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伝説を呼ぶ使い魔-06


学院長室にも二人『観客』がいた。
遠見の鏡でしんのすけのゲーム状況を見るのはオスマンとコルベールだ。
遠見の鏡に映る光景を見てコルベールが驚愕した顔で口を開いた。
「あの人並みはずれた動き…。やはり彼こそが伝説の使い魔だと言う事なのか…。」
「いやちょっと待たんかい。」
オスマンが冷静かつ的確にこの状況の矛盾点を突き詰めた。
「ミスタ・コルベール。その『ガンダールヴ』の特徴をもう一度『正確に』説明してもらえんか?」
「は、はい。彼のルーンを調べたところ、該当したのは始祖ブリミルの使い魔と言われた伝説の存在。
背中に差した剣を用いて呪文の詠唱時間の長い主を守ったという、神の左手『ガンダールヴ』です。」
「で?その能力と発動条件は何かな?」
「えっと、その能力さえ手にすればたとえ元がただの一般的な平民でも、
武器を持つことで身体能力があがり、さらにその武器の使用方法が手に取るように理解できる…。」
「うむ。君は確かにそう言ったな。ではわしから一つ質問がある。」
オスマンはもったいつけるように一回空咳をしてから言う。

「彼の武器というのはいったいどこにあるんじゃ?あのスッカスカの旗だとでも言うのかね?」

コルベールが俯いた。顔には汗がにじむ。
表情からは驚愕と同時に戸惑いも感じられた。
本当は信じたくないが渋々認める。と言った感じにコルベールが話す。
「わかってます…。本当は私だってわかってるんですよ。ガンダールヴの発動条件が武器を持つことである以上、
あの身体能力は元々素で持っていた物でないとおかしいと言うことは…。ただ、アレを信じろというのですか?
あんな子供の身で、メイジをも上回れるほどのポテンシャルを持ってるなんて…!」



一方、傍観していた生徒たちも使い魔の目を介して行われるマリコルヌの実況を聞いて目を丸くした。
実際に見ているマリコルヌもあいた口が塞がらない状態だ。
あの平民の、それもまだ5歳くらいの子供がギーシュを押しているという台詞を聞き、誰もがマリコルヌの冗談だと思った。
しかしその現実は覆らない。
そしてその実況を聞いて一番驚いた少女が一人。他でもないしんのすけの主人、ルイズだった。
「あんな子供が…。メイジを押しているですって…?」
現実離れした話にとても驚いていた。ギーシュは確かに土の『ドット』クラスのメイジ。
メイジとしては冴えない伸び悩みした実力だし、少々自信過剰で隙だらけと言ってもいいだろう少年だった。
だがそれでも魔法も使えない平民の子供に遅れを取るようなタマじゃあなかったはずだ。
そして誰もがマリコルヌを、自分の耳を疑ったしんのすけの動き。
普段のおちゃらけただけのイタズラ小僧にしか見えない彼からは想像もつかない。
だが、他人に指摘されていたらルイズは驚いていただろう。その情報を聞いたルイズは、誰よりも嬉しそうな顔をしていた。
「…使い魔としての実力は、申し分ないんじゃない?」
ツン、と横にそっぽを向いたルイズはそう口を尖らせて言った。

そしてその中にもう一人、安堵の顔を見せていたのはシエスタだ。
「シンちゃん…。無事なんですね…。」
そんな時、近くが騒がしいのに気づく。騒ぎの原因はシエスタの同僚の二人のメイドだ。
腰を低くして地面に落とした何かを探すように辺りを探っている。
「ローラ?ドミニック?一体どうかしたの?」
「シエスタ…。ちょっと聞きたいんだけどさ、この辺りですごく変わったヤツを見なかった?」
変わったヤツ。はて、誰のことだろうか。
今のところ変わったヤツと言われて思い浮かべるのは今戦っているしんのすけくらいだ。
だがこれだけの騒ぎを起こしているしんのすけに気付いてないはずがない。
「さあ…。どんな人?」
「あ、いや、人じゃあないの。でもなんというか変わったヤツで…。」
「でも誰かの使い魔という訳ではなかったみたい。ルーンもなかったし。」
シエスタは首をかしげる。どうもイメージが伝わってこない。
「だから…。もう少し具体的に教えてくれないと私も探せないよ?」

