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ルイズと不思議な魔法の本

 ルイズと不思議な魔法の本


 トリステイン魔法学院に一人、嫌われ者の教師がいる。
 教師と言うのは大概嫌われるものだが、しかしそのなかでも特筆に価するほど彼が嫌われているのは口を開けば「風」の系統の自慢しかしないからだ。
 なにかあれば、やれ「風はすべてを吹き飛ばす」だの「最強の系統は風だ!」と授業そっちのけでのたまい、あまつさえそれが行き過ぎて生徒に怪我を負わせかねない行いをしたことすらある。
 だが、今そんな彼のことを熱い瞳で見つめるものがあった。
 キラキラと輝く、まさしく師を仰ぎ見るかのような視線の主は言うまでもなく某「ゼロ」のメイジである。
 いや、それは正しくない。
 彼女はこの人間としてどうかと思う教師に師事して以来、「ゼロ」の二つ名を返上したのだから。

「それではミスヴァリエール、君に問おう。最強の系統とは何かね?」

 ギトーにとってもそんな視線を受けるのはけして不快ではない、故に少々――いやかなり彼女のことを優遇してしまっても仕方のないことだった。 

「それは風です!」
「その通り、風は全てをなぎ払う」

 ため息すら付きながら風の長所を延々と並べ続ける二人の変人、自己陶酔に浸る二人を処置なしと切って捨ててからキュルケは何故こんなことになったのか肩をすくめる。
 思い出すのはあの日のこよ、キュルケが最愛の相方であるフレイムを呼び出し、そしてルイズが今フレイムの背中の上でマルトーが作ったシチューを鍋から直接がっついているおかしな生き物を召喚した時のこと。







 ルイズが呪文を唱え杖を振ると、果たして強烈な爆発が巻き起こった。
 また失敗か。そう思って唇を噛み締めるルイズとその失敗を嘲る周囲の者達。
 だが爆発の煙が収まった後、そこには一冊の本が転がっていた。
「ゼロのルイズが本を召喚したぞ」
「生き物ですらないなんて、さすがゼロのルイズだな」
 周囲の声など耳に入らなかった、ルイズは自らが召喚した本から目が離せなくなっていた。
「ミス・ヴァリエール!?」
 ディティクトマジックを掛けたコルベールが止めるも間に合わない、ルイズはゆっくりとその本に手を伸ばした。
 ――羽根の生えた獅子?

 カチン

 本を留めていた留め金が音を立てて外れる。
 ゆっくりと開いた本のなか本として在るべきはずの頁は存在せず、その代わりにたくさんのカードが収まっている。
 ルイズはそのうち一枚を手に取るとゆっくり捲る、そこには騎士甲冑を着込んだの少女の幼い少女と言う図柄と、見たことのない文字が躍っていた。

「見たことのない文字ですが強力な力を感じますね、東方のマジックアイテムか何かでしょうか?」

 ――あれ? 私これ読める……?

 見たことのない筈の文字なのにルイズには何故かその言葉が理解できた。

「とにかく危険性も分からない以上、まずはオールドオスマンに相談してから……」
「ストー……ム?」

 風が凪いだ。

「うわぁあ!?」
「ひゃああああ」

 周囲のギャラリーが悲鳴をあげて逃げ惑う、ルイズを中心として発生したカッタートルネードもかくや猛烈な突風は様々なものを巻き上げていく。
 土を、砂を、木々を、誰かの使い魔を、そしてカードを。
 ばらばらと巻き上げ何処かへと吹き飛ばしていく。

「大丈夫ですか!? ミス・ヴァリエール!」

 風が収まった後、呆然としていたルイズは自分の上に覆いかぶさっている人影に気づいた。
 禿頭のこの教師は、異変を感じ取ってすぐルイズを庇う為に身を躍らせたのだ。
 身近な相手の意外な勇敢さに驚くルイズの耳に、聞きなれない言葉が響いた。

