「やめて、返してぇぇぇぇぇ!」
「グワッハッハッハ! 遠慮はいらぬぞ小娘、真っ白になるまで洗ってくれるでな!」
「あんたがそれを持って寮内を爆走するのが嫌なのよー! 返せぇぇぇぇ!」
「グワッハッハッハ! 遠慮はいらぬぞ小娘、真っ白になるまで洗ってくれるでな!」
「あんたがそれを持って寮内を爆走するのが嫌なのよー! 返せぇぇぇぇ!」
朝も早くから、ルイズはマーラを追って寮内を走り回っていた。
明け方まで眠れなかったルイズは、ようやくうとうとし始めたところでマーラに昨日脱いだ下着を奪われてしまったのだ。
奴はその下着を頭に載せて、廊下を走り回っている。
この魔王にも手はあるのでそこに持てばよさそうなものだが、何故そんな場所に……被っているのか。
下着にゴム素材が使われているからだろうか?
明け方まで眠れなかったルイズは、ようやくうとうとし始めたところでマーラに昨日脱いだ下着を奪われてしまったのだ。
奴はその下着を頭に載せて、廊下を走り回っている。
この魔王にも手はあるのでそこに持てばよさそうなものだが、何故そんな場所に……被っているのか。
下着にゴム素材が使われているからだろうか?
「いやぁぁぁぁぁ! そんな姿で! 私のぱんつ被って走り回るなぁぁぁぁ!
「こっちの方が持ちやすいでな! さあ洗い場はどこかのう!」
「やめろぉぉぉぉぉ!」
「こっちの方が持ちやすいでな! さあ洗い場はどこかのう!」
「やめろぉぉぉぉぉ!」
マーラが頭にルイズのパンツを被って寮を暴走する。
その悪夢のような姿を見た友人のキュルケなどは、馬鹿にする以前に最早唖然として……
その悪夢のような姿を見た友人のキュルケなどは、馬鹿にする以前に最早唖然として……
「ルイズ、貴方……そんなモノを使い魔だなんて……」
「ツェルプストーは黙ってて! とにかくもう、マーラァァァァ!
止まりなさいよぉぉぉぉぉぉ……!」
「ツェルプストーは黙ってて! とにかくもう、マーラァァァァ!
止まりなさいよぉぉぉぉぉぉ……!」
駆け抜けていった一人と一体を見送りながら、キュルケは不思議と体中に熱が入るのを感じていた。
「凄い……あんなセクシーな使い魔、見たことがないわ。フレイム、貴方はどう?」
己の使い魔を持ち上げて、そう聞いてみる。
サラマンダーは、口をぽかんと開けたまま首を振った。
サラマンダーは、口をぽかんと開けたまま首を振った。
「そうね、あんなのどこにもいないわ。このハルケギニアのどこを探したって……ああ。
これはもう、微熱なんてものじゃない。女の本能を打ち抜かれた……わね。
ルイズ、やっぱり貴方はモノが違う……」
これはもう、微熱なんてものじゃない。女の本能を打ち抜かれた……わね。
ルイズ、やっぱり貴方はモノが違う……」
うっとりとした顔のまま、キュルケはマーラが走っていった方向を見続けていた。
あまりにもご立派なその姿に、魂を震わせていたのである。
実に始末が悪い。
あまりにもご立派なその姿に、魂を震わせていたのである。
実に始末が悪い。
「マ、マーラの奴、ど、どど、どこに、行ったのよ」
結局マーラを見失ってしまったルイズは廊下の隅でへたりこんでいた。
あんな大きなモノを見失うのもおかしな話だが、ただ、ルイズにとってあんなモノをあまり眺めたくない、という心理があったのも確かだ。
男性なら、毎日見慣れている姿でもあるにはあるのだが。……まあ男性でもあんなもんまじまじと見たくないだろうが。
あんな大きなモノを見失うのもおかしな話だが、ただ、ルイズにとってあんなモノをあまり眺めたくない、という心理があったのも確かだ。
男性なら、毎日見慣れている姿でもあるにはあるのだが。……まあ男性でもあんなもんまじまじと見たくないだろうが。
「とにかく……一刻も早く私のパンツを取り返さないと……
あんなのに洗われちゃったら、もう二度とはけないどころか……」
あんなのに洗われちゃったら、もう二度とはけないどころか……」
