あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ピノキオの大冒険-02


「ふぅん、歌を聞かせながら旅をねぇ……まるで吟遊詩人みたいね」
「似たようなものだから」

そのように答えたのは無用な混乱を防ぐためであった。
落ち込むルイズに音楽を聞かせていたジローは彼女の部屋へと連れられていた。そこでジローはどのように自分のことを説明しようか悩んでいた。
実は人間が作ったロボット……などと言ったところでルイズが信じるはずがない。
さらに異世界からやってきたといえば、からかっているのかと彼女を怒らせてしまいそうだったからだ。だから、ジローは自分のことを『旅の楽士』と名乗った。

「まぁ、普通の平民じゃないだけマシね。一つくらい取り柄があってよかったわ」

随分な言い方だなと、口に出しては言わなかった。
ここまでの会話の中でジローはこの世界について考えていた。そして出た結論はここが自分のいた世界ではないと言うこと。
確信を持ったのはルイズの部屋の窓から見える月である。そこにはジローの知る月よりも巨大でなにより、二つ浮かんでいるのだ。
そして魔法や貴族制度など、普通ならありもしないことがこの世界では常識となっているようだった。

「さてと、アンタは私の使い魔なんだから、私の言うことを聞くように」
「使い魔になった覚えはなんだけど」
「はぁ? 何言ってるのよ、契約したでしょう? それにほら!」

ジローの予想外の返事に呆れながら、ルイズはジローの左手に刻まれた紋様、ルーンを指差す。

「そのルーンが刻まれているということは、アンタは私の使い魔なの。不本意だけど」

最後の言葉は呟いたように口にしたらしいが、ジローの耳にはしっかりと届いていた。
出会った時にも思ったが、この娘は礼儀を知っているのだろうか? と思ったが、この世界には貴族制度があるということを思い出した。

(なるほど、貴族は平民より上だというのが普通の考えなんだな)

だったら、ルイズの態度も不思議ではない。彼女にとってそれが常識なのだから。
とはいっても、良い気分ではない。さらに人から命令を受けるのはウンザリだった。それにいつまでもここにいるつもりはなかった。

(だが、元の世界に帰って何がある?)

ルイズに従うつもりは毛頭ないが、かといって何かするわけでもない。何かあるわけでもない。あるのはつらい思い出ばかりだった。ならば、そんな思い出のある世界に帰るよりもこの世界でいつの日か機能を停止するまで、生きてゆくのも悪くはない。
様々な考えが駆け巡る中、ジローはあることに気がついた。

(僕はあの世界から抜け出たことを喜んでいるのかもしれない)

この世界なら自分を狙う組織も倒さなければいけない敵もいない。ただギターを弾いてゆったりと長い時間を生きてゆくことができる。命令といってもルイズが人を殺せという命令を下すとは思えない。
ならば、このまま使い魔生活も悪くはないとも思えてきた。もう戦わなくても良い。自然とそれが嬉しかった。

「ジロー?」

いつまでも黙っているジローにルイズはまた『持病』でも発症したのかと思い、心配げに声をかけた。

「あ、あぁ……ごめん。それで、使い魔って言うのは何をすればいいのかな?」

思ったより深刻な顔をしていみたいだ。心配そうな顔を向けるルイズを誤魔化しながら、ジローはたずねた。

「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるはずなんだけど……」
「無理みたいだね」

ルイズの言葉から察するにその能力は発揮されていないらしい。

「それから、主人の望むものを見つけてくれるんだけど……アンタ、そういった知識ってある?」
「どうだろう? 何かを見つけるのは自信あるけど、どういったものかは教えてもらわないとなぁ」

一度どんなものか教えてくれるなり、実物を見せてくれるなりしてくれればある程度のものは見つけることができる。
しかし、ルイズはこの答えを『ジローは出来ない』と解釈したらしく、ため息をつきながら、言葉を続けた。

「はぁ、まぁ、いいわ……そしてこれが一番重要なことなんだけど、使い魔はその能力で主人の身を守る存在なの! でも……」

ルイズはジローをジト目で見る。どう見ても戦ったことすらなさそうな楽士のジローにそれを期待するのは無理だと決め付けている目であった。
無理もないなとジローは声には出さずに言った。自分で言うのもおかしいが、どう見ても今の自分の姿を見て戦いを生業としてきた人間に見えるはずがない。

