あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

熱き使い魔

「なぁ相棒。さっき言った事、本気なか?」

丘に一人、男が佇んでいた。
黒いコートと帽子に身を包んだ巨漢の剣士。
これから来る戦いに動じる事もなく、静かにその時を待っている。

「絶対無理だって、いくらお前ぇが強いからってそりゃ無理ってもんだ」

そう語るのは彼の背負っている一振りの剣。
意思を持つ剣、インテリジェンスソードのデルフリンガーだ。

「問題ない。我々のするべき事は敵の殲滅ではなく足止めだ。味方が艦に乗り、無事に脱出するまでの時間を稼げればいい。
それならば敵陣を混乱させるだけで十分効果が出る。我々だけでも可能だ」
「バカ! そっちじゃねぇよ!」

デルフリンガーは声を荒げた。

「お前ぇさっきあの嬢ちゃんと約束しただろ、絶対に生きて帰るって。そりゃお前ぇは強ぇさ。
素手でゴーレムを砕けるくらいにバカ力だし、体はドラゴンの皮膚みてぇに頑丈だし、オマケに空だって飛べちまう。
だがな、今回の相手は七万の軍勢だ。片っ端から指揮官を狙ってけば足止めくらいは可能だろうが、生きて帰るなんてのは絶対に無理だ」

そう、この男はこれから七万の敵アルビオン軍と対峙し、味方が逃げるまでの時間を稼がねばならない。
元々は彼の今の主人であるルイズの役目なのだが、彼がルイズを説得し、自らが戦場に立つ事を望んだのだ。
そして彼は約束した。
必ず生きて帰ると。

「6千年も生きてる俺が言うんだ、間違いねぇ。相棒はこの戦いで……」
「デルフ」

と、その男は区切り、静かに続けた



「男はいかなる困難においても希望の光を探すことを忘れてはならない」





連合軍の船内には次々と敗走する味方軍で溢れかえっていた。
この状態は明後日まで続くらしい。
そしてその船内の一室に膝を抱えてベッドに蹲っているルイズの姿があった。

「ジェイ……本当に生きて帰ってくるよね」

ルイズは自分の使い魔との会話を思い出していた。
それは自分が敵軍を抑える捨石となる事を宣告された時の事だ。

「私が行こう」
「え?……」

ルイズは一瞬、自分の使い魔が言った事をちゃんと理解できなかった。
だがすぐにわかった。
彼は『私が』行くと言った。
つまり、こう言っているのだ。
ルイズの変わりに自分が敵を足止めすると。

「ちょっと待ってよ!これはわたしが受けた役目よ! あなたはすぐにみんなと一緒に脱出しなさい」
「それは出来ない」
「どうしてよ!」
「今のルイズでは敵を足止めする事は出来ない。だが私なら可能だ。守るべき存在を危険に晒す事は出来ない」

ルイズは言葉を続けようとした。
『そんなことはない! 自分にだって出来る』と。
だが、その言葉はついに喉から出る事はなかった。

ジェイの言う事はいつだって正しかった。
ジェイは絶対に嘘を言わない。
そして、いつも全力でわたしを助けてくれた。
ならば、これも本当の事なのだろう。

「でも……でも……」

ルイズは泣き出した。
自分に虚無の力があるとわかって、やっと認めてもらえた自分の力を正しい事に使いたくて、
そしてアンリエッタの役に立ちたくてここまでやってきた。
それが、みんなを助けなきゃいけない一番大事なときに無力な自分が許せなかった。

「勇気と無謀を混同してはならない。可能性のない勇気を無謀と呼ぶ。ルイズ、今お前が行おうとしているのは勇気ではない」
「そんなのわかってる! わたしが足止めしたって大した役には立たないって事ぐらい! でも私は貴族なの!
たとえ死ぬとわかっていても、行かなきゃいけないの! 貴族の誇りにかけても!」
「死ぬ事は誇りではない。それは愛すべき人々を悲しませる罪だからだ。真に誇るべきは、愛すべき人々に自分の無事な姿を見せ、共に触合う事だ」


ルイズはその言葉にはっとして、自分の使い魔を見上げた。
ほとんど表情を変える事がない顔。
ただ、朝自分を起こしたあとにはいつも
「キュートだ、エンジェル」
という決まり文句と一緒に笑顔を向けてくれる。
ジェイが召喚されてからは、いつもその言葉を聞くのが楽しみになっていた。
説教臭くて、いつも少女はどうのとか男はどうのとか言ってご主人様である私にまで一々意見する。
でも今ならわかる。
それは全部自分の為を思って言ってくれた事なんだって。
誰よりも強く、誰よりも自分の事を理解してくれる、最高の使い魔。
彼は自分に召喚された事に文句を一切言わなかった。
そして幾度となく自分を助けてくれた。
いきなり違う世界から自分に召喚されてしまったというのに。

