あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

超少女明日香召喚-01


爆風が風で散ったクレーターの真ん中に、小さな人影が転がっていた。
頭から地面に突っ伏すような格好と、布を身体に巻きつけるような奇態な装束は、一瞬取り囲む生徒たちから声を奪った。
だがそれも一瞬だけ。あえて大きく笑い飛ばすことで爆風の凄まじさに対する怯えを掻き消そうとする、それは滑稽なことではあったけれど、不幸なことに嘲笑の中心であるルイズはいつものごとくそのことに欠片も気づいていなかった。
平民平民という言葉がぐるぐると回る教師であるコルベールが声を枯らそうとしばらくは収まりそうにない。それほどこの度の爆発が凄まじかったということか。
使わずに済んだ杖をそっと懐に仕舞いながら、キュルケはウインドブレイクで自分も庇ってくれたタバサに目で礼をした。
さて、とクレーターに目を向ければ、規模の割には呼び出されたものはそれほど危険なものではないように見える。というより、気絶でもしているのか、お尻を高く上げたうつ伏せというのは、あまりみっともいいものではない。よく分からないが長い栗色の髪といい女性ではないだろうか。
キュルケは溜め息を一つついて、ぎゃんぎゃんと周りに向かって吠えているルイズの元へ歩み寄った。
「ちょっとルイズ」
「なによっ!」
「起こしてあげなさいよ。一応アンタが呼び出したんでしょう?」
ぐ、と詰まるけれど、呼び出したのは確かにルイズで、そのせいで気絶かもしかしたら怪我をさせてしまっているなら介抱しなくてはならないだろう。
「ちょっと、あなたしっかりしなさいよ」
「ふにぃぃ」
どこの民族衣装だか知らないが、きっちりと重ねられた地味な色合いだけど奇麗な生地と落ち着いた紺色の幅広の帯。抱き起こしたルイズと身長はさほど変わらないようにも見える。
幸いなことに、酷い怪我をしているようにも見えない。
目元は前髪で隠れているけれど、年もそれほど変わらないのかも。
頬をぺちぺちと軽く叩いていると、少女は小さく呻いてから意識を取り戻した。ちらと見えた目はすぐに髪に隠れてしまったけれど。
「ふ……え? あれ? ここは?」
本人は焦っているのかもしれないが、毒気を抜かれるようなほんわかした優しい声に、ルイズもなんとなく気が抜けてしまった。
「ここはトリスティン魔法学院。それであんたは使い魔召喚の儀式で召喚されたのよ」
「は?」
ああ、こいつはちょっと頭が足りないんだろう。見た目もそうだし。善良そうではあるけれど。
だったら怒鳴ったってしょうがない。
「へぇ、人間を召喚するなんてやるじゃないルイズ」
私には真似できないわぁところころわざとらしく笑うキュルケにうっさいと返して少女に向き直る。
「私はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、ヴァリエール公爵家の三女よ」
「はぁ、ご丁寧にどうもありがとうございます。それで、どこを取ってお呼びすればよいでしょうか?」
「ミス・……いえ、ルイズ様かご主人様でいいわ」
「私は砂姫明日香、明日香とお呼びください。それで……」
言いながらよっこらせと立ち上がる。ぱたぱたと埃を払って辺りを見回して、学院の塔を目に入れたところで硬直した。
「ど、どこのお城ですかぁ?」
「城じゃないわ。まぁ造りは似たようなものだけど、あれが学院よ。私はそこの二年生だから」
二人、キュルケも入れれば三人だが、彼女たちが長閑にしているのが些か不満だったのだろう。一時小さくなっていた罵声がまたぶり返した。
呼び出された少女が只の小者に見えたせいもあるだろうが。
反射的に怒鳴り返そうとしたルイズだが、明日香が平然としているせいで怒り辛い。
ようやくコルベールが生徒たちを掻き分けてルイズたちの下へとやってきた。騒ぎの収拾をつけたいのだろう。二人に早く契約を交わすように告げる。
契約?使い魔?ここはどこ?と頭がぐるぐるしていた明日香の目前にいきなりルイズが顔を突き出し、感謝しなさいね貴族が平民にこんなことするなんてと更にわけの分からないことを言われて硬直したところを唇を奪われた。
ぼっちゃまごめんなさいでも女の子相手だから許してくれますよね私からしたわけじゃありませあいたたたっ!?
いきなり右手の甲に火箸を押し付けられたような痛みが走って悲鳴を上げる。
「落ち着きなさい、ルーンが刻まれてるだけだ……?」
少し焦りながらルイズが明日香を宥めようとするが、右手に目を向ければ、甲に刻まれたルーンが光りながらうねうねと形を変えている。じわじわと手首から二の腕へと。
なんだこれはとコルベールやキュルケまで息を飲んだ。
「いたっ い、痛いって言ってるのにっ!」
パンッ
明日香の叫びと共に、一瞬強い光が弾け、右手の肘までを覆うような文様がそこに広がっていた。
「これって……」
「むぅ、珍しいルーンですな」
手の甲にあるのは、確かに文字にも見える文様だが、それを包み込み肘まで広がっているのは、もっと原始的で植物の蔓を思わせる不思議な紋だった。まるで二つの文様が彼女の中でぶつかり合ったような。
コルベールは文字の部分を中心にざっとスケッチをすると、生徒たちを学院へと帰るよう指示を出す。
ルイズもその後に続こうとしたが、明日香がまだぼうっとしていることに気がついた。
「何? その文様知ってるの?」
「これ……砂神の、私たちの一族の隠し紋です。でもどうして……」
本来秘すべきことを口に上らせてしまったのは、明日香自身混乱していたからだろう。
幸いルイズにはその意味は分からなかったし、魔力を振り絞りきったルイズの記憶には残らなかったけれど。
「よく分かんないけど、明日香の家の紋章ならそれでいいじゃない。わけわからない呪じゃなかったんだし。それより行くわよ。あんたには教えなきゃいけないことが沢山あるんだから」
ルイズが動物に躾をするのとどっちが簡単かなぁと考えていることなど明日香には分からない。
転ばされて助け起こされて騒がれて痛くされてと散々なのだ。そろそろちゃんとした説明が欲しい。
そう言えば電話がどこかにないだろうか。家政婦斡旋事務所に連絡しておかないと。
ようやく学院に目を向ければ、大分小さくなった生徒たちが、ふよふよと空を飛んでいて……
「ちょっ 何いきなり気絶してるのよっ 起きなさいってばぁっ」
自分に寄りかかるように気絶した明日香を、ひいひい言いながら背負って自分の部屋に運び込んだルイズもまたくたびれきって一緒のベッドに転がり込んだのだった。


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