あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

プレデター・ハルケギニア-12


朝日が降り注ぐ中、人外の戦士と三人のメイジは対峙していた。

「開戦の時刻も守らずに刺客を放つとは……あの恥知らずどもめ!」

ウェールズの叫びと共に亜人が手に持った細長い、亜人の身の丈以上もあろうかという長い棒状の得物を構える。
踏み込みざまに亜人が得物を横なぎに振るった。力強く素早いスイングが空気を切り裂く。
まともに当たれば人骨など容易に砕けるだろう。恐らくは先ほどウェールズを礼拝堂から外に吹き飛ばし
片腕を粉砕した一撃だろう。

ウェールズ、そしてワルドが素早くルイズを抱き上げフライで亜人の一撃を避ける。

(何で!?何でコイツがここに!?)

ワルドに抱きかかえられながらルイズは必死に思考をめぐらせていた。
ラ・ロシェールを立ってからのせわしない展開の数々に一時、この亜人のことは忘れ去っていた。

しかしそれは本当に唐突にルイズの前へと姿を現したのだ。
自身が召喚した亜人を前に自分は何をすべきか?
不意にオスマンの言葉が頭をよぎる。


―契約するか、殺すか―


再び亜人が一行に襲い掛かる。今度は横なぎの一閃ではなく体を竜巻の如く回転させながら連続で棒を繰り出す。
遠心力により先ほどの一閃を上回るスピードだ。力任せだけでは無く高度な武器術を持っているようだ。
これも間一髪かわし、ウェールズがすかさずエアニードルを亜人へと打ち込む。
しかし亜人の横宙返りによりかわされた。相変わらずの巨体に似合わぬ身軽さだ。

「子爵、ミス・ヴァリエール。これはアルビオン王家の闘いだ!君たちは……なっ!?」

ウェールズが、恐らくは二人に逃亡するように呼びかけようとした時
ルイズはワルドの腕から離れ追撃を加えようとする亜人の前に立ちはだかった。

「ルイズ!何をしているんだ!?戻ってこい!」

突然自身の腕の中から飛び出した婚約者にワルドが叫ぶ。

「いいえ、私は逃げない!だってこれは私の……」

ルイズのか細い足が震える。口元の震えを唇を噛み締め何とか押し殺す。
目の前の亜人はどこか困惑した様子でルイズを見ている。




「わ、我が召喚せし使い……」
「チッ!」

ルイズが何か言いかけると共にワルドが小さく舌打ちをすると口笛を鳴らした。どこからともなくワルドのグリフォンが現れるとともにワルドが
レビテーションでルイズを素早くグリフォンの背に乗せる。

「ワルド!?」
「先にラ・ロシェールで待っていてくれ!必ず迎えに行く!」

ワルドがもう一度口笛を吹くとグリフォンは素早く飛び上がり城壁を越えて飛び去っていった。

「ダメ!ダメなのワルド!だって、だってそいつは、そいつは!!」

ルイズの叫びはすでにワルドには届いていなかった。




ルイズが消え、その場には亜人とワルド、ウェールズが向かい合っている。

ウェールズが再び杖を構える。

「子爵、君も逃げたまえ!」
「いいえ、助太刀させてもらいますよ」

ウェールズの背後でワルドの声と杖を抜く音がした。
亜人も再び得物を構えた。

「ふっ、バカな男だな。き……グハッ!?」

突如ウェールズの胸に激痛が走った。見ると胸を長い杖が貫いていた。
亜人も驚いたような声を挙げた。ウェールズがゆっくりと後ろを振り向く。

ワルドが冷たい微笑を浮かべている。
そしてその手に持った杖はウェールズの胸を貫いていた。

「き……さま、まさ……か……」
「そういうことですよ、王子さま」

ワルドの口元が吊りあがり耳まで裂けたかのように見えた。その邪悪な笑みは先日のような紳士さは微塵も感じられない。
ワルドが杖を引き抜くと共にウェールズが前のめりに倒れる。途端に胸の傷と口から血があふれ出す。


「レコン……キスタ……」

「あの子にはまだこういうシーンは刺激が強すぎるからな」

前のめりに倒れながらもワルドを強い視線で睨み挙げていたがすぐに糸が切れた人形の如く動かなくなった。
目も完全に光を失っている。

ワルドがこと切れたウェールズから亜人に視線を移す。

「何者だ貴様?」

ワルドの声は落ち着いている。それは自身が最高位のメイジであるスクエアであることからの自信であっただろうか。
少なくともエルフ以外の亜人族に劣ることはあり得ない。まして相手は単身だ。

