あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの軌跡-15


「蠅の王の息吹は満ちて風雷の呼び声とならん!ラグナブラスト!」
「<パテル=マテル>!ダブルバスターキャノン!」

 ルイズとレンは敵陣に吶喊し鬼人のような働きを示した。

 <パテル=マテル>は傷ついていても、その動きは常に比して劣ってはいなかった。近付こうとしたものは一人の例外もなく鉄の巨体に跳ね飛ばされることになった。
 魔法が着弾するたびに機体は軋み、部品が弾け飛んだがそれでも振るう拳に衰えを見せることはなかった。
 <パテル=マテル>が動けばルイズの小さな体に大きなGがかかった。しかし、ルイズの敵兵を見据える目が決して閉じられることはなく、<パテル=マテル>に下す指示は機敏にして正確だった。


 レンの行使したアーツは敵兵の多くを捻じ伏せ、その彼らは潰れた蛙のように地面に這い蹲ることになった。その間も彼女が振るう鎌は休むことなく敵兵の血を吸い続けた。
その幼いながらも整った顔には何条もの傷が赤く走っている。腕にも足にも包帯は巻かれていたし、リボンは右半分が千切れて無くなっている。スカートのフリルは切り刻まれて波打つことはなくなっていた。
 自分の興趣のためではなく、何かを守るために流す血がこんなにも多いのは何故だろうと、レンは多少の疑問を覚えたが、彼女が動きは止めることは許されなかった。

 しかし、ルイズとレンがいくら敵陣を思うままに駆け回っても敵兵の姿は途絶えることがなかった。
 レンのオーブメントのクォーツは既に光を失って久しい。<パテル=マテル>が内蔵していた弾薬も底を付き、二人を包囲する輪は次第に小さくなっていった。


 そして唐突に破局がレンを襲う。
 眼前の敵兵をなぎ払い、背後から振り下ろされる斧をかわしたレンはたたらを踏み、平衡と保つことが出来ずに横転する。
 鋼の体をもち機械制御で活動する<パテル=マテル>より、あくまで人の範疇に居る彼女に限界は早く訪れたようだった。負傷と疲労は誤魔化しようもなくレンを蝕んでいた。

 急いで起き上がろうとしたが、彼女目掛けて放たれた弓の一閃。狙い過たずレンの足を射抜く。
 激痛に左足の力が抜け、再びバランスを失って顔から大地に倒れこんだ。手に持った鎌もその衝撃に手放してしまう。懸命に起き上がろうとしたが、その動作は敵兵の目にも明らかに緩慢で、レンに狙いを定めて幾本もの剣が振りかぶられた。

「レン!」

 助けに向かおうと機体を反転させるルイズ。しかし、背後から放たれた魔法に<パテル=マテル>の体はわずかに揺らぐ。

 そのあまりに致命的な雲耀!

 次の瞬間に起こるであろう惨劇を直視し得ず、ルイズは思わず目を閉じる。
 そのために、聞きたくもないのに彼女の耳は少女の悲鳴を拾い零さぬようにその機能を十全に発揮しようとした。

 だが、ルイズの耳に届いたのは断末魔の声ではなく、どこか懐かしい声が呪文を唱える音だった。



「ファイヤーボール!」
「サンダークラウド!」

 雷が敵兵を貫き、炎がレンを守るようにそそり立つ。見せた一瞬の怯みを逃すことなく、青銅のワルキューレが槍を構えて敵に踊りかかった。
 尚もレンに射掛けようとした射手は突然吹きつけた強風に煽られて、周りの数人を巻き込み吹き飛んでいく。どうにか体勢を立て直した者も、足元から盛り上がった土がゴーレムの形を取るのを見て思わず後ずさった。

「おやおや、この様では<殲滅天使>も形無しじゃのう」
「ホント、全くだらしがないわよ。二人とも」
「…無謀」
「大丈夫ですか?ミス・レン、ミス・ヴァリエール」
「この僕が来たからにはもう安心だ。大船に乗ったつもりで居るといい」