「こにゃにゃちわー」

 手に抱えた本のすぐ側に立つるいぐるみのような黄色い何か。
 初めにルイズとコルベール、そして僅かにその場に残っていた生徒達の頭に浮かんだのは「何これ?」と素朴な疑問だった。

「やー、よー寝たわー」

 そんなことを言いながら伸びをするナマモノに向かってルイズは疑問を投げ掛ける。

「あんた何?」

 その問いかけにナマモノは誇らしげに胸を張った。

「よー聞いてくれたな、ワイは封印の獣ケルベロスや!」

 見た目の割に随分大層な名前である、しかし仮にも封印の獣を名乗る以上きっと見た目以上の存在ではあるのだろう。

「封印の獣? と言うことは君は先ほどの強力な力を封印する精霊か何かだと言うことかね?」
「そや、この本にはクロウリードちゅう魔術師が作った特別なカードが封印されとってな……」

 ケルベロスは誇らしげに振り向くと、そこには空っぽになった封印の本の姿。
 ケルベロスは笑顔のままでだらだらと脂汗を垂れ流すと、大慌てで騒ぎ出した。

「ない、ない、ないない、ない! クロウカードが一枚もない!」

 がっくりと肩を落とすケルベロスに向かって、さすがに気まずくなったのかルイズは言った。

「ええと、私がストームって言ったらみんな飛んで行っちゃって……」
「なにぃ!?」

 物凄い勢いで顔を突きつけてくるケルベロスに向かって、自分のしでかしたことに慄きながらもルイズは精一杯虚勢を張る。

「な、何よ、あんた封印の獣なんでしょ!? ちゃんと封印しておきなさいよ」
「それ言われると辛いなぁ、けどお前にも封印を解いてもうた責任はある」

 だからこーせーへんか、とケルベロスは手を叩いた。

「お前名前なんて言うんや?」
「ルイズよ、ルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「なっがい名前やなぁ、なぁルイズ。クロウカード集めるの協力してくれへんか?」

 もし、ルイズがどこぞの巨大な魔力を持った小学生のように素直な性格ならここでうんと頷いていただろう。
 だが残念かな、ルイズは誇り高い貴族であり、そしてその手の中にはこれまで望み続けてついぞ手に入れられなかったものがあった。

「いっ、嫌よ。絶対、離したくない!」

 目の前の珍妙な生物は“封印の獣”と名乗った。
 ならばケルベロスはカードを集めて何をするのか? 決まっているもう一度この本のなかに封印するのだ、この協力な魔法を誰も使うことができないように。
 だが同時にルイズは思ってしまったのだ、この本は自分が召喚した自分の使い魔。絶対に誰にも渡したくないと。
 それは自らがとんでもないことをしてしまったと言う恐怖をやわらげようとする心の働きであるとともに、「ゼロ」と呼ばれ続けてきた少女の渇望そのものだった。
 期せずして手に入ってしまった魔法、それも憧れ敬愛する母と同じく強力で理不尽なまでの風の魔法。

「五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 ルイズは手の中に残ったそのカードに呪文を唱えながら口付けた。

「あっーーーーーー!?」

 ケルベロスの叫びと共にカードは強く光を放ち……
 ――トリステイン魔法学院に、二人目の「風馬鹿」が誕生した瞬間である。




 以後、ルイズは徹底的に手に入れた「嵐」のカードの力の研鑽に費やした。
 その過程で風のスクウェアメイジであるギトーを師と仰ぎ、変わった風のメイジとして大成したと言う。
 彼女のすぐ傍で文句を言い続けた奇怪な生物はこう語る。

「まぁぁったくルイズはクロウカード集めも全然せんかったからなぁ、それでもまぁ結局なんとかクロウカードは集まったし、マルトーのおっちゃんの料理も旨かったからなぁ。呼んでくれて感謝感謝や」

 そう語るケルベロスの影には、母の治療の為長大な杖を掲げて蒼い竜と共にハルケギニア中を飛び回った一人の魔法少女の姿があったとかなかったとか。


 END


「カードキャプターさくら」より「ザ・クロウ」を召喚


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