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ゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~-13


朝は来る。生きとし生ける全てのものに平等に。それが悪人であろうとも聖人であろうとも。
黎明の空、朝霧のベヱルに包まれた世界は山際より昇る太陽に照らされ清浄な煌めきを生む。
影の薄らいだ双子月は西の端へと沈み行き、眩い黄金が大地を染める。
掠れた藍色の空が徐々に澄み渡る青へと変じていく。
そしてその日の光の中、一人の少女が一人静かに本を読む。
虚無の曜日、この世界における安息日。その安息日たるこの日だけは他者からの介入もなく
彼女――タバサは読書に好きなだけ浸ることができる。
故に彼女はこの日を愛する。
が、
「ひ~ま~。ひ~ま~だ~よぉ」
目の前にいる青い髪をした娘にはそんな彼女の思いなどまったく通じず、察する様子も
皆無だった。
「あそびたい~、外いきたい~、服脱ぎたい~の~」
妙な拍子でシルフィードは歌っていた。成熟した大人の女性が頬を膨らませ身体を振り子の
ように絶え間なく揺らしている仕草は童女そのもので、それが完成された女神像との
アンバランスを生み出す。
しかし騒ぎすぎである。本から微かに目を離しシルフィードに藍の瞳をタバサは向けた。
「今日中には学院を出れるようにする。だからもう少しおとなしくして」
「うぅ~。でもでもぉ……」
承服しかねるといった顔でこちらを見るシルフィードだが、タバサはそれに何の表情の変化も
見せない。それが気に食わなかったのかシルフィードはタバサのいるベッドに飛び乗る。
その勢いにタバサの身体が大きく跳ねるが動じる様子は皆無であった。
「でもでも、つまらないのね! シルフィってば人の姿でいるのきゅーくつでイヤ!
 元の姿に戻ってお空をぐるぅって飛び回りたい!」
「元はといえばあなたの責任。あなたが勝手なことをしなければこうなってはいない」
「うぐぅ」
顔にかかるつばを拭いタバサは一言で斬捨てる。そう、元々の責任は全てシルフィードにある。
それは彼女自身も良く分かっているのでぐうの音も出ない。
「た、確かにシルフィがクザクとお話したのがそうだけど……でもでも、クザクもシルフィの
 仲間だと思ったんだもの!」
「早合点」
「きゅいきゅい! そんなこと言われてもシルフィだって勘違いしちゃうもの! あんな風に
 遍在を出したり風を巻き起こしたりとかするのは精霊の力を使わないとできないもの!」
それについては理解できる。しかし、タバサはクザク本人の口からあれが先住魔法でも何でも
ないと聞いている。しかし、シルフィードはあれを先住魔法という。
「じゃあ、あれは本当に先住魔法だったの?」
「それはもっちろん! ……と、いいたいとこなのだけど、ちょっとちがうかも」
指を唇にあて、シルフィードは考える仕草をする。
「どういうこと?」
「お姉さまもしってるけど、私たちの使う先住魔法は精霊と契約して使う魔法なのね。
 でも、クザクの使った魔法は契約しているよーなしてないよーな」
「分かり難い」
「シルフィにもわからないのね。でも、クザクの使った魔法には大いなる意思を感じた
 のね。でもでも、やっぱりちがうよーな、あってるよーな。むむむ……」
「役にたたない」
唸ったままのシルフィードにタバサは軽い溜息をつき、再び本に目を落とした。
「きゅい! お姉さまひどい!」
非難めいて叫ぶシルフィード、だが既に彼女の声はタバサに届いていない。いや、目を
落とした先の本の文字もタバサの目には入っていなかった。
使い魔、それは小感謝の属性を決定付けるための儀式である。では、召喚され、使い魔
となった彼はどの属性を持つというのか。
それは同時にそんな彼を召喚したルイズの属性にまで問題が及ぶ。
「まさか」
そこまで考えてタバサは自分の考えを否定した。流石にそれは推測にしても突飛過ぎる。
「でも」
タバサは思い出す。あの時、ギーシュに立ち向かった彼の力の凄まじさは、北花壇騎士の
自分の目から見ても尋常ではなかった。
彼の見せた四系統魔法とも先住魔法ともつかない技、あれこそが彼がその存在であると
如実に示しているのではないか。

