あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-23


ウェールズと当麻は、結婚式会場となる場所で新郎新婦の登場を待っていた。
神父の役として、ウェールズが中央の始祖ブリミルの像の真下にて、静かに待っている。
当麻は、とある一つの長椅子に座っていた。このような晴れ舞台、礼装を着ないかね? と当麻はウェールズに質問をされたが、いえ、とやんわりと断った。
他の人達はいない。皆戦争の準備で忙しいのだろう。ウェールズもこれが終わったら直ぐに向かう予定だ。
「なぁ、ラ・ヴァリエールの使い魔」
「何ですか?」
暇つぶしの雑談目的なのか、ウェールズは当麻に口を開いた。
「もう一つ、君に頼みたいことがある」
「頼みたい、ことですか?」
当麻が想像していなかった言葉に思わず復唱した。ウェールズは黙って頷く。
なんだ? と思った。まさか伝説の秘宝を授けよう、とか失われた魔法を教えよう、とかそういった類いを当麻は思い浮かべる。
うーん、と悩む当麻にウェールズは笑う。
「ハハハ、そんな重要なものではない。むしろお願いだ」
ウェールズは一呼吸置いた。
「ラ・ヴァリエール嬢を守ってあげたまえ」
ウェールズは当麻に授ける。
それが、自分には出来なかった事。一人の少年に、同じような事をさせて欲しくないと。
願いつつも決して叶えられない望みを明け渡す。

それがどれだけ難しい事なのか、当麻は知っている。
誰かを救う度に、身を削り続けてきた。頼まれてもいないのに自ら率先してきた。
なぜそこまでやるのだろう? 簡単な事だ。
上条当麻は世界で一番『幸せ』なのだから。
『不幸』にも事件に出くわして、誰かが苦しんでいるのを助けることが、
上条当麻にとっての自分の為であり、道なのだ。
その時、あ……、と何かに気が付いた。かつて小萌先生が自分に向かって言ってくれた言葉。
『そもそも、ヒトでないといけない理由は何ですか?』
同じ事ではないのか?
この世界じゃないという理由だけで、そんなくだらない理由だけで、傷ついている人間を助けないのか?


違う。当麻は断言する。
たとえこの世界の主人公になれなくても、
人を助けない理由になってたまるか。
だってそうだろ?
上条当麻はなんだかんだ言って、今までも助けてきたじゃねえか。
「は、」
思わず笑っていた。いや、ウェールズに対して何か言うべきだと言葉を吐こうとしたら、自然と笑い声になっていた。
今まで解けなかった難問を、とあるきっかけで解けてしまった学者のような気持ちで、
「そうだよな上条当麻――――」
彼は笑う。
「何くっだらねぇことで悩んでんだよ俺は」
不敵に笑って覚悟を決める。
この世界でやるべき事を、今、見つけたのだ。

そんな当麻をウェールズが心配してか、声をかけた。
「だ、大丈夫かね」
端から見れば、いきなり笑い出した不気味な少年に見える。そんな自分に気付いたが、それでも当麻は恥ずかしがらない。
ウェールズに伝える。自分の意志を。
「ルイズも、いや……アンリエッタ王女も守ります。何か巻き込まれたら、必ず守り通します」
当麻は宣言する。たとえ戦争であっても、自分の道を、自分の幻想を守り通す事を。
それが、上条当麻の道だから。
その言葉を聞き、ウェールズは笑みを浮かべる。もう彼らにこの事に関して言葉を交わす必要はない。
それだけウェールズは、当麻の『力』を感じた。
今まで出会った事がない『力』を。
その時、ちょうどタイミングよく扉が開き、ルイズとワルドが現れた。

ルイズは呆然としていた。今朝早くワルドに起こされたら、なぜかここまで連れてかれた。
いや、実を言うと、「結婚式を挙げよう」とワルドは言ったのだが、ルイズはどう返答すればいいかわからなかった。
沈黙を肯定表示としてワルドは受け取ったので、新婦としての恰好を授ける。
頭には新婦の冠を被せ、普段から着ている黒マントを取り外し、純白のマントを取り付けた。

