死になさい!私が引導を渡してあげるわ!!」
そのルイズの形相に引いたワルドは少しの間硬直していたが急いでルイズを引き離そうとする。
「落ち着くんだ、ルイズ!
確かにその使い魔君は無礼極まりない事を言ったと思うが皇太子の目の前だぞ。」
その言葉に我を取り戻したルイズは両手を離してウェールズに対して何度も頭を下げて謝罪をするが、
肝心の使い魔の少年は恐ろしいほど堂々としている。

「ま、まぁ良いさ。
それよりもこれから最後のパーティが始まる時間だ、君達も来たまえ。」
気を取り直したウェールズがルイズ一行をパーティーに伴おうとすると、少年がウェールズに問う。
「何故最後なんだ?
 あの程度の戦艦相手なら軽く捻れるぞ。」
5秒ほど時が止まった。

硬直が解けたルイズが飛びかかろうとするのをすかさず抑えたワルドが少年を諌めようとする。
「少し暴言がすぎるのではないかね、使い魔君?」
「僕ならあの程度の戦艦はイチコロだ。」
全く動じずに言い返す少年に対して怒りを覚えるワルドだが、当の少年は既にウェールズに話しかけていた。
「道具を揃えてくれないか? トンカチとかでいいから。
あと材料だ。 鉄製の物が望ましいな。
 そして人手も要る。 出来れば土系統のメイジを数人だ。
 ギーシュやコッパゲ先生がいれば心強いが、ここにいない以上仕方がない。」
自分の言いたい事だけを言うと、少年は事態についていけないウェールズを引っ張って部屋を出て行った。


ワルドは心配げにルイズに問う。
「……もしかして本当に何とかできるのかい、あの少年には?」
「無理よ、そりゃギーシュとの決闘で七体のゴーレムを駒鳥音頭なんて変なダンスで一緒に躍らせたり
 フーケの正体をあっさりと見抜いたりしたけど、あれだけの兵力を相手にして勝つだなんて……。」
ルイズは諦めの表情で答えるが、ワルドはもの凄く嫌な悪感を感じていた。
例えるなら後一歩でゴールという所でいきなりスタート地点に戻されて考えるのをやめたくなるような。
「と、とにかくルイズ、我々だけでもパーティーに出席しようじゃないか。
 皇太子と使い魔君の事は僕から城の皆に話しておこう。」
「でも主賓であるウェールズ様がいない状態で……」
「大丈夫さ、さあ早く。」
するとワルドは大胆にもルイズをお姫様抱っこで抱きかかえてパーティー会場へと向かった。
ルイズは心中で『ワルド様に抱きかかえられたままお城の中を歩くなんて、頭がフットーしちゃうよぉっ!!』
とパニックになっている。
ワルドの方は『いくら虚無の使い魔とはいえあれだけの戦艦と5万の兵相手では勝ち目はあるまい。
それよりルイズを僕のモノにするためには僕のカッコよさを彼女にアピールしなければならない。
逆に考えれば二人きりの今夜こそチャンスなんだ!』とこちらも別の意味でパニックになっている。
こうしてアルビオンの夜は更けていった。

翌日の朝、ルイズとワルドは皇太子が城の大広間で何かの準備をしていると聞き、大広間に向かっていた。
使い魔の少年がいない間に見事ルイズの心を掴み取ったワルドは駄目押しとばかりにここで結婚式を、
さらにその司祭役をウェールズに頼みに行くのだ。
これから死を覚悟した戦いに向かう皇太子にそのような事を頼みに行く事は非常識ではないかと躊躇うルイズを
何とか説得したワルド、その真の目的はウェールズの暗殺である。
『三つの目的の内二つは、ルイズを口説き落としたことで達成したも同然。
 そしてウェールズの暗殺が成功すれば僕のレコン・キスタでの立場は磐石となる!』
とはいえワルドが昨日から感じている嫌な予感はだんだん強くなってきているのだが。
そして大広間に来た二人の目の前には奇妙な光景が広がっていた。

