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使い魔くん千年王国・外典 タバサ書 第一章 タバサと幽霊

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始祖ブリミル降臨暦6242年、春の第四月フェオの月。
ガリア王国の三千メイル上空を、今日も一頭の青い竜が主を乗せて飛んでゆく。
竜の主は青い髪に小さな体、眼鏡をかけて本を読む、無表情な一人の少女だ。

私はタバサ、『雪風』のタバサ。本名はシャルロット・エレーヌ・オルレアン。
強大なるガリア王国の王族にして北花壇騎士、そしてトリステイン魔法学院の生徒。
得意な系統は風と水であり、実力はトライアングル級。使い魔はこのシルフィード。
少々肉体的成長は遅いし、性格的に人づきあいには向いていないが、メイジとしては一流だと自負している。

趣味は読書、得意なものはサイコロ博打、好きな食べ物は『はしばみ草』。
嫌いなものは…………『幽霊』。


   使い魔くん千年王国・外典 タバサ書
       第一章 タバサと幽霊


「ふんとにもう、人使いの荒い小娘なのね! タバサお姉さまは疲れてるのね! きゅいきゅい!」
「別に疲れてはいない」

私の使い魔シルフィードは、竜でありながら人語を解し、先住魔法さえも操る古代種族、『韻竜』の幼生だ。
200年ほど生きているそうだが、人間の年に直せばまだ10歳かそこら。精神年齢もそれに近く、騒がしい。
それでも知性は高いし、飛翔速度は通常の風竜より速く、ブレスも吐ける。15歳の少女の使い魔としては破格のものだ。
伝説的な韻竜だとばれたらいろいろと面倒なことになるので、彼女には人前で話さないように命じてある。
その分、こうして二人きりになると、物凄い勢いで喋り出すのだった。

「でも、あのマツシタって子供は大した奴なのね! ギーシュさまをあんなやり方で倒すとは、思わなかったのね!
 平民じゃなくて、普通のメイジでもないなら、きっとエルフか妖魔のたぐい!
 あんな先住の魔法、わたしだって見たことないの! お姉さまも気絶しちゃった! きゅいきゅい!」
「黙りなさい。うるさい」
「はい。しゅん」

マツシタとは、私の同級生ルイズ・フランソワーズが『東方』から召喚したと噂される、奇妙な使い魔だ。
8歳ぐらいの人間の子供に見えるが、見たこともない魔法を操り、一昨日ギーシュというメイジと決闘して勝った。
おぞましいことに、大量の蛙とネズミを呼び寄せて、だ。あまりのことに私の意識も飛んだ。
その後はルイズの身の回りの世話をしつつ、なにやら新興宗教らしきものを説き出したとか。興味深い。

ちなみに今読んでいる本は、シゲル・ド・ミズキ著『ねぼけ人生』。
うむ、なかなか哲学的だ。

それはさておき、まずはこちらの用事を片づけねば。
向かう先は、ガリア王国の首都リュティス。その東に築かれた壮大な王宮、ヴェルサルティル宮殿。
さらに言えば、その中のプチ・トロワという薄桃色の邸宅にいる、イザベラという少女がタバサを呼びつけたのだった。

「でも、いくらわたしが一時間に100リーグ以上は飛べるといっても、
 トリステイン国境からヴェルサルティルまでは1000リーグはあるのね! 半日がかりなのね、ふんとに!」
「だから、私は余計にこき使われることになった。もうすぐ夜になる、急いで」


ハルケギニア最大の国家・ガリア王国には、現在ジョゼフ一世が君臨している。
彼は『無能王』と呼ばれるほど魔法の才能が乏しく、性格も奇矯であり、王の器ではないと噂されてきた。
しかも彼の弟・オルレアン公シャルルは、兄の分の才能を全て奪い取ったのではないかと思われるほどの天才だったのだ。
彼は5歳で空を飛び、12歳でスクウェア級に達したという。

その上、性格も善良かつ高潔・温和であり、無能な兄をいつも励ましていた。
前の国王は臨終に際しジョゼフを次期国王にするよう命じたが、その時もシャルルは喜び、よき臣下になろうと言ったものだ。

だが、だからこそ兄は弟を深く恨み、妬み、羨望し、愛し、憎んだ。

侮蔑ではなく、同情だと? 憐憫ではなく、励ましだと?
よくも、よくもよくもよくも。お前に何が分かる、神童で天才のお前に、お前なんぞに!