「「羽毛布団(わたあめ)のようにフワフワしたとても可愛らしい(気味の悪い)動物だったわ!
今思い出しただけでも顔がニヤけちゃう(背筋がゾクゾクする)わ!!」」

賛否両論。うっとりしているローラを尻目にとりあえずシエスタはやけに怯えているドミニックに話しかける。
「えっと、やけに批判してるけどどうしたのドミニック?」
「私だって最初は可愛いと思ってたわ。でもダメ…騙されてはダメよ。アレは愛玩用ぬいぐるみの皮を被ったモノノフよ…。」
何があったのか、顔に大汗をうかべるドミニックだった。




現在の得点 しんのすけ 7-3 ギーシュ

洒落たデザインの旗を持ちながらヒラリと、空中ブランコから着地するしんのすけ。
ギーシュから奪い取った手持ちの2本のフラッグを持って再び院内に逃げる。
「あと12分!この旗を持って逃げ続ければオラの勝ちだゾ!」
そう言って腕の腕時計に目をやる。
腕に書いただけの時計でどうやって判断するのかは疑問だが。
「うーん。後は『誰』が集めてるのかな~。いるはずなんだゾ『探し当てる誰か』が。…お?」
歩いてくる影があった。
それは人の姿をしていた。しかしカチャカチャと金属音を立てるそれらは全身が青銅色をしている。
鎧を着た人間ではない。鎧なら普通は鉄製の物を使うだろうし、何より人が入るには少し細すぎる。
「きっと戦闘員だ…!魔法で動くロボット戦闘員を作ったんだ!
こいつらがギーシュ君に協力してるから旗がどんどん見つかってるんだ!」
ゴーレムを戦闘員と仮定してワルキューレの正体を割り出すしんのすけ。
そのまましんのすけは柱の下に旗を置いてワルキューレの前に出る。
「旗はここだゾ~。やーいやーい!ここまでおーいで!背中が
すすけてるぞ~!おケツがユルユルだゾ~!!」
だがワルキューレからの返事はない。しんのすけの挑発を一度立ち止まって見ることもせず、
まるでしんのすけの存在に気付いてないかのように前に進んでいく。
しんのすけも少しカチンと来た。
「…無視ですか。」
おのれどうやってこらしめてくれようかと憤るしんのすけ。
だが何気なく顔を見たときだ。気付いた。ワルキューレに『目』がついてないことに。
そして事が起こったのはしんのすけの横を通り過ぎようとした時だ。

急に旗を隠した柱に向きを変え、激突する勢いで前進を始める。

「おお!?旗の隠し場所がバレてる!どこに隠してもわかるのかな!?」
大急ぎで旗を横取りするためにワルキューレの横をさえぎるしんのすけ。
一手、ワルキューレが先に動いたにもかかわらずしんのすけが先に旗を取る。
ワルキューレが思いっきり壁にぶつかって頭部が少しへこむ。
だが、ワルキューレが今まで見えてなかったしんのすけが見えるようになったように追いかけてきた。




途中躓いたり壁にかすったりしてるのを見てもワルキューレに目がないことがわかる。だが。
「アイツ目がないのにどうやってオラを探してるんだ?…やっぱりオラの推理が正しいって事なのかな?」
首をかしげ考えるしんのすけ。せいいっぱいのスピードで逃げれば振り切れそうだが、
相手はゴーレム。スタミナなど関係ないだろうから長い時間正確に追い続けることが出来るとなればしんのすけが不利。
「うーん。もーめんどくさいから、投げちゃえ。」
ポイッ、っと本当にあっさりとしんのすけは旗をダーツを投げるように投げる。
一本目はうまくどこかの部屋の中に落ちたが、二本目は壁にぶつかって落ちていく。
「今のうちにダーッシュ!!」
しんのすけは他の旗の隠し場所を目指して逃げた。

