あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

銀の左手 破壊の右手-03


03『その手に掴むもの』

 ――フーケを追ってたどり着いた白の国、そこで待ち受けていたのはかつての思い人との死闘であった。

「ルイズ、僕は手入れたぞ!力を!世界を変える力!もう二度と大切ものを奪わせない為の力だ!」
「そんな……ワルド様、なんで、なんで……」
「ルイズ来てくれ、僕に君を守らせてくれ。そうでなければなんの為に力を得たのか分からない」

 呆然としたルイズの前に立ちふさがったのはアナスタシアだった。普段の柔和な顔からは想像もつかないほど厳しい目をして、アナスタシアはワルドを睨み据えていた。

「貴方……その右腕は一体どうしたの?」
「君は、そうか君がルイズの使い魔か!聞いていたよ、愛しのルイズが人を召喚したと!さて君は一体何かな?ガンダールブかい?ヴィンダールブかい?
 それともミョズニトニルンかい?ははは、どうでもいいか!いくら伝説の使い魔だろうと僕には勝てない、ルイズを守れるのは力を持った僕だけなんだから!」

 笑いながらワルドは手を広げる、既に正気ではないことはルイズにも分かった、分かってしまった。
 その事が尚更ルイズを傷つける、正気を失う程に目の前の初恋の相手が力に魅入られていることに衝撃を受けていた。
 同時にそんなになってもまだゼロである自分に妄執にも似た思いを抱き続けていることが信じられず、信じられないが故に恐ろしかった。

「貴方の目的は何?」

 そんなワルドにアナスタシアは問いかける。
 にいと唇を歪めながらワルド返した。

「全てさ、生憎と欲張りでね。もう二度と大事なものを横取りされたくなんかないし、欲しいものは全部手に入れる」
「じゃあ聞くわワルド、貴方はなんで私なんかを」

 ルイズの問いにワルドは悔いるように空を見上げた、黒い雲に覆われたアルビオンの空には生憎と彼が望むものを見いだすことは出来なかった。

「小さい頃の約束を果たしに、と言いたいところだけどね。初めては力が欲しかったから、かな?」
「嘘、私に力なんて……」
「いいや君には力がある、僕にはそれがよくわかるよ。伝説の虚無の力は間違いなく君に宿っている」

 ーーこの人はこれほどの力を得たと言うのに、なんで私みたいなちっぽけな存在のことを気にかけるのだろう?
 それがルイズの偽らざる思いであった、生まれてからずっと貴族たらんと虚勢を張り続けてきたルイズの心の奥底に根を張った一つの真実だった。
 だがそれはルイズにとってそれはけして認められない、認めてはいけない真実である。もし本当に自分が無価値なら、どうがんばってもゼロでしかないのならいつか大切な人達にすら見限られてしまうかもしれない。
 それはルイズにとって死ぬより恐ろしい、故にルイズはまるで死神に追い立てられるように必死で努力を続けてきたのだ、誰よりも貴族たらんと、誰よりもメイジたらんと。
 だから今更信じられない、こんなゼロを打算なしで受け入れてくれるなんてルイズには到底信用できない。

「だがそれも今はどうでもいい!」
「――!?」
「力など関係なく、僕は君が欲しいんだルイズ、共に征こう! この世の果てまで二人で」

 狂ったようにワルドは吼える、いや事実狂っているのかもしれない。
 大きすぎる力は人の心を捻じ曲げる故に。
 そしてその力の源たる剣と同化し異形のものとなったワルドの右手は解放を待ちわびたようにぶるりと打ち震える。

「共に、喪ったすべてを取り戻しに!」

 ワルドの声に反応して破壊の右手が光を放つ、目前の敵全てを凪ぎ払う絶対なる力がワルドの右手に集っていく。

「ワル……」

 ルイズは大切な相手に向かって呼びかけようとしたが、それが果たす暇さえなく銀の極光がほとぼしった。
 ルイズのすぐ脇、ルイズを守るようにデルフリンガーを構えるアナスタシアに向かって。

「やはり貴様が最後の壁か!ガンダールヴ!」

 放たれた光は止まっていた、アナスタシアが手にした紫の剣が食らいつくようにして何もかも消し去る光を押し留めていた。

「貴方が何に絶望し、その結果何を求めようとそれは貴方の勝手よ」

 ルイズは見た、アナスタシアの傍らに居たルシエドが輝きと共に剣へと変じるのを。
 アナスタシアの頬に一筋の雫が伝うのを。
 ――ルイズだけは見ることが出来た。

「けれどそれにルイズちゃんを引きずり込むのは許せない、大き過ぎる力は周りの人を不幸にするだけだから」
「ふんっ、貴様に言われる筋合いはないっ!ルイズに与えられた力で偉そうに……」
「ガンダールヴとか言う伝説のこと?」

 ワルドの言葉にアナスタシアは普段付けている左手の手袋を脱ぎ捨てる。

「バカなっ!」

 ワルドの声は震えていた、無理もないそこには何もなかったのだから。
 白い手袋の下にはただ透けるように白いしみ一つないアナスタシアの華奢な左手があるばかりだった。

「それではその力は一体……」
「これは仲間の力、わたしの大切な友達の力! 欲望のガーディアンの剣! 魔剣ルシエド!」
「――ガーディアンブレードだと!?」

 驚愕と共にワルドは言う、ルイズ僕の可愛いルイズ、君は一体何を召喚したんだい?

