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ゼロの豹頭将軍

 私こと、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールが召喚したのは、まさしく異形のものだった。首から下は別に変わりはない。黒塗りの鎧の下にあるその体は、いささか、というかめちゃくちゃ鍛え抜かれていて腕も丸太のように太いという力強い肉体ではあるものの、それでも人間の体であることには違いがなかった。

 しかし、首の上は人間とはまったく違うもの――豹だったのだ。

 魔法が使えず『ゼロ』と馬鹿にされ続けた私で何度も失敗してやっと召喚できたけど、こんな亜人を呼び出してしまうなんて思いもしなかった。それに召喚のあとで少し話を聞くと、亜人が使うような特殊な魔法も使うことができないという。
 私は落胆した。結局私が呼び出したのはただ体が鍛えられているだけの平民と代わりが無いと思ったからだ。

 でも、そんな私の考えは翌日あっさりと覆されることになる。

 なんとこいつは、魔法が使えないにも拘らず、私のクラスメイトのギーシュが繰り出したワルキューレというゴーレムを倒してしまったのだ。それも腰に挿していた剣を使わず、素手で、だ。あまりのことに私も含めたその場にいた人間全員が呆然としてしいたことを覚えている。
 初めは平民だって思い込んでいたから分からなかったのかもしれないけど、一緒に過ごし始めてからだんだんこいつの凄さが分かっていった。

 それからもこいつは私達の常識では考えられないことをしていく。

 フーケという私の国、トリステインを騒がせていた盗賊を捕らえたり、私の婚約者でスクウェアクラスのメイジ、そして祖国の裏切り者ワルドを倒してしまったりと、例を挙げるには枚挙に暇が無い。
 しかもこいつの傍にいると、何か安心できるのだ。それは魔法が使えなくとも何者にも負けない強さと、何でもこなしてしまう頼りがいがあるこいつの傍が安心できるからという理由なのかもしれない。そしてその空気に惹かれてか、豹頭という異形に関わらず、貴族や平民関係なく多くの人間がこいつの周りに集まるようになっていった。

 でも私は初めてそのことに気付いたとき、皆が皆私じゃなくて使い魔ばっかり見ていると思ってしまい、私はへそを曲げて拗ねてしまったことがあった。確かにこの使い魔は凄い。強いし誠実、その上優しいときていて人間として完璧としか言いようが無い。でも、だからこそ自分との差がひどく辛いものに感じてしまった。そして、ついに「何で使い魔のあんたは何でもできて人に好かれて、そんなに強いのよ! ――バケモノの癖に!」って言ってしまった。勿論言ってしまってからものすごく後悔した。いきなり見知らぬ土地に呼び出して、いつもわがままばっかり言ってる自分を助けてくれて、優しくしてくれた。そんなこいつに、こんなひどいことを言ってしまった。
 もう私達の関係は終わりなのだと思った。でも信じられないことに、こいつはそれでも私を許してくれたのだ。そして他の人には言っていないことをこっそりと教えてくれた。自分は『ランドック』と呼ばれた国の追放された王であること。そして追放された先の世界でも一つの場所で王となり、また別の場所で黒竜将軍という将軍をつとめていること――つまり、このハルケギニアではない世界から召喚されたこと。そしてこいつは自分がこのハルケギニアでこうしていることで、前にいた国とそこにいる友と呼べる人間に対して自分は不忠なのではないか、ここにいることで彼等に対して裏切りを働いているのではないか、そしていつか彼等だけでなく、ここにいる人たちでさえも豹頭のせいではなれられてしまうのではないかという不安があったこと。――こいつも悩んだり、苦しんだりしているのは私達と変わらないのだということを。
 それを聞いたとき、ただただこいつのことを何でもできる、完璧なやつだって思い込んでいた私の考えは間違っていたことに気付いた。そして前よりもより近くこいつの存在を感じるようになった。……余談だけど、こいつが私から離れなかった理由はこいつが私を許してくれる優しさがあった以外にもう一つあって、なんでも私みたいに目が離せない女性が好みだからと何事にも動じないこいつには珍しくうろたえたり口ごもったりしながら教えてくれた。私がそれを聞いたときは何それと思ったけど、顔がめちゃくちゃ熱かった。

 そんなこんなをしていくうちに月日が流れて、ついにその日が訪れることになる。

 反乱によって王家が倒れたアルビオンが、その牙をトリステインに向けてきたのだ。当初はその突然さに皆慌てふためくばかりで、何もすることができなかった。やっと軍を動かせた時点でもう敵はトリステインに侵入していて、もうなす術は無いかと思われていた、そのときだった。

 戦いのさなか、突然敵の横から兵が平民で構成されている軍が現れたのだ。

 私はその時、幼馴染ということで姫様を安心させるために傍に控えていて、そのときは何が起こったのかと思ったけど、すぐにだれがこれをしてくれたのかということに気付いて笑みを口に上らせた。
 突然の奇襲、その上上空の敵に対する備えもしていた彼等に押されていくアルビオン軍。そして私は見る。デルフリンガーを振るい、片手を上げて軍を指揮する一人の超戦士を。
 私は思う。これからもあいつを見ていたいと。
 あいつは次に何をしてくれるのだろうと思うとわくわくする。そう、まるで一つの英雄譚を見ているかのように。
 いつかは帰ってしまうその日まで、これからもあいつは英雄譚を作り上げていくだろう。でもあいつがいなくなったとしてもその軌跡は豹頭という異形に関係なく、サーガとして決して忘れられることなく語り継がれる。そう、


 グイン・サーガとして――

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