あんなモノに下着を洗われてしまう女。
それは、もう、なんだ。貴族どころか人として終わりそうな気がしてならない。
それは、もう、なんだ。貴族どころか人として終わりそうな気がしてならない。
「わ、私の人生のためになんとしても……」
そこで、ルイズは周囲の気配に気がついた。
朝っぱらから大声で走り回っていたせいか、非常に沢山の人々が部屋から出てきている。
そして、あられもない夜着姿のルイズを、不気味そうに眺めているのだ。
朝っぱらから大声で走り回っていたせいか、非常に沢山の人々が部屋から出てきている。
そして、あられもない夜着姿のルイズを、不気味そうに眺めているのだ。
「何よ。文句でもあるの?」
みんな、ぶんぶんと首を振った。
寝不足の上、鬼気迫る表情をしていたルイズの迫力は、なまじの貴族をして怯えさせる効果があったのだろう。
寝不足の上、鬼気迫る表情をしていたルイズの迫力は、なまじの貴族をして怯えさせる効果があったのだろう。
「マーラ……逃がさないわよ、あのチ……卑猥な使い魔……」
このように寝不足は非常によくない。
言動が下品になるし、冷静な判断力もなくなるので、なるべくよく寝るよう心がけましょう。
言動が下品になるし、冷静な判断力もなくなるので、なるべくよく寝るよう心がけましょう。
一方その頃、見事ルイズをまいたマーラは悠然と洗い場に向かっていた。
「さて騒がしい小娘もまいたことじゃ。さっさと片付けてしまいたいが、細かい位置となるとどうも……む?」
前方にはメイドが一人。
手頃な生贄だとばかりに、マーラは触手の一本を伸ばして彼女の肩を叩いた。
とん、とん、と叩かれて、メイドは振り返ろうとしたが。
手頃な生贄だとばかりに、マーラは触手の一本を伸ばして彼女の肩を叩いた。
とん、とん、と叩かれて、メイドは振り返ろうとしたが。
「…………!」
そこにいたのは。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」
「ちと尋ねたいことがあるんじゃがな。時に……」
「い……」
「ちと尋ねたいことがあるんじゃがな。時に……」
「い……」
振り向けば、そこには視界の全てを覆いつくすほどの、巨大なアレが。
「いやあああああああああああああああ!」
「ふむ……」
「ふむ……」
マーラは慣れた様子で、絶叫するメイドをまじまじと見つめる。
その仕草が更に、その、アレにまじまじと見つめられるというのが地獄というかなんというかで。
その仕草が更に、その、アレにまじまじと見つめられるというのが地獄というかなんというかで。
「いや、いや、いやあああああああ!」
命の危機は第一で、他にも貞操だとか、色々沢山の危機からメイドことシエスタは絶叫し続ける。
「やれやれ。騒がしいのう」
シエスタは、ここまで来ても気絶しない自分に少しだけ誇りすら持ちながら、絶叫を続ける。
するとマーラは、頭を軽く振ってみせた。
ぶるんぶるんと震えるマーラの頭の、その先からもやもやとしたものが出てくる。
するとマーラは、頭を軽く振ってみせた。
ぶるんぶるんと震えるマーラの頭の、その先からもやもやとしたものが出てくる。
「ひっ……!」
そのもやもやとしたものはシエスタにまとわりつき、今度こそ気絶すると思った彼女の中に入り込んできた。
「きゃあああああ! あ、あ……あ、あれ……?」
もやもやとしたものが入り込んでくると同時に、不思議と心が静まってくる。
それどころか、目の前のアレが、なんだか親しみのあるものにさえ見えてきた。
緑色でぷるぷるしているだなんて、まあ、とっても可愛い。
それどころか、目の前のアレが、なんだか親しみのあるものにさえ見えてきた。
緑色でぷるぷるしているだなんて、まあ、とっても可愛い。
「あ……ああ。あの、急に騒いだりしてすみませんでした」
「構わんわな。そんなことより聞きたいことがあるんじゃが」
「なんでしょう?」