一方ギーシュは相手の実力を考え、まずはしんのすけが隠したフラッグから先に探す。
学院の地図を真剣な顔つきで睨みながら目的地に向かう。その顔には汗がたれる。
「全く…。ただ力の差を見せ付けるだけの戦いにあまり時間をかけさせるんじゃあないよ。
魔法、ゲームの年季、そしてこの『トリック』!この圧倒的な差!絶対に勝利などできるものかッ!」
あの後ギーシュはすでにしんのすけの隠した旗を2つ見つけていた。つまるとこ現在イーブン。
しんのすけのスピードが速く、追いかけるのを諦めたが、それならまず隠した全てのフラッグを潰してから
追跡を始めたほうがよっぽどいい。そう思って集めていた時だ。
頭に衝撃が走る。頭の上に何かが落ちてきた音だった。
「イデッ!!なんだこれは!?」
落ちてきたのは、旗。
さっきからずっと取り合っていた青銅の旗だった。
「得したが…。なんだこれは?いったいなんでこんな物が…。近くにいるのか?」
ブツブツ言いながら先を進む。
頭上でもう一本旗が吹っ飛んでたのに気づかず。

しんのすけ 4-6 ギーシュ


…かに思えたが。
「ムッ!?いま頭上を!?」
ギーシュが不自然なほど感良く気づく。その旗は窓の中に飛び込んでいくところだ。
「あの窓から飛んだのか?あの辺りにワルキューレがいるな…。追い詰められて投げたなら
罠の可能性は低い。取りに行くか。」
ギーシュは迷わなかった。さっきからしんのすけには自尊心をくじかれまくってるのだ。
さっそうと拾いに行くため後ろを向く。
その時だった。

…ササッ!!

「…!!?」
一瞬、目の前を何かが横切った。
「アイツか?自分で投げた旗を自分で取りに行ったのか?」
ギーシュは身構える。しんのすけがまた自分になにかをしかけてくるかもしれない状況。
またしんのすけの手玉にとられるのはグラモン元帥の四男としても黙ってられない。
さっきまでの軽くあしらってやろうと言った余裕などすでにない。
それ自体がすでにしんのすけのペースに飲まれてることにも気づかない。

走っていった影を追っていく。
だが曲がった瞬間にギーシュの目に映ったのは。


――――――目に映った物は。

道端に落ちている一本の旗だった。

「…すっごいわかりやすッ!!?」
と言うのがギーシュの第一印象。
そりゃそうだ。あまりにも不自然に旗がおいてあれば誰だってそこに罠があると
感づくに決まっている。
ギーシュは通路の奥を睨む。
(ヤツめ…。向こうで慌てふためく僕を見てニヤニヤ笑っている図が目に浮かぶ…。
きっと罠があると気付くことを想定してるな…。まだ4本も余裕があるから。
だがいくらなんでも…舐めすぎだッ!)
ギーシュが杖を出す。狙いは目の前の旗。
「『レビテーション』ッ!!」
旗がギーシュの思い通りに空中に浮く。そして思いっきり近くの床を叩きつける。
すると、目の前に隠されていた細い紐がまるで近付いてきた者を吊るし上げるためにわっかを作って
空中に浮く。誰もひっかかってなどいないのに。
「そして!お前の事だからもう一つ用意しているだろう!?僕がこの仕掛けに気付いた場合に
得意げになっている僕の不意を打つトラップを!『ワルキューレ』!!」
花びらから青銅の人形が生まれ、ギーシュの頭上に拳を振るう。
ゴインッ!!と落ちてきたタライを弾き飛ばし旗を手元に引き寄せる。

しんのすけ 3-7 ギーシュ


「おおっ!!作戦しっぱーい!!」
少年の甲高い声が聞こえる。
二重トラップが破られ、しんのすけが慌てて飛び出した。
ただし。しんのすけが飛び出してきたのはギーシュの背後。
「あれ!?後ろに!?さっきのはしんのすけではなかったのか!?」
ギーシュの後ろを取ったしんのすけが走り出す。ギーシュとの距離を一気に狭める。



そしてしんのすけがホルスターから愛銃を引き抜くように手で銃の形を作る。
そしてギーシュの背後2メイルほどまで狭めたところで回転を加えるようにジャンプ。
狙うは…ギーシュのケツッ!!