「どうして……どうしてそんなにわたしの為にしてくれるのよ!? わたしはあなたを無理矢理呼び出して使い魔にしたのよ!
そんなわたしにどうして……どうして……」
「男は一度口にした約束は守らねばならない」
「約束?」
「私はルイズの使い魔になると約束した。そして使い魔は主人を守らねばならない」

そう言うと彼は作戦場所である丘へと向かおうとした。

「待って!」

ルイズは叫んだ。
もう彼を止める事は出来ない。
どんな風に言っても彼は七万の軍勢と戦うだろう。
ならばせめて、自分に出来るのはこのくらいだ。

「どうしても行くのよね? わかった、もう止めないわ。でもこれだけは約束して! 必ず生きて帰ってくるって!」
「それは保障できない。今回の作戦で私が大破する事無く戻れる確立は……」
「いいから約束して!」

ルイズは目に涙を浮かべて訴えた。

「……わかった。約束しよう」


そう言うと、今度こそジェイは丘へと向かって歩き出した。
わかっている。
彼は自分を安心させる為に言ったのだ。
けど、それでも彼ならその約束すらも守って見せるだろう。
いままでジェイが約束を破った事など一度もないのだから。
だが、だが万が一、二度と戻ってこなかったら……
彼女は祈った。
始祖ブリミルに、そして彼自身に。

「お願い、無事に帰ってきて! わたしの……わたしだけの……」




嵐が吹き荒れた。
アルビオン軍の者達にはそうとしか思えなかった。
突然空から落下してきた黒い塊。
それが降り立った場所から次々と悲鳴が沸き起こる。
それの存在を最初に確認した指揮官の男は、次の瞬間には激痛と共に意識を手放していた。

敵陣の中央降り立った次の瞬間にはジェイは動いていた。
その疾風の如き速度で一気に敵指揮官の一人の前に立ち、その拳を叩きつけて気絶させた。
さらに次、さらに次へと指揮官だけを正確に狙い、どんどんその数を減らしていく。
指揮官を失った部隊は統制を失い、混乱して一部では同士討ちが始まっていた。
無論、敵とてただやられているわけではない。
剣が、槍が、銃弾が、そして数々の魔法がジェイに襲い掛かる。
だが、それらは全てが効果がなかった。
剣はその体を斬る事が出来ず、槍はその身に突き刺さる前に折れ、銃弾は当たると同時に弾かれた。
そして魔法は全て、その正確無比な動きで全てデルフリンガーに吸収されていった。

アルビオン軍は恐怖した。
決して捉える事の出来ない圧倒的な速さ。
決して止める事の出来ない凄まじい力。
決して傷つける事の出来ない強靭な肉体。
まるで小さなドラゴンを相手に戦っているような気分であった。
そして恐怖は次々と感染していき、混乱は恐慌へと変化していった。
だが、その中で将軍たるホースキンだけが冷静に敵を打破する為の作戦を練っていた。

「相棒、奴が敵将だ。あいつをやればこの作戦、完璧に成功だぜ」
「確保する」

ホースキンの姿を確認したジェイはすでに走りだしていた。
これでホースキンを気絶させれば任務は達成される。
そのはずだった。
突如、ジェイの目の前に地面から競り上がった壁が現れた。
おそらく錬金による物だろう。
ジェイは構う事なく走り、その突進で壁を砕き割った。
が、ジェイの進行はそこで止まった。
ジェイの進行を阻んだのは壁ではない。
その壁の後ろに隠れていた数十体もの鋼鉄のゴーレムの体当たりだ。
いかにジェイの力が並外れているとはいえ、これだけのゴーレムをすぐに破壊する事は出来ない。
壁はジェイの視界を遮り、ジェイのスピードを落とす為の物だったのだ。
全てはホースキンの作戦だった。
ホースキンは事態を察知し、歴戦の将としての感で敵がどのような存在なのかを見極めた。
そしてすぐに最も有効的な策を導き出し、副官に土系統と火系統のメイジを後方に集めさるよう指示したのだ

「放て!!」

ホースキンの号令と共にスクウェア、トライアングルクラスの炎が次々と放たれる。

「相棒! あれはやべぇ、逃げろ!」

が、すでにゴーレムに囲まれ、全身を抑えられたジェイにゴーレムを破壊して逃げるだけの時間はなかった。、
次の瞬間、数十対のゴーレムと共にジェイは轟音と共にその炎に包まれた。

「相棒ぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉ!!!」

デルフリンガーの声が戦場に響いた。




「黒服の男が一人でアルビオン軍に向かっていった?」
「へぇ、部下の一人が剣を背負った奇妙な黒服と帽子の男が向かうのを見たと。おそらく一人で敵軍を止めに行ったんでしょう」