「キュルケ、タバサ、ギーシュ…それにオールド・オスマンにコルベール先生まで…」



ゼロの軌跡

第十五話 トリステイン魔法学院



「どうして…みんなこんなところに…」
「私も忘れないで欲しいわ。ほら、レンっていったわよね。足の治療するわよ」

 モンモランシーが、地面に横たわったまま驚愕の面持ちを崩さないレンを助け起こす。ギーシュがそれに肩を貸して後ろへと下がっていった。

「積もる話は後にせねばなるまいな。まずは目の前の雑兵を追い払うとしようか」

 そう言ってオスマンは偏在を唱える。十以上に増えたオスマン達は一斉に敵兵に魔法を叩きつけた。
 スクウェアの魔法が幾つも折り重なり嵐のように突き進み、道を覆いつくす敵の中に幾本もの空白を作り出す。
 コルベールの生み出した炎は蛇のようにのたうち敵兵に噛み付いた。ロングビルは杖を振るいゴーレムを操る。その堅牢な守りは敵の攻撃を一つたりとも通しはしなかった。

「ここはわしらに任せて下がりなさい。…何を心配そうな顔をしておる。わしはトリステイン魔法学院院長、<四大>のオスマンじゃぞ」



 なみいる敵兵を追い払い、悠々と村に戻ってきたオスマンらは未だ呆然としたままいるルイズとレンを見て大きく破顔した。
 それに気を取り戻したか、立ち直ったルイズが疑問を浴びせる。

「どうしてみんなここに来たのよ!?」
「シエスタが他のメイドに手紙を出していてね。それでルイズ達がここに居るって知ったのよ」

 キュルケの答えに疑問の一角は氷解したが、それは無論ルイズの求めた返答とは些かずれていた。キュルケに業を煮やし、語気も荒く問い直す。

「キュルケ、あなたゲルマニア人でしょう。他国の戦争に介入していい立場だと思ってるの?」
「私一人が加わったところで黙ってればわかりゃしないわよ。知らぬ存ぜぬで誤魔化せるわ」
「…同じく」

 戯れたように振る舞う赤毛の女に問うだけ無駄だと諦め、ルイズはギーシュに向きなおる。

「ギーシュ、あなたはいいの?グラモン家はどうするのよ?」
「それは父上や兄上が何とかしてくださるさ。僕にお呼びがかかったわけでもないしね」

 聞きたい返答が思うように得られず、口を閉ざしたルイズを見て、再びキュルケが口を開いた。



「もうわかってるでしょう。みんな、あなた達二人を助けるために来たのよ。ルイズ、レン」


 その言葉に皆が頷いた。
 キュルケをはじめとする大勢の級友。席を同じくした同級生の姿ばかりではなく、かつてレンと決闘した上級生までがその場に居て笑顔を浮かべていた。
 そして彼らはルイズとレンに謝罪の握手を求める。

「君達のお陰で僕達は自分達の愚かさに気づくことが出来た。貴族の精神を思い出すことが出来た。礼を言わせて欲しい」

 教師の姿も多く見受けられた。オスマン、コルベール、ロングビルらだけではない。ルイズの授業を担当したことのない、見知らぬ者の顔すらそこにはあった。
 咳払いを一つして、オスマンは言った。

「ミス・レン。まあ、わしと君とは色々あったが…君がミス・ヴァリエールを良き方向へ導いてくれたことは間違いない。彼女だけでなく、魔法学院の皆についてもじゃ。わしからも礼を言わせてくれるかの。

 ミス・ヴァリエール。退学したといっても、君が魔法学院の生徒であったことは事実じゃ。その生徒が命を張って国と民を守ろうとしているのを見捨てることはできんじゃろう」 

 これでも、教師なのでな。オスマンは照れを隠し切れずに、もぞもぞとつぶやいた。
 その仕草は、まるで花も恥らう少女が胸に秘めたる恋を打ち明けるようであったから、その場の全員が戦場には似つかわしくない笑い声を上げた。
 オスマンは髭までを真っ赤にして俯き、男子生徒の多くは腹を抱えて転げまわる。女子は背を向けて口元を押さえても笑い声が漏れていたし、ロングビルは笑いこそしなかったものの、その頬と唇はひくついていた。


