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ソーサリー・ゼロ第三部-10(偽)

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一五九

 外に居るふたりを招き入れれば、状況が少しはよい方向へと向かうはずだと考えた君は、扉を開けようと素早く駆け寄る。
 キュルケは鞭を振るうルイズをなだめてくれるだろうし、タバサは事情を説明し、君を弁護してくれるはずだ。
 鍵をはずして取っ手を回そうとしたところで、
「させるか、この、裏切り者ぉぉぉ!」というすさまじい絶叫と床を蹴る足音を耳にし、
驚きに手を止めてしまう。
 なにごとかと振り向こうとした君は、後頭部になにかがぶつかった衝撃を感じ、次の瞬間には扉に額を叩きつけてしまう。
 なにが起きたのか理解する暇もなく、眼の前が暗くなりぐったりと床に倒れる。
 君の行動に怒りを爆発させたルイズが、その全体重をかけて放った飛び蹴りの威力は抜群だ。一四へ。


一四

 君ははっと眼を覚ます。
 きょろきょろと周囲を見回すが、そこはルイズの部屋でもなければ、学院の中でもない。
 君は岩だらけの荒涼とした山道に居て、大きな岩の陰に座りこんでいるのだ。
 眼をこすり、後頭部と額に手をあててみるがなんの痛みも感じられず、こぶ一つできていない。
 ここはどこだ?
 こんなところでなにをしている?
 ルイズは、キュルケは、タバサは、デルフリンガーはどこに居るのだ?

 必死でなにがあったかを考える君だが、じょじょに頭がはっきりしてゆくにつれ、それらの疑問に対する答えが浮かび上がってくる。
 ここは、邪悪な大魔法使いが要塞を構えるザメン高地だ。
 君はマンパン砦に潜入し、≪諸王の冠≫を大魔法使いの手から取り戻す任務の途中であり、岩陰に座って休憩をとっているうちに眠りこんでしまったのだ。
 そしてルイズたちは、君の見た鮮明な夢のなかの登場人物にすぎない!

 日の高いうちから、のんきに二・三時間も眠ってしまった自らの迂闊さを呪い、その隙にマンパンのしもべどもにも見つからなかった幸運を喜ぶと、荷物をまとめて出発する。
 ハルケギニアにおける君の冒険は夢にすぎなかったので、技術点・体力点・強運点を原点まで回復させよ。六〇〇へ。


六〇〇

 君は山道を歩みながら、先刻の夢について思い起こす。
 夢の中のさまざまな出来事が頭の中を駆け抜け、その奇妙きわまりない内容に首をかしげる。
 魔法使いが支配階級として君臨する世界、空飛ぶ船、天空に浮かぶ大陸。
 どれをとっても、≪旧世界≫の、いや、≪タイタン≫の常識とはかけ離れている。
 なかでももっとも奇妙なのは、アナランドの救国の英雄たる君が、魔法の焼印を捺され、貴族の少女の下僕にされてしまうことだ。
 それに、若い女が多く現れる――不自然なほど!――内容だったのも気になる。
 あの夢は、心の奥底に秘められた願望のあらわれなのではないかという考えが頭をよぎったため、君は慌ててかぶりを振り、ありえぬとひとりごちる。
 可愛らしい少女たちに囲まれて、安穏とした日々を過ごしたいという思いなどあるはずがない、と。
 君は夢のことを考えるのをやめ、任務のことに集中しようとするが、唐突に何者かに呼びかけられてぎょっとする。
「恐れることはありません、姿は見えねどここにいます」
 それは聞き覚えのある、静かな女の声だ。
「わが忠実なる信者よ。苦難の旅も先が見えています。マンパン砦にて直面する危険は数多(あまた)あれど、ここまでそなたは、任務にふさわしき選ばれし者であることを証明してきましたね」
 声の主は、君の守護神である正義の女神リブラだ。

 リブラの声を聞いた君は、気持ちを落ち着ける。 
「そなたの道のりすべてを、興味深く見守ってきました。そして……そなたの今しがた見た夢も!」
 その言葉と同時に、リブラの静かでやさしい声が、怒りを秘めた震えるものへと変わる。
 神ともなれば、人間の夢を覗き見ることなどたやすいのだろうが、よりにもよってあの夢を見られてしまうとは!
 とまどう君を、リブラは責めたてる。
「わたしはそなたを、わが信者たちのなかでもっとも勇敢で高潔な者と思っておりました。しかし、なんなのですか、あの夢は!
一刻を争う大切な任務のことを忘れて、年端もゆかぬ小娘どもに囲まれて鼻の下を伸ばすなど、嘆かわしい! 若い娘がそんなによいのですか? 
夢に見るほど恋焦がれているのですか!? 小さくて我侭で高飛車なのが好きなのですか!?」
 君はリブラに、自分にそんな趣味はない、と弁解する。
 それに、夢の中の少女たちに手を出したりはしていない、やましいところはない、と。
「嘘おっしゃい! 桃色頭と金髪巻き毛をおんぶしていたでしょう! 背中に伝わる控えめな感触を喜んでいたのでしょう! それに、水色頭にも狙いを定めて、いやらしい!
癒しの術で恩を売って、なにをするつもりだったのですか? おお、情けない!」
 いくら言葉を尽くしてもリブラは聞く耳をもたず、君を非難し続ける。
「発育の悪い子供たちだけではなく、盗賊女や王女、端女(はしため)にも色目を使っていましたね。なんと無節操な! それでも正義と規律を重んじるわが信者ですか!
わたしに対する信仰と敬愛の心は、どこに消えてしまったのです? 穢れたカーカバードを通り抜けるうちに、そなた自身も邪悪に染まってしまったというのですか?
女神などと言う大層な年寄りになど、興味がないということですか!? そなたのことを大切に思っていたというのに!」
 よく意味のわからぬ最後の言葉に首をかしげつつも、君は必死の思いで女神をなだめ、リブラに対する忠節は変わらぬと誓う。
「ふん! 口ではなんとでも言えるでしょう。そなたが今でもわたしのよき信者だというのならば、すぐにマンパンに乗り込んで、大魔法使いめの首を取ってきなさい!」
 目的は暗殺ではなく奪還なのでは、という君の問いを無視し、リブラは続ける。 
「なにがなんでも任務は達成してもらいますから、腹ぁくくっておきなさいよぅ~! 死んだりしてみなさい、そなたの魂を、魔界よりもさらにひどいところに送り込んでやるんだからぁ~!」
 唐突に重々しくなった女神の声に、君は眼を白黒させる。
「だからお願い……生きて帰ってきて。そなただけが頼りなのです」
 再び静かな声が響く。
 態度をころころと豹変させる女神の真意がつかめず、君は呆然とする。
 しばらくして、照れくさそうな声が響く。
「……そなたはこういうのが好きなのでしょう? 先刻までつんけんとしていたのに、なにかの拍子に急にでれでれとしだすのが。
夢の中の桃色娘を参考にやってみたのですが、いかがでした?」 
 君はなにも答えずに先を急ぐ。
 無事に任務を終えたら、もっとまっとうな神に改宗しようと決意しつつ。

 とにかく、旅の終点、マンパン砦まであと少しだ。


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