あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの使い魔はメイド-01


 「――あんた、誰?」
 ルイズがそう訪ねても、即答はなかった。
 地味な衣服を着たその少女は、粗末げなカバンを抱えて地面に座りこんでいた。
 黒に近い濃い目というか暗目の褐色のおかっぱに、同じような色合いの瞳。
 明らかに平民と見えるその少女は目をそのつぶらな瞳を見開いて、口をぱくぱくさせている。
 自分の現状がまだ理解できていないらしい。
 「ちょっと、返事しなさいよ!」
 ルイズがきつい口調で叫ぶと、少女はびくりと震える。
 平民だ、平民だと囃すまわりが鬱陶しい。
 「まあ、まあ、ミス・ヴァリエール」
 コルベールがルイズをなだめる。
 「彼女もいきなり召喚されて驚いているのでしょう。それよりも、早速契約のほうを」
 「コルベール先生、やりなおしをさせてください! いくら何でも平民の女の子なんて……」
 「それはできません。サモン・サーヴァントは神聖なものです。勉学熱心なあなたならご存知のはずですよ? ミス・ヴァリエール」
 「……」
 そう言われては、ルイズにはどうしようもなかった。
 憤然としながらも、ずかずかと少女に近づいていく。
 「光栄に思いなさいよ……。貴族にこんなことされるなんて、二度とないんだから」
 ルイズはコルベールにせっつかれてやむを得ず、少女とコントラクト・サーヴァント、すなわち契約のキスをする。
 ルイズからすれば、召喚した人間でしかも平民というのは多いに不満だったが、とりあえず変な化け物や生理的に受けつけないタイプの男ではなかったということでよしとした。
 強引によしとした。
 「!!」
 いきなり同性にキスされた少女はそれはもう面食らいまくり、ちょっと涙さえ浮かべていた。
 (な、なによう! まるで私が襲ったみたいじゃない……!!)
 罪悪感と同時に、自分が何かキモい生き物扱いされているようで、ルイズはちょっと傷ついた。
 と、少女は右手を抑えて気絶してしまった。
 多分ルーンを刻まれたショックのせいだろう。
 コルベールは、おや変わったルーンですねと少女の右手を見てルーンをスケッチしている。
 少しは自重しろ、このハゲ。
 ルイズは心の中で毒づいた。

 「……で、あんたはその『いぎりす』とかいう国からきたのね?」
 夜。
 ルイズは部屋で少女と話していた。
 何でも、メイド募集の広告を手に雇い主の家を訪ねたところ、留守だったので玄関先で待っていたところ、目の前に変な鏡のようなものが出てきた――のだそうだ。
 他に何があろう、召喚のゲート。
 何か思って触ってみると、気が遠くなり、気がつけばここにいた、と少女は控えめな口調で語った。
 年を尋ねたところ、
 「十三歳です」
 と、答えた。
 「ふーん。私より三つ下なのね」
 ルイズが言うと、少女は意外そうな顔をした。
 ふんだ、どうせ私は幼児体型よ、つーかあんたよりは女らしい体だっての。
 ルイズは密かに天敵の赤毛娘が聞いたら爆笑しそうなことを考える。
 話をすると、どうもとんでもないど田舎からきたらしい。
 イギリスの他に、フランスだのドイツだの、わけのわからん地名ばかり出てくる。
 デンキがどうの、レッシャがどうのとおかしな単語も。
 新聞の切り抜きとかいう紙切れを見たところ、得体の知れない文字が並んでいた。
 カバンの中身も改めたが、着替えの衣類とかそんなものだけで、特に目を引くようなものはなかった。
 メイジのことを話しても、
 「ま、魔法使い?」
 きょとんとした顔。
 話を聞くうちに、ルイズは泣きたくなってきた。
 魔法も知らない超のつくほどの田舎者の平民。
 感覚の共有はできないし、秘薬の材料を探す……のも、無理だろう。
 主人の護衛なんぞ、聞くまでもない。
 失敗魔法とはいえ爆破を起こせルイズのほうがずっと強いだろう。
 せいぜい雑用、それこそメイドぐらいにしか使えないではないか。
 冗談ではない、メイドなんか十分に間に合っている。