「構わんわな。そんなことより聞きたいことがあるんじゃが」
「なんでしょう?」
にこやかな笑顔も浮かべられる程だ。
シエスタは、自分でも不思議なくらい、このマーラに親近感を抱いていた。
そうよ良く見ればてかてかと艶があって、さわり心地もきっといい。
シエスタは、自分でも不思議なくらい、このマーラに親近感を抱いていた。
そうよ良く見ればてかてかと艶があって、さわり心地もきっといい。
「我が主がな、これを洗濯するようにと言ったのでな。洗いたいんじゃが、場所を知っておるかな」
「はい! ご案内しますね、ご立派な方!」
「はい! ご案内しますね、ご立派な方!」
態度も紳士的で、きっとこの人は凄くいい人。
お友達になれますよね! ええきっとそれはもう確実に。
あはははははははは。
お友達になれますよね! ええきっとそれはもう確実に。
あはははははははは。
……ここで第三者が見ていたら、シエスタの異常に気づいただろう。
すっかり目がラリってしまっているこの姿は、どう見てもおかしいものだ。
これというのも、マーラが発射した誘惑の霧によるものなのだが、生憎ここに助けてくれるメイジはいなかったためこの有様である。
CHARM状態となっているシエスタに明日はあるのか。
すっかり目がラリってしまっているこの姿は、どう見てもおかしいものだ。
これというのも、マーラが発射した誘惑の霧によるものなのだが、生憎ここに助けてくれるメイジはいなかったためこの有様である。
CHARM状態となっているシエスタに明日はあるのか。
「はー……」
とうとうマーラを見つけられなかったルイズは、朝から既にくたくたに疲れた体を引きずって、食堂にやってきた。
とりあえず何かお腹に入れないと、もう一歩も歩けない。
限界を感じながら辛うじて自分の席につくと、もう一度ため息をつく。
とりあえず何かお腹に入れないと、もう一歩も歩けない。
限界を感じながら辛うじて自分の席につくと、もう一度ため息をつく。
「あのぱんつ、気に入ってたのに。捨てなきゃならないのね……」
「勿体無いのう。真っ白に磨いてやったというに」
「勿体無いのう。真っ白に磨いてやったというに」
ぎこちない動きで首を横に向けると、床の上にマーラがそびえ立っている。
いつも嫌なところにそそり立っているのねと、ルイズは心から絶望した。
マーラが洗濯の後、ずっとCHARMしたままのシエスタから朝食の予定を聞きだし、ここに潜んでいたとはルイズは知らない。
いつも嫌なところにそそり立っているのねと、ルイズは心から絶望した。
マーラが洗濯の後、ずっとCHARMしたままのシエスタから朝食の予定を聞きだし、ここに潜んでいたとはルイズは知らない。
「ああそう。揉み洗いとかしたのね?」
「徹底的にやったわな」
「……乾いたらすぐに燃やすわ」
「徹底的にやったわな」
「……乾いたらすぐに燃やすわ」
並べられる豪華な食事を見ても、ルイズの心はちっとも晴れない。
せめて腹いせに、マーラには屈辱でも味わわせてやろうかと、パンを床に落としてみた。
せめて腹いせに、マーラには屈辱でも味わわせてやろうかと、パンを床に落としてみた。
「ほら、朝ごはんよ」
「別にいらんわ。小娘、お主からたっぷりとマグネタイトを頂いておるからのう」
「マグ……何? え? 私から頂いてるって何を?」
「別にいらんわ。小娘、お主からたっぷりとマグネタイトを頂いておるからのう」
「マグ……何? え? 私から頂いてるって何を?」
マーラはゆらゆらと揺れるばかりで、それには答えようとしない。
それがルイズにはますます気味悪く思えたが、とにかく腹ごしらえをしようと朝食にかぶりついた。
なるべく、視界の片隅で揺れているアレが見えないように気を使いながら。
それがルイズにはますます気味悪く思えたが、とにかく腹ごしらえをしようと朝食にかぶりついた。
なるべく、視界の片隅で揺れているアレが見えないように気を使いながら。