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虚無を望む死霊の王

『滅びを望むのならば…与えよう…』
黄金に輝く闇が囁く。
『彼』は心の底から恐怖した。いま自分の目の前にいる存在に…
『彼』は心の底から後悔した。自分が犯したあまりにも大きすぎる失態に…
“アレ”からは逃れられない…本能的に理解してるはずなのに、自分は悲鳴を上げながら逃げ出していた。
逃げた、逃げた。恐怖しか考えられない頭で必死に逃げ続けた。
――――それでも、それは結局無駄なこと…すぐに“アレ”が後ろに迫ってきた。その『無』が、
全ての存在に平等に配られる『滅び』そのものが自分を包み込もうとする。


『宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!神聖で、美しく、
そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!』

―――刹那、その声は聞こえた……




「ふぅん……」
小高い丘から、『彼』はそれを眺める。
夜の闇の中、進軍を続ける見渡す限りの人間を…いや、トロールも竜もいる、7万もの大軍の兵達を。
普通ならば驚愕するようなその光景に、しかし、『彼』は特に何も興味を示さないといったふうにゆっくりと
大軍へと歩み寄っていく。一つ、思っていることを述べるとすれば―――
「……小さいなぁ……」
ポツリと呟いて、『彼』はただ一度、パチンと軽く指を鳴らした。
その瞬間……

先陣を歩いていた数百の命がその一瞬で『消えた』


突然の事に兵達に同様が沸き起こる。
落ち着け!冷静さを欠くな!と怒声を上げる士官だったが、彼自身内心何が起こったのか理解できていなかった。
ただいきなり、最前線にいた騎兵隊たちがバタバタと倒れだし、確認した時には既にその全てが事切れていたのだ。
パニックになりそうな自分の頭をなんとか抑え、再び視線を前方に向けた。
その時、彼の視線の先には夜の闇の中に、まだ十五にも満たないような小さな子供が、静かに佇んでいた…
その少年がニッコリと無邪気そうな笑みを浮かべると、またそっと片手を挙げ…パチンと指鳴らしをする。
瞬間に……その士官も、周りの大量の命と共に消えていた……

少年に気付いた兵達が、ようやくその手に武器を、杖を取り一斉にその子供に向かい攻撃を仕掛ける。
しかし、刃を持った者達が一斉に斬りかかろうとすれば、

バンッ

刃が少年に届く前に、剣を持つ者たちの体が風船の割れるような音と共に弾けとぶ。
メイジの騎士たちが少年に向け何十、何百にもなる魔法を放てば、少年は避けようともせずにその全てを身に受け…
爆炎と粉塵の後には、何事も無いかのように無傷の少年が変わらぬ笑みで佇んでいた。
そして少年がスッと人差し指をメイジたちに突きつけ、その指先をほんの少しだけ動かすと、
メイジたちの地面から突如夜の闇よりなおどす黒い何かが吹き出し、
周りにいたオーク兵と上空の竜騎士達ごと呑み込んだ…
屈強な体を持つトロール鬼が少年を叩き潰そうと棍棒を振り上げれば、
少年は少しだけ顔を上げトロール鬼と目を合わせる。
目を合わせる……ただ、それだけで、

ボヂュッ…

トロール鬼達の頭が無くなった……

指を鳴らす。そうすると200くらいが消えた。視線を向ける。今度は300の命が消えた。
消える。消える。大軍が、とてもあっけなく、他愛も無く、どんどん消えていく。
その様を眺めながら……深くため息を着く。
……弱い。脆い。小さい。つまらない。
自分と命をもっている存在では、あまりにもその力の差が大きすぎる。
命を持つものには必ず『死』が来る。だが、自分にとって『死』はただの玩具に過ぎない。
『母』に削り取られた力はもうほぼ完全に回復している。
その証拠に今度は少し力を込めて指を鳴らす。……ほら、今度は2千以上が消えた。
そもそも自分は、自らが戦うことを好まない。命を持つ者とやったところで差がありすぎて面白くない。
それよりも計略を練り、相手を自分の手の上で躍らせるほうが自分好みだった。
だったら、なんで自分はこの場でこんなことをしている?
向かい来る者を、中には逃げ出そうとする者の命を、無造作に消していきながら考えてみる。
…すると、あるはずのない脳裏に、自分を呼び出した少女が、珍しく自分に微笑んだ時の表情が浮かんだ。
「………まさか、ね」
しかし、すぐに頭を軽く振ってその考えを消す。確かに彼女には形式上『助けられた』形にはなる。
とは言え、それに恩義を感じるわけはないし、第一そんなものを人間に感じた時点で魔族として失格だ。
自分は滅びを望む者。自分の主である彼女…そしてこの世界に存在する『虚無』の力を使う者…上手く使えば、
自分の理想……世界と共に迎える破滅を実現できるかもしれない。
だからまだ彼女はこの場で死なせるわけには行かない。
だからまだ生かす…そう、自分自身に言い聞かせて、少年は…冥王と呼ばれた人ならざる存在は一人で納得する。
「うあああああああああああっ!!!」
その時、一人の兵がほとんどヤケクソの状態で自分の頭上から剣を振り下ろす。
しかし…魔力の込められて無いそれは金属の塊でしかなく、少年の体をすり抜け地面に切っ先が突き刺さった。
それを呆然と見た兵の顔が、見る見る恐怖に歪んでいく。
………うん、やっぱり恐怖と絶望を浴びること自体は好きだ。甘露で…美味い…
「ばば、ば、化け物…化け物ぉぉぉぉぉぉ!!!」
「うん、そうだよ」
兵が絶叫し、それに少年が笑みで応える。次の瞬間、その兵の体が、肉が、徐々に膨れ上がっていき……
そこには、自らの体から湧き出る蛇に肉を喰い続けられる大きな肉の塊が転がっていた…



彼女を乗せた船はもう此処から離れているだろう。
もう少し派手にやってもいいかもしれない。
…なんでそのことに自分が若干ホッとしているのかわからないが……
「…まあいいや。とにかく、もうしばらくはこの面白くない計略を楽しもう」
誰にとも無く呟くと、ゆっくりと歩き出し肉塊の横を悠然と横切る。
残っていた兵達が慌てて各々の武器を少年に向ける。しかし、
その顔に誰もが浮かんでいるのは…どうしようもない恐怖…
少年はスッと片手を高く上げる。兵達の恐怖を感じながら…その手にゆっくりと力を収束させていく。

自分は破滅を望む者…破滅のために一人の少女を生かそう。少女を生かすために、この場の命を消そう…

手の平に集まった力…それをそっと…解き放した…



そして 全てが 消えた



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