 何がかなしゅうてヴァリエール家の娘が、メイドなんか使い魔に召喚せねばならぬのだ。
 ルイズは頭を抱えそうになりながら、少女を見た。
 十三歳というだけあって、体つきも未成熟、特に胸はルイズに親近感を抱かせる。
 ルイズは、困った。
 これが、たとえば貴族を貴族とも思わぬようななめくさった態度をとる輩であれば鞭をくれてやるところだが、目の前の少女は田舎者とはいえ、貴族への礼儀もわきまえているようだ。
 異国の地にいきなり引っ張ってこられて途方にくれているその様子は、ルイズに怒りよりもむしろ罪悪感を起こさせるものだった。
 (真面目そうだし……悪くはないんだけどねえ…………)
 純粋にメイドとしてならなかなか良さそうだ。
 ちょっと若すぎるのが気にならないでもないが。
 しかし、使い魔として大外れもいいところである。
 ルイズは溜め息をつく。
 「その……悪かったわね。召喚なんかしちゃったりして……」
 つい、ぽろりとそんな言葉が出てしまった。
 発言の後、ルイズは自分の顔を手の平で覆う。
 ああああああ。
 何でメイジで貴族の自分が、平民で使い魔に謝らなくちゃいかんのだ。
 ルイズは内心頭を抱えて怒鳴りたい気分だった。
 一方、少女のほうはかすかに笑みを浮かべて、
 「いえ……別に、心配する人もいませんし」
 そう言った。
 「いないって、親は?」
 「もとから、いません」
 「……」
 気まずい。
 ルイズは冷や汗をかく。
 何か、これ以上聞いてはいけないような予感がする。
 「ま、まあ、いいわ」
 ルイズは咳払いをしながら、できるだけ威厳をこめて言う。
 「とりあえず、あんたには私の使い魔……としては使えそうにないし、専属メイドってことにするわ。あんた、メイドの経験は?」
 「前のおうちで少し……」
 前のおうち?
 またしても深く聞かないほうがよさそうな言葉。
 深く聞くな、ルイズの本能が危険を報せる。
 「……と、とにかく! 今日はもう寝るわ。明日は、ちゃんと起こしなさいよ? メイドなんだから」
 ルイズはそう言って、ツンとそっぽを向いた。
 「あ……そういえば、あんた名前は?」
 「シャーリー・メディスンです」
 「しゃーりーめでぃすん? 長い名前ね、平民のくせに」
 「あの……メディスンは苗字です」
 「へ? 平民なのに、家名があるの? 変わったとこねー、イギリスって……」
 ルイズがそう言うと、シャーリーは困ったように微笑んだ。

 なんやかんやで翌日。
 日の出前、床で毛布にくるまっていたシャーリーはむくりと起き上がった。
 まだ夢の中であるルイズの様子をそっとうかがった後、洗濯籠を抱えて、静かに部屋を出ていく。
 ルイズから洗濯をしておけと命じられている。
 目指す場所は水汲み場なのだが、何分はじめての場所、おまけに異国なので勝手がわからない。
 ここには、水道なんてものはなさそうだ。
 あっちこっちをうろうろするが、なかなか見つからない。
 歩きながら溜め息をついていると、
 「ちゅうちゅう……」
 足元を、ハツカネズミがうろうろしている。
 「きゃ……ッ!」
 ハツカネズミは物珍しそうに後ろ足で立ち上がり、シャーリーを見つめていた。
 「……」
 しばらく見つめあった後、
 「ちゅう」
 不意にハツカネズミはついてこい、というような動作をした。
 シャーリーは困惑するも、何となくハツカネズミの後をついていく。

 すると目の前に、どうやら洗濯をするらしき場所・水汲み場が見えてきたではないか。
 (ひょっとして、案内してくれた?)
 シャーリーがハツカネズミを見ると、
 「なあに、礼にはおよばねえよ」
 というような仕草をして、ハツカネズミは走り去ってしまった。
 「……」
 ハツカネズミを見送りながら、
 (さすが魔法の国……)
 シャーリーは妙なところで感心していた。