そして、気付いたらここまで連れられた、というわけだ。
ワルドに促され、ルイズはウェールズのいる所まで歩く。
途中当麻と目があったが、それだけである。何も喋らず、何も気にかけない。
そうこうしてる内に、ウェールズの前まで着いた。後に続いてワルドが隣にきて、一礼をした。ワルドの恰好はいつもの魔法衛士隊の制服である。
「では、式を始める」
(どうしてこんな事になっちゃんたんだろ)
ルイズはウェールズの言葉を右から左へと流れた。いや流れていった。
確かにワルドは嫌いではない。むしろ好きな方だ。それに、夫にするには自分にとってもったえないくらい素晴らしい人である。
なのに何でだろう。喜ぶべきなのに喜べない。口では説明しにくい、何かもやもや感があるといった感じ。
迷路に一人迷い込んだように、答えが見つからない。
どうするべきなの? と思っても誰も答えてくれない。見つからない答えを自分が探し出さなければならない。

「新婦?」
ウェールズの言葉に意識を現実へと戻す。ルイズは慌てて顔を上げた。
どうやら式は儀礼を迎えているようだ。自分が夫を、ワルドを愛するかを誓う場面。
「緊張しているのかい? 仕方がない。初めてのときはどんなことでも緊張するものだからね」
ウェールズはにっこりと笑って、ルイズを落ち着かせようとした。
違う。ルイズは緊張などしていない。ただ……なんだろ。

……切ない?

「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。では繰り返そう。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして夫と……」
「ルイズ?」
「……新婦?」
ウェールズの言葉の途中、ルイズは首を振っていた。理由はわからない。わからないけど、気付くと首を振っていた。
二人が怪訝な顔でこちらに向いてくる。何か、何か言わなければならない。
「ごめんなさい。ワルド、わたし、あなたと結婚できない」
否定の言葉、それが出てきた。少なくともルイズに今わかると言えば、この結婚を望んではいないという事だ。
だって、望んでいたらこんな気持ちにはならないはずだ。


いきなりの展開に、ワルドは言葉を失った。当麻も、離れて首を傾げている。ただ一人、ウェールズだけがルイズに話しかけた。
「新婦はこの結婚を望まぬか?」
「はい、そうでございます。皆様には大変失礼をいたすことになりますが、わたくしはこの結婚を望みません」
ワルドはただただ黙るしかなかった。そんなワルドにウェールズは残念そうに告げた。
「子爵、誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかない」
「……ルイズ、緊張しているのだろ? そうでなければありえない」
ウェールズの言葉を無視して、ワルドはルイズの手を握る。
そんなワルドの眼差しに、ルイズは視線を逸らしながらも答える。
「ごめんなさい。ワルド。昔は恋をしてたかもしれないけど……今は違うわ」
その瞬間、ワルドはガシッと肩を掴んできた。表情がどこか冷たい感じに変わる。
そして、普段とは違う熱っぽい口調でワルドは叫んだ。
「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる! そのためにきみが必要なんだ!」
豹変したワルドに怯えながら、ルイズは首を振った。
「……わたし、世界なんかいらないもの」
ワルドは両手を広げると、ルイズに詰め寄った。
「僕にはきみが必要なんだ! きみの能力が! きみの力が!」
「わ、わたしにはそんな能力も力もないわ」
ワルドの剣幕に、ルイズは恐れをなした。優しかったワルドが怖い。ルイズは思わず後ずさった。

誰もがワルドの身に何が起きたのか? と心配した。そんな中、当麻は近寄りワルドの肩を叩く。
「おい、なんかよくわかんねーけど落ちつ――――」
「黙っておれ!」
ワルドは再び叫び、再びルイズの手を握る。その怒号に当麻は立ち尽くした。
「ルイズ! きみの才能が僕には必要なんだ!」
「だから、わたしはそんな才能あるメイジじゃないわ」
「何度言えばわかるんだ! 自分で気付いていないだけなんだよルイズ!」
ルイズの頭がワルドから離れろと命じてくる。
が、ワルドの手を振りほどこうとしても、物凄い力で握られているために、振りほどくことができない。苦痛を顔に歪めて、ルイズは言うしかない。
「そんな結婚、死んでもいやよ。あなたはわたしをちっとも愛してないじゃない。わかったわ、あなが愛しているのは、
 あなたがわたしにあるという、在りもしない魔法の才能だけ。ひどいわ。そんな理由で結婚しようだなんて。こんな侮辱ないわ!」
はしなさいよ! と暴れ出す。ウェールズと当麻が二人でワルドを引き離そうとしたが、ドン、と突き飛ばされた。
「うぬ、なんたる無礼! なんたる屈辱! 子爵、今すぐラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ! さもなくば、我が魔法の刃がきみを切り裂くぞ!」
ウェールズにそう言われ、ようやくワルドはルイズから離れた。