「せっかく人間なんだし、雑用くらいはできるわよね?」
「それくらいなら簡単だ」

いきなり召喚され、同意なしに使い魔とされ、雑用をやらされれば、憤慨するのが普通かも知れない。
だが、ジローは気にはしなかった。ただたんに平和な時間がすごせるのならば、雑用など苦にもならない。

「あら、意外と素直なのね。てっきり反論なり何なりしてくるかと思ったけど……それならいいわ。それじゃ早速……」

そう言いながら、ルイズは上着を脱ぎ始めた。
さすがにそれにはジローも慌てた。羞恥心というものがないのかと言いたかったが、その前に後ろを向いた。

「な、何をしているんだい!?」
「何って、寝るから着替えてるのよ」
「一応、君は女で僕は男だよ?」
「別に使い魔に見られたって、なんとも思わないわよ」

やはりこの娘は無茶を言う子だ。ジローはルイズをそう再確認した。
しばらくは服や下着の脱ぐ音だけが聞こえた。

「いつまで後ろ見てるつもり?」
「もう言いのかい?」

ジローが振り返ると同時に大きめのネグリジェに着替えたルイズが脱いだ服を放り投げてきた。落としてはまずいとジローはとっさに受け止めた。

「それ、明日になったら洗濯しておいて頂戴」

それだけ言うとルイズはベッドに入り、毛布をかぶった。
しかし、何かを思い出したように、上半身だけ上げ、ジローに振り向く。

「言い忘れてたわ。あんたは床で寝なさい。素直そうだし、今後の働き次第ではマシな寝床くらいは用意してあげるわ」

言うだけ言ってルイズは指をパチンと鳴らし、ランプの明かりを消すとすぐに毛布に包まった。
反論しないとは言っても、反論する時間を与えないのは君だろうなどと、口が裂けてもいえなかった。
ここに来てからというもの独り言が多くなったなと幾分か余裕を持つジローは小さな声でやれやれと呟いた。
仕方がないので、しわくちゃになった衣服を畳み、ジローは窓を見た。

「静かな夜だ……安心できる、静かな夜だ」

窓に腰掛、ギターを弾いたら良い音色が出るだろうなと思ったが、すぐそこで可愛らしい寝息を立てるご主人の睡眠の妨げになるのはと思い、止めた。
よくもまぁ見知らぬ男がいるというのに眠れるものだと、呆れつつも感心しながら、ジローは苦笑した。


ハッキリ言ってジローに睡眠は必要ない。だからといって、ずっと夜の間起きていたわけではない。一時的に機能を停止させ、擬似的な睡眠を行っていた。タイマーを掛けていたため、自動的にジローは再起動した。
ちょうど朝日が昇り始めた頃らしく、まだあたりは薄暗かった。
ジローは音を立てないように、立ち上がり、昨日の夜に畳んでおいた衣服を持ってルイズの部屋から出た。
洗濯をしなければいけないのだが、一体どこでやればよいのだろうかと悩んでいた。

「この世界に洗濯機があるとは思えないしな……」

だとすれば、手洗いが妥当か……と、早速水汲み場を探しながら、校舎内を散策していた。
改めてみれば、なかなか手の込んだつくりになっている校舎は予想以上に広く、まだハッキリと校舎の作りを理解しているわけではないジローは早速どこに行けばよいのか立ち往生していた。
そんな時だった。

「どうかなさいましたか?」

振り返れば、沢山の衣服が入った大きな籠を持ったメイド服の少女がいた。

「あぁ、洗濯物をどこで洗ったら良いのかわからなくって……」
「でしたら、水汲み場までご案内します。私もお洗濯物を洗おうとしていたところなんです」

ニコリと笑みを浮かべる少女の姿は主人であるルイズとは違った可愛らしさがあった。
彼女に案内され、ジローは校舎内の中庭にある水汲み場まで着いていった。その際に道を記憶しておくことも忘れなかった。
朝早くからの水仕事はつらいだろうに、メイドの少女は文句一つ言わず、冷たい水で衣服を手洗いをし始めた。
ジローには水の冷たさを感じられても、手がかじかむことはない。だが、少女は水仕事で荒れた手を休ませることなく、それこそ指が巧く動かせなくなっても、洗濯を続けていた。

「大変だね」
「いえ、これが仕事ですから。それに」

少女は一端、洗濯の手を止めると、ジローへと顔を向けた。

「それに?」
「お洗濯が好きなんです。というよりも家事が好きと言った方が良いかもしれません」

屈託のない笑顔を向けながら、少女は洗濯を再開した。
自分はルイズの衣服を洗濯すれば良いだけなのだが、少女はそれ以上の洗濯をしなければいけない。

「そういえば、まだ名前を聞いていなかったね……僕はジロー。君は?」
「私の名前はシエスタと申します。見ての通り、メイドです」
「僕は……」
「ミス・ヴァリエールが召喚した平民の使い魔……ですよね? 有名ですよ」

