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魔法のプリンセス・イザベラ

 使い魔はメイジにとって重要な問題である。
 メイジの実力を測るには、その使い魔を見るのがもっとも良いという言葉さえある。
 実力者となれば、ドラゴンとかグリフォンという素敵な幻獣を召喚したりする。
 逆に、程度の低いメイジはやはり相応の使い魔を召喚することになるのだ。
 使い魔は、メイジにとって一生の問題といってもいい。
 ガリア王国の姫であるイザベラも、そんな一生の問題となる儀式に挑もうとしていた。
 使い魔を召喚するサモン・サーヴァント。
 本日、従妹シャルロットがいるトリステイン魔法学院でサモン・サーヴァントが行われるという。
 ならば、同日に自分も同じようにやってやろうと、イザベラは考えた。
 無論いけすかない従妹への対抗意識からである。
 プチ・トロワの中庭で、後ろに多くの侍女を控えさせ、イザベラは呪文を唱える。
 そして、杖をふった先に出現したもの。
 「……なんだい、こりゃ?」
 それは、カップラーメンの容器だった。
 湯気がホカホカ昇っているところを見るとお湯が注がれているのだろう。
 もう食べられる頃合なのかもしれない。
 しかし、ハルケギニアの人間がカップラーメンなどわかろうはずがない。
 くすくすと忍び笑いをもらしそうな侍女たちに殺意を覚えながら、イザベラはカップラーメンに近づく。
 あいつらには後々死すら生ぬるい罰を与えてやることにする。
 (落ちつけ。もしかするとすごいマジックアイテムなのかもしんないし、あるいはこういう生き物なのかもしれないじゃないのさ!)
 もちろん、そんなわけはない。
 現実は非情である。
 イザベラは警戒しながら、ぺろりとカップのふたをはがしてみる。
 中には、何故か小さな子供の顔がぎちぎちにつまっていた。
 「あ、あのう……ラーメンの精なんですけど……」
 子供は微妙にむかつく笑みを浮かべながら、ずりずりとせり出してきた。
 その時。

 ぶちり。

 イザベラの中で、決定的な何が切れた。
 「こんな、使い魔……いらああーーーーん!!!」
 それはまさに、魂の咆哮だった。
 怒りにまかせ、イザベラはカップごと子供を踏み潰した。
 心の隅で、
 ――こいつ始末して、次いこ、次!
 と、思いながら。

 「みぎゃああああああああああああ!!!」

 凄まじい悲鳴に、侍女たちは耳を押さえた。


 「……つまり。人間界の平和を守るために妖精の国とやらからきて、そのラーメンとかいうものにギッチギチに詰まっていたと?」
 イザベラは不機嫌そのもので、自称・ラーメンの精である少年を睨む。
 「はい。そして、笑顔でフレンドリーな挨拶をしたらいきなり、思っくそ踏みつけられ、こうしてメイドの皆さんにお手数をかけながら現在に至るというわけです……」
 イザベラに踏まれたラーメンの精はその後、どうにか命は助けてもらい、踏まれた時に噴き出た血を侍女たちにふいてもらったり、血止め薬を塗ってもらったりしていた。
 「ふーん……。で、なんでそのラーメンとかいうものの中から出てきたわけ?」
 イザベラはカップラーメンの残骸を横目に見てたずねる。
 「それは僕がラーメンの精だからです。ニキビの精ならニキビから。頭皮の精なら頭皮から。ついでにラノベの精ならラノベを通して人間界にくるわけです」
 「(ろくな精がいないじゃないか……。つうか、ラノベってなに?)……もっと、こうポピュラーな……風の精とか、水の精とか、森の精とかいないのかい?」
 「森の精なら知り合いに一人いましたけど……。女王が怒って男子トイレの精にしてしまいました。悪く言うと左遷です」
 ちなみに、その原因はラーメンの精の密告(チクリ)であったりする。
 「何があった、妖精の国で!? つうか、なに!? そういうのってチェンジ可能なの!?」
 「そいつもう死にたいって言ってました」
 自分が原因作った割には、気の毒そうにラーメンの精は言った。
 「死にたがってるの!? まあ……気持ちはわかるけどさ」
 「……あのう、イザベラ様? 契約の続きをなさらなくってよろしいのですか?」
 侍女の一人が言うと、
 「お前、私にこいつを使い魔にしろと?」
 イザベラは、憎しみだけで人を殺せるような視線を返した。
 「ひい!! ……あ、いえ、あの……申し訳ありません……」
 蒼白になって下がる侍女。
 ラーメンの精はのんきなもので、どこから出したのか、変なデザインの杖らしきものを出してきて、イザベラに渡す。
 「ああ、そうだ。忘れるとこだった。はい、どうぞお嬢さん」
 「姫様といいな! ……で、なにこれ? メイジの……杖?」
 首をひねるイザベラ。
 「ガンダールヴです」
 「が、ガンダールヴ!? あの、始祖ブリミルの使い魔の!? 杖じゃないのかい!?」
 「いえ、魔法のステッキです。名前がガンダールヴです。あ、ブリミルさんとは関係ないですよ」
 「関係ないんだ……(つうかさんづけかよ。気安いな、おい)」
 「はい。偶然の一致です」
 「やな偶然だね……」
 イザベラは気味悪そうに杖を見て、
 「で、これがなに?」
 「これであなたが魔法少女となって平和を守るんです!!」
 「……なんじゃ、そりゃ」
 するとラーメンの精は居住まいをただし、
 「妖精の女王様はおっしゃいました」

