あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ラスト・レイヴン×ゼロ-02


懐かしい夢を見た。
そう、あれは特攻兵器が空を覆いつくす前の、自分がまだただの少女だった時だ。
私には親はいなかった。あの情勢では親や兄弟を失うなど別にどこにでもある話だったし、
それに私にはたった一人の姉さんがいた。
姉さんは、腕利きのレイヴンだった。私はそのことを責めはしていなかったが…いつも危
険な任務を受ける姉さんをいつも心配していたし、その一方で誇りにも思っていた。
あまり二人きりになることはなかった。「お前は家を守ってくれ」それが姉さんとの約束だ
ったからだ。
そして、たまに二人で食事をする。わずかな時間だが、本当に楽しかった。

そう、それはもう戻ることのない記憶。戻ることの出来ない、過去の思い出。



窓から差し込む朝日と、鳥のさえずりに彼女が目を覚ましてみると…そこは見慣れたACの
コックピットではなく、白い天井だった。

「…まだあんな夢を見るのか、自分は」

とっくの昔に決別していたはずなのに…ところどころ痛む身体に負担がかからないように、
ゆっくりと上体を起こしてみる。自分の体はベッドに寝かされていた。周りを見渡してみ
ると、木でできた棚に薬品がおかれており、それがいくつか並んでいる。タオルのかかっ
た仕切りと、大きな鏡。全体的に白で統一された部屋の状況からして、どうやら医務室の
ようだ。此処で寝ている自分しか部屋にはいないため、確認の仕様がないが。
ぼんやりした頭を覚ますため近くにあった濡れタオルで顔を拭く―――冷えた水が肌に当
たって心地よかった。


さて、彼女がここに来る前までの記憶をさかのぼれば、始まりであり、終わりでもあるアライアンスとバーテックスの対立が引き分けで終わったときだった。
ジナイーダはジャック・Oの依頼―――サークシティ地下にある、二度にわたり大破壊を
生み出した元凶であるインターネサインに向かい、それを破壊してほしい―――という依
頼を受けたのである。

インターネサインに急行し、無事に依頼を達成させた彼女は、オペレーターの情報により
最下層で活動していた同じ依頼を受けたレイヴンが「あの男」だと知るや、戦いを―――
―言いがかりもいいところだが、対決した。結果は、激しい戦いでファシネイターは大破。
爆発する前も彼女は戦闘で自分は左目をやられ、数箇所の骨も折れていた。それ以前に全
身に傷を受けて、出血多量で意識も朦朧としていた。
そして、ファシネイターはゆっくりと力を失い――――。

「…爆発は確認していない。あの後、目の前に光が見え、そこで意識を失ったわけだ…も
しかすると、私は助けられたのか?」

何を馬鹿な、あの空間から助け出せる奴がいるというのか。だが、実際に自分は此処にい
る。天国ではなさそうだし、そもそもジナイーダはそんな存在を信じるほど宗教家でもな
い。あるとすれば地獄だけだろう。

視線を落とすと、見えるのは白いベッドと自分の傷を覆う包帯。普段着を兼ねたダークブ
ルーのコートを兼ねたパイロットスーツは脱がされ、いかにも病人らしい白い着衣となっ
ていた。ここへ来る途中で脱がされたのだろうか。まあ、怪我人の治療には邪魔だったの
に加えてあんなにぼろぼろだったのだから、仕方がない。服から見える肌にはあちこちに
包帯が巻かれているが、なにか薬品を盛られたような跡はないようだ。

ふと、左目の部分をなぞる。破片が突き刺さっていたはずの左目は、今は視力こそまだ完
全ではないがあの状態から考えればほぼ完治しているといってもいい。

「傷が、消えている?馬鹿な、あれほど深々と刺さっていたというのに」

気が付いてみれば、手足およびに肋骨の骨折も、出血多量による貧血も起こっていない。
体は健康そのものだ。いくらなんでもこれはありえない。確かに強化人間の治癒力は常人
に比べるとはるかに高いが、骨折は薬品による治療と数日間の安静が必要であるし、眼球
の怪我は手術を要するほどひどかったはずだ。もしや自分は何日間も眠っていたのか?