ジローがいうよりも早く、シエスタに答えられてしまった。
やはり使い魔で動物以外のものを召喚することはルイズが始めてらしい。それが人間―性格には違うが―が召喚されれば話の種にはなるのだろう。
シエスタのようなメイドまで知っているとなると、この学園中にはすでに広がっていると見て間違いはなさそうだ。

「……手伝おうか?」

すでにルイズの洗濯物は片付いているのだが、まだまだ多くの洗濯物を残すシエスタをおいて立ち去るのはいくらか気が引けた。
案内された礼もあり、ジローは手伝いをしようと声をかけたが、

「いえ、大丈夫です」

と断れてしまった。

「いつものことですし、これぐらいはどこの使用人でもやっています。よろしければ、ミス・ヴァリエールの洗濯物も次回からは私が引き受けましょうか?」
「いや、これは一応僕の仕事だからね。それに頑張っている君を見ていたら、楽をするのは悪い気がしてしまうよ」
「ふふ、真面目なんですね」
「ガリガリのクソ真面目野郎って言われたことがあるよ……」

それは亡き兄に言われた言葉だった。そのことを思い出すと、ジローの『心』には悲しいという感情が生まれていた。
自然と表情が曇ってしまい、気がつくと、シエスタが心配そうな顔でこちらを見ていた。

「あ、じゃぁ僕はこれで。ルイズを起こさなきゃいけないからね」
「あ……」

その場を逃げるようにジローは立ち去った。途中、シエスタが呼び止めたようだが、ジローは無視した。
思い出したくない過去を思い出してしまった。ジローは消去することのできない記憶を留めたまま、走りさった。


部屋に戻っても、ルイズはまだ寝息を立てていた。
そろそろ起こさなければいけない時間だろうと思い、ルイズの体をゆすりながら起こす。
その際にできるだけ自然な笑顔を向けるように努力した。嫌な思い出を思い出し、顔が崩れていると思ったからだ。

「朝だよ、起きたほうがいい」
「ん~……」

可愛らしい声と共に体を伸ばすルイズ。完全に覚醒しきっていないルイズはしばらく、ジローの顔をボーっと見ていたが、何かに気がついたように、大きく目を見開き大声を上げた。

「だ、だだ誰!?」
「ジローだよ」
「あ、あぁ……使い魔ね……」

取り乱したことが少々恥ずかしかったのか、小さく咳払いしながら、ベッドから降りるルイズ。

「おはよう」
「えぇ、おはよう。服」

返事を返したかと思うと、次には命令を下すルイズ。
ジローはすでに用意されていた服をベッドの上へと置く。

「下着」
「どこにあるんだい?」
「クローゼットの一番下の引き出しに入ってるわ」

言われたとおりに、ジローは引き出しを開ける。普段なら絶対に見ることはないだろう、女性物の下着の数々を目の当たりにして、さすがに顔を赤くするジロー。とりあえず、適当な下着を選んで、先ほどと同じようにベッドの上へと置く。

「着せて頂戴」
「はい?」

さすがに聞き捨てならない言葉を聞いて、思わず聞き返してしまった。
ベッドに腰掛け、いつの間にかネグリジェを脱いで下着姿になったルイズを見て、さすがに注意した。

「君には恥じらいって言うものがないのかい?」
「昨日も言ったでしょ、使い魔に見られたって、なんとも思わないって」
「使い魔でも意思はあるよ。物じゃないんだ」
「使い魔は使い魔よ。主人の命令にさえしたがっていればいいの」

そのルイズの言葉にジローは怒りがこみ上げてくるのがわかった。
自分の一番嫌いな言葉をルイズは言った。多少、違えど、その言葉はジローがもっとも聞きたくはなかった言葉であった。同時に今のルイズに何を言っても無駄だということを理解した。手を出さなかったのはジローの『良心』が働いたからだ。
仕方なく、彼女の着替えを手伝うことにした。


二人が部屋を出たと同時に向かいの部屋から住人が現れた。
褐色の肌を持った少女は大人顔負けの色気を放っていた。それは少女も理解しているのか、ブラウスのボタンをいくつかはずし、胸元がはだけるように見せていた。