 笑いが収まるのを待って、まだ顔の火照りが治まらないオスマンが声をあげた。

「いつまでもこうしてはおられん。増援があったと知れば、次の侵攻は一段と大規模なものになろう。
 …ミス・ヴァリエール、早く指揮を取ってくれ」

 これにルイズは驚き、慌てふためいた。

「どうしてですか?オールド・オスマン。私は戦に不慣れな上、魔法も使えないゼロです。ここは他の誰かに指揮を一任したほうがいいはずです」
「何を言っておる。この場のリーダーはお主じゃよ、ミス・ヴァリエール。
 お主は今まで寡兵でよくこの村を守ってきた。真の貴族としてその道を皆に示してもきた。お前さん以外が指揮を取ることを皆が納得するはずもなかろうて」

 その言葉に皆が再び頷いた。
 ルイズを中心に輪を作り、皆がルイズの命令を待ち構えていた。

「早く命を下しなさいな、ルイズ」
「…私はどうすればいい?」
「僕のワルキューレ、見事に使いこなしてくれるだろうね」
「ミス・ヴァリエール。期待していますよ」

 こんな時だけ一致団結する彼らに、ルイズは困ってレンに助けを求める。
 しかし、返ってきた答えはそれを許さなかった。

「レンと<パテル=マテル>はルイズ以外の誰の指示でも動く気はないわ。

 …やってくれるでしょう、ルイズ」 

 レンは満面の笑みを返し、<パテル=マテル>は蒸気を噴出した。



 ルイズは覚悟を決める。
 顔を上げ、ぐるりと皆の顔を見渡す。そして、深呼吸をしてゆっくりと話し始めた。

「私はずっと恐れていた。この世界が怖かった。貴族であるはずなのに、私だけが魔法を使えなかった。
 そのせいで何度も辛い目にもあった。何故こんなにも世界は不条理なのだと全てを恨んだこともあった。
 それでも、私は決めた。メイジでなくてもいい。自分の信じるままに、貴族として歩んでいければいいと今は思っている。

 でもそんな私はあまりにも無力で、大切なものを守るための力はない。けど、だからといってそれらを投げ捨ててしまうことは絶対に出来ない。
 だから私はここにいる。このトリステインの国と民を守るために私は戦う。

 だからもし、みんなが私と一緒に歩いてくれるなら、手を取り合って進んでいけるのなら、私に力を貸して」

 大歓声が上がった。
 皆が杖を振り上げる。
 その中には黄金色に輝く大鎌と、黒光りする鋼の腕もあった。



 レコン・キスタの艦隊総指揮官は何度目かになろうかという敗退の報告を苦々しく顔を歪めて聞いていた。

 田舎の村一つ、苦戦などするはずもないと高をくくって攻め立てたが未だに落とせずにいる。 
 この村を攻め落とした後すぐに王都に侵攻できるようにと、少数の兵力を小出しにしたのが不味かったか。
いくら相手が常識を超えた化け物を抱えていたとはいえ、兵法上の禁忌を犯したという自責の念が彼を責め立てていた。

 戦艦二隻を失い、兵力も大分損失している。その上、メイジの増援があったという。更に攻め難くなったが、しかし鉄のゴーレムを倒さないことには船を飛ばすことが出来ない。
 このまま時間を浪費するようでは、トリステイン侵攻そのものが頓挫することになるだろう。
 彼はおもむろに立ち上がり、全軍に命を下した。 

「総員に通達!全兵力を持って総攻撃を掛ける!タルブ村を制圧し、鉄のゴーレムを破壊せよ!」


 トリステインの命運を掛けた、決戦の火蓋が切って落とされた。



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