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ゼロの武侠-04


ゼロの武侠-04

「ヒャハハハハハハ!」

草原を切り裂きながら疾駆する一台のジープ。
その荷台に乗った男達の手には物々しい銃器が握られていた。
甲高い音が鳴り響く度に、獣達は銃弾に倒れて悲鳴を上げる。
屍の傍に車を止めて男の内の一人が口を開いた。

「何が“ジャングルの王者”だ、笑わせるぜ」

角を掴んで遺体を引き上げながら彼方を見やる。
そこには日没のように赤く染まった光景が広がっていた。
陽炎が漂い、黒煙が舞い上がる地獄にも似た景色。
それはこのハンター達の手によって生み出された物だった。

「ちょっと火をつけてやりゃあハンターどころの騒ぎじゃねえ。
ターちゃんも消火で手一杯、つまりは“やりたい放題”って訳だ」
「全くどうして他の連中はこんな単純な事に気付かねえんだろうな」

荷台に動物の遺体を運び込んだ男がジープの天井を叩く。
それを聞いたドライバーが車を発進させる、いつもの合図だった。
しかし一向に車が走り出す気配はなく静寂だけが流れた。
苛立った男が荷台から降りて運転席へと向かおうとした瞬間。

激しい衝撃音と共に何かが運転席を貫いて荷台へと叩き付けられた。
それは砕け散ったフロントガラスに塗れた運転手の姿だった。
その胴には丸太でも受けたのではないかと思わせる窪みが出来、
口から血の入り混じった泡を吐き出して完全に悶絶していた。

「思いつかねえんじゃねえ……やらねえんだよ」

突如響き渡った見知らぬ人物の声に男達は銃を構える。
ざくりと草を踏み締めながら声の主は彼等の前へと現れた。
顔には袈裟に刻まれた傷跡。
纏っているのはアフリカには不似合いな拳法着。
その手には武器らしき物は何も握られてない。

しかしハンター達に生まれたのは安堵ではなく困惑。
ジープを素手で叩き壊すなど人間の成せる業ではない。
唯一それを可能にする“番人”は不在の筈。
ましてや噂に聞いていた風貌と目の前の男はまるで違う。

恐怖に耐えかねたハンターが引き金を絞る。
だが音速を誇るライフル弾が貫いたのは無人の空間のみ。
相手の撃つ瞬間、それさえ分かってしまえば当たる道理など無い。
まるでそう語るかのように男はハンターの懐に容易く入り込む。
大地を踏み砕く蹴り足と共に放たれる顎への掌底。
打ち上げられた男の身体が見上げるほどの高さまで舞い上がる。
地面に叩き付けられた相手に目もくれず、最後の一人に振り返って男は言い放った。

「……俺達を本気で怒らせたくねえからな」

その静かな口調の裏にはどれほどの憤怒を帯びさせているのか。
鋭い眼光に貫かれたハンターは言葉どころか己の身体の自由さえも失った。
一歩一歩自分へと近付いてくる男の姿をハッキリと見ながら、男は思い出した。
“ジャングルの王者”ターちゃんには“超人”とも言うべき仲間が付いているという噂を。

ターちゃんの一番弟子にして空手の達人ペドロ・カズマイヤー。
一時期はターちゃんと互角とも評されたアフリカ最強の戦士アナベベ。
そして中国からやって来た鬼神の如き拳法家、その名を―――。

吹きぬけた風に頬を撫でられて眼を覚ます。
サバンナの雨季乾季どちらとも違う風もまた風情がある。
かといって西派の本山のような山間を吹き抜けるものとも違う。
穏やかで優しげな風は平原に春の到来を感じさせる。

よっと身を起こして服に付いた土を払う。
最初は召使いのような仕事と聞かされて嫌気も差したが、
やってみれば選択に掃除と普段の日常と何ら変わらなかった。
……まあ、それで満足しているのはどうかと我ながら思うが。