兄は弟を狩猟に誘い、その途中で流れ矢がシャルルを襲った。
シャルルの妻は、娘に毒杯が与えられると知って、自らその杯を飲み干した。
そして心を失った彼女と、シャルルの娘・シャルロットは、ジョゼフの保護下に置かれた。
オルレアン公派の反乱を抑えるための、人質だ。

シャルロットは、それ以来本名と感情を捨てて『タバサ』と名乗り、騎士としてガリア王家に仕える身となった。
騎士と言っても、『北花壇騎士(シュヴァリエ・ド・ノールパルテル)』といえば、普通の騎士ではない。
いわば忍者、つまりは王家の裏の用事を執行する、汚れ役なのだ。
今タバサが向かっているのは、北花壇騎士の団長のいるところ。
その団長というのが、人もあろうに17歳の姫殿下、ジョゼフの娘にしてタバサの従姉、イザベラなのであった。


さて、こちらは夜のプチ・トロワ。
イザベラ姫殿下は、にやにやと厭な笑みを浮かべながらベッドに寝そべり、タバサの来るのを待っている。

肩まで伸ばされた青く柔らかな髪、細い目に青い瞳。ガリア王家は代々、この青い髪と瞳を持って生まれてくる。
大きく豪華な冠は前髪を持ち上げ、つやつやした額と、高貴で整った顔立ちを見せる。
生まれてこの方、苦労を知らない唇はぽってりと厚く、艶めかしい。黙っていれば立派な姫君だ。

さあ、しかしその性格ときたら……。

「姫殿下! に、人形七号さま、おいでになられました!」
「あいつに『さま』は余計だよ、人形七号で充分さ!
 そう、あれは姫君じゃあないんだ、鉄仮面だよ、ガーゴイル(魔法人形)だよ!」
ひん曲った性格のイザベラは、本日至極上機嫌だ。つまり彼女の性格にマッチした、悪だくみを思いついたのだ。

彼女は侍女を下がらせ、部屋の隅にうずくまる、黒い影たちに呼びかける。
「やあやあ待たせたね、お客さまがやっと来たようだよ!
 さあお前たち、たっぷりとあいつを『歓迎』してやんな! ケケケケケケケ」
イザベラは姫君らしからぬ、下品で粗野な笑い声をあげるのだった……。


タバサは前庭にシルフィードを下ろし、衛兵に杖と手綱を預け、彼女に食事を与えるよう命じた。
それからすたすたとプチ・トロワの建物へ入って行く。世が世なら、自分の住居だったかも知れない。

「……薄暗い」
中はやけに暗い。灯りが点いていないことはないのだが、夜の割に少なすぎる。
それに、人もいない。道は分かっているから、迷うようなこともないが……。
何だろう、この肌寒さは。むしろ、悪寒は。なにやら空気も生暖かく、生臭いような。

不意に向こうの廊下を、ふわりと光るものがよぎった。
「!」
……魔法。魔法の提灯だ、あれは。決して人魂とかそういったたぐいのものではない。
この魔法万能の世の中に、宮殿の中に、そんなあれだ、アンデッド的なものがうろつくなどということが。

ぬっ、と目の前に、壁が現れた。掌で触ると漆喰で塗ったようでも、何かのゼリーのようでもある。
おおおおお、おちくて。落ち着け。気の迷いだ、もしくは『護身完成』の証だ。
こういう時は、座って一服するといつの間にか消えているものだ。壁の下の方を棒で払うとか。

そう思って後じさりすると、どん、と誰かにぶつかった。

「あ、すいませぇん」

…………! !!! 髑髏、骸骨、ゆゆゆゆゆゆ、ゆう、霊。

ぞろぞろと私の後ろに湧いて出てくるのは、白いぼろぼろのローブを纏った、大きな頭の骸骨たち。
ひひひひ、人魂もふーわりふわり。……いやいや、これは幻だ、自分の心が見せている幻覚に過ぎない。
目を覚ませ、寝たら死ぬ。起きていても死ぬ。私は誰でここはどこだ。