ジナイーダが深い思考の波に沈んでいた、その時だった。いきなり部屋のドアが開き、中
からいかにも「メイドです!」と全身で表現した黒髪の少女が入ってきたのである。こち
らを見て驚いていたあたり、まだ眠っていると思ったからだろう。ノックをしなかったの
もそのためだ。

ジナイーダは思わず舌打ちをした。しまった、此処がどこかは知らないが医療設備がある
のだ。少なくとも人はいるはずだ…。だが気配に気が付かなかった。寝すぎだ、このふぬ
けが!と心の中で自分を叱咤する。
すぐさま臨戦態勢を取る。ジナイーダにとってはここの住人は自分を拉致した「第三者」
だ。目の前の女がメイド服を着ていようが。いつもスーツに備え付けてあるリボルバーに
手を伸ばす…が、服を脱がされているために、手持ちはほとんどない。

「あ、あの…私はここで使用人をしています平民のシエスタ…きゃあっ!」

おどおどしながらも律儀に挨拶をしようとしたシエスタだが、相手が悪かった。ジナイー
ダは床を蹴りシエスタとの距離をつめると一気に床に押し倒し、咄嗟に手に取ったタオル
を首に巻きつけ、力をこめる。少々呼吸が苦しくなる程度に。

「――――――!!」

一陣の黒い風が舞ったかと思うと、いきなり首を絞められた、それしかわからなかった。
シエスタは驚きと死の恐怖でピクリとも動くことが出来ない。

「いいか、私が言えといったこと以外喋るな。破ればこの首をヘシ折るぞ」

シエスタは―――うなずくことも出来なかった。


さて、部屋の中で命をかけた(片方の思い込みによる)やり取りが行われていた頃、コル
ベールがその部屋に向かって歩いていた。手にはジナイーダの服を持っている。
彼がジナイーダの医務室に向かっているのは、オスマンが彼女を連れてこいと命令したた
めである。

はっきりいって、今回の出来事は長いときを過ごしたオールド・オスマンですら体験した
ことのないものだった。ヴァリエール家の3女、落ちこぼれと言われている少女が使い魔
を二体、その片方は人間、もう片方はゴーレム。という内容だ。こんな召還など古今東西
前例がない。特に、コルベールの話ではゴーレムは非常に高い技術力をもってして生まれ
たものらしい。
オスマンはこの状況に対し、一緒に召還された平民に事情を聞いてからでも遅くはない、
と判断した。そこで、コルベールにその平民の様子を見て来いとの仰せが来たのだ。
コルベールとしては先にルイズの進級を優先させたいところであったが、オスマンが問答
無用で、「二人を呼び出してからじゃ!」などと命令したため、もうそろそろ起きたであろ
う彼女が眠っている医務室へと向かったのであった。
そのついでに、召還した少女の服を持ってきた。治療した際何か分かるかもしれないと持
って帰っていろいろ調べてみたが服の材質から内部に仕込んであった刃物や銃器にいたる
まで全く解明できなかった。

「あの少女は一体?」

コルベールは眠っているであろう少女に警戒しつつ医務室の扉を開けた。

そこにいたのは、ほぼ下着姿のジナイーダと、彼女にタオルで首を絞められて青い顔をし
て涙目でいるシエスタ、もれなくスカートがめくれ上がれ下着が丸見えという状態の、二
人がいました。
こちらを見る二人。助けてくれ、と涙目で訴えているシエスタ。新たな敵の発見に、警戒
するジナイーダ。
「は」とコルベールは声を上げるまもなく、彼は優先して排除する敵として認識したジナ
イーダに顔面回し蹴りをくらったのであった。