「必殺!!ドリルカンチョーーーーッ!!」

「かゆうまッ!!?」

クリンヒットッ!!ギーシュはまともにしんのすけのドリルカンチョーを食らう。
しんのすけが技を決め終えたと同時にしんのすけは逆方向に逃げ出す。
そして角を曲がるところで何かを拾って駆け出す。おそらく、いや間違いなく旗だ。
「ぐう~~~ッ!!待てッ!!」
ギーシュが尻をおさえながらしんのすけの後を追う。
涙目になりながらもギーシュは勝ち誇ったようにしんのすけの後姿を見て笑う。
(どこまでもこけにしやがって…。だが僕の勝利がゆるぐもんか。僕には必勝のトリックが
あるんだ。加えてこのワルキューレ。残り時間は残り8分と言った所だが数で押せる僕なら
問題なく勝てるはずッ!あんなガキに…解けるはずがない。負ける要素なんてあるわけないッ!!)
ギーシュが全力疾走を行う。だがしんのすけは余裕そうに後ろを向き、旗を隠すようにかかえながら言う。
「さぁーてここで問題!残る旗はあと3本!オラは今何本旗をもっているでしょーか!?」
ギーシュの不意をつくような質問だった。一瞬『トリック』が解かれたかと思ったがそんなはずない思い直す。
(何と答えようかな…。『ウソ』をつくべきかあえて『本当』の答えを言うべきか。
3本とは言えないな。窓の中に飛んでいったのを見てたかもしれない。どうしようかな?
1本?2本?わざとウソをつくか本当のことを言うか。)
だがギーシュは食堂の角に逃げた時にしんのすけに向けて大声で言い放つ。
「さあね?体で隠されてはわからないんだが…。カンで答えるとするなら『1本』じゃないかな!?」
ギーシュが食堂の入り口を通り過ぎて答える。
そこにはもう逃げるのをやめたしんのすけがたたずんでいた。
得意げな笑顔を見せて言い放つ。
ニヤニヤ顔で言い放つ。

「正解!答えは『1本』だゾ!!」

ギーシュの答えは正解した。しかし正解したギーシュの見せた表情は…驚愕だった。


「え……?」
ギーシュの顔から笑みが消える。かわりに驚愕と焦りが見て取れた。
(な、なんで…。そんな、なんで、だって…!)
「おやおや。どうしたのかな?せっかく正解したのにその表情。まるで『クイズ大会で八百長してわざと答え間違えて
上司のポイントを上げようとしたのにうっかり正解して上司を脱落させてしまった部下』みたいに焦ってるゾ?」
そう言ったしんのすけの姿はさっきまでの赤いシャツに黄色の短パンといった格好ではなかった。
青いボタンの付いた上着に短パン、蝶ネクタイに腕時計、大きな伊達メガネをかけ、坊主頭の後ろは少しハネている。
「なんだその格好。さっきも姿が変わっていたな。さっきはモミアゲが伸びていたが。」
「フフン。オラはその場その場で姿を変える出たとこ勝負のヒーローなんだゾ。」
「その場合は臨機応変って言わないか?どっから用意したソレ?本当に何者だよキミは?」
しんのすけがメガネを手にかけて言う。気取った決め台詞を言い放つ様に。

「後藤 コシン。探偵だゾ。」

「なぜ後藤?…まさかアレか?僕がルールに反した行動でも取ったとでも?」
ギーシュが顔に汗をうかべてしんのすけに問う。
しんのすけはそんなギーシュを追い詰めるように続ける。
「魔法は使ってもかまわないからそういう魔法を使えわれてたら言い逃れできてたかもしれないゾ。
だから最初にね、ルイズちゃんに旗を確認してもらっておいたんだゾ。そしたら魔法によるインチキはどこにもないし、
そもそもギーシュくんにそんな魔法は使えないって教えてもらっていたゾ。だから探知しているとしたら
ルールに反したインチキ以外にありえない。例えば誰かがギーシュくんに旗のありかを教えているとかね。」

