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双月の女神 第十一章1




―――――夢を見ている――――――
―――――これは過去の記憶―――――





―――――ベグニオン帝国首都シエネ。皇帝の住まう大神殿マナイル玉座の間にて、二人の女性が向かい合う。
一人は玉座にかけ、朱明の生地に金色の装飾が栄える法衣を纏う。背中を覆う程の長さを持つ、真っ直ぐな群青の髪。
もう一人は肩を覆う長さの絹糸の輝きを持つ銀髪と、薄紅のマントと純白の巫女装束。
二人に共通するのは、太陽の明るさを持つ金色の瞳。

「人払いも終えたゆえ、遠慮は互いに無用じゃ。久方に姉妹水入らずで語らおう、姉上。」
「ええ。二人きりで話をするのは本当に久しぶりね、サナキ。」

デイン王国女王であるミカヤとベグニオン皇帝たる女性―――サナキは祖母を同じくする姉妹。
年に一度行われるデイン・ベグニオン首脳会談の後に設ける、二人だけの大切な一時だった。

「姉上。実はな、この間夢を見たのじゃ。」

他愛ない話題から切り出すサナキ。

「・・・聞かせてもらえる?」

話を促すミカヤ。
それに頷いたサナキは自身が見たと言う夢について語り始めた。

「その夢は双つの月が在り、重なって紫の光を放つ夜じゃった。」

そう区切り、夢の中で体験したことを瞑目しながら振り返る。

「森の中に現れた私はあてなく散策をしていたら妙に調子の良い、魔道士風な出で立ちの優男と会ってな。
あやつは、「良き夜にこのような森で、貴女のような御婦人と巡り合える僥倖に感謝を。」と声をかけてきおった。」

苦笑しながら、その男性の軟派な声かけを語る。
それを聞いたミカヤも、妙に演劇染みた語りを好むクリミアの「交渉人」を思い起こし、愉快そうに笑う。

「その後も取り留めの無い会話をしながら二人で森を歩いた。私やあやつの生まれ、育ち、他にも色々と話し合った。
うろ覚えかも知れぬが、あやつは『オスマン』と名乗っておったか。好色の気が見え隠れする呆れた奴じゃった。」

ややうんざりしたような表情になり、溜め息をつくサナキ。

「本当に困った人だったのね。」

優しく微笑みながら、そう相槌を打つミカヤに先程までとは変わり、苦い面持ちになったサナキは話を続ける。

「暫く歩くと、猛るような飛竜の吼え声が聞こえたのじゃ。巣に近づいたのやも知れぬ、何者かの絶叫もな。
私とオスマンはそこへと駆けつけた―――――」


―――――そこで、唐突に夢から醒める―――――





「・・・!」

意識が急速に立ち上がり、周囲を確認するミカヤ。
主であり『妹』であるルイズと共に寝ている筈のベッドの隣を見ると彼女の姿が無い。
更には外から聞こえてくる遠い所からの鈍い音と共に、ぐらぐらと地響きがする。

「まさか・・・。」

焦燥感に駆られたミカヤは寝間着の上からマントを羽織り、一冊の魔導書と聖杖『マトローナ』を手に取ると素足のままに
駆け出し、自室を後にした。

「ルイズ・・・!」





ファイアーエムブレム外伝 ~双月の女神~

第一部 『ゼロの夜明け』

第十一章 『土塊の怪盗(ルイズの章)』





ミカヤが目覚める少し前―――――


マントと一体化したフードを目深に被りローブを纏う人間が一人、真夜中の学院本塔の外壁に立つ。
その黒尽くめの人物は足元の床の感触を確認すると、苦い表情を作る。

「さすがは魔法学院本塔の壁、てところかしらね。
あのコッパゲ、強力な物理攻撃ならこの外壁を壊せると言っていたけど・・・。
こんなに分厚かったら私のゴーレムでも穴を空けられるか分からないじゃないの。」

一度言葉を区切ると、覚悟を秘めた視線で床を見据えて呟く。

「けど、ここの『破壊の杖』を諦めるわけにはいかないからね。」

学院長オスマンが持ち出しを禁ずる程の貴重な魔道具。これの使用用途を解明し、横流しにして出来る大金があればと、
思考する。
自身には待つ者がいる。
だからこそ、この『仕事』を諦めるわけにはいかなかった。
―――不意に、足元の庭からする人の気配。
音を立てないよう身を隠し、様子を伺う。





