私の召喚した使い魔は、とても強かった。
小柄な私よりも更に頭一つ分足りないくらいの小ささ。
額からは、先端で先分れした細長い角が生えていた。
両肩には黒い円筒がついている。
橙色の小人のような、未知のゴーレム。
小柄な私よりも更に頭一つ分足りないくらいの小ささ。
額からは、先端で先分れした細長い角が生えていた。
両肩には黒い円筒がついている。
橙色の小人のような、未知のゴーレム。
―――――――――――
ある時。
その使い魔は、一人の貴族と無謀とも思える決闘をした。
相手は土のドットクラス。
メイジとしては然したる相手ではないが、それこそ一介の使い魔、
ましてや「ゼロのルイズ」と呼ばれるこの私が呼び出したゴーレムなどに、
彼を倒すことはできない。
その時の私は、そう思っていた。
その使い魔は、一人の貴族と無謀とも思える決闘をした。
相手は土のドットクラス。
メイジとしては然したる相手ではないが、それこそ一介の使い魔、
ましてや「ゼロのルイズ」と呼ばれるこの私が呼び出したゴーレムなどに、
彼を倒すことはできない。
その時の私は、そう思っていた。
結果、私の使い魔はあっさりと勝利した。
私は驚愕した。
貴族……「ギーシュ・ド・グラモン」の繰り出した、青銅のゴーレム「ワルキューレ」。
私の使い魔に、ワルキューレは一直線に迫った。
使い魔はただその場に立ち尽くす。
私は叫んだ。早く逃げろと。
次の瞬間、顔を打ち砕かれ仰向けに倒れたゴーレムの姿が、私の目に飛び込んだ。
しかしそのゴーレムは、私の使い魔ではなかった。
拳一つでワルキューレを黙らせた私の使い魔は、首を捻り拳を鳴らしてみせる。
立ち上がろうとしたワルキューレに、私の使い魔は容赦なく追い討ちを加えた。
拳と蹴りを何度もお見舞いしてやると、ワルキューレはボロボロに砕けて、
すっかり動かなくなってしまったのだ。
ギーシュはうろたえた。
すぐさま7体のワルキューレを作り上げると、急いで私の使い魔にけしかけようとする。
だが突如、一体のワルキューレの顔面が吹き飛ぶのである。
私は驚愕した。
貴族……「ギーシュ・ド・グラモン」の繰り出した、青銅のゴーレム「ワルキューレ」。
私の使い魔に、ワルキューレは一直線に迫った。
使い魔はただその場に立ち尽くす。
私は叫んだ。早く逃げろと。
次の瞬間、顔を打ち砕かれ仰向けに倒れたゴーレムの姿が、私の目に飛び込んだ。
しかしそのゴーレムは、私の使い魔ではなかった。
拳一つでワルキューレを黙らせた私の使い魔は、首を捻り拳を鳴らしてみせる。
立ち上がろうとしたワルキューレに、私の使い魔は容赦なく追い討ちを加えた。
拳と蹴りを何度もお見舞いしてやると、ワルキューレはボロボロに砕けて、
すっかり動かなくなってしまったのだ。
ギーシュはうろたえた。
すぐさま7体のワルキューレを作り上げると、急いで私の使い魔にけしかけようとする。
だが突如、一体のワルキューレの顔面が吹き飛ぶのである。
伸ばした右腕から煙を吐き出した私の使い魔。
それを見たギーシュは理解した。
ワルキューレに何が起きたのか、ではない。
目の前の使い魔が笑っていることに。
使い魔は、決して声を上げて笑っているわけではなかった。
ゴーレムなので表情はわかり辛かったが、その使い魔の光る目が細くなるのを見た彼は理解した。
そして煙が抜けた右腕を下げ、その替わりに左腕を上げた私の使い魔。
今度はわかった。
何が起こったのかが。
弾丸の雨だ。
使い魔の左腕から放たれる弾丸の雨。
この国の銃器では到底真似のできないものだ。
もの凄い勢いで放たれ、ばら撒かれた弾丸に、あっという間にワルキューレ6体は蜂の巣にされてしまう。
ゆっくりと使い魔が歩き出した。
ギーシュは恐怖に慄き、その場にぺたんと座る。
使い魔が右腕の銃口を、彼の額に突きつけると、彼は涙ながらに許しを請った。
私は驚愕した。
それを見たギーシュは理解した。
ワルキューレに何が起きたのか、ではない。
目の前の使い魔が笑っていることに。
使い魔は、決して声を上げて笑っているわけではなかった。
ゴーレムなので表情はわかり辛かったが、その使い魔の光る目が細くなるのを見た彼は理解した。