拳を彼の武器とするならば、剣を彼の武器とするならば、あらゆる武器を自在に操った
彼は正にそうであり、彼を召喚した彼女はそうであると推測する事が出来る。
「虚無……」
そう、ルイズが『虚無の使い手』であり、クザクが『ガンダールヴ』であることに。
だが、それもまた推測でしかない事には変わりはない。それを確かめる術がない現在
彼とルイズを伝説と決定付けるには証拠が足りない。
このことはまた別の機会に考えるべきであろう。
それまでの思考を打ち切り、今度こそ意識を本に向け、再び自分の世界に戻ろうとする
タバサだったが、
「タバサ、今から出かけるわよ! 今すぐ、ナウ!」
ドアを開け放って飛び込んできた闖入者はその願いを聞き届けてくれそうにはない。
「きゅい、おねえさま?」
「……」
何も言うまい、溜息を吐き出しタバサは本を閉じた。




「なるほど、それは実に羨ま……いや、悲惨な話じゃないか」
「ギーシュ、今何と言おうとした?」
「何でもない、何でもないぞ?」
どこか余所余所しい笑みを浮かべる金髪の優男な色男に溜息をつきつつ、大十字九朔は
トリステインの城下町を行く。
虚無の曜日、この日を迎えるのはこちらに来て何度か体験しているが、こうして学院の外に
出るのは初めてだった。
「しかしだギーシュ。汝、これからいったい何処に行こうというのだ? ついて来いと
 言ったからあえて何も聞かずについて来た訳だが……」
「まあまあ逸る気持ちは抑えたまえクザク。 貴族の召使いに手を出し、そして貴族の子女に
 手を出し、終いにはその逢瀬を見つかり主人に部屋を追い出された使い魔である君をだ。
 この僕が直々に慰めてやろうといってるんじゃあないか、うんうん!」
憎らしい位に明朗快活に笑う眼の前の金髪優男にただならぬ殺意が芽生える。がしかし、
ルイズの逆鱗に触れて部屋を爆発魔法のオマケつきで追い出され、行き場を失った自分を
何も言わず迎え入れてくれた恩人である彼を叩きのめすわけにいかない。
ここはぐっと堪える。
「それにだ。まあ……なんだ」
明朗快活に笑っていたはずのギーシュの顔がすぅっと憂鬱気なものに変わる。
「僕もだね……ええっとだ、モンモランシーとケティにその……あははは……」
皆まで言わなくとも顔色と声色で大体予想はついた。
「大変だな、汝も」
「君もな」
心と心が通じた瞬間だった。
そんなわけで女難にまみれた男二人は肩を並べ町を行く、なんとも冗句にもならない光景で
はあるが。
「しかし、この町はやたらと狭苦しい」
ギーシュの案内を受け、その後ろをついて行きながら九朔は呟く。
ここが一番の繁華街だとギーシュは言っていたが、白い石造りの町の道幅は5メートルもなく、
自分の知るアーカムシティの繁華街とは似ても似つかない。
これではむしろアーカムシティの中にある市場の通りといった方が正しい気がする。
そしてそんな狭っ苦しい道幅五メートルは今日が休日もあってか人で埋め尽くされて
いる訳で。
歩道があるから自動車をかっとばすようなような輩がいれば大惨事間違いなしだが、
此処には車はないのでそんな事態にはなるまい。
「で、汝はいったい何処に連れて行くつもりなのだ?」
前からやってくる人ごみを上手くかわしながら進むギーシュの後ろについて行きながら
九朔は声をかける。振向き答えるギーシュ、その顔はしかし、確かに緩んでいた。
あまり良い予感はしない。