 しばらく水汲み場で洗濯をしていると。
 「あら?」
 誰かが近づいてきた。
 黒い髪をしたメイドである。
 「あなた新人? でも、そんな格好で……」
 「あの、私はヴァリエール様の……」
 「ああ」
 て、メイドは気がついたように、
 「ミス・ヴァリエールの召喚したっていう、平民の使い魔……」
 「…………」
 「私は、シエスタ。この学院でご奉仕しているの」
 「シャーリー……です」
 シャーリーも名前を名乗る。
 メディスンという姓は言わずに飲みこんだ。
 この国では、平民には姓はないようなので、いちいち説明するのも煩わしい。
 「そう、シャーリー。困ったことがあったら、いつでも言ってね? 同じ平民同士助け合わないと」
 シエスタはにこりと笑って言った。
 「はい。よろしく、おねがいします」
 シャーリーは控えめにうなずいた。
 シエスタのシャーリーに対する第一印象は、
 (……おとなしい子)
 ついで、
 (無口な子)
 だった。
 シャーリーが洗濯を終え、ルイズの部屋に戻ると、部屋の主はまだ夢の中だった。
 桃色ブロンドのご主人様はまだまだすぴーすぴーと寝息をたてている。
 シャーリーはそっと部屋のカーテンを開ける。
 朝の光がさしこみ、それを受けてルイズは、
 「ううーん……」
 身をよじる。
 「……おはようございます」
 声をかけられ、ルイズはもそもそと起き上がる。
 「ふぁ….。おはよう……」
 ルイズはあくびをして、
 「服」
 シャーリーが椅子の上のマントと制服を持っていくと、
 「見慣れない顔ね、あんた新人?」
 寝ぼけ頭のルイズはシエスタと同じようなことを言った。
 「え、あの……」
 「ああ。使い魔……。昨日、召喚したんだっけ」
 ルイズは髪の毛をかきあげながら、
 「下着。そこのクローゼットの一番下……」
 「はい」
 「着せて」
 シャーリーはちょっと不慣れな手つきながら、着替えを手伝う。
 着替えの後は櫛を持たせて髪をとかせる。
 なかなか上手で、ルイズは起きたばかりなのにまた軽い眠気を覚え、あくびを一つ。
 「さてと」
 着替えが終わり、ルイズはひょいと立ち上がった。

 その時、ドアがノックされる。
 「……? シャーリー、ちょっと出て」
 ルイズは内心嫌な予感を覚えながら、そう命じた。
 シャーリーは言われたまま、ドアを開ける。
 「はい。どちら……」
 そこまで言ってから、シャーリーは絶句し、ドアの向こうを見つめていた。
 一、二秒後。
 「…………ッきゃあーーー!!」
 悲鳴をあげた。
 「ど、どうしたの!?」
 シャーリーは腰を抜かして、床にへたりこんでいる。
 ドアの向こうには、真っ赤な色をした大きなトカゲ。
 「サラマンダー!?」
 サラマンダーはのそのそと部屋に入りこみ、脅えるシャーリーに近づいていく。
 「ひっ……」
 いきなり現れた虎ほどもある大トカゲに、シャーリーは完全に脅えていた。
 「ちょっと、何よこいつ!」
 ルイズは杖を構えてシャーリーをかばうようにサラマンダーの前に立ちはだかる。
 すると、
 「フレイム、ダメよ勝手に」
 サラマンダーに続き、赤い髪をした女が部屋に入ってくる。
 「キュルケ、こいつあんたの使い魔ね?!」
 「そうよ、火竜山脈のサラマンダー。素敵でしょう」
 キュルケはその豊かなバストをさらに強調するように、胸を張って言った。
 「ふん! いくらサラマンダーでも、しつけもろくにできない主人の下じゃブタに真珠ね。いきなり女の子を脅かすなんて主人に似ていい性格だこと!!」
 「あら、ご挨拶ね」
 キュルケはふふんとルイズの罵声を流して、シャーリーを見る。
 シャーリーはいきなりサラマンダーにせまられたショックでなかなか立てないでいる。
 フレイムはまだシャーリーを見ていた。
 その瞳にあるのは、敵意や害意ではなくて、好意。
 (フレイムがいきなりなついてる? まさかねえ……)
 キュルケは心中の疑問をおくびにも表に出さずに、
 「あっははは! ホントに人間なのねー!? さすがはゼロのルイズ、あたしたちにはできないことをさらりとやってくれるわ!!」
 いつものようにルイズをからかった。
 「うるっさい! シャーリーが怖がってるじゃないの!? 早くそのバカトカゲ部屋から出しなさいよ!!」
 「へえ、シャーリーって言うの?」
 またシャーリーを見て、
 (やっぱり、ただの平民よねえ……? ゼロのルイズの使い魔なんだから、もっと面白いかと思ってたのに)
 首をかしげた。



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