「はぁ・・・・・。」

ミカヤを起こさぬように細心の注意を払って自室を抜け出てきたルイズは、溜め息をつきながら中庭へと姿を見せる。
こうして何時もの日課としている、魔法の練習を行っている彼女。
魔法に関する勉学は同期の中でも優秀で、魔法の詠唱のルーンを間違えるようなことは稀にしかない。
しかしながら、魔法を学び始めてからのこの半生、あらゆる魔法が爆発現象に変わり、正しく発動したことが一度も無い。
詠唱を間違えていないにも関わらず、である。

「ミカヤお姉さまは使える魔法が無ければ見つければいいとは言ってくれたけど・・・・・。」

自身に使える魔法と言えば『爆発』以外無い。
意外なものが『答え』になるとは、自身の『爆発』こそが魔法の本質なのだろうか?

「・・・・・・、あ!」

思い悩んでいたルイズは何かを思いついたように顔を上げ、杖を構える。
何時もの指揮棒のような杖ではなく武器屋で購入してきた、装飾が質素で古ぼけた長杖。
何故かは理解出来なかったが、今まで愛用してきた杖よりも馴染み、精神力も良く通る物だった。

「今の私には『爆発』しか使えない。なら・・・・・。」

そう、爆発に指向性を与え、御すればいい。
四大系統に拘らず、呪文が無いならば作れば良い。
ルイズは精神を統一し、思考の海へと潜る。

「・・・・・――――――・・・・・。」

ハルケギニアの魔法も元はと言えば、始祖ブリミルから授けられた四つの属性を骨子に、先人達が試行錯誤の果てに
基礎と構成を完成させたもの。
現在も魔法の研究はアカデミー等、一部の研究機関で行われている。
事実、ルイズの実の姉である長姉は、不治の病に犯されている次姉の治療を目指して魔法の研究と開発をしている。

―――――ならば、自らにも出来ない筈は無い。

全ての系統の色を抜き、爆発そのものを骨子へと置き換え、今までに存在しない属性を『ゼロ』から構築しようとする。

「・・・?あれ?」

その時、違和感を覚えた。
四大系統全ての色が抜けた瞬間に感じた高揚感は、自らの正しい系統を行使する瞬間。
今までに無かった、はっきりと認識出来る自身の内からの力のうねり。
その感覚に従い、ルイズは呪文を構築する。

《――――粒の粒より生まれたる『ゼロ』よ。集いて破砕の光を与えよ―――》

脳裏に浮かぶ、所々抜け落ちている骨子に自分なりのピースとして、ミカヤから教わった『古代語』で呪文を紡ぎだす。

《―――エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ――――》

さらにその魔法の核となるルーンを詠唱し、霞がかって分からない以降の構成を棄却する。
長杖に光が集い、高い密度で魔力が収束されていく。
そして、正面に仮想の標的を描き、そこへと長杖を振り下ろしながら引き金の呪文を唱えた。

「『エクスプロージョン』!!」

蒼い閃光が狙い過たず、仮想標的の位置に走った―――――





「なっ!?」

ルイズの様子を見ていた黒尽くめの人物は絶句してしまう。
彼女が放った閃光は轟音と共に空気を破裂させ、その余波だけでスクウェアクラスのメイジが『固定化』を幾重にも
かけたであろう外壁に罅を入れたのだ。
詠唱されたルーンは聞き覚えが無く、何も無い空間をあのように爆破する魔法はその人物の知識には存在しなかった。
しかし、これは黒尽くめの人物に取っては絶好の機会。
一度頭を振ると指揮棒程の杖を右手に握り、ルーンを唱えて地面へとその先を向けた。





「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」

息を乱し、その場にぺたんと座り込んでしまったルイズ。
正規の詠唱で無かったのか、あるいはこの魔法自体の精神力消費量が多かったかは定かではない。
何れにしても精神力の消耗が大き過ぎたのだ。
攻撃魔法としてはトライアングルスペルに迫るも、今の威力のままだと放てても二、三回が限度だった。