「……どうやら目的の一つは諦めなければならないようだ」
悲しげな表情を浮かべてワルドは天を仰いだ。
ルイズは首を傾げる。
「目的?」
ワルドは唇の端をつりあげると、嘘で固められた笑みを浮かべた。
「そうだ。この旅における僕の目的は三つあった。その二つが達成できただけでも、よしとしなければな」
「達成? 二つ? どういうこと?」
ルイズが代表者となって尋ねた。心の中で何かを訴えかけてくる。嫌な予感がすると。
ワルドは右手を掲げると、人差し指を立てて見せた。
「まず一つはきみだ。ルイズ。きみを手に入れることだ。しかし、これは果たせないようだ」
「当たり前じゃないの!」
ルイズの言葉を流し、次に中指を立てた。
「二つ目の目的は、ルイズ、きみのポケットに入っている、アンリエッタの手紙だ。そして三つ目……」
ワルドの『二つ目の目的』の内容で、すべてを察したウェールズが、杖を構えて呪文を詠唱し、当麻が駆ける。
しかし、ワルドの二つ名、閃光のように素早く杖を引き抜き、呪文の詠唱を完成させた。
ワルドは風のように身を翻らせ、ウェールズの胸を青白く光るその杖で貫いた。
「き、貴様……『レコン・キスタ』……」
ウェールズの口から、どばっと鮮血が溢れる。ルイズは甲高い悲鳴をあげた。
その悲鳴を背景に、当麻が拳を振るう。しかし、ワルドは素早く杖を抜くと、バックステップで距離をとった。
どん、とウェールズは力なく床に崩れ落ちる。
「三つ目……、ウェールズ、きみの命だ」
「テメエ!」
当麻が叫んだ瞬間、何かが横を通り過ぎた。風の魔法『ウィンド・ブレイク』がルイズを直撃した。
紙切れのように吹き飛ばされ、壁に叩きつけられ、ルイズは呻き声をあげた。あまりの痛さに涙がこぼれる。

その瞬間、当麻の怒りが爆発した。


「テメエ裏切ったのか!?」
「そうさ、ハルケギニアは我々の手で一つになり、始祖ブリミルの光臨せし『聖地』を取り戻すのだ」
当麻は奥歯をギリッと噛み締める。怒りで体が震える。
「なん、でだよ」
「月日と、数奇な運命のめぐり合わせだ」
「そんな事じゃねえ! ルイズはテメエを信じていたんだぞ! 幼い頃の憧れだったてめえを」
「信じるのはそちらの勝手である。それにそちらか断ったのだろう」
当麻のこめかみが、きれた。
バキッ、と奥歯をかみ砕き、爪が皮膚にめり込むくらい強く握る。
「ふ、ざけんな! 信じるのは勝手かもしれねえがよ! その期待に応えるのが信じられた者がやるべきことだろ!!」
ドン! と地面を蹴る。風を突っ切り、一気に間合いを詰めようとする。
ふん、とワルドは吐き捨てると、杖を振り、呪文を発した。当麻が以前喰らった、あの電撃の呪文だ。
ワルドはこれで当麻が死ぬと思った。そしてルイズを殺してアンリエッタの手紙を手に入れようとしたが……
その考えは一瞬に覆される。
「おおオァ!!」
吠える当麻が、電撃に立ち向かう為、目の前に右拳を突き出した。
自ら右腕を焦がしてくださいとでも言うような無謀な行為に、しかし電撃は打ち消される。
ワルドは目を見開く。彼の放った電撃が一瞬によって打ち消されたのだから。
バチィ! という爆発音は、ほんの僅か遅れて響いた。
その間に当麻は一歩先へ踏み込んでいる。
残りは後僅か、数にして三、四歩である。
(何が起きたッ!? ええい落ち着け……)
目の前の状況を理解できないワルドは、もう一度呪文を放つ。
先程ルイズを吹き飛ばした、『ウィンド・ブレイク』である。
轟ッ! と風のうねりと共に勢いよく当麻へと向かうが、それも打ち消される。当麻の右拳が主を守り、風の魔法だけが空気の中へと消えていった。
(馬鹿な……)
驚愕が、当麻をさらに一歩踏み込ませる。そして、ようやく当麻の射程圏内に入る。
(ならばっ!)
ワルドはウェールズを殺した魔法『エア・ニードル』を発動させる。杖が青白く光り、風の刃と化す。