船の甲板で話しているのはド・ヴィヌイーユ大隊第二中隊長を勤めるギーシュと、中隊付軍曹のニコラだ。
その話を聞いたギーシュはすぐに一人の男を思い浮かべた。
奇妙な黒服を着てるなんて言われる人物は彼しか思いつかない。
いやそれ以前に、そんな事が出来そうな人間は他にはいないでだろう。
思えば彼との縁も奇妙なものだった。

出会いは最悪だった。
ジェイがギーシュの落としたモンモランシーの香水を拾って浮気がばれて、そのまま勢いで決闘を吹っかけた。
そしていざ決闘となると、ジェイはギーシュのワルキューレをその拳で次々と砕いていったのだ。
その姿に恐怖した。
次は自分があのワルキューレのように破壊されるんじゃないかと。
そして近づいてくるジェイのあまりの怖さに腰が抜けて逃げ出す事も出来なかった。
が、ジェイはギーシュの持っている薔薇の杖を取り上げただけだった。
そしてギーシュに向かってこう言った。

「男は目先の恐怖に怯んではならない」

その時にギーシュは鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。
「命を惜しむな、名を惜しめ」
このグラモン家の家訓を胸に今まで生きてきた。
だが、この時の自分は恐怖に飲まれ、あまつさえ自分から挑んだこの戦いから逃げたいと思ってしまった。
その事実に打ちのめされ、その場にひれ伏してしまった。
そんな自分に、

「男がいつまでも地面に這いつくばるものではない」

そう言って彼は自分に手を差し伸べてくれた。
この時から自分にとってジェイは無二の存在になった。
あれ以来、ギーシュは二度と浮気をすることはなかった。
今回の戦争でも恐怖は感じたが、その恐怖に飲まれて動けなくなることはなかった。
そして、決して最後まで諦める事もなかった。
全てジェイから学んだ事だ。
彼からは今まで多くのことを学んだ。
それは貴族とか平民とか、そんな枠組みを越えた、
そう、男としてあるべき姿を。

「勇敢な男がいたもんでさぁねぇ。でも一人で行って何ができるんだか」
「ふふ、どうかな」
「へ?」

彼が無意味な事などするはずがない。
ならば、彼にとってこれは可能なことなのだろう。
ギーシュは人生の師と仰いだその男の事を心から信じていた。

「ニコラ、彼が何と呼ばれているか知っているかい?」
「い、いえ」
「フッ、彼は……」




「我が軍の被害はどの程度だ?」
「はい、重軽傷者合わせて指揮官が約40人、その他各部隊の兵隊が約300人程です」
「死者は出ていないのか?」
「はい、奇跡としか言いようがありません」

勝利を確信したホースキンは副官から現状の確認をした。
そしてあれだけ暴れて全く死者が出ていないという事実に驚いた。
一体どれほどの実力があればそのような事が可能なのだろう。
戦慄を覚えると同時に、今ここで倒せた事に心底安心した。

「恐ろしい敵でしたな」
「ああ、だが同時に素晴らしい英雄でもあった。亡骸が残っていたら丁重に……」




プオオォォォォォォォォォォオオオオオオオォォォォォォォォォ




突如鳴り響いた甲高い音と共に、ジェイが包まれた炎の中から大量の蒸気が発生した。
そしてその炎が弱まり、中から現れたのは、

「何だあれは……」

赤く輝く双眸を持つ、黒と白で彩られた、人の形をした何かであった。

「へへ、何となくわかってはいたが相棒、やっぱりお前も人間じゃなかったんだな」

そう、彼は都市国家ジュドの都市安全管理局中によって作られたアンドロイド。
今の姿は人工皮膚で作られた外装が全て剥げた姿だ。
だがその外装はあくまでも一般人に紛れるための物。
戦闘に一切の支障はない。

「その格好も中々男前じゃねぇか」
「男が容姿について安易に語るものではない」

ヘイヘイとデルフリンガーは軽く相槌を打った。
が、そんな軽い調子のデルフリンガーとは違い、アルビオン軍はさらなる混乱に陥っていた。


「ゴっゴーレムだ!」
「いや、ガーゴイルだ!」
「バっバケモノ!」

アレだけの炎をその身に受け、それでもなお立ち上がる存在。
それはまさに人外の怪物以外の何者でもない。
アルビオン軍は自分達が相手をしているのがどれ程恐ろしい存在なのかを、この時始めて理解したのだ。

「まさか……アレは……」

ホースキンは一つの噂を思い出した。
先のトリステインへの奇襲作戦の際、数多の戦艦が一人の男によって墜とされた。
その男は蒸気に包まれながら戦い、一切血を流す事なく戦艦を無力化していったと。
その時は戦場に幾多流れる他愛もない虚報の一つだと聞き流していた。
が、目の前のソレを見て確証した。
コイツがそうだ。
それは誰が最初に呼んだのであろう。
その姿から男は敵からは畏怖の、味方からは畏敬の念を込めてこう呼ばれたという。

「あれが噂の……」










                 「「「ヒートガイ!!」」」











                                               完

新着情報

取得中です。