「大方、本部が雇った亜人族といったところか。しかしこれは俺の聞いているだんどりと違うな。
この小僧を殺すのは俺の仕事……」

突如ワルドは素早く後ろに飛んだ。ワルドの長い前髪がはらりと落ちる。
亜人の棒の一閃によるものだった。亜人は地面を強く踏みつけると怒りのこもった咆哮を挙げた。


「貴様……上等だ!」

怒りに顔を歪めながらワルドが呪文を詠唱し杖を振るう。途端に五人の分身が現れた。
風魔法、『偏在』である。

「敵味方の区別のつかぬ者などここで処分してやろう!」

ワルドと分身が素早くシャッフルするように動いた。
そして亜人の周りを囲むように陣形を組む。
これではどれが本体か見破るのは不可能だろう。


「スクエアに喧嘩を売ったこと、あの世で後悔するがいい」



六人のワルドが同時に杖を構える。そして必殺の魔法を発動しようとしたその時
亜人が一体のワルドに飛び掛った。亜人の棒がワルドの横っ腹を直撃しワルドは吹き飛んだ。

「グオォッ!?」

ワルドが苦悶の声を洩らしながらわき腹を押さえる。直撃の瞬間に自ら飛びずさり軽減したものの
あばらが何本か持っていかれたようだ。


(バカな!?こいつ何の迷いもなく!?)


亜人が一撃を加えたワルドは紛れも無い本体であった。
膝をついた本体に止めとばかりに亜人が疾走する。


「クッ!」


ワルドが杖を振ると偏在の一体がエアニードルを繰り出す。
亜人の身のこなしは先ほどまでの闘いで目の当たりにしている。
避けられるか、とも思ったがその予想は裏切られた。

亜人はエアニードルをもろに腹部に喰らった。
亜人の腹から緑色の蛍光塗料のような血液が流れる。
エアニードル一発では亜人の腹筋を完全に貫くにはいたらなかったが
この世界に召喚されてから始めての流血であった。

亜人が敵を探すように周りを見回す。亜人の周りは偏在たちが取り囲んでいたが――

(こいつ……まさか偏在が見えていないのか!?)

ならば先ほど何の迷いもなく本体に飛び掛り、今偏在の攻撃をもろに喰らったことも納得が行く。

ワルドが何とか立ち上がると再び杖を振るう。今度は一体がエアハンマーで亜人を吹き飛ばす。
続けざまに残りが一斉にエアニードルを放つ。鎧の包まれていない腕や腹部を貫かれた。



どの攻撃もおもしろいように当たった。
亜人が飛び上がるように素早く起き上がった。
体中から血が流れているもののダメージはそれほどでも無さそうだ。

「どうやら刺突系では効果は薄いようだな。ならばこれでどうだ?」

完全に優位に立ったことからワルドの口元が再び吊りあがる。
偏在が再び亜人を取り囲んだ。そして杖を掲げるとその先端が青白く光始めた。

そして次の瞬間、五つの雷撃が亜人を直撃した。電撃の風魔法、『ライトニング・クラウド』だ。

五発のライトニング・クラウドを喰らった亜人の全身から煙がたち込める。

「ふっ、俺のライトニング・クラウドを五発。どんなタフな怪物だろうが即死だ」

亜人の上体がゆっくりと前方に倒れ―――込まなかった。

なんと亜人は少し前かがみになっただけで頭を振ると再びワルドを見据えたのだ。
まるで雷撃によるダメージなど無いかのように。

「バカな!?何故だ!何故死なぬ!?」

ワルドは知らなかった。この亜人が天からの雷に打たれても死なないことを。

困惑するワルドを見据えながら亜人が右腕前腕部のガントレットを指でなにやら操作し始めた。
亜人が操作するたびにピッ、という電子音が鳴る。

「何をしている!?」

ワルドは亜人の行為を怪訝そうに見ていた。




この亜人の視界は人間とは根本的に異なった。周りの城壁や地面などは暗い青色。
そしてワルドの姿は黄色とオレンジを混ぜたような色で表していた。
それは正しく敵の体温を見る視界であった。それゆえに先ほどは血潮の流れぬ、
つまりは体温を持たぬ偏在の攻撃には反応が出来なかった。

