あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ピノキオの大冒険-01


「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに答えなさい!」

少女の高らかで力強い詠唱と共に、サモン・サーヴァントは行われた。
直後、爆発音と共に舞い上がった土煙が広場を覆う。風に煽られ、少女の桃色の髪は荒々しく舞いあがり、黒マントの下の真っ白なブラウスとグレーのブリーツスカートが土埃で汚れる。
しかし、それはいつものこと。少女にとって、そして周りのものたちにとって見慣れた光景、結果は魔法の失敗。しかし、今回はどうやら違うようだ。
舞い上がる土煙を払いながら、少女は爆発地点へと目を向けた。すると、そこに黒い影を見つけた。その光景を少女は歓喜の笑みを浮かべ、周りの者たちは驚愕した。

「やった……」

少女、ルイズは小さく誰にも気づかれないように、拳を握り喜んだ。召喚に成功したのだ。後は土煙が晴れるのを待ち、自身が召喚した使い魔の姿を確認するだけだった。
妙にしつこい煙が晴れると次第に黒い影の輪郭もはっきりしてきた。そして、完全に晴れたとき、ルイズの歓喜の笑みを一気に絶望の淵へと叩きのめされ、周りのものたちは「やっぱりか」といわんばかりにため息をつき、嘲笑へと変わっていった。

「な、なんで?」

ルイズの目の前には神聖でもなんでもない、ギターを背負った、妙な恰好をした一人の男が立っていた。

ふと気がつけば、そこは見知らぬ土地だった。
何の冗談かと思ったが、先ほどまで自分がいたのは何もない山道だったはずだ。そんな質素な景色から随分と様変わりした光景を見れば、もしかしたら自分は何らかの原因でこの場所に転送されたことになる。
周りを見れば黒尽くめのマントを羽織った集団で埋め尽くされていた。さらに自分の目の前にはその集団と同じく黒マントを羽織った桃色の髪の少女がいた。
どういうわけか、酷く落胆しているような印象を受けた。

「あの……」
「ミスタ・コルベール!」

事情がよくわからない為、取り合えず目の前の少女に質問をしようとした矢先だった。
問いかけは少女の声にかき消され、当の少女は大股で禿頭の男の下へと向かっていった。何か言い合いをしているようだ。

「もう一度召喚をやり直させてください!」
「それは無理だ。春の使い魔の儀式は今後のメイジの人生を決める役割を持つ神聖な儀式だ、例外は認められない。君の好む好まざる関係なく、彼と契約しなければいけない」
「そんな! 平民を使い魔にするだなんて聞いたことありません!」
「確かに、だがやり直しは認められない。それは君もよくわかっているだろう?」

耳に聞こえてくる会話はハッキリ言ってなにを言っているのか理解できなかった。
ここが日本でないのは目の前の集団の顔を見れば一目瞭然、恐らくヨーロッパあたりの人間だろうと推測できた。しかし、彼らの会話を聞く限り、どうもおかしい。

『召喚』、『平民』、『使い魔』

どれも物語などでしか聞かないような単語が飛び交っていた。
一体何が起きたのかと考えていたら、桃色の髪の少女が何かを諦めた様子でこちらへと戻ってくる。
目の前に立つや否や、キッとこちらを睨みつけてきた。向けられているのは敵意ではない。だが、明らかに好意的な意思は見られない。

「あの……」
「わが名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司る大いなるペンタゴン、この者に祝福を与え我の使い魔となせ!」

またもや少女の大声で問いかけはかき消された。しかも今度は杖を取り出して、自分に向けてなにやら叫び始めた。内容はまるで魔法の呪文だ。
呪文らしき言葉が終わると、ほんの少し静寂が訪れた。最初に口を開いたのは、少女の方だった。

「何をしているの、しゃがみなさい!」

いきなり怒鳴られた。こうなってくると、さらに訳がわからなかった。

「なんでそんなことしなければいけないんだい?」

当然の問いかけ。
いきなり見知らぬ土地に飛ばされ、目の前で叫ばれて、しゃがめといわれれば、誰だって聞き返す。
だが、少女はそんな態度に腹が立ったのか、顔を真っ赤にしながら、地団駄を踏みながら、先ほどの大声異常の声で怒鳴った。

