異世界BASARA-46
裏口からルイズ達が出て行った後、キュルケは今の現状を考えて溜息をついた。
「困ったわねぇ……予定が狂っちゃったわ」
状況は全く良くなっていない。相変わらず矢は降り注ぎ、いつ突撃されてもおかしくなかった。
「ギーシュのワルキューレに油を取って来させようと思ったのに、ああもう!何でいなくなっちゃうのかしら」
キュルケは額に手を当てて悪態をつく。
「キュルケ殿、油が要るのか?」
と、利家がキュルケの顔を覗き込みながら言った。
そして腰に付けた瓢箪を手に取り、キュルケに見せる。
「これじゃ駄目か?」
キュルケはそれを見てアッ、と声を上げた。
そうだ、利家はいつもこれで火を吹いていた。つまり引火性のある液体が入っているという事だ。
「あなたってやっぱり役に立つわね、じゃあ入り口に向かって中身を吹いてくれる?」
利家は言われた通りに瓢箪の中身を口に含む。その間、キュルケは手鏡を覗き込んで化粧を直した。
「折角の歌劇の始まりだもの……主演女優がすっぴんじゃ……」
そう言っている最中、利家が勢いよく口から中身を吐き出した。
「しまらないわよね!!」
それに向かって、キュルケが杖を振るった。
「困ったわねぇ……予定が狂っちゃったわ」
状況は全く良くなっていない。相変わらず矢は降り注ぎ、いつ突撃されてもおかしくなかった。
「ギーシュのワルキューレに油を取って来させようと思ったのに、ああもう!何でいなくなっちゃうのかしら」
キュルケは額に手を当てて悪態をつく。
「キュルケ殿、油が要るのか?」
と、利家がキュルケの顔を覗き込みながら言った。
そして腰に付けた瓢箪を手に取り、キュルケに見せる。
「これじゃ駄目か?」
キュルケはそれを見てアッ、と声を上げた。
そうだ、利家はいつもこれで火を吹いていた。つまり引火性のある液体が入っているという事だ。
「あなたってやっぱり役に立つわね、じゃあ入り口に向かって中身を吹いてくれる?」
利家は言われた通りに瓢箪の中身を口に含む。その間、キュルケは手鏡を覗き込んで化粧を直した。
「折角の歌劇の始まりだもの……主演女優がすっぴんじゃ……」
そう言っている最中、利家が勢いよく口から中身を吐き出した。
「しまらないわよね!!」
それに向かって、キュルケが杖を振るった。
キュルケの魔法によって液体は発火し、入り口の辺りに炎を振り撒いた。
今しがた突撃を敢行しようとした傭兵の一隊が、突然現れた炎に驚いてたじろぐ。
「名もなき傭兵の皆様方。あなた方がどうしてあたし達を襲うのか存じませんけども」
キュルケは微笑を浮かべて一礼した。
今しがた突撃を敢行しようとした傭兵の一隊が、突然現れた炎に驚いてたじろぐ。
「名もなき傭兵の皆様方。あなた方がどうしてあたし達を襲うのか存じませんけども」
キュルケは微笑を浮かべて一礼した。
「この“微熱”のキュルケ、謹んでお相手つかまりますわ」
燃え上がる火炎と微熱の舞が始まり……
「ああ、わしの店が……店が……燃えていく……」
そして店主は気絶した。
そして店主は気絶した。
巨大ゴーレムの肩の上でフーケは舌打ちをした。
『女神の杵』亭の入り口から炎が噴き出し、突撃をしようとした一隊が炎に巻かれて逃げ惑っている。
「ええいもう!頼りにならない連中ね!どいてなさい!」
ゴーレムが地響きを立てて入り口に近づく。そして拳を振り上げ、入り口にそれを叩きつけた。
『女神の杵』亭の入り口から炎が噴き出し、突撃をしようとした一隊が炎に巻かれて逃げ惑っている。
「ええいもう!頼りにならない連中ね!どいてなさい!」
ゴーレムが地響きを立てて入り口に近づく。そして拳を振り上げ、入り口にそれを叩きつけた。
酒場の中でキュルケは炎を操っていた。
さらにタバサの風も手伝って、威力を増していっている。
「見た?分かった?あたしの炎の威力を!火傷したくなかったら家にお帰りなさい!」
キュルケは勝ち誇ったように笑い声を上げる。
さらにタバサの風も手伝って、威力を増していっている。