そこには魔力を使い果たしてグッタリとしているメイジが数人。
前と後ろに車輪がついている、人が乗るには頼りないような薄い乗り物が数台。
その乗り物と紐の様なもので繋がった鉄製の砲台らしき物、しかし砲身が異常に細くて弾など撃てそうにない。
オマケに奇妙な紐がその細い砲身に巻かれており、砲身の基部にはピカピカ光る小さな部品までついている。
それらの真ん中に自信満々で立っているスマートなウェールズと、同じく自信満々だが肥満児な使い魔の少年がいた。
「しかしだらしないな。 あれくらいでバテるなんて鍛え方が足りん証拠だ!」
と偉そうに言う少年に対して、ウェールズは苦笑いしながらこう返した。
「そう言わないでやってほしいな。 
何しろこんな前代未聞なものをつくるんじゃ魔力を使い果たしてもしょうがないさ。」
いつのまにか気が合っているのは、使い魔の少年も元の世界で一国の王をしていたからだろうか? 

二人の間に流れる和やかな空気に割り込めずにいたルイズに代わってワルドが二人に問いかけた。
「ウェールズ皇太子、これはいったい?」
その声に今気づいたとばかりにワルドとルイズの方を見たウェールズは笑顔で答える。
「この使い魔君こと、異世界の国であるマリネラの国王パタリロ・ド・マリネール8世が作った秘密兵器さ。」


「へっ?」
ウェールズの口から秘密兵器などという荒唐無稽な言葉を聞いたワルドは口を開けたまま固まったが、
ルイズはすぐにウェールズの傍に近寄るとパタリロの顔を地べたに押し付けて自らも頭を下げた。
「このような下賎の者の言う事を信じてはいけません!!
 こいつは学院でもでたらめな事を言って、平民だけでなく一部の教師も騙すような奴で……」
「確かに最初にその話を聞かされた時は僕も驚いたが、彼は嘘をいってはいないと思うよ。」
「そんなわけはありません! 
だいいちこんな下品で欲張りで人をおちょくってばかりな奴が一国の王だなんて信じられません!」
凄い剣幕なルイズ、顔を床に強く押さえつけられ呼吸困難で痙攣しているパタリロ、
それに苦笑いするウェールズ、更にその光景を見ながら呆けているワルド、かなり混沌とした光景である。

だがワルドは何かを感じたようで瞬時に真剣な表情に切り替わった。
「ルイズ、危ない!」
ルイズの足元に突然大穴が開き何かが飛び出し彼女に覆い被さる。
それを跳ね除けようと暴れるルイズだが、何か懐かしい感じもしていた。
『あれっ? これってアルビオンに向かう前にもあったような。』
そう彼女に覆い被さっていたのは、ギーシュの使い魔ヴェルダンデであった。

「ヴェルダンデ!? という事は。」
ルイズの押さえつけを逃れたパタリロはその大穴を期待を持って見つめる。
「おや、ここはどこだい?」
期待通りギーシュが出てきた。
「よし、いい所に来た。 こっちに来て手伝え。」
「へっ? 君とルイズが居るのは当然としてここはどこだい?
 何を手伝えというんだい?
 それにそこに居られるのはひょっとしてウェールズ皇太子じゃ?」
パタリロはそれらの質問には答えず目の前の7台の細い乗り物を指差し指示を出す。
「いいから早くワルキューレを出せ。 そしてあの発電用自転車のペダルを漕がせろ。」
「ペダル?」
痺れを切らしたパタリロはどこから持ち出してきたのか巨大な木槌を振りかぶった。
「いいから、早く、ワルキューレを自転車に乗せろ!
 僕の指示に合わせてペダルを漕がせるからそれまで待機!」
「わ、分かったよ。 全くなんで僕が……」
と愚痴を言いながらもギーシュは七体のワルキューレをそれぞれ自転車の上に乗せて指示を仰ぐことにした。
「これでいいのかい?」
「よし! あとは開戦の時間待ちだな。
 僕としてはさっさと仕掛けた方がいいと思うんだが。」
どさくさ紛れにさらっと過激な事を言うパタリロだった。