ラスト・レイヴン×ゼロ   第二話


塔の学生寮で、ルイズは自室で激怒していた。
せっかくサモン・サーバントで見事なゴーレムを召還したかと思ったら、変な平民まで現
れて、その結果、コントラクト・サーバントがお流れになってしまった。先生も儀式の結
果は留意として、その平民が目を覚ますまでお流れになってしまった。自分は何も出来な
いでいて、そのまま結局帰る羽目になってしまった。

あの後は散々だった。隣の部屋の宿敵にはからかわれるし、今日廊下ですれ違った他の生
徒たちには

「何嫌なもの見せてくれたんだ!ゼロのルイズ!」

と、馬鹿にされたのだ。自分はあんたらよりも凄い使い魔を召還したというのに!
この時ルイズに見えていたのは、大事なのはあのゴーレムと魔法の成功、そして使い魔の
儀式のみ。あの平民がどうなろうと知ったことではなかったし、それがトリスティンでは
普通のことであったからだ。

さて、自室で一日中うんぬん唸っていたルイズ。そこに部屋のドアがノックされる。いら
いらしながら相手が誰か尋ねてみると、やってきたのはオスマンの秘書のロングビルだっ
た。あわててドアを開けて用件を尋ねる。

「ミス・ヴァリエール。あなたの召還したゴーレムと平民の件について、オールド・オス
マンがあなたに話があるそうです」

――――来た!

ルイズは内心小躍りしながら、表面上は平静を装いつつ「はい、わかりました」と答える。
急いでマントを手に取るとオスマンのところへ向かうロングビルの後をついていく。
廊下を歩きながら、ルイズは胸が高鳴っているのを感じた。ああ、長かった。生まれてか
らずっと魔法が使えない貴族、ということで散々言われてきたが、それも今日で終わりだ。
あのゴーレムを使い魔に出来る。そうすれば自分は「ゼロ」ではなくなる!
オスマンの部屋は塔の最上階近く、宝物庫の上にある。長い階段を上り終えると、いかに
も豪勢な扉が目に入った。オスマンの部屋の扉だ。

「オールド・オスマン。ミス・ヴァリエールをつれてきました」

「ああ、入ってくれ」

扉を開けて、中に入る。豪勢な室内にいたのは、机でお気に入りの水パイプをふかしなが
ら座っているオスマン。その傍らにいるハゲ教師コルベール(なぜか顔面が赤く腫れてい
る。なぜだ?)。そして―――

「お前が私を呼び出したヴァリエールか」

紺色のコートを着た、あの平民――――召還した少女が、こちらを睨んでいた。


「…異世界か、とてもではないが信じられんな」

空には二つの月が昇り、生徒たちどころか教師ですら寝ているような時間であったが、オ
スマンの部屋の住人はまだまだ元気である。

その中の一人であるジナイーダは、オスマンの話を一通り聞いて、先ほどからの自分の憶
測が現実のものとなりつつあり―――それと共に頭痛がいっそうひどくなるのを感じてい
た。

ちなみにこの部屋いるのは机に座るオールド・オスマンと顔を腫らしたコルベール、ジナ
イーダの隣に不機嫌そうにしているルイズである。
退室してもいいとオスマンにいわれたロングビルも此処に残った。理由は彼女も土のメイ
ジとして、ジナイーダのACに興味があるからだそうだ。

彼らからの情報では、ここはハルケギニア。地理的に言うと欧州のような大陸だ。その仲
でハルケギニアは三国に分かれており、ガリア、ゲルマニア、トリスティンが事実上支配
している(ハルケギニアはその中では小国らしい)。
住人は貴族と平民の二つ。基本的に貴族とは魔法が使える連中のことで、通常はメイジ、
と呼ばれる。使えない残りの連中を平民という。
他には、東方の砂漠にいるエルフ。およびあちこちにいる翼人といった「亜人」がいるら
しい。先住魔法という独特の魔法を使うそうだ。ちなみに違いは、杖を使うか自然の精霊
と契約するかだそうだ。ジナイーダは半信半疑で聞いていたが。

