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超魔王(?)使い魔-14

「行けっ! ワルキューレ!」
主の出した命令によって青銅のゴーレムが勢い良く向かってくる。
だが、遅い。この程度の速さ、魔界にいた強者たちの足元にも及ばない。
思いっきり地面を蹴り大きく横に跳び躱す。――はずだった。
「何ッ!?」
思いっきり跳んだはずが予想よりも距離が短い。
予想外のことに硬直してしまった。
その隙を見逃してもらえるはずもなくワルキューレに殴り飛ばされる。
「ぐうっ……!」
何とか腕でガードしたもののダメージは大きい。
なぜ躱せなかったのか。理由はすぐに分かった。今の自分がレベル1だからだ。
魔力の低下に気をとられすぎて身体能力にまで考えが回らなかった。
思わず自嘲の笑みが零れる。今のは敵を侮り、能力に驕っていた自分に対する罰だ。
もうそんなことはない。全力でやつをねじ伏せる。
だが状況はかなり不利だ。恐らく正攻法では勝てないだろう。
ならばどうする? おとなしく降参でもするのか?
ありえない。こんなやつ相手に負けを認めるなど。
どんなに不利だろうと負ける訳にはいかないのだ。
いつかやってくるかもしれない、自分を打ち倒す勇者以外には負けてはやれないのだ。
それが、魔王の宿命なのだから。

「おやおや、どうしたのかな使い魔君。最初の威勢はどこにいったのかな?」
「……フン。貴様をどうブチのめしてやるか考えていただけだ」
「おお恐い恐い。全く、野蛮だね君は。そんな君には躾が必要だな! ワルキューレ!」
再びワルキューレが殴りかかってくる。
大きく躱すのは難しい。だから、最少の動きで躱す。
身を捩ることでワルキューレの攻撃を紙一重で躱していく。
「くそっ、なぜ当たらない!」
いつまでも当たらない攻撃に痺れを切らしたのか徐々に攻撃が大振りになっていく。
そしてワルキューレが大きく振りかぶったとき――
「うおおおおおお!!」
脇をすり抜けて本体であるギーシュに向かう。
そして、魔力を練り上げ何とか使えるであろう魔法を撃つ。
「――ファイア!」
手の平から放たれた火球にギーシュは驚愕の表情を浮かべている。
勝った!
だが、ギーシュは咄嗟に杖を振るった。
「何だと!?」
すると、驚くことにもう一体のワルキューレがギーシュの目の前に現われた。
火球はギーシュに当たらず、ワルキューレを燃やすだけに終わってしまった。
ワルキューレは一体だけでは無かったのだ。その事実に思わず歯噛みしてしまう。
油断は危険な事態を招く。数多の戦いを乗り越え、知っていたはずなのに。
常に注意深く相手を観察する。戦いの基本だ。だが、強くなりすぎたことでそんな基本すらも忘れていた。
弱くなってしまった今、それは致命的なことだった。

自分の油断を心の中で叱責していたのだが、ふと気付く。
何やら周囲の様子がおかしい。
ギャラリー達は驚愕の表情でこちらを見ているし、ギーシュはなぜか腰を抜かして怯えた表情をしている。
こちらの動きが止まっているにも関わらず、攻撃してこない。
不思議に思っていると、ギーシュがかちかちと歯を鳴らしながら口を開く。
「き、き、君は、ま、まさか、エルフ、なのか?」
エルフ。聞き覚えはあった。確か人間界に伝わる亜人で、空想上の存在。
なぜ自分のことをエルフと勘違いしたのかは分からないが
雰囲気から察するにどうやらこの世界ではエルフは畏怖の対象であるらしい。
……これならいけるかもしれない。
「エルフ、か。 そうだと言ったら……どうする?」
不敵な笑みを浮かべながら言う。
ギーシュはヒッ、という情けない声をあげてへたり込んでいる。
「貴様を消し炭にしてやってもいいんだぞ?」
威圧感たっぷりに言ってみせる。
「う、うわああああああ! ワルキューレェェェェ!」
恐怖により錯乱したのかギーシュは叫びながらワルキューレを造り出す。
その数六体。
心の中で舌打ちする。脅してあわよくば降参してもらおうと思ったのだがそれが裏目に出てしまった。

一体ですら苦戦していたのだ。六体では勝ち目は無いに等しい。
ファイアも撃ててあと二発。ギーシュ本体を狙うのも難しい。
どうする……?
「ワルキューレ! そいつを倒せぇぇぇぇ!」
考えている暇はない。やれるだけやってみるしかない。
「ハァァァァァァ!!」
わざと分かりやすい様に魔力を練る。
その様子にまたもギーシュは情けない声をあげ、ワルキューレ達の動きを止めてしまう。
そして、ラハールの“魔法”が完成する。
それは、まるで太陽だった。
そう思ってしまうほどに巨大な炎の玉。それがラハールの掲げた手の上で揺らいでいた。
「あ…ああ……」
その威圧感にギーシュは杖を落としてしまう。それによりワルキューレ達も消えてしまった。
ギャラリー達も恐慌状態に陥り我先にと逃げ出していた。
「どうだ? 降参するか?」
「あ、ああ!する!降参するとも!だ、だから許してくれ……」
「それだけではつまらんな」
そう言って手をギーシュの方に向ける。
「な、何でもする!だから見逃してくれぇ!」
もはや恥も外聞もなく許しを請う。
「何でもだな?」
「ああ、だから……」
「いいだろう」
ラハールの手から炎が消えた。それを見てギーシュはようやく安堵の息を洩らした。