マリコルヌの実況を聞くルイズも頷いた。
「そ、そうよ…。アイツに聞かれた通り言われたから調べたけどそれらしいものはなかった。
魔法で探っている線はないわ…。」
「でもそれだったらどうして…。」
シエスタも疑問を浮かべる。しかし真相はおそらく戦場にいる両者のみぞ知る。


しんのすけの鋭い発言にギーシュが一瞬ドキリとするが言い返す。
「な、僕に旗の隠し場所を教える協力者がいるとでも言いたいのかね!?」
「そのとーり!オラを追いかけてた時も見逃した時も真っ直ぐ旗のある部屋に行ってたよね。
途中で4ッつくらいドアはあったはずなのに!あの部屋にはすでに旗が隠れてるかもしれないと思わせるよう
散らかしておいたはずだゾ。なのにこうもスムーズに見つかったのはどーゆーこと?」
「全部憶測に過ぎない。君の仮説はでっち上げだ。キミほどの人間ならそういう怪しい人物がいたら
すぐに見つけられるだろう?隠れても無駄そうだしね。キミのポテンシャルのほうがむしろその仮説を不可能に…。」
「いいえ間違いありません!そしてその証拠はさっきの旗の数の質問の時点でバッチリだゾ!」


しんのすけはさらに推理を話す。
「まず最初に考えたのはあの戦闘員たちが自動的に旗の場所を犬の鼻で探るように感知して追っかけてくる可能性だゾ。
でもあの青緑っぽい戦闘員には間違いなく目がなかった。それに自動で動いてるにしては少し動きがザツーな感じだったしね。
さっきご本のお部屋に行ったゾ。旗を隠してたあたりの本がものすごく散らかってた。
後であのモンモンのお姉さんとかに聞けばわかるかもきっと裏はとれるはずだゾ。その戦闘員はギーシュくんが手動で動かす操り人形だってね。
その腰のお城の地図を見れば離れていてもおおまかに動かす事ができるかもしれないしね。」
ハッとしてギーシュが腰の地図に目をやった。そしてしんのすけに目を戻して思う。
(目ざとく見ている…!バカなのか天才なのか…わからないヤツ…!)
「ではどうやって探知したのか?確かに誰かが教えてるにしてはなかなか見つからないゾ。オラはね、
こう見えてもかくれんぼの名人なんだ。あの手この手で隠れ場所を考えるし、それを応用して
相手の隠れ場所も考え出せるから見つけるのも得意。ギーシュくんくらいの年の人はもう見つかってもおかしくないはずだゾ。
どうして見つからないのか?そこで思い出すのがルイズちゃんとシュークリーム先生の証言だゾ。」
「もしかしてシュヴルーズ先生か?」
「そうとも言うゾ。まずルイズちゃんが言っていたのはこのセリフ。」

―――――使い魔は主人の目となり耳となる能力が与えられるの。
―――――使い魔は主人の望む物を持ってくるのよ。

ギクリとギーシュは心臓が早鐘を打っているのに気が付いた。
「使い魔の…能力…!!」
「オラの友達にね、四郎さんと言う大学生の人がいて、これが大学に入るまでよくお世話したんだけどね、
四郎さんは人並みにグラビアを集めたりしてるわけだけどその中にマンガ本もあったことに気が付いた。
勝手に探ったら怒られたけど。そのマンガで知った話らしいだけどモグラって人間と比べて目は見えづらいらしいけど
鼻は犬並みにいいって聞いたぞ。きっとあの大きなモグラさんも鼻がいいんだろうね。自慢のモグラだって言ってたし。」
「ヴェルダンテ…!!」
この局面でヴェルダンテの話題を出してきた。
もうダメだ。間違いない。コイツは気付いている。ヴェルダンテのトリックに。
(じゃあさっきヴェルダンテが数を『間違えた』のは…!)


