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ゼロの武侠-03


ゼロの武侠-03

ざわめく生徒達の中、梁師範とルイズの間にだけ静寂が訪れた。
未だ残心を保つ梁師範に困惑を隠しきれず彼女は立ち尽くす。
それは彼女が知るハルケギニアの如何なる力とは異なる未知の業。

「これは一体何の騒ぎですか!?」

言葉を失った彼女の背後で喧ましい声が響く。
二つに割れていく生徒の人垣、そこから現れたのはコルベール先生だった。
慌しく問い質す彼にルイズの喉も震えるばかりだった。
周囲から聞こえてくる生徒の声に耳を傾ければ、
つらつらと不名誉な事実が並べ立てられる。
『ルイズが学院内で失敗魔法で暴れ回っていた』
『そのせいで生徒達にも多くの怪我人が出た』
『どこかにぶつけたのか、メイジの象徴である杖を折った』

苦情とも言うべき声に頭を痛めながらコルベールは彼女に向き直る。
ルイズを見つめるその眼は明らかに失望の色に染まっていた。
見れば、彼女の使い魔にもルーンは刻まれていない。
杖を失い、使い魔とも契約が結べず、学院で騒ぎを起こしたのだ。
その処遇は既に彼の心中で決まっていた。

「残念ですミス・ヴァリエール」

視線を落として語るコルベールの表情に、ルイズの顔色が蒼白に変わる。
この儀式に失敗すれば留年するぐらいの覚悟はあった。
だけど彼の態度は、それ以上の処罰を告げようとしていた。

「……そんな」

嫌々と拒むように彼女は首を振るう。
だがコルベールは溜息を零しながら彼女を見据える。
彼女は決して優秀な生徒ではなかった。
だが欠点を克服しようと誰よりも勉強熱心であった。
その彼女にこのような過酷な仕打ちなどしたくはない。
しかし厳格な規則なくして我が儘な貴族の子弟達を纏める事は不可能。

「この件は貴方の実家に報告させて頂き、その上で退学の手続きを取ります」

愕然とする彼女の横では事態についていけない梁が置き去りにされていた。
だが退学という言葉は穏やかではない。
魔法と剄、同じ物ではないにしても本質は近い筈だ。
梁でさえ剄を使い続ければ体力の消耗で立つ事さえままならない。
あれほどまでに連続して爆発を引き起こすには相当の修練がいっただろう。
それが全て水泡と消え、彼の価値観で言うなら破門にも等しい処罰を受けるのだ。
もし自分がそうなったなら、どうするかさえ思い当たらない。


しゃーねえな、と梁は頭を掻きながら、
今も涙が零れ落ちそうなルイズの前へと歩み出る。
目の前で泣かれちゃ何とかしたくなってしまう。
つくづく思うのだが女という生き物は、本能で男を利用する術を知っているのではないだろうか。

「ちょっと待てよ。非があるのは確かだが退学はやりすぎじゃねえのか」
「君は、確かミス・ヴァリエールの使い魔の……」

誰一人として彼女の退学に反対しない中、彼だけが声を上げていた。
それが使い魔としてのものなのか、彼の性格によるものかは判らない。
だが彼女の弁護をした所で退学の決定は覆らない。
諭すようにコルベールは彼に告げた。

「しかし彼女が学院で騒動を起こした以上、責任を取る必要があります」
「だからって退学なんて大袈裟だぜ。
校舎のガラスを割って回るなんざ学生の内は良くある事だろうが」
「そんな話、聞いた事ありません!」

とても援護とも思えぬ弁明にコルベールが声を荒げる。
お坊ちゃま、お嬢様が通う魔法学院と梁の知る学校のイメージはかなり離れていた。
それにもめげず彼は懸命にルイズを庇う。

「学院で暴れる原因になったのは俺が校舎に逃げ込んだからだ。
使い魔の責任は主の責任になるんだろ? もし暴れだしたら大変だからな」
「……確かにそうですが」

まあルイズが暴れていたのは前からだが、それを話す必要はない。
柄の悪い梁の風貌だけに、その言葉には幾らかの真実味が感じられた。
ルイズが騒動を起こした理由があったとしても、まだ彼女には不利な事実がある。