「ワルド、アナスタシア一体何の話をしているのっ!? ガーディアンブレードって……」
「ルイズ、僕の右手と同化した命ある金属は元はガーディアンブレードと呼ばれる一振りの剣だったんだ。それこそが絶対たる力の正体、かつてファルガイアと呼ばれる異世界すら滅ぼしかけた究極の兵器さ!」
「ファルガイア、それって……」

 ルイズは絶句する、アナスタシアの語ったファルガイアと言う世界の物語。何もかもを滅ぼすガーディアンブレードと言う剣と、その世界に降りた焔の災厄、その世界を救ったと言う剣の聖女。
 そしてガーディアンブレードを操るアナスタシア。
 すべてのピースが嫌な音を立てて組み合わさり、ルイズは蒼白な顔でアナスタシアを見た。

「貴様は、貴様は……」
「わたしはただのアナスタシアよ」 

 その響きはどこまでも悲しく、そして切なかった。まるで二度と取り戻せない大切な思い出を思い返すようにアナスタシアは言葉を紡ぐ。

「剣の聖女でも伝説の使い魔でもない、ただのルイズちゃんの友達のアナスタシア・ルン・ヴァレリア」

 アナスタシアは右手にデルフリンガーを、左手に謎の剣を構えてルイズを守ろうとするかようにワルドの前に立ちはだかる。
 素人くさい構えと恐怖に震える腕、きっと人を殺したことすらないのだろうことは一目で分かる。
 戦士の気迫はあるものの全身隙だらけ、と言うか隙でない部分を探す方が難しい。だと言うのにワルドは悪寒が止まらなかった。

「わたしは、力なんて欲しくなかった」
「なんだお前、何を言っている!?」
「英雄になんてなりたくなかった、死にたくなんてなかったの!」

 アナスタシアの切な叫びをワルドはけして理解出来ない。
 ワルドの狂おしいまでの渇望をアナスタシアは理解出来ない。
 自分の命すら捨ててまで叶えたい野望の為に力を求める者と、誰よりも生きたいと願った故に結果として自らに死を齎すほど巨大過ぎる力を得てしまった者。
 ――二人の道はけして重ならない。

「ただのアナスタシアとして、ファルガイアで生きていきたかった! けどだからルイズちゃんまでそんな風にはさせない、望まない力に振り回させたりなんか絶対にしない!」
「アナ……スタシア…………」
 ルイズの声に混じったある感情にワルドは気づいた、気づいてしまえば冷静ではいられなかった。
 ルイズにとってアナスタシアはもはや家族なのだと、もしその家族を奪えばルイズはけしてワルドを許しはしまい。
 とうの昔に自分は振られていたのだ、それに気づけなかった、いや気付こうとしなかった自分はなんと言う道化だと内心で自嘲し、そして高々と右手を掲げる。

「ルイズ、君まで僕を置いていくのか……」

 なんと醜い台詞、醜い嫉妬。
 そう分かっていてもワルドに自分の手を止めることは出来なかった。

「――!? ルイズちゃ……」

 銀の光がルイズに向かって殺到する。
    ・・・
 刹那、ワルドは駆け出していた。


● ● ●


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 才人は怒っていた、猛烈に怒り狂っていた。その理由は目の前にある惨状だ。
 その光景を才人が知る表現で表すならゲームや映画で出てくるレーザー兵器をぶっ放されたみたいな感じだった、焼け焦げ抉れた地面と跡形もなく倒壊した家屋、子供たちを庇って重症を負ったマチルダ。
 もはや昨日までの平穏が跡形もないウエストウッドの村の光景。
 付け根から取れたマチルダの腕を必死で繋ごうとするテファニアの姿を見た時、才人は初めて本当の意味でこの世界が異世界だと意識したのだ。
 魔法と言う理が支配する、あまりにも不平等で無慈悲な世界。
 才人は許せなかった。
 見知った相手がこんなに理不尽に傷つくことも、
 それを助ける手段が自分には何もないことも、
 こんな非道を行った相手がそれを知りもせずのうのうとしているであろうことも、
 だからだろう、マチルダがいずこかから手に入れてきた『破壊の杖』を使い方も分からず持ち出したのは。

「おおおおおおおおおぉぉ」

 激情に駆られるままに才人は走る、不思議と普段の何倍もの速度で走れたし疲れも感じなかった。
 ただ自分の不甲斐なさが許せなかった。
 何をしたいのか、何をすべきなのか。分からないまま才人は走った。
 走って、走って、地面に抉られた破壊の跡を辿って行った先で才人が見たものは、

「ルイズゥゥゥ」

 異形の右手の男と

「ワルド様!」

 その男から少女を守る一人の女性の姿。

 ――コイツだ、才人は確信した。

 男が右手を振るう、何もかもを壊してしまう銀の光が放たれる。
 庇うように立ちふさがった女性の姿が、右腕を失くしたマチルダと重なる。

「やめろぉぉぉぉおぉお」

 そして次の瞬間には才人は引き金を引き絞っていた。
 『破壊の杖』それがいかなる破壊力を持ったものか知りもせず、ただ青年の凶行を止めなければと言う一心で。
 才人の呼びかけに『破壊の杖』は応えた、才人の左手の輝きを何倍にもしたような光がその砲塔に宿り、一瞬の溜めと共に破壊の力が放たれる。
 才人は知らない。
 今自分が放とうとしている輝きが一定範囲の空間に作用し、そこにある物質を別の空間と入れ替えることであらゆるものを消し飛ばすARMと呼ばれる兵器だと言うことを。
 自らの左手に宿ったルーンの力と同じように、使い手の精神状態によって何倍にも威力を増す精神感応兵器だと言うことを。
 使う資質がないのにあらゆる武器を扱う使い魔の力で無理やりに起動させた為、その命中精度に信頼性も何もあったものではないと言うことを。

 『破壊の杖』
 聖地の門より流れ着いたこの兵器の本来の名前をアークスマッシャーと言う。



新着情報

取得中です。