あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのおじさま

軍靴の音が草原に響く。
彼方から迫るは、アルビオン軍総勢7万
惨めな敗北者の群れに止めを刺さんと、無人の野を突き進む。

その眼前に立ちはだかるは、幼さの残る少年少女。
取り残された少年兵か? 負け犬のよこした人身御供か?
獲物を見つけた狼の群れが、邪悪な笑みを浮かべる。

その場において、トリステイン軍の勝利を疑わないのは、二人の戦士だけであった・・・。

「ルイズ! 作戦通りだ 俺が時間を稼ぐ!」
「わかっているわ!」

少女の詠唱を確認しながら、少年が果敢にも突撃をかける。
滑稽を通り越して哀れですらある、しがない平民の特攻。
冷笑を交えつつ、前線の部隊が弓を構える。

―と、不意に少年が眼前から消え失せ、部隊が真後ろからなぎ払われる。
目にも留まらぬ少年の動きに、前線に混乱が生じる。
重装兵の槍衾は一刀の下に切り返され、そのまま対手の喉を貫く。
銃隊の一斉射撃すら、少年の早さには及ばない。
死角無きメイジ隊の烈風の一撃は、少年の剣舞でそよ風の如く掻き消えた。
目の前を駆け抜けるは生ける伝説・・・ イーヴァルディの勇者そのものであった。

「その小僧はオトリだ! 女の方の方を狙え!」
アルビオン軍指揮官の指令は正しいものではあったが、伝説の前では無力であった。
そして・・・ 彼らはもう一つの伝説の証言者となる。

― ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル ―。

少女の詠唱が完成し、周囲が光に包まれる。
少女が、少年が、草原が、7万の将兵が、真っ白な世界に飲み込まれていく。
抗うことの一切許されぬ、強烈な閃光と衝撃。
光が消えた後、その場に残っていたのは、地に伏した7万の敗北者だけであった・・・。
7万の兵士が光に飲まれる光景を、小高い丘の上から傍観していた者がある。
伝説の使い魔の一人、ミョズニトニルンのシェフィールドであった。
アルビオン、トリステイン、ゲルマニアの3国を手玉に取った『神の頭脳』が、眼前の異常事態を推し量る。

『虚無の担い手』の一人がトリステイン軍の中にいる事は、前もって分かっていた。
タルブでの戦いにおいても、似たような爆発が起こったと聞いている。
だが、これほどの威力の魔法を短期間で連発できるはずがない。
さらにいえば、あれほどの爆発でありながら、周囲にはほとんど被害が出ていない。
兵士たちの中に死亡者はゼロ、というガーゴイルの報告も不自然だった。
最近虚無に目覚めたばかりの少女が、これほどまでに力をコントロール出来るものなのか・・・?

(幻影・・・? いや それならば兵が怪我を負うはずがない・・・)
「ようやく見つけたぜ 黒幕さんよお!」

背後からの呼び声に、シェフィールドの意識が現実へと引き戻される。
振り向いた先にいたのは、件のガンダールヴ。
戦場からありえない早さでここまでやってきた少年の姿を目の当たりにし、シェフィールドは全てを理解した。

「確かにここなら戦場が一望できるが ここ以外にはそれができる場所は無い
 負けた後もボサッと突っ立ってるとは 油断したな」

「・・・フン そういう事だったのね 
 まさか 伝説のガンダールヴに『化けて』いたとは
 7万の兵士を倒したのも貴様かッ!」

シェフィールドの叫びとともに周囲のガーゴイル達が動き出し、少年の体を切り裂く。
蛇が脱皮するかのように少年の皮がベリリと剥がれ、辺りがまばゆい光に包まれる。

キラキラと輝きを放ちながら現れたのは、細身で長身の男。
アラビア風のフードに真っ白なマント、さらに上等な純白のスーツ姿。
特徴的な2本のドジョウ髭に、ゴーグルの奥から除く自信に満ちた瞳。
東洋人とも西洋人とも分からぬ胡散臭い顔立ち。
それでいて、どこか一流の気品を漂わせる紳士がそこに居た。

「フフ なかなかに鋭いじゃないか・・・
 お初にお目にかかる
 私は BF団が十傑集の一人 『幻惑のセルバンテス』 と申す者
 以後 お見知りおきを」

「幻惑・・・? あの7万の兵士は そろって貴方の幻術に斃れたとでもいうの!?」

「さて・・・ どう説明すれば良いのか・・・
 彼らが味わったものは 紛れも無い現実・・・ だが この世界の出来事ではない
 言うなれば 同じ道をたどる可能性のあった もうひとつの世界の物語」

「・・・ッ! 多重世界<パラレル・ワールド>!?」

「おお! 流石は神の頭脳 ふさわしい言葉を知っておられる
 先ほど君達が見たのは まさにそのパラレル・ワールド
 君も含め あの場にいた全員が 『虚無の担い手が覚醒した世界』 を体験したのだよ!