「ふざけないで! いいから、しゃがみなさい!」

以前の自分なら恐らく躊躇なくしゃがんでいただろう。だが、今の自分はそうは行かない。

「いきなり失礼じゃないのか? 人にものを頼む態度とは思えないな」

そんな言葉をかけた瞬間、何故か周りが一斉に大笑いし始めた。
それにまぎれて、周りからは野次が飛んでくる。

「さすがゼロのルイズだ! 平民に説教されているぞ!」
「あっはっはっは!」

一つ例外だったのは、桃色の髪に少女―恐らく名前はルイズだろう―だった。彼女は真っ赤な顔をさらに赤く変化させた。
ルイズはジローの襟首を掴み、引き寄せようと引っ張るが、服が伸びるだけで、ジローの体はまったく動かない。
しかし、このまま服が伸びるのも、注目の的になるのも嫌だったので、ジローは仕方なく体を屈めた。
次の瞬間、恐らく一秒と立っていなかっただろう。ルイズは杖をジローの額に当てると同時に唇をあて、すぐさま離れた。

「なにを? ……ッ!」

ジローは突然のことに驚き、立ち上がりながら、後ずさった。
さらに左腕に違和感を感じたジローはすぐさま左腕へと目を向ける。そこには奇怪な紋様が左手の甲に刻まれていた。徐々に浮かび上がる紋様と同時に左手からは『人間』で言う痛みが走った。さらにまたすぐに別の違和感がジローを襲う。

「がっ……!」
(馬鹿な! プログラムが書き換えられているだと!)

胸を押さえ、体を屈めると、ジローは次々と下される『指令』に苦しんでいた。
『従え』、『従うな』と言ったまったく正反対の命令が二つの回路から下されていた。
『従うな』という命令が勝り、すぐさま苦しみからは解放された。
さっきのは一体なんだったんだろうと思いながらジローは舌打ちしようとしたが、目の前で心配そうな顔を向けるルイズが視界に入り、それは止めた。

「ちょ、ちょっと大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫。持病見たいなものだから……」

とっさに嘘をついて、その場をごまかす。今では平然とつけるようになった嘘だが、それも以前では出来なかったことだ。
随分と『人間』らしくなったと半ば自嘲気味に苦笑いを浮かべた。

「ふむ、変わったルーンだが、無事契約は済んだようだね」

いきなり目の前に現れ、ジローの左手に刻まれた紋様をまじまじと見つめる禿頭の男。
彼に少し、苛立ちを覚えたが、文句を言う暇もなく男は踵を返した。

「さぁ皆教室に戻るぞ」

男とそしてルイズを除く他の黒マントたちは宙を浮いた。
その光景を見て、ジローは柄にもなく驚いた。
人間が宙を浮いた?
常識ならば考えられないことだった。少なくとも彼の知る人間の中で単独で空を飛ぶ人間はいない。

「お前は歩いてこいよ!」
「フライもろくに出来ないんだからな!」

口々にルイズに対するからかいの言葉を残して、彼らは去っていった。
唖然と宙を浮き、城のような建物に消えて行く集団を見送り、ジローはゆっくりとルイズの方へと向いた。
同じようにルイズもジローの方を向いていたのか、ばったりと二人の視線が合う。
さて、どうしたものかと考えているとまたもルイズがこちらを鋭い視線で睨み、恨み言のようにブツブツと何かを言っていた。

「何であんたみたいな冴えない男が……」
「悪かったよ」
「悪いと思うんだったら、召喚されないでよ!」

いきなり無茶を言う娘だなと、ジローは目の前で本日何度目かの大声を上げる少女を見た。
召喚とやらをしたのは君だろう? といいたがったが、先ほどまでの彼女の性格を見ると、そんなことを言うとまたこの少女は怒るだろうと思い、止めた。

「まぁ、いいわ……」

諦めたような声を出しながら、ため息をつき落胆するルイズを見てさすがに可哀想だとは思ったが、自分に何をしろと思うのも事実だった。
ふと、ジローは自分の背負っているものの存在を思い出す。背のギターを構えると、ジローは弦をはじきながら、チューニングを始める。

「なにしてるの?」
「こんなことしか出来ないけどさ……」

そういいながら、ジローは弦をはじきながら、音楽を奏でた。
けして明るい曲調ではなかったが、その音色を聞いたルイズは不思議と心が静まるような感覚に陥った。

「あんた、楽士だったの?」
「ウン? まぁそんなところかな?」

事実を言ったところでルイズが信じるとは思えない。話をあわせながら、ジローはギターを弾く。



ルイズはもちろんのこと、他の者たちも気がついてはいなかった。
彼女が召喚したのは、神聖ではなく、むしろ神聖を冒涜するような存在、醜く、そして非力な使い魔であるということを。



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