「さあみんな、『はひふへほ』を唱えよう!」

ゆゆゆゆ、幽霊どもは冒涜的にもざわざわと集まり、私の周りを呪わしくも取り囲み、そしてそして。

 「は」   「ひ」
     「ふ」  「へ」
  「「「ほーーーーーーーーーっ」」」

一斉に吐き出された「ほーーー」という冷たい息をまともに受け、私は気絶した。


やがて幽霊たちが立ち去ると、『塗り壁』の中からイザベラと、縞模様のチョッキを着た子供が出てくる。
「イヒヒヒヒッヒヒヒ、のびちまいやがった! ああ、なんていい気味なんだろうねえ!
 でかしたよ、あんたは立派な使い魔だよ、キタロー!!」
「うわぁ、お褒めにあずかり、光栄です。キッヒヒヒヒヒヒヒヒ」

イザベラはなんとも嬉しげに笑いながら、少年の頭をぐりぐりと撫でる。
キタローと呼ばれた片目の少年は、じつに不愉快な笑顔で不吉な笑い声をあげた。
気絶したタバサは、侍女によって別室に移されていった。

そう、彼こそは墓場鬼太郎。昭和某年2月30日生まれ。
数万年前、人類以前に繁栄した妖怪的種族、通称『幽霊族』の末裔。
様々な異能力を持ち、係わるものを不幸と死に陥れ、行く先々に怪奇と不吉をまく怪しい少年だ。
のちにゲゲゲの鬼太郎と名乗り正義の味方となるが、それはそれ。

その有名なる彼が、なぜ王宮なんぞという晴れがましい舞台にいるのであろうか?
―――もちろん、我らがイザベラ姫殿下に召喚されたからに決まっているじゃあ、アーリマセンか。


イザベラ・ド・ガリア姫殿下は、先日ものの試しで『サモン・サーヴァント』の儀式を行ってみた。

従姉妹のタバサがスクウェア級にも迫ろうかという天才的メイジなのに、自分はせいぜいドット。
やっぱり父親の才能の違いだろうか。いやいや、あたしだってガリア王家の直系じゃあないか。
無能な父親を飛び越して、ご先祖様達のような大魔法使いにだってなれる素質はあるんだ。
けっ、あの人形娘が風竜を呼んだってえんなら、あたしは悪魔でも召喚してやろうかい。てやんでいべらぼーめ。

「……くとぅるう、ふんぐるい、むぐるうなふ……!!
 このガリア王国王女たる、あたしにふさわしい強力な使い魔よ、今ここに現れ出でな!!」

それなりに気合いを入れて、イザベラは自分の広い部屋で召喚を行う。
すると、ぽあ~っ、と気の抜けるような音がして、生暖かい風と共に何ものかが現れた。

床を見れば、貧相で小柄な少年が仰向けに倒れている。縞模様のチョッキと粗末な服を着て、片目が潰れた醜い子供。

………はい? え、なにこれ? 悪魔は、風竜はどこ? もしもーし。

「……おい、起きな。起きろよ、こら」
 「むにゃむにゃ、ねーこちゃーん、カロリーヌちゃーん。でへへへへへ……」

「………起きろっつってんだよ糞貧民!!!! こ、この×××の●○△!!!!」
ぶち切れたイザベラは、少年の大きな頭をボカッと蹴り飛ばした。
「うわぁあ、とてつもないことしやはるぅ」
少年はそう言うと、ふらふらばったりと今度はうつ伏せに倒れこんだ。

……あれですか? 始祖ブリミルのどぐされ野郎さま、こいつをぶち殺して新しい使い魔を召喚しろってか?

「おい、さっそくで悪いけど、死んでくれるね? こら、このガキ」
「わぁ、待ってくだされ! この鬼太郎が何か無礼でも致しましたかな」
ひょこっとクソガキの髪の間から、胴体と手足の生えた目玉が出てきてこんにちは。


   わ~~~
     キャーーーーッ


イザベラは劇画風のタッチで驚愕した。こりゃあ、バグベアーの珍種か?
「な、ななななんだいあんた、目玉に胴体と手足がくっついて、何だってんだい!?」
「わしゃあ、この鬼太郎の父親ですじゃ。事情によりこんな姿になっちょります。
 あのう、貴女さまは、どうやらどこかの国のお姫さまとお見受けいたしますが」