 狙った人間の意識を狩り出し その空間でひとつの目的を持たせ
 本人達の思うがままに行動させる・・・ ただし 呼ばれた者が傷ついた場合 その『肉体』もタダでは済まない

 これぞ 我が能力 【 舞 台 演 劇 】 !!」

セルバンテスの説明に身を震わせていたシェフィールドだったが、やがてクックッと笑いを漏らした。

「これで私を追い込んだつもりかい? タネの割れた手品師さん?」

シェフィールドが指を弾くと同時に、後方の森からボゴンと土ぼこりが舞い上がり、
大木が根こそぎ吹き飛ばされる。
現れたのは、20メイルを超える鋼の巨人 ― 【ヨルムンガント】

「ツメが甘かったようね さようなら 三流探偵さん」
シェフィールドの投げキッスを合図に、鋼の巨体が山猫もかくやという俊敏さでセルバンテスに迫る。

「フム 確かに私は 肉体労働は苦手だが・・・
 ―だがね!」

ゴーグルの奥の瞳がキランと光る。
うなりを上げる鋼の拳を、ジャンプ一番、セルバンテスがかわす。
一っ跳びでヨルムンガントの遥か上空まで飛び上がり、マントをなびかせ稲妻の如き蹴りを放つ。

乾坤一擲。

純白の流星の一撃が、ゴーレムの頭部をブチ砕く。

「ハオッ!!」
頭を失いながら、なおももがく巨体に向けて、セルバンテスが右手をつきかざす。
見えない何かを握り潰すかのような右掌の動きに合わせ、鋼の巨体が宙に浮き、肉厚の胴部がギリギリとひしゃげていく。
やがて、バグン、という音を立て、その巨体が四散した。

「クッ」
思わず背を向けその場を逃げ去ろうとしたシェフィールドの眼前に、後ろで闘っているはずのセルバンテスがいた。
驚く間もなく、水月への一撃で『神の頭脳』が昏倒した。

「私とて十傑衆の端くれ
 振りかかる火の粉を払えぬようでは BF団は務まらぬのだよ・・・」

マントの埃を払いながら、誰に聞かせるでもなくセルバンテスが呟いた。
「バンテスおじさま!」
ようやくセルバンテスの姿を捉えたルイズが、息せき切って駆けつけてくる。

「その女が 今回の戦いの首謀者?」
「さて どうやら彼女も傀儡に過ぎぬようではあったが・・・」
「・・・それにしても」

先ほどの感覚を思い出し、ルイズが身震いする。
セルバンテスの『舞台演劇』により、虚無の力を解放した自分・・・。

「おじさまの能力は凄いのね 
 あんな・・・ 始祖ブリミルみたいな奇跡が起こせるなんて」

「何を言っているんだね ミス・ヴァリエール
 先の力は まさに君の持っている『可能性』 私はそれを間借りしたに過ぎないのだよ」

「でも・・・」

「さて・・・ ミス・ヴァリエール
 まことに残念だが そろそろ私は行かねばならない」

「えっ?」

使い魔からの突然の別離の言葉に、ルイズが動揺する。

「行くって・・・ 何を言っているの おじさま?
 知っているでしょう? 一度召喚された者を、元の世界へ帰す術は・・・」

「・・・今まで 君を欺いていた事を謝らねばならないな」

セルバンテスが左手の手袋を外す。
そこに瞬く契約の証が徐々に輝きを失いながら小さくなり、やがて単なるホクロに変貌した。

「使い魔のルーンが・・・ まさかッ! 幻術!?」

「実は私は サモン・サーヴァントで呼び出されたワケではない・・・
 とある目的のため いくつものパラレル・ワールドをさまよい歩くうちに 偶然この世界に辿り着いたのだ」

「そんな・・・ でも それならば なぜおじさま程のお方が
 私の使い魔なんかをして下さったの?」

「・・・私には 君達と同じくらいの年頃の友人がいてね
 始めて君と出会ったときの ― 召喚に成功した喜びに満ち溢れた 君の笑顔が心に滲みた
 そして 付き合いを重ねるうちに 君が並々ならぬ努力家であることを知った
 その内に 君のため 私に出来る事をしてあげたいなどと ガラにもなく考えてしまったのさ

 フフフ おかしな話だろう?
 世界征服を企み 世界を混乱に陥れるハズの私が だ」

「・・・・・・」

「君達との生活は本当に楽しかった・・・ 自らに課せられた使命を忘れてしまいたくなるくらいにね
 だが 残然ながら ここは私の捜し求める世界ではなかった
 私はもう 次の世界に行かねばならないのだよ」

セルバンテスの体が、フワリと宙に浮く。

「バンテスおじさま!」
「お別れの時間だ ミス・ヴァリエール 君の友人達にもよろしく!」

「おじさま! 私 約束するわ
 私は『十傑集・幻惑のセルバンテス』を使い魔にできた事を 胸を張って誇れるほどのメイジになる
 その時は 今度は私の力で あなたをこの世界に招待するわ ミスタ・セルバンテス」

「そいつは素晴らしい提案だ 楽しみにしているよ!
 フハハ また会おう さらばだ!」

セルバンテスがマントを翻す。次の瞬間には、その姿は中空から掻き消えていた。
頭上からひとひらの羽が舞い降りてくる。
ルイズが触れると、ポン、と 色とりどりの花束へと変貌した。

「私やるわ 見てて バンテスおじさま」
花束を抱えながら、ルイズが深く宣言した。


来るべき近未来ッ!!  人類は未曾有の戦乱の時代を迎えていた!!

その戦乱の中 人類の未来と可能性を信じ いくつもの世界を渡り歩く一人の男の姿があった



その名は――

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