あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

T-0 18


 学院の近くにある林の中に、一軒の廃墟があった。
 窓は割られ、屋根は朽ち果てて壁には雑草やツタが幅を利かせている。
 先日、学院内での『仕事』を終えたロングビルこと土くれのフーケは、
 朽ち果ててぎしぎし音を立てる椅子に座り、暇をもてあますため両足をぷらぷらさせて、
 いずれくるだろう楽しみを待ちきれずにいた。

「いやーご機嫌だね女主人。男とでも待ち合わせてんのかい?」

 鼻歌も交え始めたフーケに、別の椅子に立てかけた長剣がわざとらしく言った。

「まー男といゃあ男かもね……。ってそんなに怯えるな! おでれーた?
 悪いのかい? わたしが男と待ち合わせしたら、何か悪いのかい!? 
 第一、心配しなくても待ち合わせてんのは依頼主だよ。金を持ってくる」
「金? 依頼主? ……なんでぇ、今回は頼まれてやったってのかい」

 フーケは椅子から降りて、その辺を歩き始めた。雑草を踏みしめる音が静かに響き、
 椅子がぎしぃっと音を立てて崩れ、抜けた天井からフーケに向かって光が落ちた。

「誰かに頼まれて仕事するってのは気に食わないけど、この依頼主とやらは
 やたらと羽振りのいい奴でね。こちらの望む金を用意すると言ってきたんだよ」 
「なるほど……道理で用心深いアンタがいつまでたっても仕事場から遠ざからないのか」


 そ。という短い返事とともに、フーケが何気なしに杖を振った。
 すると、ついさっきばかし朽ち果てた椅子が少量の土と混ざり合って、元の形を取り戻した。
 フーケがまた、その椅子に座る。

「信用してんのか? そんな実も知らずなやつ」
「まさか」

 ふっと笑みをこぼし、呆れ加減に首を振る。

「信用? するわけないだろ第一やつは……」

 そのとき、突如として聞こえてきた音にフーケは口を閉じた。
 外れかけてがたがたな、腐りかけの扉。それが軋み声を上げながら、
 ゆっくりと開く音がしたのだ。

「おや、ずいぶん遅かったみたいだね」

 フーケの皮肉めいた口調にも、現れた男は動じない。
 体は漆黒のマントで、その顔は無機質な仮面に覆われており、
 人を見る目に長けた土くれのフーケと、長剣――デルフリンガー――ですら、
 表情を伺うことはできなかった。


 それから、わずか数日後、『土くれのフーケ』処刑の報が
 トップニュースとしてハルケギニア中に広まり、人々を驚嘆させた。



               T-0 18話  



 フーケに宝物庫からお宝を盗まれてはや一週間が経過していた。
 魔法学院は取り戻せない失態を犯したことを王室をはじめとするその取り巻きに攻め立てられ、
 学院の長オールド・オスマンはその弁解と責任追及のため、この数日学院に姿がない。
 仕方がないのでオスマン不在の間はコルベールが学院長の代わり役で、秘書であるロングビルと
 ともにせっせと働いていた。
 だが、もともと仕事の多くをロングビル一人でこなしていたために、
 依然とは大して代わり映えのない生活が続いていた……



「あら、どうしたのかしら」 

 まだ授業の始まる前、キュルケは教室に入るなり机に突っ伏して
 ピクリとも動かないルイズに話しかけた。すぐ背後にはターミネーターが 
 威圧的にたたずんでいるのだが、この数日で、キュルケはすっかりこの空気に
 慣れてしまっていたために、まったく問題にしていなかった
 キュルケの後ろに隠れるようにいるタバサは、最初からわれ関せずといつもどおりである。 

「ねぇ、どうしたの? なにか言いなさいよ」 
「うるさいわね……疲れてるんだから、後にして……」 

 めんどくさそうに顔を上げる、ルイズは少しやつれていた。

「昨日、城下町に行ってきたんじゃないの?」

 キュルケの質問に、ルイズは首を振って否定した。
 それも億劫なのか、やたらとけだるそうに。

「いってないわ……いけなかった……のよ」
「?」

 キュルケはタバサと目を合わせ、首をかしげた。
 ルイズはそのまま規則正しく寝息を立て始めたため、
 それならばと使い魔にたずねてみたキュルケだったが、
 ターミネーターはかたくなに口を閉ざしていた。

 だが、ルイズが手を上に上げると、うってかわって彼は淡々と語り始めた。


「俺と彼女は武器を買うために街に向かった。
 だが、途中で馬が力尽きてたおれてしまい、結局引き返した」

 無論、それはひとえにターミネーターの重さに馬が絶えられなかったことにある。
 ルイズも、まさか馬一等を早々と(文字通り)潰してしまうほど彼の重さが
 すさまじいと思ってなかった。
 ターミネーター一人を残すわけには行かないので、帰りは一緒に馬に乗ったのだが、
 当然のごとくこれも途中で潰れた。
 ほんとうに仕方ないので、ルイズとターミネーターは学院まで結構長い距離を
 歩いて帰ってきたわけなのだ。

「馬が潰れたなら、使い魔におぶってもらえばよかったじゃない」

 バカね。とキュルケが感想を言うと、ルイズは今にも死(眠)にそうな声で
 「それだけは……できるわけ……ないじゃない」と反論して、
 こんどこそ本当の眠りに落ちた。


「あらら、ほんとに寝ちゃったのね」

 キュルケがルイズのほっぺたをつんつんしながら言った。
 その顔には自然な笑みが浮かんでおり、実に楽しそうである。
 ルイズが身じろぎをするとキュルケは手を引っ込め、ターミネーターに向き直った。

「あなた、武器が欲しいって言ってたわよね?」

 ターミネーターは首を振り、黙って肯定する。

「剣か、棒状のものが好ましい。耐久性の優れたものならなおさら」
「大きさは?」
「最長で一メートル弱。最低でも60センチの長さ。
 重量は問わない。人が扱えるものならば何でもいい」
「ふぅん……」

 キュルケはすっとあごに手を当てた。
 タバサが珍しく本を読む手を止め、今はキュルケを見ている。

 ん、と小さくつぶやき。
 何かを決断したのか、キュルケは口を開いた。

「ご注文に見合う武器、私が用意させてもらうわ」

 タバサが、これまた珍しくわずかに目を見開いた。
 キュルケが、今……何といった?
 そんなことでも言いたげな瞳で、ただキュルケを見上げている。

「なぜだ?」
「あら、別に恩を感じる必要はなくてよ。
 ただの気まぐれ、ゲルマニアの女は気まぐれで気分屋なのよ」

 実際彼女はその中でもまた特にぶっ飛んだ存在なのだが。
 ターミネーターは特にそこら辺の意味を理解せずに、頷いた。

「ただし!」



 キュルケは柔らかな、普段人前ではあまり見せることのない
 やさしい微笑を浮かべ、言った。 

「この子を、部屋まで運んであげて。
 どの道こんな状態じゃ、授業出てても邪魔にしかならないわ」

 もうすでに主人を運び始めた使い魔の背中を見送る。
 言葉は刺々しいが、口調はとても緩やかだった。


 直後、何かとあわただしいコルベールが駆け込んできて、授業が始まった。


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