しかし今、ガントレットの操作により亜人の視界は切り替わっていた。
世界全体が薄い赤色に染まりワルドの姿は周り全体の色よりさらに鮮やかな赤い色で写されていた。
そしてそれはワルド本体だけでは無い、偏在たちの姿も同様に捉えていた。

偏在一体一体は意思を持つ。言うなれば敵への攻撃意思を。
そして今切り替わった亜人の視界がその敵の攻撃意思そのものを視る視界だと知る者は
亜人以外にいるはずは無い。

「バカな!俺のライトニング・クラウドが通じぬなぞ、そんな事があってたまるか!!」

絶対の自信で放った必殺の雷撃が無効化だったことにワルドは逆上していた。
再び偏在たちの杖が青白く光る。

そしてその時、同時に亜人が太ももを覆う鎧に取り付けられた何かを取り出した。
それは黒色に所々赤い模様が描かれた円盤のような形状をしている物だった。
円盤の縁の部分はノコギリの刃の如くギザギザになっている。

偏在たちの杖から再び五発の雷撃が放たれる。しかし今度は亜人の宙返りによりかわされた。
そして宙返りざま、頭と足が逆さの状態のまま亜人は手の円盤を偏在たちへ投げつけた。

それはまるで意思でも持つかのような動きだった。避けようとした偏在たちの体を追いかけるように
一人一人を切断して行った。円盤に切断された偏在はその瞬間に正しく風のように消滅した。

全ての偏在を切断し円盤が亜人の手に戻る。




「お前は……お前は一体なんだ!?」

ワルドの声には恐怖の色がこもっていた。形成は完全に逆転したと言っていいだろう。

亜人が再び円盤を構える。あれを防ぐすべはワルドには――無い。

亜人の手から円盤が投げられた。それはワルドに向かい真っ直ぐに向かってくる。
万事休すかとワルドは思わず目を瞑った。



しかし次の瞬間、ワルドの目の前の地面が突如盛り上がると一枚の分厚い、暑さ5メイルはあろうかという
土壁が現れた。そしてそれは瞬時に土から鋼鉄へと姿を変えた。

亜人の円盤はその鉄壁の表面を切り裂きはしたが貫通するには至らなかった。
跳ね返された円盤が亜人の手に戻る。亜人は驚いたように喉を鳴らした。

「これは……錬金!?まさか!?」

その時上空から一体の巨大な魔法人形、『ガーゴイル』が降下すると、同時にワルドの体が浮かび上がる。
ワルドを乗せるとそのガーゴイルは一気に空高く舞い上がった。

ガーゴイルの背に乗ったワルドの横には、フーケ、そしてもう一人、長い黒髪にグラマラスな体の美女であった。

「やはりお前か……」
「ふん、礼はいらないよ。私もあんたに助けられた身だからね」

ワルドがフーケの隣の黒髪の女性に目をやる。
「そちらは?」

「詳しい自己紹介は後ほど、ワルド子爵。シェフィールドとお覚え下さい。
今はここから離れることが先決です」

ワルドににこりと笑みをかけながら黒髪の女性、シェフィールドが答える。




飛び去って行くガーゴイルを亜人が見つめていた。
もう亜人の飛び道具では届かない距離だ。

「はは、あと少しの所で逃げられたな。それにしても何だあのガーゴイルは?」

腰の剣がカタカタと喋る。

亜人がガーゴイルから視線を外すと後ろを振り向き歩き出す。
もはや冷たくなったウェールズが倒れていた。その光の無い瞳は虚ろに開かれている。

「心臓を一突き、か。苦しかったろうな」

亜人は数秒、ウェールズを見つめていたがやがて城壁の方に向かい歩き始めた。


その時だった。大きな火球が亜人に向かい放たれた。間一髪でそれを避ける。
そして放たれたほうを見るとそこには――


「殿下……!!」


パリーを先頭にそこには三百の王軍が居た。パリーが苦虫を噛み潰すような顔をしながら
肩を震わせる。

「許さぬぞ!戦の作法も守らぬ無礼者めが!殿下の仇!!」

パリーの叫びとともに三百の王軍が雄たけびを上げながら亜人へと突進する。

同時に亜人が背中からグレイブを取り出す。かつてコルベールと対峙した時の用いた武器だ。


そして亜人の全身に青い電流が流れるとその姿はかき消すように消えた。



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