 ――今、人間界はすさんでいます。死んだ魚のような目をした、蛆虫のような屑どもが増えています。そんな人間界を救うため、妖精のみなさん、出動してください。

 「……と」
 (えらい言われようだね……)
 ぼろくそな言い様に、イザベラは怒るよりもあきれ果ててしまう。
 が、胡散臭いが仮にも精霊が、自分に頼みごとをしているのだ。
 悪い気はしない。
 「し、しかしなんだ? わざわざやってきたってことは、私にしかできないことなんだろ? まあ、せっかく頼ってきたってのなら……」
 イザベラはもったいぶるが、ラーメンの精はあせった顔で、
 「え…? いえ、あの、適当にきたらここだったんですけど……」
 「誰でもいいのかよ、おい……」
 ずーん、とイザベラのテンションが下がる。
 「一気にやる気失せた……。つうか、むしろ殺意がわいてきた……」
 「まあ、そう言わずに……」
 やばげな雰囲気を察知してかラーメンの精はイザベラをなだめるように、
 「今、人間界は荒んでいるんです。お願いです、魔法少女ラー・メン子となって一緒に平和を守ってください」
 「ら、ラー・メン子!? なんじゃ、そのふざけた名前は!? さらにやる気が失せたわ!? 名前くらいちゃんとしたの考えろ!?」
 「いや、これも決まりでして」
 「なんだい。そりゃ……で、これどうやって使うんだい?」
 イザベラは不機嫌ながら魔法のステッキ・ガンダールヴを弄りながらたずねる。
 「おやりになるのですか!?」
 侍女たちが、やめとけよという顔で言ったが、
 「ちょっとだけな……」
 魔法少女というものに若干興味を抱いたイザベラは軽く言った。
 「やり方は、もうご存知のはずですよ。そのガンダールヴを手にした時、あなたの心に言葉が浮かんだはずです。それを唱えてください」
 「なるほどね……ようし!」
 何となく説得力のあるラーメンの精の台詞に、イザベラはうなずく。
 そして、ステッキを一閃。