しんのすけはギーシュにトドメをさすように告げる。
「魔法のモグラさんだからこのお城全体を地下から嗅ぎ取ってるとしても問題は何を嗅ぎ取っているのか?
モグラさんは旗に付いてる何を嗅ぎ取っているのか?なにかこのゲームをするうえで何か余計な物がないか?
そこでさっきのシュリンプカレー先生のセリフ。たしかドットからスクウェアのレベルがあるっていってたかな?」
「だからシュヴルーズ先生だから!」

―――――私は土系統のトライアングルですから『錬金』できるのは真鍮が限界。ゴールドは『スクウェア』でないと
錬金できませんし、そのスクウェア・スペルも精神力の回復に多くの時間がかかりますからお金持ちになるのは
少し難しいですね。

「ゴールドが難しいのは珍しいから?めったに鉱山とかから掘り出されないからイメージしにくいとか?
それはわからないけどとにかくゴールドも難しいならこういうのを『練乳あずき』するのは難しいんじゃない?」
「だから錬金…!!」
ギーシュが目を見開く。
しんのすけのポケットから出てきたものはブローチのような赤い宝石。ルビーだった。
少し大きなルビーの装飾はもう片方の手で持っていた旗の端にも付いていた。
「全部の旗についてたね。コレ。でもコレギーシュくんが作るには少し難しくない?
テレビで言ってたぞ。ルビーはサファイアの何倍も珍しい宝石で価値もすごくデカイって。
『そんな物』をドットのギーシュ君が作るには少し難しいんじゃない?そういうのは後で聞けばわかる話。
今大事なのはギーシュ君がインチキができる状況で、それを実際にやってるかもしれない疑惑のほうだゾ!」
しんのすけは勝ったように言う。メイジという圧倒的な力を持つ物の一端に平民の5歳児が。

「ギーシュくん。反則負けでオラの勝ちだゾ!!」



その時だった。バキンッ!と音を立て床から手が伸びる。
その手はしんのすけの足を確実に掴んだ。
「え?うおおー!動けないゾー!!」
地面から伸びる土の手がしんのすけを拘束する。
そのしんのすけに近づくのはギーシュだ。大汗をかいていたはずだがその顔には余裕がある。
「『アース・ハンド』。土系統のドットスペル。地面から手を伸ばして相手を掴む技だが
得意げにしゃべってるキミには簡単に使ってやれた!!」
ギーシュがしんのすけから旗を奪う。

しんのすけ 2-8 ギーシュ

そのままギーシュはしんのすけの襟を掴んで持ち上げる。
しんのすけはそのまま空中でもがくばかり。
「はなせ!ひきょーもの!!」
「卑怯とはひどいな。…まあ確かに驚いたよ。僕の必勝トリックを見破るなんてすごいじゃないか名探偵。
そうとも。僕のヴェルダンテは宝石に目がなくてね。一度覚えた宝石の匂いを覚えてそれを探し当てることができるんだ。」
「ゲームはオラの勝ちのはずだゾ!」
「そうかな?キミは一番大事な事を忘れている。僕が出した条件は『お互い、メイジも平民も
どちらの味方もしてはならない。』だぞ?メイジでも平民でもなく使い魔のヴェルダンテを協力させて
なにかルールに反したことをしたか?」
「メチャクチャズルイゾ!クッソー!そんなのナシだゾ!!」
しんのすけが断固抗議する。しかしギーシュはどこ吹く風だ。
今にも歌いだしそうなノリでギーシュは言う。
「ルールに則っているんだ。文句を言われる筋合いはないね。それに本物のメイジを相手にする時はそんな
文句など一切聞いてくれないぞ?自らの使う魔法。使い魔の有効な扱い。それらができてこそメイジなんだ。
力も味方も持たないキミが悪いね!」
なんというズルの正当化。モンモランシーはまちがいなく引いているだろう。
おそらく勝っても損するギーシュがワルキューレを集めて言う。
「僕はすでにヴェルダンテを最後のあの旗が飛んでいった部屋に向かわせている。これを僕がとれば9点だ。
だが最後のルビーの取れた旗のありかはどうしてもわからない。なあ教えてくれよ。最後の旗はどこにあるんだい?
ルール上殴る蹴るはダメでも、キミが吐くまでワルキューレにジャイアントスイングをやらせてもいいんだよ?
あきらめて負けを認めるんだ!ノハラシンノスケ!」
いくらしんのすけでもずっと回されてたら確実に具合を悪くして最悪吐くだろう。
勝ち目のない戦い。もうギーシュは止められない…。