「おはよう、ルイズ」

少女は悪戯っぽく笑みを浮かべ、挨拶をした。
対するルイズは嫌そうに挨拶を返した。

「おはよう、キュルケ」
「ふ~ん……」

キュルケはジローを値踏みするように見て、指をさして笑い始めた。

「驚いた! 本当に平民を召喚したのね」

どことなくわざとらしい言葉だったが、どうやらその判断は正しかったようだ。
見計らったように、キュルケの部屋からは巨大なトカゲが現れた。

(なるほど、自慢したいだけか……)

キュルケのからかいを無視しながら、ジローは現れたトカゲを見た。トカゲにしては巨大すぎる体、尻尾は火でできていた。さらに体温も普通の動物では発することはない温度を放っていた。

(火トカゲか……こんなものまでいるのか)

ジローが一人関心している横でルイズは悔しそうな顔を向けながら、キュルケにたずねた。

「これって、サラマンダーよね?」
「そうよ、この炎の尻尾は間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。好事家に見せたら値段なんて出ないわ」
「ふぅん……良かったわね。ついでにアンタの属性とあってるんじゃない?」
「そうよぉ、私の『火』の属性にぴったりだもの。ねぇ、フレイム」

フレイムと呼ばれたサラマンダーの顎を撫でてやりながら、得意げに言った。
ルイズはキュルケを睨みつけていたが、言い返す言葉が見つからないようで、口を開けてはすぐに閉じていた。

「ところで……」

ルイズの視線を意に介さないのか、キュルケは涼しい顔をしながら、ジローにほんの少し詰め寄った。

「貴方、お名前は?」
「ジロー」
「へぇ、変わった名前ねぇ」

余計なお世話だと思ったが、ジローは言い返さなかった。

「それじゃ、お先に」

キュルケは振り向きざまに言いながら、その場を立ち去ってゆき、フレイムもその後を追った。
それを見届けたルイズは拳を握り締め、地団駄を踏んだ。

「きぃー! 何なのよ、あの女、自分がサラマンダーを召喚したからって!」

ルイズはキッとジローをにらみつけた。
この目を向けられるのは二度目だなと思いながら、女のヒステリックほど怖いものは早々ないと考えていた。
何か言ったところで今のルイズにはどれも逆効果だと思い、ジローはあえて何も言わなかった。

「メイジの実力を測るには使い魔を見ろって言われるくらいなのよ。それなになんで私はアンタみたいな楽士なのよ!」

八つ当たりもいいところだ。
貴族という環境に育ったためか、自分より身分の低いものに対しては言いたい放題なルイズの性格をジローはあまり好ましいとは思っていなかった。
いくら環境だからといって、ここまでハッキリと不快感を表されては、少なくとも怒りがこみ上げるのは当たり前だった。

「時間」
「え?」
「時間は良いのかい?」

いくら温厚なジローでもいつまでも彼女の愚痴を聞いてやるほどの余裕は持ち合わせていない。だから、話を中断しようとした。

「あぁもう! 行くわよ」

やり場のない怒りを撒き散らしながら、ルイズは大股で廊下を歩いた。ジローもその後をほんの少し離れた位置で後を追った。


この世界に来て、ジローはある危機に立たされていた。
ルイズについていくと、巨大な食堂にたどり着いた。三つの長いテーブルが設置され、豪華な装飾を施されていた。
テーブルの内、真ん中の方へと移動した二人。他の二つを見れば、まだ幼さの残る生徒と大人びた生徒と別れていた。どうやら学年別で分かれているらしい。

「豪華だね」
「そりゃ貴族が食事をする場所だもの。これくらいは普通よ」

得意げにルイズは説明を始めた。

「このトリステイン魔法学院が教えるのは魔法だけじゃないの。貴族たるべき教育を受けるために、食堂も食卓も貴族にふさわしいものでなければならないのよ」
「ふぅん」
「本当ならアンタみたいな楽士はこの『アルヴィーズの食堂』には入ることなんてできないのよ。感謝しなさい」

説明が終わったのか、ルイズはチラッとジローへと振り向く。どうだといわんばかりの目だった。
しかし、ジローにとってそれはどうでも良いことだった。とりあえず、説明とこの食堂に入れたことに関しての礼をする。
そっけない返事だと思ったのだが、それだけでもルイズは満足したらしく満足げな顔をしていた。
適当な席を見つけたらしく、ルイズはその場に立ち止まった。何かを催促しているようで、ジローはそれが何なのかすぐにわかった。