状況についていけないルイズの後ろから何者かが肩を叩いた。
「ねぇ、これどうなってんの?」
「キュルケ!? 何であんたがここにいるのよ?」
「私もいる。」
そこにはルイズの悪友キュルケとその親友のタバサがいた。
「貴女達を追ってきたに決まってるでしょ。
 ギーシュの使い魔が貴女の持っていた宝石の匂いを嗅ぎつけたんでなんとかここまで来れたけど。」
「心配だから。 それに彼に興味がある。」
「ところであの変な乗り物と大砲らしきものは何?
 それとへちゃむくれさんの側にいるいい男は誰?」
流石にパタリロは容姿的にも年齢的にも彼女の守備範囲外らしい。
「ウェールズ皇太子殿下よ。
 言っとくけど余計なちょっかいを出したらあんたトリステインに居られなくなるわよ。
 あの変なのは秘密兵器って言ってたけど、どうせあいつのハッタリだわ!」
ルイズは言い切ると顔を背けた。
「あれが秘密兵器ねぇ。」
「……」
疑わしげに見るキュルケと興味深げに見るタバサ。
ちなみにワルドも側にいるのだが誰にも相手にされず寂しそうだ。

「パタリロ、そろそろだ。」
ウェールズは準備を促した。
「よしギーシュ、ワルキューレにペダルを漕がせろ!
 発電開始だ!」
その声に合わせてギーシュが杖を振りワルキューレがペダルを漕ぎ始める。
それと同時にウェールズを探していたアルビオンの兵士達が大広間に駆けつけてきた。
「殿下、そろそろ叛徒共が攻撃をしかけてくる時間だというのにこれは一体何事です!」
「皆静かに! そのまま待機していてくれ。」
ウェールズの迷いの無い言葉に兵士達は理由が分からないながらもその命令に従うが、
大広間の窓からレコン・キスタが率いるレキシントン号を始めとする多数の戦艦が確認されると
慌てて自分達の主に詰め寄る。
「殿下! 奴等が迫ってきています!
 レ、レキシントンから砲撃が!!」
ウェールズはパタリロの方を振り向く。
「よし、レーザー砲、発射だ!!」
そのパタリロの声と共にレーザー砲の砲身の先に青い光が宿り一瞬後に砲弾に向かって放たれた。
そして青い光線が砲弾に突き刺さると、砲弾はその圧倒的な熱量の前に文字通り蒸発した。


ルイズ達は自分達の理解の範疇を超えた出来事に呆然とした。
例外は事前に説明がしてあったウェールズと、
日頃パタリロにこき使われてある意味彼の事を一番よく知っているギーシュ、
そしてレーザー砲の側で気持ち悪い笑みを浮かべているパタリロだけである。
「はっはっはっ!
 見たか! 文明の利器の恐ろしさを!!」
「しかしこれ程の威力だとは正直思わなかったよ。
 あのレキシントンの砲弾がこうもあっけなく落とされるとはね。」
その桁違いの破壊力に呆れるようにウェールズは呟いた。
「よしワルキューレにもっとペダルを漕がせろ!
 撃って撃って撃ちまくれ!!」
この世の中に調子に乗ったパタリロほど手に負えないものはないだろう。
パタリロの掛け声と共にたった一台の超兵器レーザー砲と
レコン・キスタ側の戦艦に積まれた大量の艦砲との撃ち合いが始まった。

数で言えば圧倒的に有利で撃ち負けるはずの無い戦艦からの砲撃だが、
恐ろしいほど正確かつ連続で放たれる青い光線に全て叩き落されてしまいニューカッスル城には一発も届かない。
それどころか逆に戦艦が撃墜されてしまう始末だ。
「よ~し、それ漕げ。 やれ漕げ。 ど~んと漕げ!」
パタリロは懐から扇子なるものを持ち出し音頭を取っている。
その際に胸元から光を放つルーンがチラリと見えていたが運良く誰も気づくことはなかった。