「やった・・・・・。」

それでも、自分の思い描いた通りに魔法が初めて発動した。
爆発だけとは言え、ようやく魔法を使えるようになった喜びがそこにあった。
しかし、それを打ち消すように低い地響きがする。
はっとしたルイズは警戒するように周囲を見渡して後ろを振り返ると、地面が隆起するのを捉えた。

「な、何あれ!?」

見る見るうちに土は見上げる高さまでに盛り上がり、30メイル程の全長を誇る巨大なゴーレムが生成される。
完全に人型を形成するとそれは、大地を揺らしながら此方に近づいて来る。

「く・・・っ!」

―――逃げるか?
この大きさのゴーレム相手ではまるで勝ち目が無い。ルイズもそれは理解していた。
しかし、周囲はこの騒動に未だ気づいている様子は見られない。

(・・・私が何とかしなきゃ!)

覚悟を決めたルイズは長杖を両手で強く握り締めると、先程発動させた魔法『エクスプロージョン』の詠唱を開始する。
ゴーレムは―――操者が此方の魔力の高まりを感知したのかルイズへと向き直り、右の拳を振り上げる。
集中力が高まった脳裏には、刹那の間に過日のミカヤとギーシュの決闘の思い出される。
人間の等身大の大きさだった『ワルキューレ』はその数と早さ、そして精密さでミカヤと肉薄していた。
此方の相手は巨体故に破壊力は高いが、精密さに劣り、動作の一つ一つが遅い。
―――初撃だけならばかわせる。
相手の動きを見て、そう読んだルイズは詠唱を続けつつも右横へと全力で駆け出し、すんでのことでゴーレムの足元へと
受身を取れていない前転で転がり込むと同時に巨岩の拳が地面に叩きつけられる。
地面に全身を擦りつけ、擦り傷ができると共に痛みが走るがそれでも詠唱を止めなかった。
鋭い視線をゴーレムに向け直すとそこには右足を持ち上げ、踏みつけんとする様がスローモーションのように
確認出来る。
此方は呪文は完成した。後は放つだけ。
長杖を右手だけで振り上げ、右脚目掛けて魔法を発動させた。

「『エクスプロージョン』!!」

蒼い閃光と共に吹き荒れた爆風は右脚を粉微塵に吹き飛ばした。
それによりバランスを大きく崩したゴーレムは後ろへとそのまま倒れた。

「もう一撃ッ!」

倒れている間に勝負を決めようと、もう一度詠唱。
しかし―――

「う・・・っ!」

視界がぶれ、全身から力が抜けてしまい前のめりに倒れてしまうルイズ。
最初の魔法の発動からの反動がここへ来て襲ってきたのだ。
倦怠感と疲労感にとらわれ、身体が動かないばかりか魔法の構築すらも出来ない。
そうして手を拱いている間にゴーレムは周囲の土を掻き集め、失われた部位を再構成してしまった。

「そんな・・・。」

絶句して絶望感が支配するルイズに対し、悠然と大地を踏みしめながら迫り来るゴーレム。
一歩も動けない状況を見て取ったか、左の拳を見せ付けるように振り上げる。

(やられる・・・!)

自身の末期を覚悟したルイズは双眸をきつく閉じ、この身が微塵に潰される瞬間を待つしかなかった。
だが、それは間一髪で遮られる。

「『セイニー』!」

突如として上空から降り注いだ、太い一条の光槍がゴーレムの腕を丸ごと消滅させた。
顔を上げ、目を開けたルイズに映るのは、自身を導き守る銀髪の『女神』の姿。

「ミカヤお姉さまッ!」
「ルイズ、大丈夫!?」

駆けつけ、自身の窮地を救ったミカヤを見て歓喜の声を上げるルイズを後ろに庇うように、
彼女はゴーレムの前に立ちはだかった。
一方ゴーレムは土を集め、失われた腕を修復する。
ミカヤの高揚する戦意と共に額の『ミョズニトニルン』のルーンが輝くと、光の精霊達が周囲を取り巻く。

「次は、私が相手をします。」

左手に女神の巫女のみに扱うことを許された光の上位精霊魔法『セイニー』の書を、右手に聖杖『マトローナ』を構えた
ミカヤはそう厳かに宣言した。

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