「杖を失くし、使い魔との契約も出来ていないとなると……」
「なら使い魔がいりゃあ問題ねえんだな」

そう言うと梁は笑みを浮かべながらルイズの肩をぽんと叩いた。
その気安い態度に腹を立たせながらもルイズは彼の言動に気を配る。
皆の注目が集まった瞬間、梁師範は口を開いた。

「俺がこいつの使い魔だ。文句は言わさねえぜ」


夜の帳が落ち、魔法の明かりが室内を照らす。
その薄明かりの中、ルイズはベッドに腰を下ろして溜息をついた。

「どうしてこんな事になっちゃったのよ……」
「それは俺が聞きてえよ」

勢いとはいえ何であんな事言ってしまったのかと、
部屋の片隅で梁師範は頭を抱えてそう答えた。
まさか部屋まで同じで、つきっきりで面倒見る羽目になるとは思わなかったのだ。
その甲斐もあってルイズの退学は取り消されたのだから、
仕方がないといえば仕方がない。
まあここに長居するつもりはない。
折を見てとっととアフリカに帰らせてもらおう。
その頃にはこんな騒動も忘れているだろう。

第一、ルイズは大きな勘違いをしている。
召喚魔法というのがどういうものかは知らないが、
たまたま飛行機が墜落しただけで使い魔にされてはたまらない。
彼女ならもう一回召喚を行なえばちゃんとした使い魔を呼び出せる筈だ。
要は、それまでの繋ぎをしてりゃあいいだけだ。

そう自分を納得させる梁師範にルイズが疑惑の声を投げ掛ける。

「大体アンタ何の役に立つのよ?」

挑発とも受け取れる言葉を耳にした梁師範の眉が跳ね上がる。
しかし続けて浮かべたのは不敵な笑み。
真っ向からルイズと向かい合いながら彼は自分の袖を捲くった。
鍛え上げられた二の腕からは力強さを越えた何かさえ感じさせる。

「俺の実力を見てえのか……いいだろう、見せてやるぜ」

その言葉を聞き終わる前に、彼はルイズの前から姿を消した。
目にも止まらぬ高速移動を終えた彼の手には長尺の棒が握られていた。
その手の内で風を切りながら旋回する得物。
彼の動きは鍛え上げられた兵士の槍捌きさえも凌駕する。
そして彼女の目の前で梁師範の棒が地面を捉えた。


「ターちゃん流掃除術!
ヂェーンさんの食い散らかした後も、あっという間に清掃完了!
他にもターちゃん流洗濯術、肩揉み術、耕作術、まだまだあるぜ!」

「小間使いかアンタは!」

鼻歌交じりに手にした箒を振るう梁師範にルイズのツッコミが入る。
そのような事はメイドにでもやらせておけばいい。
上がりかけた梁の評価は瞬時にして底値を割り込んだ。
絶望に俯くルイズの耳にドアをノックする音が響いた。
のろのろと扉に手を掛けて開いた先にはコルベール先生の顔。

「……ミス・ヴァリエール。少しよろしいですかな?」
「あ、はい。何でしょうか?」

エプロンに三角巾、そしてハタキを手に楽しげに掃除を続ける梁師範の不気味な姿に、
顔を引き攣らせながらもコルベールは用件を伝えた。

「無くした杖の代わりを作る触媒を送ってもらうのに、貴方の実家に報告したのですか」
「じ、実家に報告……」
「勿論、今回の騒動の事も報告させて貰いました」
「そ、それで?」
「貴方の学院での生活態度を見る意味も兼ねて、
使い魔のお披露目会に貴方のお姉さんが来られるそうです」

その一言にぴしりとルイズは凍りついた。
用は済んだとばかりにコルベールが立ち去った後、
一人蚊帳の外にいた梁師範が彼女に語りかける。

「なんだ、良かったじゃねえか。家族と会えるんだろ?」

ハッハッハッと陽気に笑う彼をルイズがジト目で睨む。
その殺意さえ滲ませた迫力に梁師範は言葉を失った。
困惑する彼の前で、ルイズはポツリと呟いた。

「……退学の方がまだマシだったかも」

それは浮気の現場をヂェーンさんに見つかったターちゃんの姿とどことなく重なって見えた。
何をそこまで恐れているのか、考えてふと梁師範は思い当たった。
ああ、そういえば来るのは『こいつ』の家族か。
だったらマトモである筈が無いと梁師範は心の底から納得したのであった。


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