「見た?分かった?あたしの炎の威力を!火傷したくなかったら家にお帰りなさい!」
キュルケは勝ち誇ったように笑い声を上げる。
だがそれは轟音と共に終わりを告げた。
「調子にのるんじゃないよ小娘が!!まとめて潰してやるからねっ!!」
建物の入り口が壊され、もうもうと立ち込める土煙の中にゴーレムが浮かび上がる。
そのゴーレムの肩の上に乗っているフーケが怒鳴っていた。
「あちゃあ~あのおばさんの事忘れてたわ。どうしよう」
キュルケがタバサに問い掛けるが、両手を広げて首を振っている。
どうやら自分達に打つ手はないようである。キュルケは逃げようとした。
建物の入り口が壊され、もうもうと立ち込める土煙の中にゴーレムが浮かび上がる。
そのゴーレムの肩の上に乗っているフーケが怒鳴っていた。
「あちゃあ~あのおばさんの事忘れてたわ。どうしよう」
キュルケがタバサに問い掛けるが、両手を広げて首を振っている。
どうやら自分達に打つ手はないようである。キュルケは逃げようとした。
ところが、利家がゴーレムの正面に立ち塞がった。
「何をしているのトシイエ、逃げるわよ」
しかし、利家はキュルケの言葉に首を振った。利家はさらに数歩、ゴーレムに近付いて行く。
「どきな!また私のゴーレムに吹き飛ばされたいのかい!?」
フーケは眼下に立つ利家を睨みつけながら言った。
「何をしているのトシイエ、逃げるわよ」
しかし、利家はキュルケの言葉に首を振った。利家はさらに数歩、ゴーレムに近付いて行く。
「どきな!また私のゴーレムに吹き飛ばされたいのかい!?」
フーケは眼下に立つ利家を睨みつけながら言った。
そう……『破壊の杖』事件の時、利家は彼女のゴーレムと戦った事がある。
その時彼はフーケのゴーレムに手痛くやられているのだ。
その時彼はフーケのゴーレムに手痛くやられているのだ。
「あの時とは違うぞフーケ」
利家は低い声で言った。その迫力に、フーケは思わず息を飲む。
「あの時は朝飯を抜いていて空腹……だが今のそれがしはさっきまで飯を食べていた。つまり……」
利家は目をクワッ!と見開き、フーケに向かって叫んだ。
利家は低い声で言った。その迫力に、フーケは思わず息を飲む。
「あの時は朝飯を抜いていて空腹……だが今のそれがしはさっきまで飯を食べていた。つまり……」
利家は目をクワッ!と見開き、フーケに向かって叫んだ。
「今のそれがしは……満腹だあぁぁぁぁぁーーー!!!!」
「……だからどうしたってんだこの野人があぁー!!」
フーケは叫ぶと、ゴーレムの腕の振り上げさせて利家のいる場所に一気に振り下ろした。
利家は後ろに大きく跳んで後退する。少し遅れて岩石の腕が叩きつけられた。
それを見た利家は叩きつけられたゴーレムの腕に飛び乗り、1回、2回と大きくジャンプして腕を登っていく。
3回目の跳躍でゴーレムの頭上よりも高く飛び上がった利家は、三叉槍をフーケ目掛けて振り下ろした。
「チィッ!!」
フーケは咄嗟に呪文を唱え、ゴーレムの体を使って自分の前に岩の壁を作った。それで槍を防いでいる隙に素早くゴーレムから舞い降りる。
利家は岩を叩いた反動で空中に浮いた。その利家をゴーレムは掴もうと腕を伸ばす。
フーケは叫ぶと、ゴーレムの腕の振り上げさせて利家のいる場所に一気に振り下ろした。
利家は後ろに大きく跳んで後退する。少し遅れて岩石の腕が叩きつけられた。
それを見た利家は叩きつけられたゴーレムの腕に飛び乗り、1回、2回と大きくジャンプして腕を登っていく。
3回目の跳躍でゴーレムの頭上よりも高く飛び上がった利家は、三叉槍をフーケ目掛けて振り下ろした。
「チィッ!!」
フーケは咄嗟に呪文を唱え、ゴーレムの体を使って自分の前に岩の壁を作った。それで槍を防いでいる隙に素早くゴーレムから舞い降りる。
利家は岩を叩いた反動で空中に浮いた。その利家をゴーレムは掴もうと腕を伸ばす。
「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ」
しかし、そこにタバサの魔法「ウィンディ・アイシクル」が放たれた。