(椅子を引けってことか)

とりあえず椅子を引いてやると、礼もなしにルイズは座った。
さて、自分はどこに座ればいいのかと悩んだ。それに気がついたのかルイズは床を指した。

「悪いけど、アンタは床。そこに朝食があるでしょう?」

床に置かれていたのは、ロールパンが二つと肉と野菜が申し訳ない程度に入ったスープだった。

「アンタが反抗的だったら、もっと粗末なものにしようと思ったけど、中々素直みたいだから、それ」

別にどんな料理でもジローは食することはできない。カモフラージュ程度に口にすることはできても、内部で消化できる機能は存在しない。
これが今のジローの危機だった。一応、人間で通しているため食事をしなければいけないのだが、その後、取り込んだ食べ物を取り出さなければいけない。できることなら、食事を取ることは避けたかった。

「本当は使い魔は外なんだけど、特別な計らいで入れてあげたのよ」

それを聞いてジローはあることを思いついた。
別に一緒に食べる必要はないということなら、この場所にいる必要はない。ジローは皿を手に取ると、床に座らず食堂を出ようとした。

「ちょっと、どこ行くの!」
「外で食べるよ。それに、床に座ったら迷惑だろう?」
「使い魔は主人のそばにいなくちゃいけないの! 勝手に行動しないで!」
「食事が済んだら、入り口で待っているよ。これだけの量だ、すぐに済む」

それだけ言うとジローはさっさと食堂を後にした。
とりあえず、これをどう処分しようかと悩んだが、周りの生徒が連れている使い魔を見て、それらに処分させようと考えた。大型のものならどこかに集められているはずだと考え、ジローはまず、水汲み場へと向かった。
学院外に出ると、ジローは耳に意識を集中させた。常人のそれを遥かに上回る聴力で、大型の使い魔たちの場所を探し出すのだ。

「ン……あっちか」

たどり着いたのは、かなり大きめな小屋だった。しかしどこにも使い魔の姿は見られなかった。恐らく主人が自慢目的で連れて行ったのだろう。
しかし、これは拙い。どかにいないものかとあたりを見渡す。

「おや?」

さてどうしたものかと考えていると、一匹の白い竜を発見した。どういうわけかこちらをジッと見つめている。性格には手に持つ皿を穴が開くほど見つめている。

「お腹すいてるのかい?」

尋ねてみると、竜はコクコクとうなずいた。どうやら人間の言葉を理解できるらしい。
随分と人懐っこい竜だ。もしかするとまだ子供なのかも知れない。
パンをちぎってよこしてやると、うれしそうに食べ始めた。

「ふふ……」

パンを食べ終えた竜は次にスープを一気に飲み干した。
もっとないのかという目を向けられたが、あいにく持ち合わせはない。

「もうないよ」

それを聞くと竜はしょんぼりと頭を下げた。よほどお腹が減っていたのかも知れない。

「また持ってくるかも知れないから……」
「きゅい!」

竜はうれしそうな声で鳴いた。
しばらくジローは小屋にいたが、ルイズの食事が終わるころだと思い、その場を立ち去ろうとした。
ふと、センサーが人の接近を感知した。この竜の主人だろうか?

「……」

現れたのは青い髪ショートカットの少女だった。ルイズよりも年下に見える少女は不釣合いな長い杖を背負いながら、両手に肉などの食べ物を持っていた。恐らく竜の餌だろう。
まだ餌の時間じゃなかったのか、道理でよく食べると思った。

「……お皿」
「え?」

少女は突然、ジローの持つ皿を見ていた。
何故か竜はびくびくとおびえている。

「食べさせたの?」
「いや、僕が食べた。食堂では食べにくい雰囲気だったから」
「そう……」

食べさせたといったら、自分か竜のどちらかがしかられるだろと思い、嘘をついた。
答えを聞いた少女は短く冷淡に答えた。
このままだと無言の状態が続くと思い、ジローはとりあえず言葉を発した。

「食事は終わったのかい?」
「……」

少女は何も言わずうなずいた。
ちょうど良い時間みたいだ。ジローは軽く会釈しながら、その場を立ち去ろうとしたが、ふと、何か思い出し、少女に尋ねた。

「あぁ、その前に」
「なに?」
「厨房がどこだかわかるかな? 皿を返したいんだ」
「食堂の裏」

先ほどと同じように少女は淡々と答えた。

「ありがとう」

それでもジローは礼を言って、立ち去った。


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