「いや、なに。チクトンネ街に良い酒場があってだね。その名も『魅惑の妖精亭』という
 そうだ。なんでも女子が実に際どい格好をして食事を運んでくれるらしくてね。
 ほら、僕たちはどちらも女性に酷い目にあってるだろう? ならばその分を女性に
 癒してもらうのは真理だと僕は思うわけであってね」
ああ、なるほど。理解して、九朔は全身に鉛を乗せられたような気分になった。
「ギーシュ、汝はこの期に及んでまだ女を追いかけるつもりか?」
「何を言うかクザク! 男にとって女性は花だぞ!? 愛でずにいられるものか!」
勢いづく自称色男、天下の往来で大げさな身振りを交えて更に続ける。
「男なら何時までも少年を忘れるべからず! なのに、君は何をいうのか!
 良いかクザク! 男は年をとろうとも永遠の少年、これは真理だ!」
瞳に炎を宿して熱弁するギーシュに九朔は頭を抱えたくなった。要はこれから居酒屋で
酒を飲んで女の子と遊ぼうというのだから。
「汝について来た我が馬鹿だった……」
「また何を言うんだクザク! これもそれもすべて君を慰めるためなんだぞ!?」
「よく言うわ汝。自分が行きたいから我を巻き込んだだけだろうが」
「無論それもあるが、男ならば可愛い女の子に囲まれたいと思うだろう!?」
「いや、あまり」
即答した。昨日の昼の一件、そして重ねて起きた夜の一件で懲り懲りだったのでそう
答えたわけだが。
しかし、眼の前のギーシュの顔色が見る見る内に青ざめていくのに、彼の脳内で、今自分が
言った言葉がどのように解釈されたかに思い至り九朔は拳を静かに握り締めた。
「ま、まさか君は……」
「ああ、なんだ」
ギーシュの手が上がり、人差し指がしっかり確実に九朔を指差した。
「ホモか?」
「死ね」
「へぶら!」
めきょ――昨日の恩を今日伊達にして返す。渾身の右ストレートは顔面にクリーンヒット、
受身を取る間もなくきりもみ3回転ひねりを加えてギーシュは一直線に路地裏へと
吹っ飛んだ。
「うごご……な、ナイスパンチだクザク。さすが我が友……」
路地裏を覗くと、石畳に大の字に倒れたギーシュが片手を上げてサムズアップしていた。
結構本気で殴ったと思ったのだがこの色男、存外に丈夫である。
「で、我のホモ疑惑は頭の中から消えたか?」
「ああ、消えた。そうそう、クザク。殴られた時に死んだひい爺様に出会えた」
「そうか」
「ああ、そうだ。花の綺麗な場所でね、ひい爺様のところに行こうとしたら今は来ては
 いけないと蹴っ飛ばされた」
「そうか」
起き上がるギーシュ、先ほど殴って陥没したはずの顔面は元通り、いつものハンサム顔が
そこにあった。
「何も突っ込まんからな」
「なにがだい?」



トリステイン城下町。そこはこのトリステインにおいてもっとも活気溢れる町。
それは同時に繁栄と盛衰を抱く意味を持つ。
栄えるものがあれば落ちぶれるものもある。富を得る者もいれば失う者もいる。
光がある場所には必ず闇は存在する。
この場所もその一つ。
薄汚れた裏通り、繁栄から取り残されたそこはまず普通の人間が踏み入れない場所。
人一人がどうにか通れる道の両側に立つ家には人の気配はなく、ここ数年は使われた
形跡もない。
窓ガラスは当の昔になく、吹き込む風で窓枠に張った蜘蛛の巣がゆらゆらと所在無く
揺れている。
道の向こうを見れば乞食が道端で座り込み、虚ろな目で空を見ている。また別の乞食は
断ったままぶつぶつと何かを呟き、座り込む男たちは何事かの悪事を企んでか
よどんだ目で囁きあう。
そんな危険極まりない場所に女が独りでいた。
普通ならば襲われてもおかしくはないが、しかし、だれもその女に近づこうとは
しなかった。尋常でない、何かをその女は纏っていた。
それは目には見えないが、生物としての生存本能を呼び起こすには充分なほどの圧迫感。
ふらつき、フードの隙間から見える肌は青ざめているというよりは土気色。
まるで生気がない。
女が一歩踏み出すたびに、昼にしては薄暗い裏通りが夜の闇へと包まれていくように
思えたのは目の錯覚か、それとも現実か。
気づけば、人々は女から逃れるようにその場を逃げ出し、その場にはその女しか
いなかった。
吐き気がする。喉が渇く。苦しい。身体が、重い。頭の中身を手で鷲掴みにされたような
激痛が断続的に襲ってくる。動くのも、息をするのも苦しい。
「か……は……ぁ」
耐え切れず、汚れるのも構わず女――フーケは壁にもたれかかった。
昨日、ニアーラと出会ってからずっと身体の調子がおかしい。つまらない話をして、本を
もらっただけだというのに。
今日の夜に実行する計画のために必要なものを調達しに来たというのに。
「これの……せい?」
抱いた予感、フーケは手の中に握り締めたその本を見た。それは鉄の表装のついた、
何かで黒く汚れた奇妙な本。
何かのマジックアイテムの一種か、そうニアーラに聞いてみたが彼女はただの骨董品と
だけしか答えずそれ以上何も言わなかった。
ディテクトマジックをかけてみたが何の反応もなく、恐らく害はないのだろうと思って
いたが。
「――」
この本に何か原因があるのではないのか。思い、どうしてか昨日から手放す事のなかった
その書の表紙に手が伸びた。
指が近づくたび、開こうとする意志を持つたび、全身を包んでいた悪寒と頭痛が消えて
いく。
やはり、これが原因なのか。指が表紙の厚紙を摘む。
脳の片隅でそれを開いてはいけないと言う声がした。開かねばならないと呼ぶ声がした。
だが、それはただの声。現実には何の影響も与えはしない。
分厚い鉄の表装を指先が開いた。