―――――そう絶望しかけたその時だった。
「ど、どうしたんだヴェルダンテ!?」
「??」
しんのすけを掴んでいたギーシュが急に焦りだした。何が起こったのかは分からない。
「何?襲われた!?噛まれただって!?バカな!どういうことだ!?」
ヴェルダンテの声を聞いたギーシュはしんのすけを睨む。
「何が協力者を使うなんて卑怯だ!!自分こそ同じ手を使ってるじゃないか!!誰に襲わせたんだ!?」
「え?いや、オラ知らないぞ。」
「ウソをつくんじゃないよ。他に協力者がいるんじゃないのか?どうやってマリコルヌの目をかいくぐって
来たのかは知らないけど!」
しんのすけにはワケがわからない。そりゃ自分は最初から一人で戦うつもりだったのだ。
1対1にルイズやシエスタを巻き込むつもりはない。
「本当に知らないゾ!!」
「いいかげんに…どうしたヴェルダンテ?何?こちらに近づいているだって!?
だが人影などどこにも…ウボァッ!!!」
ギーシュが何者かの攻撃をわき腹に受けた。
その拍子にしんのすけが華麗に着地した。すぐにしんのすけは誰が自分を助けてくれたのかを確認する。
「アン!アン!」
「お、お前は…!」

しんのすけを助けた『ソレ』は人間ではなかった。だが決して化け物でもない。
旗を咥えていた『ソレ』は真っ白い毛に覆われていてフワフワとした印象をもっている。とても可愛らしかった。
まるでわたあめを思い出させるかのような外見。しんのすけの愛用の兜を被っていた生き物だった。
それは犬だった。しんのすけに拾われてからずっと彼の相棒を勤めてきたしんのすけの愛犬だった。

「おおッ!シロ!おまえも来ていたのか!!!」

―――――――シロ。彼はそう呼ばれていた。


「い、犬だ!平民の犬がギーシュにフライングクロスアタックを決めた!!」
「い、犬!?犬ですって!?シンノスケの!?」
「シンちゃんの…犬なんですか?」
ヴぇストリの広場にいた面々が口をそろえてざわめきだしていた。
しかし、疑問に思ったキュルケがルイズに聞く。
「でもなんで彼の犬までこの学院にいるの?」
「さ、さあ?」

兜を被った自分の愛犬と再会を喜ぶがしんのすけが疑問を抱いていた。
「でもシロ。どうやってこの世界に来たんだ?」
「アヴウウウウ…。」

シロがここにいる理由。簡単だ。ルイズはしんのすけを呼ぶ時同時にシロを呼んでいただけだ。
逃げたところですでに召喚されているしんのすけとリードが繋がっているから必然的にシロも呼ばれざるを
得なかったのだ。
しかししんのすけにとってそんな理由はどうでもいい。
再会を喜んでいる横でギーシュが起き上がっていた。周りにはすでに7体のワルキューレを。
「フン!キミだってインチキをしてたみたいじゃあないか!」
「インチキじゃないもーんだ!平民でもメイジでもないシロは戦っていい。そういったのはそっちだぞ。」
しんのすけの挑発に対しギーシュは余裕の笑顔で返す。
「だからどうしたんだい?こっちは7体のワルキューレ。そっちはそんな小さな犬っころじゃないか。
殴る蹴るはダメでも、掴んで捕らえるのはいいルールだったはずだよ。」
「それでも!オラは負けない!シロの持っている旗を守りきって!シロが逃げ切ればオラの勝ちだゾ!」
そう言って淵に隠しておいた物を武器にかまえ、シロの被っていた兜を受け取って被る。
「10本目の旗…。そこにあったのか。」
「シロ!遠くまで逃げろ!」
「アン!」
負ける気はしなかった。その兜はしんのすけの本気の覚悟の表れだった。
そしてそれに答えるために。
『宝石を取り外すために叩きつけて割れたことで、先が鋭利な得物と化していた旗』が答えるように、
無論そんな使い方をする気はないが、その左手は光った。