空中に現れた氷の矢がゴーレムの腕を貫き、間一髪で利家は逃げ切った。
「助かったぞタバサ」
利家は簡単に礼を言うと、再びゴーレムと対峙する。
ゴーレムは腕に氷の矢が刺さっているが、全く気にも止めていない。
空中に現れた氷の矢がゴーレムの腕を貫き、間一髪で利家は逃げ切った。
「助かったぞタバサ」
利家は簡単に礼を言うと、再びゴーレムと対峙する。
ゴーレムは腕に氷の矢が刺さっているが、全く気にも止めていない。
(やはり一撃必殺が一番か……)
利家は、槍を握る腕に力を込めた。
力を込める利家の腕に血管が浮き上がる。
さらに足にも力が入り、利家の足元の地面にヒビが入った。そしてゴーレムが近づき、両腕を振り上げた瞬間。
さらに足にも力が入り、利家の足元の地面にヒビが入った。そしてゴーレムが近づき、両腕を振り上げた瞬間。
「おおおおりゃああぁぁぁぁぁ!!!!」
利家は下から上へ、槍を一気に振り上げた。
槍の衝撃は大きく一気に脳天まで達し、ゴーレムの体に綺麗なヒビが縦に入る。
人の力ではない、もはや“野生の斬撃”である。
槍の衝撃は大きく一気に脳天まで達し、ゴーレムの体に綺麗なヒビが縦に入る。
人の力ではない、もはや“野生の斬撃”である。
「せえええぇぇぇやっっ!!!!!」
間髪入れず、利家は槍を持ち直して横薙ぎにぶん回した。ゴーレムの体に横一直線にヒビが入る。
一時の硬直状態の後、ゴーレムは体が維持出来なくなったのか、ボロボロと崩れ落ちていった。
一時の硬直状態の後、ゴーレムは体が維持出来なくなったのか、ボロボロと崩れ落ちていった。
フーケの立っている場所に向かって。
「ちょ!ちょっと待……きゃああぁぁぁ~!!」
哀れフーケは崩れ落ちる岩に巻き込まれ、その姿が見えなくなった。
ゴーレムが崩れ去り、後には岩の瓦礫が残る。
が、しばらくすると瓦礫の中からモゾモゾとフーケが現れた。
「畜生っ!お前等……よくも私のゴーレムを!」
「あら、お似合いの姿に変わったわねぇ~お・ば・さ・ん♪」
フーケは岩や土の中から這い出してきた所為か、服は土まみれ、髪はぼさぼさに変わっていた。
だが、そんな事よりもフーケの怒りに火を付けたのは、キュルケの最後の一言だった。
哀れフーケは崩れ落ちる岩に巻き込まれ、その姿が見えなくなった。
ゴーレムが崩れ去り、後には岩の瓦礫が残る。
が、しばらくすると瓦礫の中からモゾモゾとフーケが現れた。
「畜生っ!お前等……よくも私のゴーレムを!」
「あら、お似合いの姿に変わったわねぇ~お・ば・さ・ん♪」
フーケは岩や土の中から這い出してきた所為か、服は土まみれ、髪はぼさぼさに変わっていた。
だが、そんな事よりもフーケの怒りに火を付けたのは、キュルケの最後の一言だった。
「おばさんだって!?ふざけるな!私はまだ23だよ!!」
「フーケ。大丈夫だ、まだ間に合う」
「裸は黙ってろ!!!!!!」
「フーケ。大丈夫だ、まだ間に合う」
「裸は黙ってろ!!!!!!」
利家の一言でフーケは怒り狂い、杖を向けた。
ゴゴゴゴゴゴ……
しかし、彼女の背後から地響きが聞こえてきた。
フーケはハッとなり、背中を冷や汗が流れる。こんな大きな音を出す人物が、彼女の記憶にあったからだ。
フーケは恐る恐る振り返る。
フーケはハッとなり、背中を冷や汗が流れる。こんな大きな音を出す人物が、彼女の記憶にあったからだ。
フーケは恐る恐る振り返る。
「……クソ、やっぱりこいつだったか……」
「…!……」シュゴー!
「…!……」シュゴー!
案の定、彼女の後ろには戦国最強と言われた男……本多忠勝が立っていた。
「土くれのフーケも年貢の納め時かしら?」
さらに前方にはキュルケ達がいる。まともに戦って勝てる状況ではなかった。
(まぁいい。時間は稼いだ……これぐらいで充分だね)
フーケは挟み撃ちにされているにもかかわらず、ニヤリと笑みを浮かべる。
次の瞬間、フーケはフライで飛び上がり、忠勝の頭上高くを飛び越えた。
「!……!?!?」プルルル!バスン!!