「さて、何でもするんだったな?」
その言葉にギーシュが固まる。
「な、何をすればいいんだい……?」
恐る恐るといった感じで聞く。
「そうだなあ……
そういえばお前、さっきオレのことを野蛮だとか抜かしていたなあ?」
ギーシュは青ざめた顔でラハールに懇願する。
「あ、謝る!謝るから命だけは……」
「よし。決めた」
ごくり、と唾を飲んだ。自分はどうなるのだろう……?
「お前、オレ様の家来になれ」
「ああ、わかっ……はあ?」
諦めた表情で適当に返事をしようとしていたギーシュは
ラハールの言葉を理解するのに時間がかかった。
「なんだ? 不服か?」
「いや、そんなことは……
てっきり小指の一本でも差し出せとでも言われるのかと……」
「……オレをなんだと思ってるんだ。
まあいい。お前は今からオレ様の家来だ。オレ様の命令にはかならず従うのだぞ」
それだけ言うとラハールは意気揚揚とルイズの元に向かっていった。
一人になったギーシュはしばらく呆然としていたが、突然思い出したかのように笑いだした。
「は、ははは、ははははははは……
生きてる、よかった~」
安心からかまたもへたり込んでしまう。それからしばらく一人で笑っていた。
だが、家来になると言ったことをひどく後悔するようになるのは、もう少し後の話だ。



ところかわって学院長室。
決闘の一部始終を見ていたオスマンとコルベールは互いに無言だった。
「……オールド・オスマン」
そんななか、コルベールが口を開く。
「……なんじゃ」
「これが……伝説のガンダールヴの力ですか…
いや、それもありますが彼は一体何者なのでしょうか……」
「今はまだ分からん。決め付けるには早すぎる」
「ですが!!」
「落ち着かんか!この馬鹿者が!!」
興奮気味のコルベールをオスマンは叱り付ける。
「……申し訳ありません、オールド・オスマン」
無理矢理興奮を治められたコルベールはどこか不満な様子で謝辞を述べた。
「ミスタ・コルベール。興奮するのはよく分かる。おぬしの探求心はワシもよく認めておるよ。
じゃがな、まだ分からんことが多い今、決め付けてかかるのは危険じゃ。分かるな?」
先程の怒声とは打って変わって穏やかな口調で言う。
「……はい。ですが、あの力は危険です。放っておくには大きすぎる力です」
何かしら思うところがあるのか苦い顔でコルベールが言う。
「分かっておる。放っておくつもりはない」
「では……?」
「ミスタ・コルベール。おぬしに彼の者の監視を命ずる。
異変があればすぐに知らせよ。よいな?」
「…分かりました、オールド・オスマン」
「うむ。くれぐれも先走るようなことはしてくれるでないぞ?」
強い口調で威圧するように“警告”する。
「……分かっております。では私はこれで」
コルベールが退室したあとに、オスマンは愚痴るようにつぶやく。
「面倒事は嫌いなんじゃがのう……やれやれ」



再びヴェストリの広場に戻る
逃げていたギャラリー達がわらわらと戻ってくる中
ルイズは呆けていた。ラハールが押されていると思ったらなんとラハールが先住魔法を使ったのだ。
しかもそのあとには見たこともない様な巨大な炎まで出してみせた。
余りに理解を超えた出来事に反応すらできなかった。
そして原因のラハールはといえば自慢げにこっちに向かって来ている。
自分のなかの何かが音を立てて切れそうだった。
「おいルイズ、何を間抜けな顔をしているのだ? 勝ったぞ」
その言葉に我慢していた何かがブチ切れた。
「こ・の・馬鹿犬ーーーっ!!」
渾身の右ストレートを顔面に叩き込む。
ぶぴゃ、とか言いながらラハールが吹っ飛んでいったがまだブチ切れた何かは治まらない。
「あんた、何で、魔法使えるの黙ってたのよーーー!!」
マウントポジションで顔面を連続で殴る。
「ていうか、最後のアレ、あんなの使ったら私まで死んじゃうじゃないのーーー!!!」
ジャイアントスイングで思いっきり壁に向かって投げ飛ばす。
「む・か・つ・くーーーー!!!」
よろよろと立ち上がりかけたところにシャイニング・ウィザードを決めた。
「ふぅ、疲れた」
ようやく治まったのか満足そうに額の汗を拭った。
それを見ていたギャラリーはどん引きだった。


「死ぬかと思ったぞ……」
「それなりに加減したんだから死ぬわけないでしょ」
ラハールが恨めしそうな目で見てきたが無視した。
「……で、何でアンタが先住魔法なんか使えるのよ」
「先住魔法? なんだそれは?」
「……杖なしでも使える魔法のことよ。普通は杖がなきゃ魔法は使えないわ」
「この世界の魔法は本当に不便だな」
「うるっさいわね。余計なお世話よ。それで?
なんで使えるのよ。早く答えなさい」
「……魔の法と書いて魔法だぞ? 悪魔がそれを使わんでどうする」
……悪魔、か。今までなら疑ってたけどさっきのを見た以上そうもいかない。
エルフである可能性も高いけどなんとなくそれは違う気がする。
何にせよ考えても分からないしこれは保留だ。
「……それならそれでいいわ。じゃあ次。
最後のアレ、ギーシュが降参しなかったら本当に使う気だったの?」
下手したら自分も巻き込まれていたのだ。もし使う気だったなら……しっかりと躾けなければならない。
「ああ、アレか。アレは実際に使ったとしてもたいした威力はない」
「は?」
「アレはファイアを無理矢理膨らませただけだからな。
中身はほぼ空洞だしおそらく手から離れた途端にしぼんで消えただろうな」
「ようするに?」
「ただのハッタリだ」
思わず深いため息がでた。「失敗したらどうするつもりだったのよ?」
「そのときはそのときでどうにかしただろうな」
またため息。
「なんだそのため息は」
「……ちょっと呆れてただけよ」

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