「―――ぁ」

――中身は、凡そハルケギニアでは見たことの無い文字で記されていた

奇怪な図形、酷く君の悪い挿絵、紋様にも見える解読不能の文字。薄気味悪い本だった。
ニアーラの戯れだったのか、そう思い本を閉じようとしたのだが――閉じる事が出来ない。
どうしてかその本を読むのを止めることが出来ない。視線がページを追う。
薄汚い路地裏、フーケはその本のページを捲っていく。
一ページ一ページ読み進めるたびにそれに憑りつかれている自分がいる。
何ページも何ページも読み進めて、何ページも、読み進めて。
ページをめくる手は止まらず、一枚一枚めくるたびに身体の奥が熱く、熱く、疼く。
まるで全身を見えない手で嬲られているような狂おしいほどの悦楽。
それはニアーラに触れられた時に感じたそれと似ていて――止まらない。
止まらない、止まらない、止まらない、止められない。
脳髄から無理矢理に引き摺り出される快感はとどまる事がなくて、唇を舌でなぞるだけで
どうしようもなく疼く。
もう、それがマジックアイテムだという事なんてどうでも良くなっていた。
ただただ読み進めていく。
ページをめくるたびに走る快楽は増していき、半分を過ぎた頃にはもう、何も考えられない。
嬲る見えざる手は無数に増えていて、喘ぎ声だけが耳を聾する。
薄暗い路地裏はいつしか闇に包まれていた。
フーケはそれに気づかない。

――そして怪異は起きる

紋様が蠢き、フーケの指先に絡みついた。それは次々に数を増し、快楽に震えるフーケの
肢体を這い上がっていく。
描線は次第に互いと捩れあい一つのカタチを取りはじめた。
それはまるで人、絡みついた描線は後ろからフーケを抱きすくめる形でそのカタチを成し、
疼く身体を慰めようとするフーケの身体を押さえ込み、地面へと押し倒した。
快楽に溶かされた肉体は抵抗することもなく、為すがままになる。
描線は捲れ上がったローブから覗く太ももを撫ぜあげ、乳房を乱暴に揉みしだいた。
それは本能のままに行なわれる儀式。
描線は股の間を割って入り、曝け出されたうなじへと描線の絡まった舌を這わす。
「か……ぁぁ……ぅあ……!」
開いた口へ舌が差し込まれ、口内を描線でできた舌が無造作に蹂躙した。凄まじいまでの
快感に声にならない声をあげ、フーケが目を見開く。
「が……は……ぁが……うぐァ……!」
快感は喉の奥を越え、更に奥、食道を過ぎて紋様が身体の中を嬲る。見開いた目は今この時
己を征服しようとするヒトガタに向けられる。
そこには描線で出来た人の顔がある。だが、それは人の顔ではなかった。
だが、それが何かを知覚する理性までフーケは刈り取られていた。
異界の快楽はフーケを完全に蝕んでいた。
「ぅぁあぁ……ぇぁ……は……が……ぁ……ぁああ……ぁぁ……」
貪られる。
侵される。
犯される。
紋様は肉体の内に溶けてフーケという存在と同一になる。
肌に染み込み、肉に染み込み、臓腑に染み込み、魂に外道の知識という魔物が喰らいつく。
だが、彼女はそれを認識することはない。
蝕まれ、呑まれ、意識は断絶する。


――深い、深い、奈落の底へ


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