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神様がいるとしたら――そいつはどうしようもねぇ根性ワルだ
一度死んだ男に、また
恥を掻く場所を与えようとしてやがる
一度死んだ男に、また
恥を掻く場所を与えようとしてやがる
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蒼狼の使い魔 第一話
トリステイン魔法学院、春の使い魔召還の儀。
ひとりを除く全ての生徒が使い魔の召還に成功し、その残る1人の女性徒の召還を嘲りながら見守っていた。
彼女――ルイズは何度も杖を振って呪文を唱えた、が結果は爆発が巻き起こるだけ
そのたびに嘲笑と罵声がルイズに向かって容赦なく降りかかる。
何度も繰り返される失敗と嘲笑にみかねた教師が彼女に声をかける。
ひとりを除く全ての生徒が使い魔の召還に成功し、その残る1人の女性徒の召還を嘲りながら見守っていた。
彼女――ルイズは何度も杖を振って呪文を唱えた、が結果は爆発が巻き起こるだけ
そのたびに嘲笑と罵声がルイズに向かって容赦なく降りかかる。
何度も繰り返される失敗と嘲笑にみかねた教師が彼女に声をかける。
「ミス・ヴァリエール、集中が乱れています。今日はもうやめにして明日に…」
「お願いです、あと、あと一回だけやらせてください!」
「お願いです、あと、あと一回だけやらせてください!」
ルイズの切実かつ必死の懇願に教師――コルベールはあと一回ですよと念を押した。
コルベールとてメイジとしての勉強に誰よりも熱心で誠実なルイズを嫌いなわけではない。
ただこうも失敗するとどうにも才能だの才覚だのという言葉が頭をよぎってしまう
だが、そんな考えは恥ずべきと頭で打ち消し、ただ彼女の姿を見守る。
すぅっ、と目の前の少女が深呼吸をし、息を調えて杖を振るうのをただ見守る。
コルベールとてメイジとしての勉強に誰よりも熱心で誠実なルイズを嫌いなわけではない。
ただこうも失敗するとどうにも才能だの才覚だのという言葉が頭をよぎってしまう
だが、そんな考えは恥ずべきと頭で打ち消し、ただ彼女の姿を見守る。
すぅっ、と目の前の少女が深呼吸をし、息を調えて杖を振るうのをただ見守る。
(がんばりなさい、ルイズ)
呪文が静かに、一言一言強く祈りをこめて唱えられる。
何でもいい、ドラゴンやグリフォンみたいな強力な生物じゃなくてもいい
贅沢もいいません、ただ、ただわたしの為に、わたしの為だけにここに来てくれるもの
今ならどんなものだって受け入れてあげる。そしてできるなら私を支えて欲しい
だからお願い、つぎこそは つぎに進みたいから
贅沢もいいません、ただ、ただわたしの為に、わたしの為だけにここに来てくれるもの
今ならどんなものだって受け入れてあげる。そしてできるなら私を支えて欲しい
だからお願い、つぎこそは つぎに進みたいから
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
白い光が満ちたあと、今までにない爆発が黒煙を巻き上げた。
じっとルイズは注視する。失敗か?成功か?
じっとルイズは注視する。失敗か?成功か?
草原にたたずむ誰もが見守るなか、煙の中で何かが蒼く光った。
――風が心地いい
こんな気持ちのいい風を感じたのは何年ぶりだろう
雲ひとつない青空に、横切る鳥の群れ
ざわざわと頬を撫ぜる草の感触。
雲ひとつない青空に、横切る鳥の群れ
ざわざわと頬を撫ぜる草の感触。
(ここは天国か?)
何故かもうもうと巻き上がる煙を眺めながら男は考える。
(俺は生まれてこのかた地獄行きだと思ったんだがな)
体は動かせなかった、当然だろう。俺は己の全存在を賭して負けたのだ。
あの男――ビヨンド・ザ・グレイヴに、ブランドン・ヒートに
幾多もの銃弾を短時間に浴び、自己修復機能も処理をしきれずにパンクしている。
蒼く燐光を発する血がとめどなく流れ大地を汚している。
致死量を越える出血、それにくわえての修復機能の停止、
「機能停止」寸前――と、ここで男はいぶかしむ
あの男――ビヨンド・ザ・グレイヴに、ブランドン・ヒートに
幾多もの銃弾を短時間に浴び、自己修復機能も処理をしきれずにパンクしている。
蒼く燐光を発する血がとめどなく流れ大地を汚している。
致死量を越える出血、それにくわえての修復機能の停止、
「機能停止」寸前――と、ここで男はいぶかしむ
(なんで俺は天国まで来て死にかけてやがんだ?)
と、その疑問に応える声、ではなく誰かの叫ぶ声が聞こえた
大きな足音とそれより一回り小さい足音がこちらに慌てながら駆け寄ってくる。
体が揺すられた、誰かが酷く狼狽して泣き叫んでいる。
誰だろう、こんな浅ましく愚かな俺をそんなに悼んでいるのは
なんとか動く片目で、気配の正体を視る。
大きな足音とそれより一回り小さい足音がこちらに慌てながら駆け寄ってくる。
体が揺すられた、誰かが酷く狼狽して泣き叫んでいる。
誰だろう、こんな浅ましく愚かな俺をそんなに悼んでいるのは
なんとか動く片目で、気配の正体を視る。
(誰だろう、誰かに似ているな、誰だったか)
ぼやける視界の中に桃色の髪の少女が居た
幼い、と感じるその童顔をくしゃくしゃに歪ませている。
ぽつりと頬に温かいものを感じた。熱い液体、涙だ。
泣いているのか?この俺のために、どうして
こんな犬畜生になんの義理があってそんなに悲しんでいるのか
おまえは誰だ?誰か答えてくれ
幼い、と感じるその童顔をくしゃくしゃに歪ませている。
ぽつりと頬に温かいものを感じた。熱い液体、涙だ。
泣いているのか?この俺のために、どうして
こんな犬畜生になんの義理があってそんなに悲しんでいるのか
おまえは誰だ?誰か答えてくれ
その疑問への回答は誰からも得られず、男の意識は暗転する。
ただ最後に、男は自身のひび割れた顔に柔らかい何かが押し付けられたのを感じていた。
ただ最後に、男は自身のひび割れた顔に柔らかい何かが押し付けられたのを感じていた。
――かくして、ルイズの召還の召還に応えて、ある男がこの世に現れた。
ただ1人の男を越える為、悪魔に身を委ね異形と化した男。
己の全存在を賭して戦い、笑いながら死んだ男。
ただ1人の男を越える為、悪魔に身を委ね異形と化した男。
己の全存在を賭して戦い、笑いながら死んだ男。
その男の名は――九頭文治