話を戻そう。ジナイーダはトリスティン魔法学校の使い魔召還の儀式において彼女の愛機
と共に召還された。そこのピンク少女、ルイズによって。彼らメイジにとって、サモン・
サーバントはこの世界を作った始祖ブリミルによる神聖な儀式のため、呼ばれた使い魔と
は必ず契約しなければならない。ということだ。

だが、これは通常の場合。あの時はゴーレムと共にジナイーダも呼び出された。しかし、
彼女が重症を負っていたためにコルベールは治療を優先。ルイズはさっさとゴーレム…フ
ァシネイターと契約したかったらしいが、同時に二つの使い魔が召還され、さらに片方が
人間ということもあり、私の回復を待って話し合いをしよう。という結論になったそうだ。

「それは、我々にとっても同じです。メイジがおらずに生活が出来て、さらにあんなゴー
レムが多数いる世界など信じられませんな」

コルベールらにしても、メイジの手を借りずに生活したり建物を建造したりACを運用する
など考えもできない。
技術が魔法に固執しているハルケギニアでは生活器具を貴族が制作・加工し、それを平民
が使って食料を生産し、供給するのが普通だ。同時に貴族の力がその国の軍事力であるた
め、貴族中心の世界といってもいい。ジナイーダのいた「平民のみが生活する世界」とは、
次元が違うようだ

ACを使うジナイーダがメイジではなく平民であることも、彼らを驚かせた。もっともこの
世界がメイジ有利に働くと知ったならば彼女は自分をメイジで押し通すつもりでいたが、
その前に「魔法?そんなもの使えるはずがないだろう」と世界観の違いからうっかり喋っ
てしまったためばれてしまっていたのである。彼女は始終これを後悔していた。
ちなみに余計なこと…自分が強化人間であることは伏せておく。無駄に相手に情報を渡す
つもりはさらさらない。それに、特攻兵器のことを話したところで彼らにはわからないで
あろうから黙っていた。

技術屋として興味があるため、さらに質問をしようとするコルベールをオスマンが手で制
する。

「ま、別世界から来たんじゃからお互いの認識の違いもあるじゃろ。自己紹介はここまで
にして、使い魔契約の件について話がしたいんじゃが」

その言葉に今までうつむいていたルイズははっと顔を上げる。なんかややこしい話が続い
ていたが、自分が此処に来たのはそのためでもあるのだ。

ジナイーダははっきり言って使い魔など言語道断であった。レイヴンとは何者にも属さず、
何者にも縛られずに、自由に生きる傭兵であり―――彼女も、そのレイヴンだからだ。自
由を失った時点でそれは死を意味する。それを、無理やり召還して一生を共にする?ブリ
ミルの神聖な儀式?貴族様からみれば聞こえは良いがこれはれっきとした誘拐だ。
さらに、もし使い魔となればこのさっきから敵意を向けているルイズが主人となるという
ことである。話ではどうやら貴族の中でも高貴な一族の末女だそうだがこんな奴に従えば
何をされるかわかったものではない。これならキサラギのAMIDAの飼育係になったほう
がまだいいほうではないか!
しかし…断るには問題もあった。外にいる連中の実力がわからない以上、安易に活動する
のはためらわれる。前の世界でも経験していた傭兵家業をすればいい、と思っていたがフ
ァシネイターが相手の手に渡っているのが非常に痛かった。自分が強化人間であるとはい
え…魔法を使うメイジの実力を過小評価することは死に至る。おまけに戦力となりそうな
ものはACを除けばほとんどない。

さらに、衣食住の問題もある。部屋の問題は別にない、食事もあちらでのサバイバル経験
が生かされるではあろうが、地理条件が全くわからないうえ、外にはモンスターとやらが
いると考えれば、うかつな行動はとるべきではない。前の世界では自分はすでに死んでい
る。とはいえ生きるのを放棄したわけではない。