瞬、と高速の突きを放ち、当麻の胸を狙う。
しかし。
当麻はぐるりと体を捻った。軸足を中心に、軸線を変えないまま、ただ横向きに体を変える。
心臓を狙った突きは、心地よい風と共に胸元一ミリを通り過ぎるが、それだけだ。
(……ッ!)
ワルドは絶句したまま、眼前を見る。

瞬間、ほぼゼロ距離で、少年の右拳が放たれた。

「オ、――――」
当麻は、肺にたまった空気を全て吐き出すように叫ぶ!
「――――、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
全体重の重さと、最高速度を全て拳の一点に乗せて、ワルドの顔面のど真ん中に突き刺した。インパクトの反動が拳から手首、肘、肩へと次々と伝わっていき、
ガゴギン!! と。
壮絶な爆音と共に、ワルドの体が吹っ飛んだ。
人間が与える最高レベルの運動エネルギーを浴びたワルドは、そのまま勢いを殺せず、ゴロゴロと転がっていく。
そして、当麻は再び叫ぶ。
「それになんだよ! ルイズが断ったからってすぐそういう結論に持っていくんじゃねえよ」

アウレオルス=イザード、ステイル・マグヌス。
主人公になれなかった人達、インデックス(ヒロイン)に拒絶された人達。
しかし、彼らはワルドと同じような事をしたか?
違う。むしろ今という日まで努力してきた。
アウレオルスはなんとか振り向いてもらおうと、『黄金錬成』を必死に会得した。
ステイルはたとえ振り向いてもらわなくても、命を捧げる覚悟でインデックスを助けてきた。
たとえ振り向いてくれなくともやれる事はあるのだ。
そんな彼らを知っている当麻だからこそ、ワルドが行う行為は絶対に許せない。
「それにな……」
当麻は思い返す。


ウェールズだって、
戦争さえなければ、アンリエッタとの恋が見事成就したかもしれない。そうでなくても周りの仲間と楽しく生きていたに違いない。
タバサやキュルケ、ギーシュだって、
戦争さえなければ、あそこでフーケと戦わずに済んだはずだ。学校でのんびりと授業を受けて、楽しくやっていったはずなのに。
そして、アンリエッタだって、
またウェールズに会えたはずだ。また仲良く話すことができた。たとえ違う人と結婚したとしても、会えるだけで幸せなはずだ。
戦争の中での、個人の意見などどうでもいいのかもしれない。
しかし、そんなのは当麻にとっては関係ない。
「テメエラの戦争を起こす価値なんて知らない。『聖地』を取り返すことがどれだけスゲェのかだって、この世界の人間じゃない俺にはわかんない」
当麻は、告げる。
「だけど、これだけはわかる。たとえどんなに素晴らしい結果があったとしてもだ。そんなくだらない物のために誰かが傷つくなんて間違っている」
当麻は握った拳を倒れているワルドに向ける。
「立てよ。誰かを傷つけなきゃいけない、そして全てテメエの思い通りにこと運ぼうとしてるなら――」
告げる。『幻想殺し』を持っている当麻だからこそ言える。
「――まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!!」
ワルドが、ゆっくりと起き上がった。


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