一つだけ大きく違うといえば、ここには守るべき動物がいない事だ。
いや、一匹だけピンクががったブロンドの毛並みのがいるが、
そいつの皮を剥ごうとか牙を抜こうとかするハンターはいない。
牙の一本ぐらい抜いてやった方が本人の為のような気もするけどな。
ともかく平和なのは良い事だが退屈極まりない。
組み手の相手さえも見当たらず、こうして昼寝ぐらいしかやる事が無い。
このままではヂェーンさんのようになってしまうのでは?という危惧さえ感じる。

慌しく駆けてくる足音を聞き取り、梁は木の上へと飛び乗る。
それに遅れる事数十秒、特徴的な長髪を揺らしながら少女が眼下に現れた。
左右に目を配らせながら鬼気じみた気配を漂わせる。
そこに洗濯籠を抱えたメイドを見つけ、彼女は声を荒げて問い質す。

「こっちに梁が来なかった!? 隠すと為にならないわよ!」
「あ、え、えっと、私は今日は見てませんけど。洗濯物が干してありますし、ここに来たのは確かかと」

まるで尋問されるかのような気迫に戸惑いながらシエスタは答えた。
しかし睨むような視線は変わらず、嘘をついていないかどうか表情を窺う。
見詰め合う二人を頭上で窺いながら梁は盛大な溜息をついた。
ここ数日繰り広げられているにも関わらず、彼女は一向にこの鬼ごっこに飽きる気配は無い。

「もう! 姫殿下が今日にも来られるっていうのに!
火の輪潜り七段の練習を今しないでどうするのよ!?」
「は……はあ」

本人抜きで語られる話に痛くなった頭を抱える。
ルイズは梁の身のこなしに目を付けて芸をやらせるつもりだった。
それなら平民だったとしてもある程度は格好がつくと考えたからだ。
だが断言してしまえば、それは自分を見世物にするという事。
そんなものを彼が了承する筈など無く、こうして追跡劇と相成ったのだ。
結果はルイズの惨敗。一方的にあしらわれ合間に掃除と洗濯も済ましてしまうという余裕ぶり。
その余裕がルイズの怒りに油を注いでいるのだが、梁師範はその事に未だ気付いていなかった。
どこかで時間を潰そうと木の上から辺りを見回す。
すると学院の正門の前に出来た人だかりが目に入った。
興味を惹かれ、木の枝を蹴って開いている窓から寮へと飛び移る。
そして何食わぬ顔で部屋を出た彼は、再び窓から人ごみの中へと飛び降りた。

「よ……ようやく見つけた、わ」

ぜえぜえと肩を弾ませながらルイズは口を開いた。
事もあろうに自分の使い魔は平然とアンリエッタ姫殿下を歓迎する群衆に紛れていた。
地面を這い回ったり手近な木を揺すっていた自分が馬鹿らしく思えてくる。
汗ばんだ髪を振り乱しながら般若さながらの形相で梁師範へと詰め寄る。

「さあ行くわよ! アンタなんかに見つめられたら姫様が穢れるわ!」

腕を掴んで引っ張ろうとした彼女の足が止まる。
まるで揺るがない。大木でも相手にしているかのように微動だにしない。
梁の見据える先にいるのはアンリエッタではなく、それを警護する一人の男。
さすがに王女の護衛とあって警備についている連中は腕が立ちそうだった。
だが羽飾りをあしらった帽子を被ったその男は群を抜いていた。

「……少しは面白くなってきたじゃねえか」

冷たい汗が流れるのを感じつつも彼は沸き立つ血潮に身を震わせる。
その背後ではアンリエッタ姫殿下ではなく、
ワルドに熱い視線を送る梁にルイズは嫌な予感を感じていた。
それは戦いの予兆とかそういう危機的なものではなく、
“もしかしたらコイツ男にしか興味がないんじゃ?”という見当違いな恐怖だった…。


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