そして煙が抜けた右腕を下げ、その替わりに左腕を上げた私の使い魔。
今度はわかった。
何が起こったのかが。
弾丸の雨だ。
使い魔の左腕から放たれる弾丸の雨。
この国の銃器では到底真似のできないものだ。
もの凄い勢いで放たれ、ばら撒かれた弾丸に、あっという間にワルキューレ6体は蜂の巣にされてしまう。
ゆっくりと使い魔が歩き出した。
ギーシュは恐怖に慄き、その場にぺたんと座る。
使い魔が右腕の銃口を、彼の額に突きつけると、彼は涙ながらに許しを請った。
私は驚愕した。
―――――――――――
「どうした、相棒? 柄にもなく、だんまりしちまってよ」
「あー、ちょっとな」
「折角の舞踏会だぜ。楽しまなくていいのか?」
「うるせーなあ。俺はダンスなんて踊れねーんだよ」
「ふーん、そうなのかい。おっと、おめえさんのご主人様のお目見えだぜ」
「あっそう。……どーでもいいっつうの」
「ちょっと! どーでもいいはないでしょ!」
「うへはっ!? いつの間に後ろに来てるんだよ!!」
「アンタがボーっとしてるから気がつかないだけでしょ! 何してるのよ、こんなとこで」
「なんもしてねーよ」
「まったく。それよりもアンタ、あたしの相手しなさいよ」
「あー? 俺に喧嘩を挑もうってのか」
「もう! そうじゃないでしょ!」
「あー、ちょっとな」
「折角の舞踏会だぜ。楽しまなくていいのか?」
「うるせーなあ。俺はダンスなんて踊れねーんだよ」
「ふーん、そうなのかい。おっと、おめえさんのご主人様のお目見えだぜ」
「あっそう。……どーでもいいっつうの」
「ちょっと! どーでもいいはないでしょ!」
「うへはっ!? いつの間に後ろに来てるんだよ!!」
「アンタがボーっとしてるから気がつかないだけでしょ! 何してるのよ、こんなとこで」
「なんもしてねーよ」
「まったく。それよりもアンタ、あたしの相手しなさいよ」
「あー? 俺に喧嘩を挑もうってのか」
「もう! そうじゃないでしょ!」
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彼はこの世界の生き物ではないと言う。
生き物、と聞いて最初は訝しんだりしたが、彼は自分の事を生き物だと強く主張した。
彼の頭脳にあたる「六角貨幣石」を、素体……つまり今の彼の身体にとりつけることによって、
初めて行動が可能となるらしい。
その他、頭部・右腕・左腕・脚部の四つに分けられた装甲を取り付けることによって、
様々な力を引き出すのだと言う。
その証拠に、彼は「土くれのフーケ」と呼ばれる盗賊の作り出した巨大なゴーレムに、
破壊の杖を左腕に装備して戦い、見事に勝利した。
生き物、と聞いて最初は訝しんだりしたが、彼は自分の事を生き物だと強く主張した。
彼の頭脳にあたる「六角貨幣石」を、素体……つまり今の彼の身体にとりつけることによって、
初めて行動が可能となるらしい。
その他、頭部・右腕・左腕・脚部の四つに分けられた装甲を取り付けることによって、
様々な力を引き出すのだと言う。
その証拠に、彼は「土くれのフーケ」と呼ばれる盗賊の作り出した巨大なゴーレムに、
破壊の杖を左腕に装備して戦い、見事に勝利した。
彼は私にとって、優秀極まりない戦闘力を持った使い魔だった。
後々手に入れた様々な装甲によって、あらゆる局面で私を助けてくれた。
とても素晴らしい使い魔と言えよう。
ただひとつ、問題を挙げるとするのなら、非常に性格に難があるのであった。
それこそ気まぐれで、我侭で、短気で、乱暴で、口が悪くて、あまり賢くないときている。
全部私にも当てはまるではないかと、キュルケの奴は言っていたが、私はそれを認めない。
後々手に入れた様々な装甲によって、あらゆる局面で私を助けてくれた。
とても素晴らしい使い魔と言えよう。
ただひとつ、問題を挙げるとするのなら、非常に性格に難があるのであった。
それこそ気まぐれで、我侭で、短気で、乱暴で、口が悪くて、あまり賢くないときている。
全部私にも当てはまるではないかと、キュルケの奴は言っていたが、私はそれを認めない。
「もう、そうじゃなくて……」
「こうか?」
「足踏まないでよ!」
「ガー! 難しい!」
「こうか?」
「足踏まないでよ!」
「ガー! 難しい!」