「はぁ、はぁ、もうダメ……。」
撃ち合いが始まって数分後、七体のワルキューレに発電用自転車を漕がせていたギーシュだが
流石に魔力が限界に達したらしい。
彼が大広間の床にへたり込むと同時にレーザー砲への電力の供給が絶たれてしまった。
「馬鹿者! 日頃の鍛錬が足りんからそれくらいでバテるんだ!
 早くワルキューレを動かして電気を送らんとレーザー砲が撃てないぞ!!」
ギーシュの襟元を掴んで叫ぶパタリロだったが、ウェールズがその後ろから声をかける。
「いや、もうその必要はないみたいだよ。」
その声に振り向いたパタリロが見たのは大量の撃墜された戦艦の残骸で埋め尽くされた戦場であった。
ウェールズ曰く、最初に砲弾を打ち落とした時点で地上の兵達の進軍が止まり、
戦艦が撃墜されはじめると傭兵達はあっさりと敵前逃亡、それを止めようとした指揮官達も
旗艦であるレキシントンが撃墜されると敗北を悟って撤退したという。

「「ということは?」」
ウェールズは今ひとつ現状を把握していないパタリロとギーシュに頷くと
未だに固まったままのアルビオン兵の方を向きつつ杖を高く掲げてこう宣言した。
「諸君、我々の勝利だ!
 我々は叛徒共からこの歴史あるアルビオン王国を守り抜いた。」
その勝鬨をあげる声に兵達が反応しようとするがウェールズはそれを一旦制止してパタリロの方を向きつつ言葉を続けた。
「そしてその勝利は全て彼の尽力のお陰である。
 遠い異国の王パタリロ・ド・マリネール8世、彼こそが我らの救世主だ!!」


ウェールズの言葉を聞いた兵達はウェールズとパタリロの元に近寄り、皆で二人の胴上げを始めた。
「ウェールズ王子万歳!!」
「アルビオン王家に栄光あれ!」
「異国の王よ万歳!」
「つぶれあんまん最高!」
「おい! 誰だ、今聞き捨てならん事を言った奴は!」
パタリロが怒声をあげるが胴上げをされていて宙に浮いている状態ではいかんともしがたい。
それに何だかんだで皆から賞賛を受けているのは満更でもないようで顔がにやけている。

「ねぇ、ルイズ。」
「……何よ?」
「勝っちゃったわね。」
「……そうみたいね。」
ウェールズ王子とパタリロが胴上げされている光景を見ながら話すキュルケとルイズだが
キュルケの方は比較的平静としているのに、ルイズの方はまるで悪夢を見ているかのように顔が引きつっている。
「まあいいんじゃないの?
貴族派の方が勝っちゃったら次はトリステインに戦争を仕掛けてきたろうし。
それを防ぐことが出来たんだから、ある意味本来の任務達成以上の大手柄を立てたようなもんじゃない。」
無論ルイズもそれは分かっているのだがどうにも納得できない。
小銭に目がなく好奇心のままに生きているパタリロは彼女の知っている貴族や国王とは全く別の生物に等しく
一国の王に相応しい存在だとは認められないのだ。
他にも事あるごとに生真面目で誇り高いルイズをおちょくっては楽しんでいるのも認めたくない理由だが。
「ばんざーい、ばんざーい。」
そんな盛り上がらない会話をしている二人を尻目にタバサが平坦な声で万歳をしているのはかなりシュールな光景だ。
ちなみにギーシュはヴェルダンデに持たれかかって眠っている。

ふとルイズはレーザー砲とやらの射撃からワルドが一言も喋っていないことに気づいた。
「ねえ、ワルドはどう思う。」
そう問いかけてもワルドは返答すらしない。
「どうしたの、ワ……?」
不審に思って顔を覗き込んだルイズは絶句した。
ワルドの目は明後日の方を向いて口もだらしなく半開きになっていたのだ。
「……母さん、僕の麦わら帽子どこに逝ったんだろうね?
 ほらラ・ロシェールからタルブに行く途中で落としたあの麦わら帽子だよ。」
「ワルド、しっかりして! お願いだから現実に戻ってきて!」

ニューカッスル城の大広間は勝利を喜ぶ喧騒と、一部の現実を認められない者の悲鳴でとても賑やかだった。



記すことさえはばかられる使い魔パタリロ・ド・マリネール8世召喚


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