学園側、主にオスマンとコルベールも、彼女をできれば使い魔にしたがっていた。だが、
コルベールが技術屋としてファシネイターに興味を持っていたため、ゴーレムが使い魔に
なったら一人になってしまうジナイーダに同情したため、そしてルイズの進級のために使
い魔となる事を望んでいたことに対し、オスマンは放って置いたら平民がゴーレム、それ
も強力なのを操ったら貴族の秩序を乱しかねないと考えたからだ。王宮に知れたらそれこ
そ戦争好きの暇をもて余した連中が何が何でも捕まえようとするだろう。
その点、ここで保護すれば、トリスティンの貴族であるヴァリエール家の使い魔として保
護できる。手を出そうにも此処はトリスティン有数の学園だ。無理にでも行動を起こそう
ならそれはこの国の皇女とオスマン、そしてヴァリエール家を敵に回すことになる。
あ、そういえばこの少女の次女だったかな、確かアカデミーに所属していたような…と新
たな問題を思い出しそうになったが、これ以上問題を掘り起こすのはやめようと結論付け
た。ま、あとでどうにかなるじゃろ。

一番の問題であったのは、胡散臭そうな目でジナイーダを見ていたルイズだった。普段の
現状から他の二人に比べて格段に平民ということを見下している彼女は、この女の喋るこ
とを頭から否定していた。
しかし、一人ならどうにか丸め込んでやるものの(本人はそう思っている)、目の前にいる
は教師と学園長である。二人ともこの平民に同情しているみたいだ。そんな女など放って
おけばいいものを!
そのゴーレム…ファシネイターだっけ?と契約できれば御の字であるが、それをこの平民
が許すはずがない。オスマンもコルベールも平民を使い魔にする方向で動いている。これ
を否定するものなら自分は進級できなくなってしまう。

最終的には

ゴーレムを持つ平民を使い魔にする→ゴーレムを好きなように使える→ゴーレムも使い
魔!

と自分を無理やり納得させた。そうでもしなければやっていけない!


結局、ジナイーダがルイズの使い魔になることになってしまった。最も、ジナイーダは情
報を得るための時間を稼ぐための寝床さえ確保できれば、こんな理不尽な契約など反故に
するつもりでいたが。

「それでは、コントラクト・サーバントをしてください。」

「コントラクト・サーバント?」

何だそれは?書類上の手続きで終わりではないのか?
ジナイーダは、ここが自分のいた世界ではなく、ファンタジーであるということを認識し
ていたが、まだよく理解できていなかった。それが、この後の悲劇を生み出すこととなる。
少し混乱していると、ルイズがつかつかとこちらに近づいてきた。ジナイーダのほうが圧
倒的に背が高いため、上目遣いで見ている。

「頭、下げなさいよ」

ぼそり、とルイズがつぶやく。頭に?マークを浮かべながら顔が届く程度まで下げる。
と、ルイズが目の前に顔を近づけた。

「…感謝しなさいよね。本当は貴族とこんなことするなんて、一生ないんだから。」

なぜか顔をしかめている…ルイズは、なにやら呪文を唱えると、いきなり顔を、もっと近
づけて―――――

唇を、重ねた。

しばらく、沈黙が続く。

パァン!と軽快な音が響いた。ジナイーダが離れたルイズの頬を叩いたのだ。本気を出し
ていない女でもレイヴン、強化人間。叩かれたルイズは回転しつつ床に倒れこんだ。

「―――――い、痛い!何すんのよ!」

「……契約のためとはいえ、いきなりキスをするとはいい度胸だ。お前は私の話を聞いて
いなかったのか?」

すさまじい形相でルイズを睨みつけるジナイーダ。微妙に涙目である。いくらレイヴンと
いえども、やはり乙女。せっかくのファーストキスを取られたのは微妙にショックだった。
むしろグーで殴らなかっただけでも感謝するべきだ。