「この辺で帰らせてもらうよ。私の仕事は済んだからね」
そう言い残すと、フーケは逃げ去って行った。
「土くれのフーケも年貢の納め時かしら?」
さらに前方にはキュルケ達がいる。まともに戦って勝てる状況ではなかった。
(まぁいい。時間は稼いだ……これぐらいで充分だね)
フーケは挟み撃ちにされているにもかかわらず、ニヤリと笑みを浮かべる。
次の瞬間、フーケはフライで飛び上がり、忠勝の頭上高くを飛び越えた。
「!……!?!?」プルルル!バスン!!
「この辺で帰らせてもらうよ。私の仕事は済んだからね」
そう言い残すと、フーケは逃げ去って行った。
「ちょっとタダカツ、何でフーケを捕まえなかったのよ?」
「!?」バスン、バスン!!
「いいじゃないかキュルケ殿、それがし達は役目を果たしたぞ」
忠勝に詰め寄るキュルケを、利家がなだめる。
確かに利家の言う通り、囮作戦は上手くいった。
雇われていた傭兵の一派も散り散りに逃げ出していったようだ。
「……ま、それもそうね。でもここでじっと待っているのも何だし……追いかけましょう」
キュルケは髪をかき上げながら言った。
「!?」バスン、バスン!!
「いいじゃないかキュルケ殿、それがし達は役目を果たしたぞ」
忠勝に詰め寄るキュルケを、利家がなだめる。
確かに利家の言う通り、囮作戦は上手くいった。
雇われていた傭兵の一派も散り散りに逃げ出していったようだ。
「……ま、それもそうね。でもここでじっと待っているのも何だし……追いかけましょう」
キュルケは髪をかき上げながら言った。
キュルケ、利家、タバサは忠勝に乗る。
「じゃあ行くわよ!タバサ、いつもの」
キュルケの言葉にタバサは小さく頷き、忠勝に呟いた。
「飛んでタダカツ」
その言葉に忠勝は「起動形態」となり、空高く飛び上がる。
……筈だったのだが
「じゃあ行くわよ!タバサ、いつもの」
キュルケの言葉にタバサは小さく頷き、忠勝に呟いた。
「飛んでタダカツ」
その言葉に忠勝は「起動形態」となり、空高く飛び上がる。
……筈だったのだが
「!?……??」バスン、バスン!!ヴィィ?
何故か忠勝は飛び上がらなかった。
何故か忠勝は飛び上がらなかった。
「タダカツ?何で飛ばないのよ」
業を煮やしたキュルケが問い掛ける。
しかし、忠勝の体からは何か空気の抜けるような音が聞こえるだけで、一向に飛ぶ気配がなかった。
この異変に忠勝が気づいたのは、フーケを追いかけようとした時だった。
「起動形態」になろうとしてもなれないのである。
業を煮やしたキュルケが問い掛ける。
しかし、忠勝の体からは何か空気の抜けるような音が聞こえるだけで、一向に飛ぶ気配がなかった。
この異変に忠勝が気づいたのは、フーケを追いかけようとした時だった。
「起動形態」になろうとしてもなれないのである。
もしやさっきの3形態の同時展開が原因ではないか?
忠勝はそう考えながらも、何とか飛ぼうと頑張り続けた。
一方、ルイズ達一行の方も問題が発生していた。
停まっていたフネに半ば無理矢理に乗り込み、アルビオンに向けて出発した。
そしてフネが港を出発して朝になった頃……幸村と氏政は驚くべきものを目にする。
大陸が空に浮いている……“白の国”、アルビオンを目の当たりにしたのだ。
この光景に、幸村と氏政は驚きの声を上げ、ルイズは「驚いた?」と自慢気に話していた。
そう、ここまでは良かったのである。
停まっていたフネに半ば無理矢理に乗り込み、アルビオンに向けて出発した。
そしてフネが港を出発して朝になった頃……幸村と氏政は驚くべきものを目にする。
大陸が空に浮いている……“白の国”、アルビオンを目の当たりにしたのだ。
この光景に、幸村と氏政は驚きの声を上げ、ルイズは「驚いた?」と自慢気に話していた。
そう、ここまでは良かったのである。
「船長!右舷上方の雲中より船が接近!は、旗を掲げておりません!」
見張り員の声が甲板に響き渡り、船長の顔が青ざめた。
見張り員の声が甲板に響き渡り、船長の顔が青ざめた。
空賊の来襲である