 「ビューティー・プリティー! ソサエティーーー!!」

 高々と詠唱される呪文。
 でも、杖は無反応だった。
 「ぜんぜん違います……」
 ラーメンの精はさめた声でつっこんだ。
 数秒後。
 「ぜんぜん違います……」
 「に……二回も言うな!! なにが違うってんだい!? 言われた通りにしたのに!!」
 イザベラは顔を真っ赤にしてラーメンの精につめよる。
 「びゅ…ビュ~ティ~・プリティ~~……」
 ついに、侍女たちから失笑が漏れる。
 「今笑ったやつ!! ギロチンにかけるぞ、こらーーーーー!!」
 「正解は、どさんこラーメンパワー・メークアップです」
 「ふうん……………………。変な呪文……」
 「あ、ところで気になられてるとは思いますが……。アニメとかで、女の子が変身するとき、一瞬裸になったりしますよね?」
 「いや、知らん……。そもそもアニメってなによ」
 「そのへんはお気になさらないでください」
 「いや、だから……」
 「裸になるのは、あなたのご親族……」
 「ええ!? 父上が!? いや、ひょっとしてあの、ガーゴイル娘!?」
 あのガーゴイルが公開ストリップ?
 そいつは素敵に愉快だな、とイザベラはにやつく。
 「……の身近な人。たとえば、友達とか、クラスメートとか」
 「……って、本人じゃないのかい!?」
 「……の」
 「さらに、の!? もはや限りなく赤の他人じゃないのさ!?」
 「恋人とか、婚約者とか……。あと、宿命のライバルとか、義理の妹とかお兄さんとか、しつこく付け狙ってるストーカーとかが裸になります」
 「前半はともかく、後半はもう意味わからん……。というか、どういう原理でそうなるんだよ!?」
 「魔法ってのは不思議なんです」
 「不思議すぎるだろ!? つうかメイジなめんな!!」
 ここは魔法使いの貴族が平民を支配するハルケギニア。
 ここは魔法大国ガリア。
 「でも、まあ私が裸になるんじゃないなら…。別にいいか」
 我侭姫らしい意見と共に、イザベラは再びステッキを握り、

 「どさんこラーメンパワーーーー!!・メーック、アッーーーープ!!」

 呪文を唱えた。
 その瞬間、遠いトリステインの地で。


 王城の中。
 多くの人が政務にはげむ場所で。
 その男の衣服が前触れもなく、爆ぜた。
 魔法衛士隊「グリフォン隊」隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは突如として全裸をさらすことになったのである。
 (俺が……。俺が何をしたっていうんだ……)
 爆ぜた衣服の残骸が、妙に悲しかった。