対する床に倒れたルイズ。こっちはもっと涙目である。はたかれたという心への衝撃もあ
るし、しかもむちゃくちゃ痛い。

「もう、なんであんたみたいなやつが私の使い魔なのよ!もう、知らない。知らない!」

先ほどの平手打ちで我慢が限界に着たのか、ルイズは勢いをつけて扉を開くと、大またで
自分の部屋へずんずんと進んでいる。背後からすさまじいオーラがにじみ出ている。

「どれどれ、儀式はうまくいきましたな、少しお手を拝見…う!?」

いきなり、そう突然に、コルベールはジナイーダに首をつかまれた。成人男性の体重など
ものともせず、少女がそのままゆっくりと上へ上げていく。

「……どうやら貴様はレディーへの対応も知らないようだな?私が平民だからか?話を聞
いてないなら、今此処でわからせてやる」

ぐっ、と首に力が入る。頚動脈を押さえ、呼吸できないようにしているあたり、シエスタ
のときより本気だ。というか、このまま殺すつもりだ。

ああ、すんごい怒ってます。視線で人を殺せます。でも、なんでこんな目にあうんでしょ
うか?私なにかしましたかー!?
さすがコルベール。どの平行世界でも勝手に呼ばれた人々に召還を進めた男であり、本当
に空気の読めない男であった。

助けてくれ、とコルベールが部屋にいる二人に視線を向ける。
オスマンは召還の担当はコルベールなんだから、わしゃ何も知らんぞい。すべてはお前の
責任じゃ。という顔で鼻毛を取っていた。責任転嫁である。
ロングビルは、残念ながら女であった。冷たい目で、むしろコルベールを少し敵意を含ん
だ目で見つめている。すべての女性を代表して貴様を許さない!と言っているような顔で。
あ、はげ頭が真っ白になってきた。

「…ふん。二度目はないと思え」

顔が真っ白になってきたあたりで、ようやく気が済んだのか、ジナイーダはコルベールの
首から手を離した。
どさりと身体が崩れ落ち、咳き込むコルベール。それを生ごみを見るような目で見つめる
ジナイーダ、いやもう一人いる。
机の上では相変わらずオスマンが鼻毛―――

「ふむ、かわったルーンじゃの。どれどれ」

オスマンが、勝手にルーンを確認しスケッチしていた。オールド・オスマン!それは私の
役割ですぞ!

「これに強制力はあるのか?」

「ン…普通なら精神的服従を促す効果があるんじゃが、お前さんのような「自我」が強い
者や高等な使い魔にはルーンの力が働かんのよ。今日の生徒にもドラゴンを召還した生徒
がおったが、彼女は実力で使い魔を従えておったしの。現に、お前さんは今までどおりの
ようじゃしな」

重要なことだが、オスマンはジナイーダに強制力が働かないと思っていたらしく、言わな
かったようだ。ルイズは逆に考えていたが。結果的にオスマンの作戦勝ちである。

「…なるべく前者のほうでありたいものだ」

あんな小娘が私よりも実力が上など…考えたくもない。これでもレイヴンとして最後まで
生き残ったほうなのだから。それなりの実力は持っているつもりである。

床では、コルベールがまだうめいていた。しかし誰も助けるものはいなかった。


騒動が終わった後、ルイズはというともうはるか向こうに行ってしまっていた。後を追お
うとした帰り際、オスマンはジナイーダを呼び止めた。今度は何だと彼女が振り返ると、
オスマンは笑顔でこう答えた。

「しかし、ミス・ジナイーダ。君は本当にいい尻をしとるのお。そんな味気ないパンティ
ーでは勿体ない。黒を履けばいいと思うんじゃが」


…………………………………

「ご忠告どうも、オールド・オスマン。これからの参考にさせていただく」

ジナイーダは信じられないスピードでオスマンに接近、顔面にドロップキックを食らわせ
た。直撃をうけたオスマンは吹っ飛び、窓ガラスに激突。血だらけの屍と化した。

このジジイ、さっきまでの雰囲気はどうした!ちょっとは自重しろ!  By ロングビル

今日最後の仕事をし終えたジナイーダはまさかあの白鼠が手先だったとは…今後は注意す
べきだな、と舌打ちしながらルイズの後を追っていった。

だが、どうやってズボンの中を覗くことが出来たのか?それは、オスマンの使い魔のみが
知っている。

夜は、まだまだ終わらない。


新着情報

取得中です。