こいつは、姿はともかく口ぶりはまともそうだ。どこに口があるのかよく分からないけど。
「そ、そうさ! あたしはね、ハルケギニア随一の大国、ガリア王国のイザベラ王女さまだよ!
 どうだいモノノケめ、聞いて驚いてくれたかい?」
「ガリア? ハルケギニアですと? ふーーむ……ふむ?」
「……う、うん。知らないのかい?」

こいつらモノノケには、人間の王国の権威は通用しないのだろうか。イザベラはちょっとしょんぼりした。

とにかくクソガキ、キタローの方は気絶してしまって起きないので、目玉に話を聞くことにした。
どうやらこいつらは遠い異世界から来た連中で、結構いろんな能力を持っているらしい。
ガリアのこと、ハルケギニアのことも、基礎的な情報はこいつの方に与えておこう。

「ふうーん、まぁ能力としてはそこそこなわけね」
「ええまあ、そうですなあ。我々幽霊族というものは、昔はそりゃー凄かったんですからのう。
 そんじょそこらの妖怪よりは、格が上ですわい」
「幽霊族ってさっきから言っているけど、要するにあんたら幽霊なの?」
「いやあ、幽霊と人間に思われているだけで、単なる幽霊とは違いますな。
 霊的な能力には非常に優れておりますが、病気や死というものもありますから」

幽霊、モノノケ、妖怪変化。まあ似たようなものだ、どっちにしろ面白いじゃあないか。
それに、あのクソ生意気なガーゴイル娘は、幽霊やお化けが大嫌いだって調べはついてるんだ。
となれば、やることは一つ。

「そんじゃあ、このキタローってガキは、あたしが召喚したんだから貰っとくよ。
 あんたも保護者なら、一緒にあたしの使い魔になりな。頭は良さそうじゃあないかい」
「つ、使い魔ですと!? そんな、誇り高い我々が、人間の召し使いなんかに」
「お金は山ほどあるし、衣食住の心配は全くないよ。安心しな、そんなにこき使いはしないから」
「し、しかしですな」
「ぐだぐだ言ってるとガラス瓶に詰めちまうよ。とにかくあたしは決めたんだ、有り難く使い魔になるんだね!
 『我が名はイザベラ・ド・ガリア。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我が使い魔となせ』!」

気の短いイザベラはさっさと鬼太郎との契約を済ませ、使い魔にしてしまった。
こうなると、使い魔のルーンの効果で主人への好意が刷り込まれ、いいなりではないにせよ離れがたくなる。
そしてイザベラの、さっきの悪だくみが始まったというわけだ。

「とほほほ……まあ、姫さまなんちゅうもんは気まぐれじゃから、いつかはわしらを解放してくれるじゃろう。
 当分カネや衣食住に不自由はせんし。どこへ行っても自由さえあれば、住めば都なんじゃがなあ」


ガラガラガラと、大都市リュティスの大通りを、割と豪勢な馬車が駆けてゆく。
それに乗っているのは、煙草をくゆらせた貧相な子供だ。道をぶらついていた乞食が、彼を見て仰天した。

「アッ、鬼太公じゃねぇか!? きさまー、就職したなあ!?」
「なあんだ、ねずみ男くんじゃないか。イザベラ姫殿下に召喚されてね、はひふへほ!
 チョコレートのかけらぐらいなら、恵んでやってもいいぜ。それとも煙草がいいかい、ケケケケ」

鬼太郎は、煙草のけむりをふーーっとねずみ男に吹き付けて去って行った。

「けえーーっ、ばかにしやがってこん畜生! 成金のブルジョワ野郎!
 俺さまだってなあ、その気になりゃあいくつもの店舗を経営して実業家になれるんだからな!
 この国の姫様だかには税金納めてやんねえぞ! そこから転落したときに、ほえづらかくなよぉ!!」

どうも、彼も誰かに召喚されたらしい。あまりの不潔さに追い出されたのだろうか?
発奮したねずみ男は、間もなく地図と風竜を盗んで遥かトリスタニアへ向かい、
そこの武器屋と秘薬屋を乗っ取って商売を始めるのだが、それはまた別の話。

(つづく)


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