学院長室の二人は突然驚愕した。
「オールド・オスマン!ご覧ください!あの印は間違いなく!」
「やはり彼が…しかし、彼すごいの。犬の扱い方といい、あの頭のきれっぷり。
一人で4つの使い魔こなせるんじゃあないか?」
「ええ。彼の基本スペックが優れているのはわかりました…。ですが、だからこそ恐ろしい!」
コルベールは正直に心の半分を埋め尽くす恐怖を打ち明ける。
その顔は強張っていていやな汗がにじみでている。緊張している証拠だ。
だが残る半分を埋める期待が彼のセリフを続ける。
「ただでさえ超人的な彼が…『ガンダールヴ』の力を使ったらどうなってしまうんだ!?」
神の左手、ガンダールヴ。
その力があればさえない17歳の少年ですら7万もの軍勢と渡りあえる超人的な力。
これが、

ただでさえ超人的な野原しんのすけという少年に発揮されたらどうなるか…!?

答えはすぐにやってきた。
この1分に満たない時間。野原しんのすけは。
全ての人間を超えた。

「見て!食堂にいるわ!!あの二人は食堂よ!」
ヴェストリの広場からすぐに食堂にたどり着く。窓ごしにみることすら可能だった。
「シンノスケ…?」
「シンちゃんの手が…光ってる!?」
ルイズは、シエスタは、そのおかげで見ることが出来た。
1分にも満たないしんのすけの戦いを。




その瞬間しんのすけの瞬間的スピードは新幹線を越えた。
リニアの領域まで来てるかも知れない。
「は、速い!?」
一番近くで見たギーシュですら信じられない速度だった。
見物していたキュルケとタバサは目を見開く。
「い、いつのまに…!?」
タバサは何も言わない。無口だからではない。
あまりの速度にくちも開かないのだ。
しんのすけはギーシュの体中を飛び回る。
「な、何をしている!?何をするつもりなんだ!?」
しんのすけは手を出さない。彼が行うのは観察。
ギーシュの体の弱点をつくためだ。
しんのすけはやがて言った。
「オラには…風間くんというホクロの数まで知っている仲の親友がいるぞ。
ギーシュくん。キミの耳の形、肌触り、神経の通り方、まるで風間君だゾ。
なにがいいたいかおかわり?」
「おわかりじゃ…。」
一瞬のことだった。しんのすけがギーシュの顔の横を通り過ぎた。
その瞬間。
「あ…体に力が入らない…!?」
ギーシュが膝を突くと同時にしんのすけが着地する。
ルイズにはわかった。しんのすけの勝利がもうわかっていた。

「耳が弱いんだよねェ~風間君は!」
「あへぇ~~。」

「これが…シンノスケ…。」
ルイズも目を見開いていた。

「僕の負けだ…。潔く負けを認めよう。」
すでにモンモランシーにボコボコにされた顔でそう告げた。
「シンちゃん!大丈夫でしたか!?」
「シエちゃぁ~ん!膝すりむいちゃったぞ~!」
「大丈夫ですか!?」
「オラ強いから問題ないぞ~。あはー。」
シエスタにかまってもらうために言ったようだった。
ルイズがしんのすけに告げる。
「シンノスケ。アンタの勝ちよ。約束通り何でも言うこと聞かせなさい!」
シエスタと一緒にシロをかわいがり始めていたしんのすけは「お?」と言って振り向く。
「ほほう。何でも?」
「うわ…。出来る限り優しいヤツで…。」
「何いってんのよ!?シンノスケ。遠慮はいらないわ。」
しんのすけはすこし考える。だがすぐに答えた。
「うーんと、じゃあ、また明日遊ぼうよ。」
「え?そんなのでいいのかい?」
「うん。また遊ぼう。ギーシュ君。」

そう言ったしんのすけは変わったヤツだとみんなからそういう目で見られていた。

「変な…ヤツ。」


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