 一方、ガリアのプチ・ドロワでは。
 「ほ、本当に変身した…」
 「いや、でも……」
 侍女たちから、驚きの声が漏れていたが、
 (このみすぼらしい人なに?)
 イザベラは豪奢な青いドレスから、変な色で変なしみのついたトレーナー、下はパジャマのズボンにフォームチェンジしていた。
 どう見ても、お姫様というスタイルでは、なかった。
 「ちょっと、妖精……。失敗したぞ、変身。私、何か間違ってたか?」
 半ば錯乱しかけるイザベラに、
 「ブラヴォー!! ……お、おお、ブラヴォーーーー!!」
 ラーメンの精は某戦車の暗示の幽波紋を持つフランス人のような勢いで賞賛と拍手を繰り出す。
 「ブラヴォー!? 失敗だろ、こんなん!! 拍手すんな! 笑うな!!」
 「失敗じゃないですよ、見事なまでの変身です! ヒュー! セクシー! 鼻血が……!」
 パチパチパチパチ。
 パチパチパチパチ。
 「鼻血はもとから出てるだろうが!! 恐ろしいほどセクシーじゃないだろ、コレは! 拍手をやめろ!!」
 「なんでこの服シミついてんの!? 何コレ!? お古!?」
 「あ、それ……。先代のラー・メン子さんが液こぼしちゃって……」
 「やっぱお古か!? 何の液だよ!?」
 「なんか変な液を……」
 イザベラの詰問に、ラーメンの精は口ごもった。
 「なんだよ、変な液って!? それに、ほら! 下、なにコレ!?」
 「なにって、パジャマのズボンですけど?」
 「わかっとるわ! なんでパジャマなんだよ!? かわいいスカートとかは!?」
 「そうなんでもかんでも支給してもらえると思ったら、大間違いですよ?」
 「チクショーーーー!!!」
 半泣きで叫ぶイザベラ。
 だが、変化したのは服だけではなかった。
 「あの、イザベラ様? 一番つっこむべき所が、頭の上にありますけど……」
 「え? 頭の上……ホゲャアッ!!」
 驚くのも無理はなかった。
 イザベラの頭には、一本ピンクをしたストローほどの太さの、触手のようなものがはえていたのだ。
 「何勝手に変なもんはやしとんじゃ妖精、こらーーーーーーーーー!!! なんじゃい、これは!?」
 「始祖のオルゴールがなにか?」
 ハッとするイザベラ。
 「始祖!? 始祖ってまさか」
 「いえ、ブリミルさんとは一切関係ありません」
 「また偶然の一致!? つうかこれのどこがオルゴール!?」
 「いや、僕に聞かれても」
 「このヤローーー!!」
 ぶち切れるイザベラにかまうことなく、ラーメンの精は説明を続けた。
 「その始祖のオルゴールから色んな魔法アイテムが出てくるんです」
 「こっから!? 細いぞ、これ!!」
 「まず試しに魔法の絨毯を出してください」
 「ここから絨毯を!? どうやって出すんだよ?」
 「絨毯をイメージしつつ、しぼり出してください」
 「だからどうやってしぼり出すんだよ!?」
 「根性でどうにかしてください」
 ラーメンの精の答えは、極めて無責任だった。
 「えええいい、もうヤケだ!! 絨毯でもなんでも出したるわい!! ウオーーーーーーー!!」
 イザベラはとても一国の姫とは思えぬような声で絶叫する。
 「はぁはぁ………出た?」
 しばらくしてからラーメンの精にたずねるものの、
 「いえ、むかつくほどにまったく」
 「なんで私がむかつかれるんだよ……。どええーーーい! チクショーーー!! ウオドリャーーーーーーーー!!!」
 それから、どれくらい吼えたことであろうか。
 「あ、出てきましたよ!」
 ラーメンの精霊が叫んだ。
 「マジで!?」
 触手がふくれあがり、何か太いものがびくびくと出てくるようだった。
 「それ、もう少し! がんばって!? ピクシー! オ・レ! ピクシー! オ・レ!」
 「あいたたたたたた…。けっこう痛い…! まだか、おい! まだか!?」
 イザベラは足を踏ん張り、顔を真っ赤にして絨毯を搾り出す。
 「ほら、メイドさんたちも手伝って?」
 ラーメンの精に言われ、侍女たちもやむをえずみんなで先端から出てきた絨毯を引っ張る。
 「痛ーーーーーーーーーーーー!! そんな、無理に引っ張るなーーー!!?」
 イザベラは悲鳴を上げるが、日頃の恨みとばかりに侍女たちはヨイショヨイショと絨毯を引っ張る。
 人間やはり日頃の行いが大切である。
 そして、ついに!

 ずっぽーーーん!!

 絨毯は見事外界へ躍り出た。
 魔法の絨毯というわりは、ひどく安物っぽく、かつこれもお古くさかったが。
 侍女たちは転がった絨毯を触り、また自分たちの手を見て目を見て顔をしかめた。
 「うわっ…。なんか、これ、じっとりしてる……」
 そうつぶやいたのは、誰だったのか。
 確かに、何か変なにおいの液が絨毯にはついているようだった。
 「ああ、それは脳漿です」
 ラーメンは精はなんでもないように言った。
 「脳しょうってなに!?」
 「蜘蛛膜下腔、脳室および脊髄の中心管を満たしている液体です。脳室脈絡叢で生成され、主に脳や脊髄を保護する役目を果たします。髄液とも言いますね」
 「はあ……」
 ラーメンの精の説明、侍女たちにはさっぱりわからない。
 「ああーー。痛かった……。まったく、道具を出すのにいちいちあんな思いするなんて、冗談じゃないよ……」
 イザベラは頭を押さえながら、ふらふらと立ち上がる。
 「大丈夫です。慣れてくれると知らないうちに勝手にずるずる出てきたりしますからね」
 笑顔で答えるラーメンの精。
 「いや、それも困るよ……」
 「では、魔法少女の仕事ですが……」
 ラーメンの精はこほんと咳払い。
 「ベタだけど、世界を混乱させる悪党を倒すとか、そんなんかい?」
 「いえ、それは勇者とかの仕事です」
 至極あっさり否定した。
 「ああ、そう……。じゃ、魔法少女って何するんだい?」
 「困ってる人を地道に助けるのが、魔法少女の仕事です」
 「…………うわあ」
 地味だ、とイザベラは思った。



 ※続かない※


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