とても子供っぽい奴だ。
だけど、とっても真っ直ぐした奴。
私はそんなコイツのことが、嫌いじゃない。
だけど、とっても真っ直ぐした奴。
私はそんなコイツのことが、嫌いじゃない。
―――――――――――
「どうしたのよ、そんなぼんやりしちゃって」
ふいに少女が話しかけてきた。
不本意ながら、自分のマスターを務めさせてやっている少女だ。
その少女の部屋で、ぼんやり窓から夜空を眺めていた俺は、振り返る。
「別に何でもねえよ。気にするな」
素っ気なく答えると、少女はそれ以上言及することはなかった。
ふいに少女が話しかけてきた。
不本意ながら、自分のマスターを務めさせてやっている少女だ。
その少女の部屋で、ぼんやり窓から夜空を眺めていた俺は、振り返る。
「別に何でもねえよ。気にするな」
素っ気なく答えると、少女はそれ以上言及することはなかった。
この世界で、あとどの位動いていられるか、自分にはわからなかった。
既に、身体の中に残されたオイルの量は半分を切った。
オイルくらいなら、探せば見つかるかもしれない。
あちらこちらから悲鳴を上げるマッスルケーブルは、もう完全にお手上げだ。
本来、素体や装甲は、非常にデリケートなものなのだ。
少し動くだけでも、あちこちで破損が生じる。
元の世界では、頻繁に送られたり補充されたりするエネルギーによって、
ナノマシンが各部を随時修理を行っていた。
しかし、この世界でそれはできない。
既に、身体の中に残されたオイルの量は半分を切った。
オイルくらいなら、探せば見つかるかもしれない。
あちらこちらから悲鳴を上げるマッスルケーブルは、もう完全にお手上げだ。
本来、素体や装甲は、非常にデリケートなものなのだ。
少し動くだけでも、あちこちで破損が生じる。
元の世界では、頻繁に送られたり補充されたりするエネルギーによって、
ナノマシンが各部を随時修理を行っていた。
しかし、この世界でそれはできない。
(すまねえな……ルイズ)
こちらの視線に気がついたのか、少女は首を傾げて言った。
「どうしたのよ。今日のアンタ、ちょっと変よ」
「ああ、大丈夫だ」
いまひとつ納得できないようだったが、少女はそれ以上気にしないことにしたようだった。
こちらの視線に気がついたのか、少女は首を傾げて言った。
「どうしたのよ。今日のアンタ、ちょっと変よ」
「ああ、大丈夫だ」
いまひとつ納得できないようだったが、少女はそれ以上気にしないことにしたようだった。
向こうの世界では、既に無用の代物となってお払い箱となってしまったこの使い魔。
突然少女に召喚された時は、驚いたり怒ったりもした。
しかし、今となっては彼女も自分を必要としてることもあって、非常に現状を喜んでいる所であった。
だから彼は、ほどなくして自分が動けなくなり、こんどこそ本当に無用の代物になってしまうのが怖かった。
諦めて、腹を括るしかない。
そう結論付けても、やはり心の隅では暗い感情が募るばかりだった。
そうして仕方がなしに、楽な姿勢で窓から夜空を眺めることぐらいしか、
今の彼にできることはなかったのである。
(その時まで、精々楽しくやらせてもらうか)
突然少女に召喚された時は、驚いたり怒ったりもした。
しかし、今となっては彼女も自分を必要としてることもあって、非常に現状を喜んでいる所であった。
だから彼は、ほどなくして自分が動けなくなり、こんどこそ本当に無用の代物になってしまうのが怖かった。
諦めて、腹を括るしかない。
そう結論付けても、やはり心の隅では暗い感情が募るばかりだった。
そうして仕方がなしに、楽な姿勢で窓から夜空を眺めることぐらいしか、
今の彼にできることはなかったのである。
(その時まで、精々楽しくやらせてもらうか)
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翌朝
「メタビー君! メタビー君! 君の言っていたメダロッチとやらが、宝物庫の中にありましたよ!
どうやらちゃんと動くようですよぉ!」
「あらら~」
長い付き合いになりそうだ。
どうやらちゃんと動くようですよぉ!」
「あらら~」
長い付き合いになりそうだ。
めでたしめでたし
(「メダロット」よりメタビー)